薄紅色の可愛い君と




子供のままでいられればよかった
でも子供のままでいたらきっと死んでいた



城戸光政がたくさんの女性に生ませた100人の子供たちの中には当然女の子もいた。その子供たちは6歳か7歳になると聖闘士になるため例外なく世界各地へ修行に出された。
そうして6年後、聖闘士となって戻ってきたのは10人。数人いた女の子の中で戻ってきたのはたったの一人だけ。



その、たった一人だけ戻ってきた少女は今、近所のスーパーで夕食の材料を吟味していた。
「今日はハンバーグにしよう。星矢が食べたがってたし」

そういうと少女はカートを押しながら生肉売り場へと向かう。特売の1キロ580円の合びき肉をはっしと掴んで御機嫌だ。
それから野菜売り場と、調味料のコーナーを回り、たまごの特売時間を待つ。
まだ13、4の少女はそのほそっこい体と俊足を生かして難なくたまごを入手した。
「よかったー、卵切らしてたんだよねー」
まさか彼女が特売コーナーのそばにいた奥様よりも早くたまごを手にしていたことに誰も気づいていない。日常生活で彼女はあまりにも普通に暮らしすぎていた。
「キャベツとにんじんはまだあったよね…」
メモと買い物を見比べて一つ一つ確認していく。
紫龍は中国で暮らしていただけあってスーパーの烏龍茶は味が違うと言う。
氷河はシチューの固形ルーを認めない。
星矢は味にこだわりはないらしいが、ピーマンを食べない。
城戸邸別館を切り盛りする瞬にとって食事の支度はいちばんの重労働だ。それでもなんとなく星矢の希望を通してしまうのは彼が弟のように可愛いからだと思う。ピーマン以外ならなんでもおいしく食べてくれるのも嬉しい。
「だいたい氷河は家のこと何も手伝ってくれないのにご飯にはうるさいんだから…」
瞬は買い物を確認するとうんと頷いた。
「全部あるよね」
お肉に野菜に調味料。必要なものは全部買った。
そしてふと、上を見る。棚の上に茶色いココアの瓶。
春近いとはいえ、まだまだ寒い日が続く昨今、ココアは恋しい。
瞬は手を伸ばした。
「くっ…届かないっ…」
桜色の爪が瓶に僅かに触れている。けれど掴む事が出来ない。
「安いのにっ…お買い得なのにっ…」
つま先を伸ばしても届かない。店員さんを呼ぼうにも運悪く近くを歩いていない。
瞬は踵をついた。
「ジャンプするのは簡単だけど…」
ありえないような跳躍と手の速さを誰かに見られては面倒だ。
聖闘士として生きてきた彼女にとって普通の生活が時として非常に不便なこともある。
どうしよう。このまま諦めるのも悔しくて瞬は再度背伸びを試みる。
「もう少しっ…もう少しっ…」
「これが欲しいのか?」
深みのある声とともに骨ばった男の手が伸びてきた。その手は瓶をしっかり掴んで、瞬の前に差し出した。
「あ、ありがとうございます…」
礼を言って受け取り、顔を上げる。
目の前にいた人に、瞬はあっと声を上げた。
程よい筋肉に覆われた肢体、太陽のコロナを思わせる金の髪、秘めた海青の眸。
年のころは28、行って30。
「カノン!」
瞬が花の様に微笑んだ。
双子座の聖闘士であるカノンは同じ双子座の聖闘士であるサガの弟だ。
「どうしたんです、なんでここに…」
「いや、ちょっと…」
急に周囲がざわめき始めたのに気がついて、瞬とカノンは慌てて店を出た。
なんのことはない、どう見ても中学生くらいの瞬がかなり大きな外国人に話しかけられていたのを不審に思われただけの事である。
わしゃわしゃと鳴るビニール袋を両手に持って、隣にカノンを連れて、瞬は城戸邸への道を戻っていた。
道の左右には民家が続き、庭先の梅がちらほらと遅く咲いている。
「よく私のいた場所が分かりましたね」
「ああ、それは小宇宙を辿って…いやにはっきり感じたんだが、何かあったのか?」
カノンの問いに瞬は苦笑して見せた。
「いえ、星矢にも言われたんですけどね…無自覚みたいなんですよ」
「…何が?」
「買い物中に小宇宙燃やしてるみたいで…気をつけなくちゃいけないんですけどなかなか直らなくて…」
「そうか…」
カノンはそれ以上続けなかった。ただ、瞬一人に荷物を持たせているのは男としてどうかと思う。
「半分、持ってやろう」
そう言って半ば強引に彼女の手から荷物を奪い、中身を確認するとそっと提げた。
「いいんですか? 私だって聖闘士だからこれくらい重くもなんともないんですよ?」
「聖闘士といっても君は女性だ」
カノンの優しいテノールが瞬の胸にすっと染み込んだ。
こういう女の子扱いならなんとなく気持ちがいいことに最近気がついた。
「優しいんですね」
「そうでもないさ」
カノンの一歩が瞬の一歩半。
「慣れてるんですね」
「ん?」
「お買い物ですよ。たまごを袋のいちばん上に入れる人、私の知る限りでは二人目です」
「その、一人目は?」
「紫龍です」
彼の名が出て、カノンは納得できた。天秤座の老師の弟子である彼は思慮深く、現状を冷静に観察し、決断で来る男だ。ただシュラの話によると聖衣をなんだと思っているのか、ピンチになるとやたら脱ぐらしい。
「いつもお一人なんですか?」
「ああ、サガは教皇の間に在住だ。私は双児宮に一人で暮らしている」
「それでお買い物慣れてるんですね。私も最近ようやく慣れてきたんです」
「というと?」
カノンと瞬は並んで信号を待った。
「沙織さんに『この辺で食用の蛇や蠍を安く売っているお店を知らないですか?』って聞いたらびっくりされちゃって」
「蛇? 蠍?」
可愛い顔をして何を言い出すのか。カノンにはそのときのアテナ沙織の顔が容易に想像できた。
「私の修業地のアンドロメダ島の主食だったんです。貴重なたんぱく質で…お魚は10日に一度出れば御の字でしたよ。麦なんかご馳走でした」
カノンは流石に驚いた。聖闘士の修業は苛烈を極めるが場所によっては食事に困る事はないと聞く。
例えば中国の五老峰、例えばギリシア聖域近辺。
アンドロメダ島とデスクイーン島は草木も生えない不毛の地。
この細腕の少女はそんな苛酷な環境を生き抜いても笑顔を絶やす事はない。
「しばらくは普通の暮らしに馴染むのが大変で…料理も出来なかったんですけど、今はちゃんとできるんですよ」
「そうなのか」
「夕飯、食べていかれますよね?」
「蛇の丸焼きでなければ」
「いじわるなこと言わないでください、今日はハンバーグだって決めてるんです」
ちょっとむくれた瞬をはじめて見た、とカノンは思った。



