誰よりも君がそばにいること …あのね 時々すごく不安になるの 疲れてるんじゃないのかなって 「エモーションさん、これでいいんですかぁ?」 「上出来ですわ。それに気持ちが大事なんですよ」 「でも…ちょっと形が悪いかなって」 出来上がったチョコレートを見つめながらシグナルは少し不安になった。恋人にあげるのにこんなに変な形でいいのだろうかと考えてしまう。 「大丈夫ですわよ。オラトリオ様は<A−S>がそばにいればよろしいんですから」 エモーションはふわりとシグナルの背中に抱きついてその柔らかな頬をちょんとついた。そんな彼女の優しさにシグナルもようやく安心したのか、穏やかな笑顔を見せた。 「そうですよね。オラトリオ、喜んでくれますよね」 「そうですよ。さ、行きましょう」 「はいっ」 エモーションに手を引かれ、片手には大事にチョコレートを抱いてシグナルはゆっくりと歩き出した。 大好きな人に食べてもらいたくて一生懸命作ったんだから。 微笑んでくれる恋人の顔を思い浮かべるだけでどことなく幸せだ。 <ORACLE>に着くとそこでは既にオラクルとコードが少し早めの茶に興じていた。 「あ、エモーションとシグナルが来たみたいだよ」 「やれやれ、今年も来たか」 コードが多少うんざりといった顔で腕を頭の後ろに組んで反り繰り返った。そんな彼を見つめてオラクルは苦笑い。 「まあまあ、そう言わないで。今年はシグナルもいるんだし」 「いくら甘さ控えめと言っても量が増えれば同じことだからな」 甘いものは元来苦手なコードはそれでも今日という日には覚悟を決めているらしい。それは大事な妹やシグナルに寄せる優しさだ。 「ごきげんよう、オラクル様、お兄様。本日はバレンタインということでチョコレートなどお持ちしましたわ。どうぞご賞味くださいませ」 光の令嬢は春の光を振りまきながら臈たけた挨拶をした。その横にシグナルがちょこんと立っている。 エモーションとは違ってシグナルは元気よく挨拶した。 「こんにちわ。オラクル」 「やあ、こんにちわ、シグナル」 オラクルとシグナルは顔を見合わせてにっこり笑う。自分の恋人にそっくりなオラクルは穏やかで優しくて、シグナルにとっては兄のような友達のような存在だ。コードとは毎日顔をあわせているので挨拶は必要ない。 「ごめんね、オラトリオはまだ仕事から戻らないんだよ。今日はこっちに来ると思うんだけど」 オラクルは子供にするようにシグナルを撫でた。彼女は少し寂しそうに笑った。 「ううん、分かってるから。私待ってる」 折角のバレンタインだというのにオラトリオは例によって仕事でいない。監察官として、そして<ORACLE>の守護者として彼の追う責務は重い。自分と恋人同士になってからもそれはなんら変わらないのだ。だから我侭を言ってはいけないんだと知っている。 「<A−S>…」 「折角だからみんなで食べよう。エモーションさんと一緒にみんなのぶんも作ったんだ」 寂しいとも悲しいとも言わないシグナルの健気さに誰もが普通に振舞うことにした。 「じゃあ二人のぶんもお茶を淹れるよ。とっておきのゴールデンアッサムと淹れてあげる」 そういうとオラクルは奥に引っ込んだ。手伝おうと呼びかけたシグナルを軽く制す。今日のおやつを用意してもらったからね、とオラクルは微笑んでいた。 オラクルはいつも微笑んでいる。そしてオラトリオはこの微笑みのために戦っている。そしてそれはオラトリオ自身を守るためでもあるのだと聞かされたとき、だったら自分がオラトリオを守ってあげたいと思った。抱きしめたオラトリオの頭はふくよかなシグナルの胸の中で幸せそうに目を閉じたのだ。 あのときのオラトリオのことを思ってシグナルはずっと笑っているのだ、彼に心配をかけないように。 でも寂しい想いは独り言になってふいと口をつく。 「早く帰ってこないかな…」 白亜の天井を見上げて呟いた言葉が現実になったものか、シグナルの体がふいに温かいものに包まれた。 