ヒロインの条件 肩に鎖を巻いた乙女のレリーフが彫りこまれた青銅色のその箱はとても美しかった。 亜麻色の髪の少女がそれを担ぎ、懐かしい木をその視界に捉える。 「6年…か」 少女は久方ぶりの日本に何の感慨もない。あるとすれば会いたい人がここにいるかもしれないという希望だけ。 担いだ箱は少女よりも少し大きい。うまく詰めればその少女がすっぽり入ってしまいそうだ。 だが目を惹くのはそれだけではない。 少女の顔を覆う白銀の仮面。 それは何かと聞かれれば少女はただ『たしなみ』とだけ応えるだろう。 「……あなたが、アンドロメダの聖闘士なの」 「意外ですか?」 亜麻色の髪の少女の前に、灰褐色の髪の少女。 アジア最大規模を誇るグラード財団の総帥は13才、名を城戸沙織と言う。 沙織は亜麻色の少女の言葉に微苦笑して頷いた。 「ええ。いつも誰かに守られていたあなたが……出発前に行き先を変更したのはあなたくらいですしね」 「私は『馬になれ』なんて言いませんから」 「………」 沙織は言い返すことが出来ずに黙ったままだ。目の前の少女は仮面をつけているので表情を読む事が出来ない。 「たった一人よ」 「なにがです?」 「……修業に出た女子のなかで、聖闘士となって帰ってきたのは…」 「そうですか」 100人いた孤児は男女の別なく聖闘士としての修業に出された。6年後、聖闘士となって戻ってくるのは僅か10名。この少女が女子ではたった一人の生き残り。 「ところで、その仮面はなんなの?」 沙織の問いに少女は仮面の下で笑った。 「これは、女子の聖闘士のたしなみです。もっともすでに形骸化して久しいですから取っちゃってもいいんですけどね」 少女にとっては師であるダイダロスとの大切な思い出。 アンドロメダ島を離れるときに師が最後にくれたものだった。 「……とってもらえるかしら?」 「いいですよ」 すらりと細い白魚の指がそっと仮面をはずす。 沙織はあっと声を上げた。 その顔に傷は一つもなかった。日焼けのあともない白磁の肌に煌く銀河の双眸。 静かに現されるその顔は少女らしさをそのままに、けれどどこか大人びた風貌さえ備えていた。 「子供のままでいたら、死んでいたんですよ」 7歳の少女が放り出されたのは灼熱と極寒が交互に襲う、その名にふさわしくない地獄の島。 そんな環境の中で少女は厳しくも優しい師と姉弟子とに囲まれ、修行を重ねて生き延びた。 「あなたが…」 「我が師は白銀聖闘士、ケフェウスのダイダロス。私は師よりアンドロメダを拝命しました」 そういう少女の横に箱。パンドラボックスと呼ばれたその箱の中に薄紅色の可愛い聖衣が納まっている。 沙織は再び信じられないという思いに駆られた。 幼いある日、馬になることを拒否した少年のそばに泣き出しそうな顔で寄り添っていた少女。 いつも兄の懐で守られていた女の子。 「やっぱり、意外でしたか?」 「正直言って、そうね」 「たった一つの約束のために生き延びたんです」 「約束?」 少女はゆっくり頷いた。 「生きて必ず会おうって。それだけです」 少女は再び仮面をつけた。 「もうよろしいですか?」 「ええ。いいわ。銀河戦争が始まるまでゆっくりしていなさい」 「はい」 亜麻色の髪を優しくなびかせて、少女は退室した。 沙織はふうと息をつく。 「あの子が……」 アンドロメダの聖衣箱を前に、沙織はやはり信じられない思いでいっぱいだった。 6年という歳月は誰しもを大きく変えるらしい。 そしてその少女の来訪から三日後。 アテナに最も愛されたペガサスの聖闘士がやってきた。 