「ただいまー」
「お帰り〜。買い物ご苦労だったな」
出迎えてくれたのは先ほど話題に出た紫龍だった。長い黒髪が穏やかに背を流れている。
「星矢が腹減ったとダダを捏ねている」
「じゃあ急いで作らなくちゃ」
そういうと瞬は自分の荷物を紫龍に渡し、カノンの荷物を受け取った。
「ありがとうございました。とても助かりました」
「いや、たいしたことじゃない」
「お茶入れますから、リビングにどうぞ」
「すまない…」
カノンは瞬と紫龍の後をついていった。
キッチンに立つのは主に瞬だが、紫龍も料理は好きらしく、よく手伝ってくれる。
「あ、ところでカノンってば何しにきたんだろう…」
さっきは何も聞かなかったからと、瞬は紫龍を見た。
「知ってる?」
「いや、その…」
彼にしては珍しく口を濁すので不審に思った瞬は彼の出方を待った。
「どうかしたの?」
「いや、その…なんだ…家出…らしいんだ…」
「家出えっ!?」
そう叫んだ瞬の口を紫龍が慌てて塞いだ。ふたりしてちらとリビングを見ると、カノンは星矢を猫のようにつるし上げている最中だった。どうやら遊んでいるらしい。
「家出って…なんでまた」
「俺が知るか。ただ、シュラに聞いたんだが」
「連絡取ってるんだ」
「向こうからカノンが来ていないかと問い合わせがあったんだ」
シュラと紫龍のことは瞬もよく知っている。紫龍の腕に聖剣を授けてくれた黄金聖闘士が山羊座のシュラだ。
アフロディーテとシュラの会話から察するとどうやら紫龍はシュラに思われている、らしい。
「それで、なんて?」
「行くところなんて決まっているだろうからもし来たならしばらく面倒を見て欲しいと…」
28歳で、しかも黄金聖闘士であるカノンが家出を決行するなんて、聖域で何があったんだろうと、青銅聖闘士たちはただ困惑するのであった。
「それより瞬、そろそろ日没じゃないのか?」
紫龍が顔を上げ、窓の外を見る。春らしくなってきたのは気候だけではない、日没がだんだん遅くなる事でも季節の移ろいは分かるものだ。
「まだ大丈夫だよ。日が完全に落ちないとあの人は出てこないの。そういう約束だもん」
言いながら瞬は昨日の夜のことを思い出していた。
彼女の恋人である冥王ハーデスは日没から日の出まで地上に留まり、瞬を口説いて妻にしてみせると言い切った。その約束を果たし、彼は夜毎にやってくる。
「余はこの地域の春や夏は嫌いだ」
冥王はそういってむくれて見せた。地域限定なのも微妙に気になる。
なぜかと問えば彼は空を睨む。
「日の入りから日の出までが短すぎる」
東京の場合だと、例えば1月は14時間が夜だが、半年後の7月では9時間になってしまう。
神である彼にとって5時間などほんの些細な時間に過ぎないはずなのにそれでも彼は惜しむのだ。
夜のない白夜の北欧などに行ったら彼はどうするのか、ちょっと気になった瞬だったがそれはかわいそうなので試さない事にした。
スープの煮える優しい香りがして、瞬は目を細めた。
「星矢」
呼びかけると、つるし猫の星矢はカノンの手を離れて瞬のもとにやってきた。
「なに?」
「そろそろご飯にするから、兄さんと氷河呼んできて」
「寝てたら?」
「兄さんは起こして、氷河は放置」
星矢は分かったと呟くとそのままだーっと2階へあがっていった。そして一人で戻ってきた。
「呼んできた」
「…兄さんは?」
「すぐ来るって。氷河は寝てた」
「…じゃあ要らないんだ」
瞬は氷河の茶碗を出すのをやめた。
「えっと、カノンはお箸平気ですか?」
「いや、箸はちょっと…」
ギリシア暮らしが長い彼に箸は流石に無理だったようで、瞬は彼の分だけご飯を皿に盛り、ナイフとフォークを出した。
「いっただっきまーす」
「召し上がれ」
瞬がそういう前に星矢はハンバーグをおかずにご飯をかき込んでいる。
「慌てて食べなくてもおかわりはちゃんとあるよ、星矢」
器用にピーマンを避ける星矢の食べっぷりは気持ちのいいくらいだ。
「俺さー、ピーマン嫌いだって言ったじゃん」
「だからパプリカにしたの。これはピーマンと違ってあんまり苦くないから。ほら、あーん」
「あーん」
向かいに座っていた瞬の箸からパプリカを食べた星矢はピーマン独特の苦味に構えていたが、彼女の言葉どおりあまり苦くなかった。
「俺、これなら食べられるかも」
「そう? よかった」
星矢がぱくぱくと色鮮やかなパプリカを平らげるのを見て、カノンは覚悟を決めた。
黄金聖闘士で、大のおとな。瞬に食べさせてもらおうなどと甘い夢は捨てて。
今日こそブロッコリーを克服しよう、と。
「ところで…」
「ん?」
星矢の牛乳を取りに席を立っていた瞬が戻ってきて、カノンに反応した。
「…お前たちは、あれをなんとも思わないのか?」
カノンの示すあれに目をやって、一同笑みを浮かべる。そして異口同音にもう慣れた、と言った。
「気にしてたらメシ食えないもん」
「無害だしな」
「大人しいものですよ」
食後はコーヒーでいいかと尋ねられたカノンはああ、とだけ答えた。
カノンの背後のリビング、そのソファに冥王ハーデスが鎮座ましましている。