「うにゃあ」 「ただいま、シグナルちゃん」 「オラトリオ」 シグナルの笑顔がぱあっと明るくなった。くるっと体を返してオラトリオに抱きつき、その体に頬擦りした。 「なんだ、仕事はいいのか?」 「たまには<ORACLE>の様子も見なきゃならないんでね。それにシグナルちゃんにも会いたかったし」 そういってオラトリオはシグナルの柔らかい髪を撫でた。紫苑色の髪がきらきらと光を弾く。その笑顔は枯れない花のように鮮やかだ。 「じゃあ、すぐに戻らなきゃいけないの?」 「ああ、明日には、な」 オラトリオが申し訳なさそうに言うのを、シグナルはほんの少しの寂しさを湛えて見つめていた。でもそんな思いもすぐに捨ててしまう、彼の負担になりたくないから。 「今日は一緒にいられる?」 「ああ、一緒だよ。バレンタインだもんな」 「そのために帰ってきたのかい?」 オラクルが苦笑するとオラトリオはシグナルを抱っこしたままふんぞり返った。 「おまえ、バレンタインは一大イベントだぞ? いなくてどーすんだよ」 なーねーと言い合う二人を見てエモーションは微笑み、オラクルとコードはげんなりと笑う。 「じゃあ、シグナル連れて行きまーす」 オラトリオはシグナルをひょいと抱き上げるとそのまま光の柱になって消えていった。 「あーあ、あのお二人は本当に幸せそうですわね」 エモーションの言葉にコードだけがむっつりと不機嫌そうになった。 オラトリオに抱き上げられたまま電脳空間を移動したシグナルは身動きひとつせずにじっとしていた。 「さてシグナルちゃん、どこに行こうか」 「どこにも行かなくていいよ、オラトリオ。ゆっくり休んだらいいのに」 「んー、休むったってねぇ…」 元来が仕事の虫であるオラトリオには休むと言う概念は希薄だ。でもシグナルが心配そうに自分を見つめているのに気がついてオラトリオはやむなく自身が構築した個人空間に行くことにした。 「とーちゃーっく」 「もう降ろしてよ、オラトリオ」 「ああ、ごめんごめん」 シグナルはようやくオラトリオから解放してもらい、架空の大地に降り立った。 オラトリオが金の鍵をかざすとそこにベージュのドアが現れた。入り口はオラトリオだけに反応するプログラムで構成されている。たとえシグナルが触れても攻撃はされないもののドアは何の反応も示さないだろう。 「ささ、どうぞ」 「おじゃまします」 まだ他人行儀な反応に苦笑しながらオラトリオは後ろ手でゆっくりドアを閉めた。 「じゃあ、シグナルが休めって言ったからちょっと休もうかね」 「うん、私大人しくしてるからって…やだ、オラトリオ?」 シグナルはぎゅっと身を竦めた。オラトリオが背後から自分を抱きしめ、服の上から乳房を弄っているのだ。ふっくらと豊かな乳房は決して小さいほうではないがオラトリオの手にはすっぽりと収まってしまう。彼はシグナルの香りを堪能しながら体を撫で回している。 「やんっ、寝るんじゃなかったの?」 「寝るよ。シグナルちゃんも一緒にな」 「え?」 状況をうまく認識できないままシグナルはベッドの上に投げ出された。 「きゃあっ、ちょっと、重たいよ」 「シグナル」 もふもふと動いていたシグナルは呼びかけにはっとした。彼が自分を呼び捨てにするときは真剣な時なのだ。 「……オラトリオ」 「ずっと、会いたかった。寂しい思いをさせてるんじゃないかって、心配だった」 「寂しくないもん、みんないるから…」 オラトリオの体の下で、シグナルは彼の頬に手を添えた。 「本当のこと言ってみ? お前の本音が聞きたい」 「本当のこと?」 「ああ。俺がいなくて本当に寂しくなかったのか?」 僅かに閉ざしていた小さな箱の鍵はオラトリオが持っていた。開けてもいいのだと許されたとたん、シグナルはオラトリオの首筋に抱きついた。 「…寂しかったの。本当は私だって…ずっと、ずっと会いたかったの」 「でもわがままは言わないって決めてたから、と」 シグナルはこっくりと頷いた。 