恋人同士なのだから、例えその行為本来の目的で新しい生命を作り出すことができなくても、お互いの欲望を二人で発散させるようになったのは仕方のないことだと思う。 お互いに欲情を感じる相手でもあるのだし。 タカさんの指が器用に動いて僕のを握り込む。 ごつごつとしたその指は意外と繊細に動いていく。 お返しに僕もタカさんのを両手で包み込み撫であげる。 途端に切なげに揺れる彼の視線に僕の身体は煽られて、一部の容量を増していく。 「不二、好きだ……」 僕もと答えようとしたときに唇を塞がれて。 まぁ僕の言いたかったことは絡んだ視線だけで伝わっているだろう。 絡んだ舌の温度とかと共に。 キスに溺れそうになって手を止めてしまいそうになる。 反応が悪くなった僕の指にタカさんは焦らされたようで、自分から押しつけて来る。 僕はタカさんの哀願を無視して、彼の首に抱き付き、耳の後ろから首筋にかけて口付けた。 タカさんの皮膚が粟立ったのが分る。そのまま続けようとすると。 彼は笑って僕の身体を持ち上げて体勢を変え、今度は僕の内股に唇を走らせた。 こういうときに体格差は悔しい。 軽く吸い付くその動作がやけに官能的だった。 そこは彼だけが知っている僕のウィークポイントで、漏れる声を抑えようと真剣に唇を噛み締めた。 あまりに念入りに続くから。 「キスなら唇にしてよ」 僕のお強請りにタカさんは従順に唇へ口付けてきた。 タカさんとのキスは好きだ。 こんな関係になってから常に纏う背徳感も何もかもすべてが払拭されて、ただ彼を好きだという思いで塗り替えられていく。 誰かにバレたら、 大人になれば、 終わってしまうかもしれない。 そんな不安定な関係だというのに、それでもこの瞬間は幸せだった。 十分に立ち上がっているそれを念入りにしつこくかまっていると今にも張り切れんばかりに膨張するのが分かる。 だけど僕は解放を許さずその根元を握り締めた。 タカさんは一層眉を下げてこちらを見てくる。 僕は笑いつつ言った。 「イクときは一緒だよ」 僕の言葉にタカさんは恥ずかしそうに頷くと今度は僕を抱きしめてくる。 始めの頃の戸惑いが嘘みたいにタカさんの他人へする愛撫も今ではすっかり慣れてしまって、僕の身体を快楽へと導いていく。 二人の間に隙間なんて許さないくらい、きつく抱き合って。 このまま一つの塊にでもなれたらいいのに。 だけど僕がタカさんになることはないし、タカさんが僕になることもなく。 お互いの腹で擦り上げられた二つの固まりは欲望を吐き出し僕らの腹を汚した。 事後の気怠さの中で、そっとだされたタカさんの二の腕に包まれた。内側からは堪らなく幸福感に包まれる。 僕は身体を預けた。 身体を繋げることはなくても幸せだった。 最後の一線だけは越えない様に。 一線を越えないことは僕らの、二人の暗黙のルールだった。 (09/04/30) |