少し茶色がかった髪をした少年が城戸邸の離れの廊下を歩いている。 ここは銀河戦争に出場する聖闘士のために用意された施設だ。 部屋の前のプレートには個人の名ではなく聖闘士としての称号がアルファベットで書かれていた。 この少年の部屋には『PEGASUS』というように。 「相変わらず、でかい屋敷だ……」 見下ろす先に広い庭。あそこで馬になったバカがいたと、少年は思い出す。 姉と引き離された少年のそばにいたのは灰褐色の髪の高飛車な女と、優しい笑顔の亜麻色の髪の女の子。 その女の子はどうしているだろうと、少年は目を閉じた。 『馬になりなさい』事件はのちに語り草となる。 乗馬服で現れた沙織お嬢さんの優雅なお遊びのひとつだったのだ。 最初に馬に指名されたのがこの少年――星矢だった。 星矢が馬になるのを拒否すると沙織は彼を鞭で打った。 「ひでぇ女だ…」 「星矢、大丈夫?」 白いハンカチを水でぬらして血を拭いてくれた女の子がいた。星矢はその少女の事を忘れたことはなかった。 「あ、ありがとう…」 「いいの。いつも助けてもらってるから……」 女の子はにこりと笑う。綺麗なハンカチが汚れてもいじめられても笑みを絶やす事はなかった。 「……生きてるのかな」 その馬事件の後、100人の孤児たちは聖闘士になるためにばらばらにされた。もちろん、その女の子も兄や星矢と引き離された。 星矢がその少女の名を呟いた時。 彼の後ろのドアが開いた。部屋のプレートは『ANDOROMEDA』。 「…誰?」 くぐもった声に少年が振り返る。星矢はあっと声を上げた。 忘れはしない、亜麻色の髪。 「もしかして…瞬!?」 「え…星矢? 星矢なの?」 予期せぬ再会にふたりは歓喜の声を上げて抱き合った。 「久しぶりだね、星矢……」 「瞬こそ…生きてたんだな」 「おかげさまでね」 仮面の冷たい感触に星矢は驚かない。 アンドロメダはすなわち瞬。 星矢は彼女の部屋のソファに座っていた。その星矢の隣に亜麻色の瞬。 「仮面に驚かないんだね」 「俺の師匠…鷲座の白銀聖闘士で魔鈴さんって言うんだけど、その人も仮面つけてたから」 「あ、女の人だったんだ」 「うん」 だから星矢はその仮面の意味も知っている。 「魔鈴さんははずしてくれなかったけど……やっぱりなんか掟みたいなものがあんの?」 星矢の問いに瞬は小さく笑った。 「昔はあったらしいんだけど今は女性の聖闘士も増えたからあんまり意味はないって私の先生は言ってたよ?」 「じゃあ、取っちゃってもいいんだ?」 「私の顔……見たい?」 「……見せてくれるなら」 瞬は少し考えて頷いた。 「いいよ、でも素顔を見ても驚かないでね……」 「う、うん…」 どんな顔だろうと星矢は少し怯えていた。もしかしたら修行中にひどい傷を負って、それを隠しているのかもしれないとも思った。はずしてほしいと願ったのは軽率だっただろうかと星矢は少しだけ後悔する。 ゆっくりはずされる仮面と現れる顔を交互に見て。 星矢はほっと息をついた。 「脅かすなよ、瞬…」 「だって仮面に驚いてくれなかったんだもん」 6年前の女の子はそのまま大きくなっていた。相変わらず可愛いと星矢は思う。 その白磁の頬にそっと自分の手を添えた。 「星矢?」 「仮面なんかつけるなよ。可愛い顔してるのに」 すると瞬は少しいたずらっぽい微笑を見せた。 「みんなの反応が面白くて。星矢は紫龍を覚えてる?」 懐かしい友の名に星矢はうんと頷いた。黒髪が綺麗な紫龍も沙織の目の仇にされていたのを思い出す。 