食後も瞬は忙しい。
食器を片付け、それが終わるとのっそり起きてくるかもしれない氷河の分にラップをかけて冷蔵庫に入れ、一度キッチンを離れてお風呂の加減を見て、それから明日の朝食の下ごしらえに入る。
米を研ぎ、タイマーをセットする。
瞬がこれらの作業をしている間、カノンはカウンター式のキッチンで働く彼女を眺めていた。
手伝おうと言ったのだが今日はお客なのだから、と丁寧に断られたため、カノンは大人しく座っている。
とてもではないがリビングに足を向ける気にはならなかった。
ただし星矢は怖いもの知らずにもハーデスの横に座っている。
「なあ、ハーデス」
「なんだ、ペガサス」
「瞬ってさ、かわいいよな」
「気が合うな、ペガサス。だが瞬はお前にはやらぬぞ。そういう意味で余とお前は敵だ」
ふたりの視線が火花を放ってぶつかったが、それ以上は何も起きなかった。
喧嘩しちゃダメ、と瞬に言われているからである。
聖闘士最勇のペガサスと、冥神ハーデスと。
彼らがぶつかれば城戸邸別館が吹っ飛ぶだけではすまない。
「ふたりが大人しいと家事もはかどります」
なんて言っている瞬が、実は聖闘士最強かもしれない。