「いっつも思うけどシグナルは優しいよな」 「それしか…オラトリオにはそんなことしかしてあげられないもん…」 菫紫色の瞳が穏やかに彼女を見つめていた。 そばにはいられないけど、まるでいつも一緒にいるかのように思いあい、愛しあう。 「あのね、オラトリオ」 「ん?」 「先にチョコレートを…」 「後でいい。先にシグナルちゃんをいただくよ。俺はシグナルちゃんより甘くておいしいチョコは知らないよ」 「やっ…んんっ」 オラトリオはシグナルの首筋に口づけながら黒のアンダーをたくし上げた。ふっくらと熟れた乳房がオラトリオの手の中で形を変える。 「んっ…やっ、あっ」 薄く開いた口に舌を差し入れ、絡めあう。指先はシグナルの乳房をくりくりと転がした。声にならない嬌声が既に上がり始めている。 「そんなに寂しかったのか。だったら丹念に可愛がってやらないとな」 「オラトリオ…」 シグナルの囁きにオラトリオも体を熱くした。求め合う気持ちは二人とも同じなのだ。 冷却用のコートもその下の赤い軍服も脱ぎ捨て、堅い青年の体がシグナルの柔肌と触れた。 「あ…」 「…服を脱ぐ手間も惜しいくらいだけど、これじゃ先には進めないからな」 オラトリオはシグナルのジャケットを肩から抜き、アンダーにも手をかけて脱がせた。ふるんと揺れる乳房は16歳の少女という体に程よい質量を持っている。長い髪がふわっと柔らかな曲線を描いて彼女の体を彩った。一糸まとわぬその姿を自分だけが独占できる喜びにオラトリオは震えている。 「綺麗だ」 「オラトリオ…私…」 シグナルの手はオラトリオの胸に引き寄せられるように触れていた。 「オラトリオのこの胸が好き。あったかくって…オラトリオの心がここにある?」 オラトリオは小さく笑った。 「ああ、ここに」 添えられた手が重なる、心と心も。 オラトリオはシグナルをぎゅっと抱きしめた。シグナルも届かないながらも背中に手を回す。触れ合う唇から漏れるのは甘い吐息と言葉だけだった。 「オラトリオ…あんっ…」 彼の手が再びシグナルの乳房を揉みし抱いた。それでもシグナルは為されるがままに体を開く。 膝の上に向かい合うように抱き上げられたシグナルはオラトリオの頭を抱くようにしてしがみついている。オラトリオはシグナルの乳首を吸い上げているのだ。ちゅくちゅくと音を立てながら吸われ、背中から腰を撫でられる。びりびりとした感覚が彼女の体を駆け抜けた。 「ひゃうっ…」 促されるままにシグナルはいつの間にかオラトリオの片足の間に膝立ちになっていた。 「あっ…」 「もうこんなにしてるのか…」 尻のラインから忍び込んできた指が後孔を掠めて陰唇にたどり着いた。くちゅ、と水音を立てるほどに濡れた女の部分にオラトリオがすっと指で広げた。 「はうっ…んっ」 「お、オラトリオ…ぉ」 「もうこんなにして…」 「だって気持ちいいんだもん…」 潤んだ瞳と紅潮した肌がシグナルの性感を示していた。 広げた陰唇を少し強く閉じるとそこから透明な液がこぼれてきた。オラトリオの指が体液で濡れる。 「いっ、痛いよ」 「ごめんごめん。じゃあ寝て。優しく可愛がってやるから」 そういうとオラトリオはくずれるように倒れこんできたシグナルに口づけ、そのままそっと横たえた。 紫色の長い髪はさらりと流れてベッドの上に広がった。 「…花みたいだな」 一筋掬って口づける。穏やかな微笑みの向こう側にオラトリオはいつだって爆弾を抱えているのだ。 ――いつ消えるとも知れぬ、儚い存在 シグナルはオラトリオをじっと見つめていた。 「なんだ?」 彼女の視線に気がついたオラトリオが自身の髪をなで上げた。少し長い前髪が先ほどまでの行為で乱れていたのだ。 それまでの思考をかき消すように、彼女は首を横に振った。 「オラトリオって、やっぱりかっこいいなあって思って」 「嬉しいこと言ってくれるね」 そういうとオラトリオはシグナルの足にそっと手をかけ、開いた。