機械少女領域 〜S嬢の秘めやかな悔恨



愛してくれるならいいよ
いつでもどこでも
ふたりっきりならいいよ



「そりゃ、そう言ったけど……」
「いやか?」
「いやじゃない…」
愛しい恋人の首に腕をかけながらシグナルははにかみながら呟いた。ちらと目線だけあげると琥珀色の瞳が意地悪っぽく見つめてくるもんだから絶対に顔を上げられない。
「こ、コード」
「なんだ」
「やっぱり、場所変えようよ。誰か来たら…ひゃんっ」
突然耳に甘く噛みつかれたシグナルは思わず声をあげて身を竦めた。コードを押し返そうとするものの力が入らない。恋人の腕に抱かれながらシグナルはただ外のことだけを気にしていた。
「コード、コードってば」
「うるさいやつだな、なんだ」
興醒めだと言わんばかりに睨んでくるコードに負けじとシグナルもむーと目の前の恋人を見つめた。
「本当に誰も来ない?」
疑り深いシグナルの言葉にコードは諦め半分ため息をついた。
「ああ。ここは<ORACLE>の中でも滅多に使わない場所だからな」
「滅多にってことはもしかしたら誰か来るってこと?」
「んー、否定はできんな」
現在二人がいるのは電脳空間にある<ORACLE>という学術機関専用の情報管理空間……のさらに奥にある資料庫である。ここは管理人のオラクルもその番人であるオラトリオもあまりやってこないスペースである。
で、なんだってそんなところにいるかというと。
つい先日シグナルが『たまには場所を変えたい』などと埒もないことを言ったせいである。二人が房事に使う場所はたいていコードの部屋だ。落ち着いた雰囲気のその部屋も嫌いじゃなかったけれどなんとなくマンネリになってきたことは否めない。
大切な人と愛し合うのに場所なんてどうでもいいはずなのについこぼしてしまった言葉になぜかコードが乗っかったのである。
「場所を変えるという提案がなかなか面白かったから乗ったんだぞ」
「でもここじゃなくても」
「誰か来るかもしれない、と思うと興奮しないか?」
コードの言葉に、シグナルはさっと頬を染めた。
確かにドキドキするシチュエーションではあるけれど見つかった時の気まずさといったらそれはもう悲劇を通り越して喜劇である。
「やっぱりここでするの?」
「大丈夫だ、本当に誰も来んから」
「でも100%来ないとは言い切れないんでしょう?」
コードの唇を耳で受けているシグナルはときどき小さく震えながらもなおもごね続けた。それがコードのさして丈夫ではない堪忍袋の緒をちょん切ってしまった。
彼はゆっくりとシグナルから顔を離しながら言った。
「シグナル……」
「な、なに?」
「したいといったのはお前だぞ! 分かっているな! 分かっているならこれ以上ごねるな!!」
そういうとコードは強引にシグナルの顎を掴みあげ、口づけた。
「んむっ……!!」
突然の口づけにシグナルは一瞬呼吸を詰めたが、彼のキスのパターンは大体分かっているのでしばらく我慢して、それから自分も楽しむように角度を変えて彼を受け入れた。
「んぅ……っ」
甘く吸うような口づけから、深く噛み付くようなキスへ。
いつの間にか互いの舌を絡め合わせるほど熱い。
官能のスイッチさえ入れてしまえば衣服を解くのも早い。
粘りつくようなキスを少し中断して見詰め合えば、潤んだ瞳に互いしか映らず、その像はぼやけているように見えた。
「コード……」
その名の主は軽く頬に口づけながらシグナルの耳元でくすりと笑った。
「いつもよりすごかったな、もう興奮しているのか?」
彼の言葉にシグナルは否定の言葉を吐いたが、それでも身体は既に疼きはじめている。それが分からないコードではなかった。
キスをする前からアンダーシャツだけになっていたシグナルの乳房に手を寄せ、先端の果実を煽るようになぞると、彼女は小さな嬌声とともに身を竦めた。布越しにも彼女の乳房の先端が固く立ち上がっているのが分かる。コードは少し屈んで布ごとその果実を歯で噛んだ。
「んっ!!」
空いた片手はもう一方の乳房の質感を楽しむように動いている。
「やっ…やだっ…!」
「また嘘をつきおって。イヤじゃないんだろうが」
「うぅっ……」
16歳の少女の身体を持ちながら、稼動年数はごく短い。そんなシグナルに性愛を教えたのはコードだった。
「気持ちいいか?」
「う…」
「どうなんだ?」
乳房をぎゅっと掴まれたシグナルは痛みに顔をゆがめながら頷いた。
「き、気持ちいい……」
「直に触ってほしいか?」
「うん……もっと触って」
ねだるように差し出された唇には軽い口づけひとつ、コードはそれしか返さない。
シグナルは黒いアンダーシャツを自分でゆっくりとたくし上げた。白い肌持つ豊かな乳房が空気に晒されていくのを彼女は震えながら感じていた。
「コードっ……」
「……この前の痕がまだ残っているな」