「じゃあ、お風呂に入ってきますね」
「うむ、早くな」
お風呂=沐浴の公式が出来上がったハーデスはこっくり頷いた。
リビングにカノンとハーデスという、不安な二人が残される。
「大丈夫かなー…」
女の子の例に漏れず長風呂を自負する瞬は一抹の不安を抱きながら風呂へ向かった。
長い沈黙が流れているそのリビングで先に仕掛けたのはハーデスだった。
「そこな男」
カノンの金の髪がざわりと揺れた。
「…なんだ」
「余は、お前の小宇宙を知っている…瞬の唇に残っていた僅かな小宇宙…お前だったか」
「だとしたら、なんだ?」
ハーデスの肉体から紅く蒼く揺らめく深紫の小宇宙が漂う。
深遠なる闇に輝石の光を宿す瞳が伏せられた。
『殺しちゃダメですよ』という瞬の声が彼の脳裏をよぎる。
「…殺しはせぬ、瞬との約束だ。余以外に瞬を望むものがあれば、余は正々堂々と戦う」
お前はどうする、と問われ、カノンはフッと笑った。
「正々堂々か」
「そうだ。正々堂々と、じわじわお前から瞬を奪ってやる。手始めに…今宵瞬を抱いて寝る事としよう」
「なにっ…!」
カノンは思わず腰を浮かした。
実はハーデスと瞬はまだそういった関係ではない。身を奪う事はしないという約束があるため、ハーデスは瞬と結婚するか、あるいは結婚前でも彼女が是と言わない限り契りを結ぶ事はないのだ。
この場合の『抱く』は性交ではなく単なる抱擁を示しているわけだが敵の動揺を誘うには十分すぎたようだ。
(うろたえるがいい、小僧…)
ハーデスは内心ほくそえんだ。
そこに瞬がやってきた。亜麻色の髪がぬれていて、肌はほんのり上気して薄紅色だ。
「もう寝ますからここ電気消しちゃいますけど」
「ああ、構わないよ」
「余も」
二人はほとんど同時に席を立った。
ハーデスはこれ見よがしに瞬の肩を抱き、早く行こうと急かす。
「それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみ」
カノンはハーデスの目の前で、瞬の頬に口づけた。
今日の勝負は五分と五分。



「瞬」
「なんですか?」
短く呼びかけられる声がいつもより力強かった。
「そなたは、あの男をどう思っている?」
「あの男って、カノンのことですか?」
ハーデスはこっくり頷いた。瞬は彼の腕の中で上目遣いに思いを巡らせた。
「そうですね、聖闘士として尊敬できる人だと思いますよ。戦いの哲学なんかもきちんとしてる方だし…強い人ですよ」
「そうではなくてだな」
「なんです?」
「男として…恋人としてはどうかと聞いておる」
その問いの答えを、瞬は未だに持っていなかった。
「まだ、分かりません…」
「分からない?」
瞬はハーデスをちらとみて、それからこっくり頷いた。
「言いましたよね、私は恋を知らないで生きてきたんだって。好きな人はいっぱいいます。兄さんも、星矢も紫龍も氷河も沙織さんも…ほかにもいっぱい。もちろんあなたの事も好きですよ。でも恋人として愛してるかって言われるとそれはまだ…」
「…そうであったな。だから今、余とそなたは結婚を前提に交際しているわけだしな」
瞬はにこりと笑った。
「ところでこれ、どうしたんです?」
自室のベッドサイドに見慣れない花が生けられているのに気がついた瞬が彼に問う。
ハーデスはその薄紅色の花を一瞥した。
「余が持ってきた。第二獄のはずれの花畑に咲いていた。そなたによく似た薄紅色の可愛い花だと思ってな」
「自分で摘んできたんですか?」
すると彼は満面の笑みを浮かべる。
「そうだ、そなたのために余が自ら摘んできた」
「そういえば、あなたからの初めての贈り物ですね」
活けられた花に顔を埋め、瞬は幸せそうに呟いた。
彼女には薄紅色がよく似合う。
ハーデスの横に戻り、彼に笑いかける。
「ありがとうございます、とっても嬉しいです」
「うん、喜んでもらえると余も嬉しい…」
ハーデスは瞬を抱き寄せ、その頬に口づけた。亜麻色の髪が頬をくすぐり、ほんのりとした温かさが伝わってくる。
彼は冥府での出来事を思い出していた。
突然『瞬のもとを訪れる時、手ぶらっていうのはどうか』という話題になった。
毎日贈る必要はない、あまり精神的に重くなくて、それでいて女性が喜ぶものを、とパンドラが教えてくれたのだがそれがなんなのかハーデスには分からなかった。
とりあえず最初は花だ、ということになり、第二獄で摘んできた。
「そうだ、あの花の名前と花言葉、知ってますか?」
「いいや、知らぬ。花言葉とはなんだ」
「花言葉って言うのは、花の色や形から連想できる言葉を花に与えたものなんです」
それで、口には出来ぬ思いを花に託したのだと瞬は教えた。
「あの花は、なんだ?」
「花の名前はシザンサス。花言葉は…“あなたといっしょに”」
「“あなたといっしょに”…か」
偶然目に付いた薄紅色の花にそんな意味があったとは知らずに摘んだハーデスはその言葉に従うかのように瞬を強く抱きしめた。
あなたといっしょにいたい――もっと、ずっと。