そのまま持ち上げて足首に小さく口づける。細く白いこの足で彼女はしっかりと立って自分を支えていてくれる、そう思うだけでも彼女のすべてが愛しいと思うのだ。 オラトリオの舌と唇はつうっと彼女の脚を舐め、そのまままっすぐしとどに濡れる女陰を目指した。 ぷつっと立ち上がって赤い陰核を舌先でつつくとシグナルの体がびくりと震えた。 「あ…」 ちろちろと動く舌先がシグナルを執拗に、でも優しく愛撫した。 「ああんっ、やっ…オラトリオっ…」 熱く火照る体にオラトリオの刺激だけが走る。快感に震えるシグナルの体は少女のものでありながら、その幼さゆえにひどく淫猥に見えた。 オラトリオは唇を離すと、シグナルの膣に指を差し入れた。シグナルはひっと呻いて体を仰け反らせた。シグナルに痛みはなかったが太い指を二本入れられてかき回されるとひどく身を捩った。 「んふっ、くあああっ…あんっ、やあっ!!」 ぐちゅぐちゅと激しい水音を立てる女陰にオラトリオは満足そうに微笑んだ。一度引き抜いて、濡れた指を舐める。少し苦かった。 「可愛いもんだね、全く」 オラトリオはシグナルの口元にその指を伸ばした。シグナルは小さな舌で彼の指を舐めた。 「んあ…」 「そろそろ本番いきましょうかね」 「うん…」 もう何も考えられないといったように呆けているシグナルを抱き上げて、オラトリオは自分の膝に彼女を抱き上げた。 立ち上がった男根に導くとそのままするっと侵入を果たす。 「くあっ!」 「全部入っちゃったみたいだな」 「んんん〜〜」 自身の体重のせいでオラトリオが深くまで侵入してくる。僅かに逃げようとするものの震えて力の入らない体にそれは無駄な抵抗といえた。 「あっ…ああっ…」 胎内をえぐるようにかき乱すオラトリオの男根は硬くて熱かった。苦しくてたまらないはずなのに気持ちよくて仕方がないのはやはり彼を求めていた体なのだろうか。汗で湿った肌がオラトリオの胸に密着する。形よい乳房の先端が擦れた。 「んぁあ…」 シグナルはオラトリオの首にしがみついたままで腰を揺らした。なおも濡れる接合部はより激しく擦れあい、粘質の液でどろどろになっている。 「んやっ、やあっ…も、もう…くあっ!!」 すすり泣くような嬌声が甘い吐息とともにオラトリオの耳にかかった。 「ちょっ、たまんないことしてくれるね」 「え…?」 そう言ったオラトリオの指がシグナルの後孔に触れた。 「やっ、だめっ…そこはぁっ…んっ…」 「大丈夫、ちょっと指入れるだけだよ」 オラトリオはしとどに濡れた接合部に指を這わせ、先端を濡らす。触れたことでシグナルの膣がきゅっと締まり、オラトリオ自身をも締め付ける。 「んっ…」 「やんっ…」 オラトリオの指がするっとシグナルの尻穴を弄った。深く押し入らずにこちょこちょと入り口をくすぐる。 「やんっ、だめっ…ぁ…ふうっ…くんっ…ひゃふっ…」 膣と、浅いとはいえ尻穴を同時に刺激されてシグナルはがくがくと体を震わせた。腰を上げると秘裂の中のオラトリオが抜けそうになる。 「もういやあっ!!」 「いやじゃないだろ、イイって言えよ。じゃないとイカせてやらないぞ?」 そういうとオラトリオはシグナルの舌に吸い付いた。 「んむっ…んっ、んん〜〜〜〜」 なおも腰をつかまれたまま揺さぶられ、シグナルはあっという間に絶頂に達する。 「あ、ああ…」 「シグナル…っ…」 「いっ、イイっ!! いいよぉ…あん、ああん!!」 シグナルの喘ぎ声にオラトリオは満足そうに笑った。 「いい子だ、俺と一緒にいこう」 ぐい、とオラトリオが突き上げてきた。シグナルは大きく目を見開く。上り詰めたすべての快感が電脳をぎゅいっと駆け抜けた。 「…!! ああああああっ!!」 「くっ…」 オラトリオの男根がびくびくと揺れて中に精液を吐き出しているのが分かった。引き抜けばどろりとした白濁液が溢れ出してくる。 