乳房の下、わき腹の近くの柔らかい肉の部分に残した薄紅の痕は未だにくっきりとその情事がいつ行われたかを物語っていた。それでも上半身は少ないほうなのだ。
コードの指先がその紅い痕に触れる。シグナルはびくっと体を震わせた。
「や、やぁ……」
ふくよかな乳房をやんわりと揉まれ、シグナルの頬は紅潮していく。
いつもと同じように抱かれているのに場所が違うだけでこんなにと、シグナルは困惑を隠せない。
彼女自身が気づかないうちに膝が震えている。
コードはシグナルを壁に押し付け、足の間に自分のを押し込んだ。
「あ…」
「どうした?」
「え……」
「膝が震えている」
コード自身によって押さえ込まれているのでシグナルは逃げられない。もっとも逃げようとも思わないのだが。
彼の指摘にシグナルははっとした。でも彼の顔を正面から見ることはできない。
「もう立てなくなったか?」
「そ、そんなことは」
言葉の最後を見逃さないと、コードがシグナルの口内に自分の舌を差し入れた。
「んんっ!?」
逃げる彼女の舌を追うように絡み付いてくるコードの舌に、シグナルは息苦しさと生暖かさを感じる。意識がぼやけていくような、ふわふわした感覚に襲われながらも体は彼の熱に反応する。
キスを繰り返しながらも彼の手はシグナルの乳房と陰部に触れていた。
「んふっ、うんぅっ……!」
衣服の隙間から滑りこんだ指が尻を撫で、その間から女陰を弄っている。身を捩って逃げようとしても既に女陰にたどり着いていた指が浅くではあるが差し込まれていて、シグナルを刺激した。
「やっ……」
「もう濡れているな、シグナル」
「いやっ、言わないでっ……」
シグナルは俯いて彼の腕をぎゅっと掴んだ。瞳は薄く潤んでいて今にも涙をこぼしそうだ。
「コードっ……ぅ…」
哀願するようなシグナルの仕草にコードは一度手を離した。
シグナルはおずおずと顔をあげた。けれどほっとしたような、でも奥に潜む甘いような切ない疼きに襲われる。
「コード……」
見つめた彼の顔はイタズラっぽく笑っていた。
「なんだ、我慢できなくなったか?」
「……意地悪」
ぺろりと頬を舐められて、シグナルは思わず体を反らした。が、背後の壁に遮られてこんと頭を打つ。
非難がましい視線も何のその。コードはシグナルの目尻に口づけると彼女のスラックスの前をくつろげた。
シグナルは小さく悲鳴を上げたが、それだけだ。
コードは彼女の手をとると自分の分身へと宛がった。
「あっ……」
熱くて固い男のものにシグナルは自分の胸の高鳴りを感じる。早くこれで最奥に触れてほしいと思いながらも、誰かに見られたらと不安でたまらない。
そんな揺れる感情が男と女の体を煽る。
「コードぉ……」
「俺様も、もう……」
そういうとコードは彼女のスラックスを脱がせ、壁のほうを向かせた。そして彼女に手を付かせる。
シグナルは少し不安そうに振り返るが、髪が邪魔してよく見えなかった。
「あ…コード……」
「静かにしていろ」
白い双丘の間に男根を這わせ、擦りあげる。熱く高ぶったものにシグナルの胎内がどくんと脈打った。
彼の手は少女の乳房と女陰を今度は背後から弄る。
「きゃんっ!?」
目の前は白い壁、縋るものは何もなくて、シグナルは思わず拳を握る。
「く…うっんっ……」
思わず内股に力が入り、コードの手をきゅっと挟みこむ。するとコードは彼女の耳に吐息をかけた。
「こら、足を開け」
「ぁふ……」
汗ばんだ肌に紫の髪が張り付く。しっとり湿った乳房にもコードの手が吸い付いたかのように離れない。彼は優しい手つきで乳房をきゅっと掴んだ。
「んっ…!」
「顔だけこっちに向けろ」
シグナルは促されるままに彼を見た。近づいてきた唇を迷わず自分のそれで触れた。
温かい彼の唇はやっぱり優しくて、そしてそれが挿入の合図であることを彼女は経験から知っている。
「……入れる?」
「ああ……お前は?」
「……欲しい」
「よし」
きゅっと乳房の先をつまみあげ、コードはシグナルの腰に手を這わせた。
「尻をこっちに向けろ」
「ん…こう?」
形のよい柔らかい尻を差し出すように、シグナルは体を動かした。長い髪が彼女の左右に広がっている。これは邪魔だと、コードはそれを彼女の胸側に流した。
「コード?」
「もういいな、入れるぞ」
「うん…」
腿から腰、胸元だけをさらけ出した半裸の格好で壁に向かって手をつくシグナル。そんな彼女の膣口にコードは自身を宛がった。ぐちゅと濡れた音が聞こえる。
先端がすっと入ってきて、シグナルは思わず息を詰めた。彼とは何度も肌を合わせているのに、このときだけはどうしても緊張してしまう。誰かが来るかもしれないというこの場所でそれはなおさらだった。
ぐっと侵入してくる剛直に目を見開く、それを見届けたのは壁だった。
「ああっ!?」
湿り気を帯びた男根と女陰、卑猥な水音を立てながら肉と肉とが擦れあう。
コードはいつも一度最奥まで触れてから律動を刻む。今日も同じようにシグナルを抱いた。