そして翌朝。
「やっぱり余は、春は好かん…」
「日が昇るの、早くなりましたもんね…」
これから先、どんどん昼が長くなる。彼の不機嫌が容易に想像できて瞬は思わず苦笑した。
「何がおかしい」
「いいえ、可愛いなあと思って」
瞬がなにをして可愛いと言っているのかはわからなかったが、とりあえず瞬の笑顔は可愛いと思った。
帰ろうとして、ふと足を止める。ハーデスは瞬のとなりに立っているカノンを一瞥した。
「そこな男」
「黄金聖闘士、双子座のカノンだ。覚えろ」
この鳥頭、とは言わず。
ただそれを感じ取ったのか、ハーデスはつかつかと彼に近づいた。
「なんだ?」
ハーデスがカノンの目の前までやってくる。ごくごく近づいて何やら耳打ちしているようだが瞬の感覚すべてをもってしても感じる事ができなかった。
ハーデスが離れるとカノンの顔色がさーっと悪くなる。
「何言ったんです?」
「瞬が可愛いと言っただけだ。じゃあ、余は帰る。また夜に来るから、浮気はならんぞ」
「わかってます」
瞬の声に安心したのか、ハーデスはにこやかに笑って薄闇に溶けた。
「カノン、大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか…」
そういうとカノンはよろよろとリビングのソファに腰を下ろした。
『余は瞬の身体を隅々まで知っておる』
冥王の言葉がリフレイン。カノンの脳内でまだ幼い性をさらけ出し、ハーデスの体の下で喜びに震える瞬が浮かんできた。
「いやだっ…絶対にっ…」
カノンは瞬とハーデスの間に起こったことを正しく知らない。
確かにハーデスは瞬の体を隅々まで知っている。それは彼が瞬を今期の憑代として選び、憑依したためである。瞬も彼を倒すために我が身を犠牲にする覚悟をし、受け入れた。
一時、瞬は完全にハーデスに乗っ取られている。
ゆえに冥王は瞬の体を隅々まで知っているのだ、そこに微塵の間違いもない。
要するにカノンの妄想でしかない。いや、悪夢と言うべきか。
「カノン」
「うわあっ!!」
背後から近づいてきた瞬はカノンの声にびっくりして思わず引いた。聖闘士なのに気配に気がつかないほど具合でも悪いのだろうか。
「大丈夫ですか? サガに連絡して迎えに」
「それはイヤだ」
カノンはそれだけはきっぱりと言った。家出するほど何があったのか知りたいのだが話したがらないのでそっとしておく事にした。とりあえず朝ごはんのことだけ確認したかった。