全身で荒く息をしながら、シグナルはオラトリオにしっかりと抱きついた。 「オラトリオぉ…」 「大丈夫?」 シグナルは小さく頷いた。汗ばんだ背中に長い髪が張り付いている。それを丁寧にはがしてやりながらオラトリオはそっと口づけた。 「最高のバレンタインだよ、シグナル」 「チョコレートも忘れないでもらってね」 「分かってる」 オラトリオの囁きにシグナルは安心したのかゆるりと目を閉じた。どうやら眠ってしまったらしい。 「あらら。お楽しみはこれからだってのに…」 すやすやと眠るシグナルの寝顔を見つめながらオラトリオはその額に口づける。 「…ありがとう、シグナル」 愛してくれる人がいる限り、命の限り生きていける シグナルが目を覚ますとオラトリオはもうそこにいなかった。多分隣のリビングにいるんだろうと彼女はシーツをくるくるとまきつけた。 「オラトリオ?」 「よう、お目覚めかい?」 シグナルはこっくり頷いた。 「もう行っちゃうの?」 「ごめんな、時間なんだ」 オラトリオは寂しそうに微笑んだ。短い逢瀬を果たそうとわざわざ戻ってきてくれたのに自分はすっかり寝入っていてその時間を潰してしまったらしい。 「ごめんなさい、オラトリオ…私…」 そういってうつむいたシグナルを大きなコートでばっと包むオラトリオは、それでも幸せそうに笑う。 「いいんだ。シグナルちゃんと一緒にいられたから。それだけで俺は満足だよ」 「でも私…」 白い布とベージュのコートに抱かれてシグナルはぎゅっと目を閉じた。 ――やっぱり私には何も出来ないのかな 「…愛してる。こう言えばいいんだよな?」 「オラトリオ…」 シグナルはゆっくり顔を上げた。オラトリオの瞳は穏やかに自分を見つめているのに気がついて何も言えなかった。 「愛してるって言葉がシグナルちゃんを安心させるなら、俺は何度でも言ってあげるよ」 「オラトリオ…っ…」 じわっと熱くなる目尻に我慢しろと言い聞かせ、シグナルはにっこりと笑った。 「ありがとう、オラトリオ。お仕事頑張ってね。私…私…」 「シグナル…」 「いい子で待ってるから」 オラトリオは屈んで、シグナルは背伸びして――そう、これでちょうどいい。ふたりはゆっくりと唇を合わせた。 「…行ってくるよ」 「いってらっしゃい」 今度はいつ会えるとは、お互いに聞かなかった。待たせていると思わせれば会えない時が辛すぎる。 「じゃあな」 「あ、待って」 出て行こうとしたオラトリオを、シグナルは慌てて呼び止めた。 「もう、チョコレート忘れないでって言ったのに」 「こいつは失敬、いただきます」 両手で丁寧に押し戴いて、オラトリオはそれを大事に胸ポケットにしまった。 「今度こそ、いってきます」 「気をつけてね」 オラトリオは空間から出て行くとそのまま光の柱になって消えていった。残されたシグナルはほうと息を吐く。 「…行っちゃった」 こうして見送るのはいつものこととは言え、迫ってくる新たな寂しさは拭えなかった。 でも体に残る赤い痕はオラトリオの印、シグナルだけにくれるもの。その痕をそっとなぞり、シグナルは寂しさを越える至福を感じるのだ。 シグナルはくるりと方向を変えてベッドのそばまで戻った。脱ぎ散らかした服を集め、シャワーを浴びる。 身なりをきちんと整えてから空間を出ると、そこはただのネオン格子に戻った。 寂しいけど、寂しくない そばにいるわけじゃないけど心はずっとそばにいるから キラキラと光を弾きながら また会える日まで―― ≪終≫ ≪ひゃっほーい≫ バレンタインネタのはずだったのにエロ。エロいです…よね? エロいかな。普通だ、ぬるい。 んひゃー。書きながらどうやろうかと、『これなんでエロゲ?』って感じでエロゲ参照しました_| ̄|○ オラトリオ兄さんエロいです。それ以上にシグナルちゃんがエロいのか、この魔性め!!wwwwww あ、いや、石投げないでwwww お願いだからwwwww |