シグナルの細い腰を掴んで最初はゆっくりと、それからだんだん早くなる。
緩急をつけてシグナルの内壁を擦り、突き上げた。
「んっ!! んんっ!?」
だがいつもと違っていたのはシグナルが声を上げなかったことだ。彼との同衾の際、シグナルはか細い嬌声をあげる。やっぱり彼の前でも恥ずかしいのだ。
今回は誰かに見られるかもしれないという不安の前に、気づかれてはいけないという彼女なりの配慮が見られたのだ。
そんな彼女のいじらしさにコードは常ならぬ愛らしさを感じて、思わず熱が入る。
壁に爪を立てようとしていた彼女の手を掴み、コードは一度突き上げるのをやめた。
「コード?」
「大丈夫だ、シグナル」
コードは一度男根を引き抜いた。今まで繋がっていた女陰から糸が引くほど、互いに濡れている。
シグナルは今まで自分を満たしていたものがなくなったことに焦りながら、背後の彼を振り返った。
「…どうしたの?」
「ん、こっちを向け」
シグナルは言われるままに体ごと彼のほうを向いた。するとコードは汗ばんでいる自分を迷わず抱きしめる。
「きゃっ、コード……」
「可愛いな、お前は。やっぱり顔を見ていたい」
「えっ!?」
言うなりコードはシグナルの片足を腕に担ぎ、再び彼女の膣内に男根を挿入した。
「くんっ……」
コードの肩を掴み、必死に声を抑えるシグナル。やはり可愛いと思いながらコードは挿入を繰り返した。
「や、あ、あっ」
「声を出すのが気になるか?」
「んっ……そ、それはっ…」
片足では立っていられなくて、シグナルは必死にコードにしがみついている。
「どうなんだ?」
促されて、シグナルはこっくりと頷いた。
「だって…誰かっ、んっ、来ちゃったらああん!」
「なら、俺様が塞いでやろう。それでいいな?」
「……うん」
そう言って二人は唇を触れ合わせた。舌を絡めあえば声を出さないでいい。
コードは空いた片手で乳房を弄っていたのだが、ふと腰のほうに手を下げた。そして尻を丸く撫でて、双丘の間に滑り込ませる。後孔に指を浅く差し入れるとシグナルの膣がきゅっと締まる。
「は、はふ」
声を出させないように口づけあっているのでコードもしゃべらない。けれど体の変化は確実に彼にも影響している。シグナルの膣はコードの男根を締め付けた。
だが絶頂は近い。
シグナルは胎内の異物を押し返そうとコードを締め付け、コードもそれにより自身が高ぶっているのを感じる。
シグナルがぽろぽろと泣き出し、必死にしがみついている事からもそれは明らかだ。
コードは舌を離した。
「あんっ、コードぉっ」
「イキそうなんだろう?」
図星をつかれて、シグナルの体がびくりと震える。だが隠す事でもないし、隠し果せるものでもないしで、シグナルはきゅっと抱きつくことで答えとした。
コードが彼女の背中を軽く叩いて応じる。
「よし、一緒に行くか」
「うんっ!」
コードは何度かシグナルの奥を深く突き上げた。シグナルの嬌声が途切れながらも上がる。
彼女はもう、声を抑えなかった。
聞かれたくない、見られなくないと思っていたはずなのに快感の前にそのすべてが消えた。
「あっ……らめっ! らめええええええっ!!!」
呂律の回らなくなったシグナルの口から絶頂の嬌声が溢れた。飲みきれなかった唾液が口角を汚し、膣内からは注ぎ込まれるコードの精液と共に自身の愛液もこぼれてきた。
「あっ……」
熱く流れるコードが自分の中を巡り、シグナルは意識を失った。
「シグナル? おい?」
自分にもたれかかってぐったりとしているシグナルから自身を引き抜くと、とりあえず彼女を抱き上げた。そして何か敷くものをと、とりあえず布状のものを作ってそこに彼女を横たえた。
寝かせると汗ばんだ乳房がふるんと揺れた。
コードはふっと口元を歪める。脱がせた服はそこにあるが、着せるのは憚られたのでもう一枚布を作って着せかけた。まだ16歳の少女、稼動してからは1年と満たないはずなのに既に妖艶な肢体を見せている。
それを見られるのは彼女にとって比翼連理と愛された自分だけなのだ。
「悪いことをしたかな……」
眠るシグナルを眺めながら、コードはひとりごちた。
愛用の煙管を手元に呼び出し、噴かす。電脳空間ならではの芸当だ。
放蕩う紫煙に思いを乗せて吐き出す。
実はシグナルと逢引するのに使ったこの空間は<ORACLE>内部に作られた別の空間なのである。だから<ORACLE>とオラクル本人はそこに無害な異空間があることは知っていてもそこで何をしているのかにはまったく関与できないのだ。
つまり、コードとシグナルからは外の様子が分かるのだが外からは全く分からない、いわばマジックミラーの中にいたようなものである。
「知ったら怒るだろうな」
だがシグナルを騙したおかげでより一層可愛らしい彼女が見られたのだからよしとしよう。
絹のように滑る彼女の髪を撫で、コードは一人苦笑した。
虚空に消える紫煙のむこう側、そこになにがあるのだろう。