「いっただっきまーす」
星矢の元気のいい声が聞こえてきて、ご飯をかき込む音がする。
「ほら星矢、落ち着いて。ご飯は逃げないから」
「だっておいしいもん」
「おなかがすいてれば何でも美味しいだろうに」
そういって瞬は星矢の頬についていたご飯粒を取って食べた。その瞬の横で紫龍が味噌汁を啜っている。
ほのぼのとした朝食の席に突然の来訪者。
「出て来い! 紫龍!! 俺と勝負しろ!!」
瞬と紫龍は味噌汁を吹いた。朝っぱらから何事だろう、でも食事はちゃんと食べてから外に出ると、なぜか蟹座のデスマスクが黄金聖衣を着て仁王立ちしていた。
「朝っぱらからなんなんだ、デスマスク…」
「紫龍!! てめぇ…シュラに手ぇ出しやがったな!!」
彼の物言いに紫龍は急に頭痛を覚えた。確かにシュラとは親交がある。彼女は義に熱い紫龍を男と見込んで聖剣を授けてくれたり、技を磨きたいという彼の修業につきあってくれたりしている。いわば師と弟子のようなものだがデスマスクの目にはそうは映らなかったらしい。
「紫龍ったら…」
「だから違う!!」
「シュラは俺が目ぇつけてんだ!! お前みたいなガキに取られてたまるか!!」
「だから違うと言っているだろう! シュラとはなんでもない!!」
言いながら紫龍も諦めて構えた。
「聖闘士同士の私闘って禁じられてませんでしたっけ?」
のんきに紫龍を応援する星矢の横で瞬が今更ながら呟いてみる。カノンがはあっとため息をついた。
「アレに巻き込まれないために逃げてきたのに…」
まさかデスマスクがわざわざここまでやってくるとは思いもしなかった。
「家出じゃなかったんですか?」
「…誰に聞いた?」
「シュラから聞いたっていう紫龍から」
デスマスクが恋人として慕っているのが山羊座のシュラだ。ところが彼女はデスマスクには何の興味もないらしく、徹底的に無視を続けているという。シュラはシュラでうっとうしいと言って愚痴るし、デスマスクはデスマスクでシュラが振り向いてくれないと酒を飲みながら泣き出すしで、聖域の住人はひとり、また一人と巻き込まれるの嫌って別邸へ引きこもった。サガはアフロディーテとともにスウェーデンに行っている。
「教皇不在なんて…いいんですか?」
「俺が知った事じゃない」
それだけ平和という事だろうか、と瞬はぼんやり考えた。
「行くぞ小僧!」
「来い!!」
勝負は一瞬でついた。紫龍の盧山昇龍覇がデスマスクを捉え、一撃のもとに伸した。
「ぎゃー!!」
「勝負あったな」
外に出されたテーブルでのんびり食後のお茶に興じる3人は明らかに紫龍の勝利を確信していた。
ところがデスマスクは立ち上がるようだ。
「しつこいやつ…」
「シュラは絶対渡さないからな!! シュラは俺の女だ!!」
「誰がアンタの女だって!?」
背後から一陣のカマイタチ、デスマスクの頬を薄く削いだ。
「いっ…」
「あ、シュラだ」
カノンにお茶のおかわりを注いでやりながら瞬が呟いた。
シュラは黒髪を短く切りそろえたクールな美人だ。カミュ、アフロディーテと並んで聖域では水の淑女と呼ばれている。
「デスマスク、アンタ…」
「いや、その、これはだな」
シュラの背に黄金の山羊が浮かぶ。シュラはまさに修羅と化し、瞳はただデスマスクに対する憎悪でいっぱいだ。
「問答無用! 死ね!!」
「ぎゃー!! たっ、助けてくれアンドロメダ!!」
「私ですか!?」
デスマスクはわたわたと瞬のところへ逃げてきて、その腰に抱きついた。
カノンの目がギラリと光る。
「青銅に助けを求めるな!! 黄金聖闘士としてのプライドはないのか!!」
カノンはやおら立ち上がるとデスマスクを瞬から引き離し、シュラの前に放った。
「覚悟はいいか、デスマスク」
「シュラはともかく、カノン! お前に何の関係がああああああああ」
「黙れ蟹!! ギャラクシアンエクスプロージョン!!」
「唸れ! エクスカリバー!!」
「ぎいいいいいやああああああああああああああああああああああ」
無念の断末魔を残し、デスマスクは地に伏した。黄金聖闘士二人がかりで粛清されたのではいかなデスマスクでもかなうまい。
これには流石の紫龍も手の出しようがなく、ただ呆然と見守っていた。



雨に降られていないだけいいかもしれないけれど、と思いながら、瞬は庭に転がされたままのデスマスクを心配そうに眺めている。
「そのままにしておけばいいわ、しぶといゴキブリみたいな男だから」
シュラは瞬が淹れてくれた茶を口に含み、唇を湿らせた。
一同、デスマスクを打ち捨ててリビングに戻っている。カノンなどは彼が瞬にどさくさに抱きついたことを怒っていたのか、止めに踏んづけてきていた。
「一体デスマスクと何があったんですか?」
「…私はね、自分より弱い男は嫌いなの。確かにデスマスクと私とアフロディーテはほとんど同時期に聖闘士になったわ。そのころからしつこいの。何度蹴飛ばしても切り刻んでもしつこくって…」
「それでなんで俺が巻きこまれるんだ…」
漆黒の長い髪を揺らし、紫龍が口を挟んだ。シュラの瞳が若き龍を見つめる。
「いや、それがね…せめて紫龍のレベルまで到達しろ、そしたら真剣に勝負してやるって言ったらじゃあ紫龍を倒して来ればいいんだなって…短絡的なのよ、あのカニは」
頬杖をつき、ため息をこぼすシュラに対し紫龍は俺を引き合いに出すな、と心中深く突っ込んだ。
「でも、本当に放っておいていいんですか?」
今や庭を見つめているのは瞬だけだ。デスマスクに対しても優しい彼女にどこか敬意さえ払いたい、とシュラは思った。
だけど、優しさと甘やかすことは違う。
「放っておいていいわ。アイツも紛いなりにも黄金聖闘士、あれしきで死ぬようなら聖闘士なんかやめてしまえばいいわ。気がついたなら伝えて、磨羯宮で待ってるって。今度こそ叩きのめしてやるって」
そう言ってシュラは席を立つ。
「お茶、美味しかったわ」
「シュラ…」
「なに?」
「デスマスクのこと、好きなんですね」
瞬の心配そうな瞳はいつだって深い色をしている――争いを嫌う彼女ならではの色を持って。
シュラはそんな彼女の髪を優しく撫でた。
「多分、嫌いじゃないわ。でも私より強かったら…の話ね」
バカのひとつ覚えの積尸気冥界波で大丈夫だと思っているところがバカすぎる、と思う。
そして、惚れた腫れただけではどうしようもないことがあると知っているから。



シュラが帰った後、瞬はやっぱり放っておけなくてデスマスクをリビングに運び込んだ。
「んあー?」
「よかった、気がつきましたか」
「アンドロメダ…?」
「瞬でいいですよ、デスマスク」
濡らしたタオルで顔の泥を払ってやりながら、瞬はにこりと笑った。
アフロディーテが華やかな美人でシュラやカミュがクールな美女なら、瞬はかわいいに属する。
動かないで、と自分を制する手が柔らかく温かい。
そんな瞬をぼんやり見つめながらデスマスクは思い出す――黄金聖闘士になるための聖域での最後の修行中、怪我をした自分を毒づきながら手当てをしてくれたシュラ。そのときの手も同じように優しかった。
あんまり簡単なことだったけれど、思えばそれがきっかけでシュラに惚れたのは否定しない。
「俺って…情けないな…」
「デスマスク…」
彼はゆっくり起きあがり、瞬が手にしていたタオルを取ると自分で額に当てた。
「惚れた女にさ、いつまでたっても歯が立たねぇ…」
そう言って、苦笑するしかできない。何度挑戦しても蹴り飛ばされ、切り刻まれ、聖域の外に捨てられる。
ほかにも女はいる、でも自分にはシュラしか見えなかった。
「…私はステキだと思いますよ」
「どこが」
「一人の女性をずっと思っていられることって、ステキですよ。それに何度も好きだって言える勇気も」
瞬は深い銀河の瞳を伏せた。
自分はまだ誰にも好きだといってはいない。誰も選べず、誰も選ばず、ただ愛されることに浸って生きているような気がしてならなかった。
誰かを愛すれば、そのことでほかの誰かを傷つけるかもしれない。
優しくて綺麗だけど、臆病で卑怯な思い。
二人の男の求愛から恋を知らないことを理由に逃げているだけの自分に比べたら、デスマスクは潔くて、そして一途だ。
「…頑張ればきっと伝わります。シュラは強い男の人が好きなんですから」
「お前、優しいな…」
「よく言われます」
そう言って瞬が笑ったので、デスマスクもなんとなく微笑んだ。
聖域に帰ったらまっすぐに磨羯宮を目指そう。そして今日こそぎゃふんならぬ『好きだ』と言わせてみせる。
「朝っぱらから悪かったな」
「いいえ、またきてくださいね。今度はシュラと遊びに」
自分より10も年下の少女に励まされても、デスマスクは笑っていた。
彼の良さは、きっとこの立ち直りの早さにある。



恋のかたちは人それぞれ



「シュラ! 今日こそ俺の女になれ!!」
言いながら花束を振り回すバカ男。ああ、花びらが散る。
「阿呆が。花になんの罪がある」
シュラは軽やかに高く舞うとデスマスクの手から花束をもぎ取り、背後から一閃、手刀を食らわせた。
「がっ」
「簡単に後ろを取られるな、聖闘士のくせに」
そしていつものように蹴り飛ばし、切り刻んで捨てる。
これが毎日だ。
手にした花はほんのり薄紅色。名も知らぬが、愛らしい花。
「珍しいな、花なんか…」
だがそれごときで心動かされるシュラではない。デスマスクを処分したあと、彼女は自室に戻りその花を飾った。
「せめてこれくらいは受け取ってやる。もっともっと強くなれ」
地上の平和と、正義と――そして未来のために。



「瞬、俺もそろそろ帰るよ」
ゆっくり庭を歩いていたカノンが、突然言った。洗濯物の乾き具合を見ていた瞬がゆっくり振り返る。
「帰っちゃうんですか…」
「寂しいと思ってくれるのか?」
「ええ」
何の屈託も打算もない。彼女は本当に寂しいという。
「ハーデスがいるのに?」
「あなたはハーデスじゃありませんから」
寂しくなるのは、夜だけじゃない。
風の強い朝、雨の朝、ひとりぼっちの昼下がり。
そんなときに彼の神はいない。
「だから、カノンがいてくれてよかったです。寂しくなかったから…」
「瞬…」
背中を向けていた瞬を、ぎゅっと抱きしめて。
「君が好きだ」
「はい」
ハーデスの腕は男にしては柔らかくて、細くて。
カノンの腕は堅くて、逞しくて。
――自分は、本当にずるいのかもしれない。どちらの腕も、同じように安住できてしまう。
「カノン、私は…」
「まだ時間をくれ」
「時間…ですか?」
カノンの髪が瞬の首筋をくすぐった。くすぐったくて思わず身を捩る。彼はその機を逃さなかった。
大きく襟元の開いた桃色のスモッグから覗く鎖骨に唇を寄せる。
瞬は思わずのけぞった。
「いっ、いやっ…何をっ…んっ…」
まるで吸血鬼のように首筋を吸うカノンを引き剥がす事が出来ない。
「やだっ…やめてっ…」
じたばたしてもカノンは瞬を離さなかった。ようやく唇が離れたとき、瞬の目には涙がたまっていた。
やや乱暴に振り返る事が分かっていたのか、カノンは僅かに後退した。
「ど、どういうつもりなんです…」
「彼の神に見せ付けてやろうと思って」
カノンは不敵な笑みを浮かべ、瞬の涙を指で拭う。
「俺も君が好きなんだ」
そう言ってカノンは瞬の横を通りすぎていく。
「必ず、君をハーデスから奪う」
「カノン!」
背中越しの声だけ残して。
カノンはもうそこにはいなかった。