しばらくして、シグナルは目を覚ました。
「ん……」
「起きたか」
「あれ、コード……」
ここはと瞳をめぐらせればそこは良く知った天井。自分は一糸たりとも纏ってはいなかったが、上掛けはかけてあった。それで胸元を押さえながら起きあがる。
「どうして、ここに?」
「俺様が運んだんだ。服はそこにな」
枕もとの乱れ箱は漆塗りの瀟洒なものだ。そこに彼女の衣服が綺麗に畳まれて入れられていた。
「何から何まで……」
シグナルがそう言うと、コードはふっと小さく笑った。
「あのままあそこにいたら誰かに見つかるかもしれんからな。お前はいやだといっていただろう」
「う、うん……」
だから運んでくれたのかと、シグナルはコードをちらっとみた。
「なんだ?」
「本当に、誰も来なかった?」
「ああ、来なかったぞ」
「そう……よかったぁ」
つぶやくようにそういって、シグナルは再び横になった。
まだ体がうまく動かない。コードに愛されたあとはいつもこうだ。
「シグナル」
「なあに?」
廊下に立っていたコードに背を向けていたシグナルがふと顔だけで彼を降りかえる。コードも同じように顔だけをこちらに向けていた。
「今度はどこでやる?」
「えっ……」
コードの問いに、シグナルはただバカとだけ答えて与えられていた布団をかぶった。コードが苦笑して立ち去るのが聞こえる。
(コードのバカ〜〜っ)
埒もない事を言い出したのは自分だということを棚に上げ、シグナルはコードに八つ当たり。
結局彼女はコードが作っていた仮想空間のことなど何一つ知らないまま、再び眠りについたのだった。




好奇心と羞恥心
天秤にかけて傾いた機械少女領域
けれど百戦錬磨の男を手玉に取るにはまだ早い




≪終≫





≪あの蒼穹に磔刑にしておくれ≫
久しぶりに書いたコーシグのエロ。なんの必然もラブストーリーもないんだぜ! やりたいからやった! でも愛はあるんだぜ。<ORACLE>の資料室なんだぜ。楽しかったwwwww
誰かあれだ、磔にして火でもかけてくれ(*゚Д゚)注: 文字用の領域がありません!

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