鏡を見れば、首筋に赤い痣――その意味は『嫉妬』そして『報復』
でも本当の思いは――『誰よりも君を愛してる』


その日の夜、ハーデスは昨夜と同じ花をどっちゃり持って現れた。昨日の分をあわせて、ベッドの周りは薄紅色に染まっている。
「部屋を花だらけにするつもりですか?」
瞬に言われて、ハーデスはぽんと手を打った。
「面白いかも知れんな。冥府で取れるさまざまな宝玉を花に加工して飾るというのは」
冥界とは、死だけの国ではない。
地下であるがゆえにその資源さえ彼のものだのだ。ハーデスの別称である『プルートン』は『富める者』も意味する。
「冗談でしょう、この部屋いっぱいに宝石ですか?」
「ピンクサファイア、ローズクオーツ、モルガナイト…困ったな、そなたに似合う石が多すぎる」
「話、聞いてます?」
もはやハーデスの頭の中は次の贈り物の事でいっぱいらしい。瞬は会話を諦めて冥王の右に座った。が、ふと彼はとなりの瞬をじっと見つめて問うた。
「どうした?」
「え?」
「そなたはいつも余の左ではないか、何故今日は右なのだ?」
思わぬ指摘に瞬ははっとする。いつも、彼の左に座っていたなんて今の今まで気がつかなかった。
カノンにつけられた痕があるのは右。だからそれを見られないように彼の右に座ったのにそれが裏目に出る。
「い、いいじゃなんですかどっちでも」
「よくはない。そなたを右に抱くのと左に抱くのとでは違う」
「どう違うんです?」
「左に抱いたほうがそなたは幸せそうな顔をする…」
まだほんのわずかな時しか過ごしていないのにもうそんなことまで気がついている。
(見くびってたかも…)
目の前にいる男が神だという事を忘れてしまうほどに。
「あの男だな、なんと言ったか…蟹座のカノンだったか」
「双子座のカノンです」
「それだ、そのカノンに何かされたな…」
瞬は思わず右手で首元を覆ってしまった。隠すつもりがささやかすぎる情事を露見させてしまう。
「それか」
「きゃあっ!」
黒衣の冥王が瞬をベッドに押し倒した。そして両手首を一つにまとめて己が手で頭上に括る。
「な、何するんですかっ!?」
抗議の声など聞かず、空いた片手で胸元をくつろげる。広く開けなくてもすぐそこに紅い痕が見えた。
細い指先でつ、となぞると瞬の体がびくりと震えた。
その痕から感じるのは激しい愛しさと、攻撃的な小宇宙。
「…嫉妬の痣だな。愛らしさも優しさもそなたゆえの美徳だが、過ぎたるは及ばざるが如し、だ。少し自省するが良い」
そういうとハーデスはゆっくり瞬の首筋に顔を下ろし、そこを柔らかく食んだ。
「んっ…!」
「許せぬな、余よりも先にこのような痕を残すとは…」
カノンがしたのとは反対側、左の首筋に口付ける。こちらのほうが瞬の心に近いような気がした。
冥王は刻印をつけ終わると、瞬を解放し、抱き上げて亜麻色の髪をなでた。
「ハーデス…ひどいじゃないですか」
「ひどくない。しばらくは消えぬようにしっかりつけたからな、当分はそのままだ」
そう言って抱きしめ、雨の様に唇を降らす冥王に瞬は何も言えなかった。
そして何も言えないまま、珍しく眠れぬ夜を過ごした。





薄紅色の可愛い君の
恋はまだ始まったばかり

深闇の冥王か、絢爛の黄金か



お選びなさい、素直な心で






≪終≫





≪反省などしていない≫
冥王な彼氏、なかなか楽しくなってまいりましたw 今回はカノンvs冥王をがっつり。そこに星矢と瞬のほのぼのカップルと紫龍、シュラ、デスマスクの微妙なトリオ(トリオ言うなww)を混ぜてみました。
我が師、こんなかんじでよろしいでしょうか?
タイトルはかの名曲『ハナミズキ』の一節です。
瞬と、彼女を巡る男たちと、更にその愉快な仲間たち。
薄紅色の可愛い瞬が誰を選ぶのかは、まだ未定です。
注: 文字用の領域がありません!

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