彼は中国の五老峰から龍座の聖衣を持ち帰っていた。 「その紫龍に仮面つけて会いに行ったらさー」 「どうしたの?」 「紫龍、絶句しちゃって」 そのときの彼の様子を瞬は面白そうに語る。 紫龍はしばしの絶句の後、仮面の瞬に向かって『どちら様?』と言った。 星矢はその状況が容易に想像できたのかげらげらと笑う。 「仮面はずして見せたらやっと私だって分かってもらえたけど」 「他の連中は?」 「さあ、まだ試してないから」 瞬の華麗なイタズラの最初の犠牲者は紫龍だった。 「髪の色だけでよく私だって分かったね」 「……忘れるわけないじゃん。こんなに綺麗な亜麻色の髪」 瞬の髪から、頬をなでて。星矢はふっと瞬に口づけた。 触れた唇の感触に瞬は思わず口元を覆った。 「相変わらずだね、星矢は。ギリシアでこんなことまで覚えてきたの?」 「何言ってんだ、今のが初めてじゃないだろ?」 「……そうだったね」 思い出すのは幼い日の出来事。 100人も孤児がいたのだから当然面識のない子供もいた。 そんななかで星矢は瞬と出会った。 「それ、出会いって言うのかな……」 「一応出会ったんだし、いーじゃん」 瞬の膝に頭を乗せて横たわる星矢が面白そうに言った。 庭で数名の男の子とサッカーをして遊んでいた星矢。その彼が蹴ったボールがあらぬ方向に飛んでいった。その軌道上にのんびりと日向ぼっこをしていた瞬がいたのが不幸だった。 ボールが瞬の顔面を直撃する。 「あーっ!!」 「きゃん」 子犬のような声を残し、瞬はぶっ倒れた。 「おい、大丈夫か?」 星矢が瞬を抱き起こしたが、彼女は既に気を失っていた。他の男の子たちはまずいと逃げ出す。 「な、なんだよ、逃げんなよ」 「バカ、そいつは一輝の妹だよ」 「一輝って…こないだ入ってきた……」 星矢のそばに黒髪の紫龍がいる。彼はひとつ年上の一輝という男の顔を思い出した。 「確か、入ってきたばかりで、いちばん威張ってた奴を殴り倒した奴だな」 どこの世界にもいるガキ大将という存在を一輝は素手で黙らせた。 理由は『妹をいじめたから』だ。 「……マジで?」 星矢も紫龍も瞬を見つめている。紫龍だけがしかしと呟いた。 「…妹がいたのは知っていたが……全く似ていないな」 他の男の子たちが巻き込まれるのを嫌って逃げる中、星矢と紫龍だけが残る。 それほど一輝という少年が恐ろしいらしい。 「おい、しっかりしろよ」 「う、うん……」 星矢に揺すられた瞬がゆっくりと目を開けた。 穏やかな色のぱっちりとした瞳が星矢を映す。星矢は自分の中にほわーとした何かが溢れているのを感じた。 (か、可愛いじゃん……) あの沙織お嬢様とは比べ物にならないほどの可愛らしさ。 だけど星矢は本来の目的を忘れたわけではなかった。 「あの…ごめんな、ボールぶつけちゃって……」 すると瞬はしばらくぼーっとして、それからやっと自分がボールをぶつけられたのだという事実を思い出した。 そしてううんと首を振った。亜麻色の髪がふんわりと揺れる。 「わざとやったんじゃないから…ほんとうにごめんな」 「うん、分かってるよ。私もぼーっとしていたから……」 「ごめんな…」 「うん。えっと…」 瞬は気にしないでと言おうとして、目の前の少年の名前を知らない事に気がついた。星矢たちもこの子の名前を知らない。 「俺は星矢って言うんだ。こっちは紫龍な」 「星矢と、紫龍……あたしは瞬っていうの」 「瞬…かぁ」 にっこり笑った二人の顔。 これが出会い。 それからふたりは一緒に遊んだし、いじめっ子からかばったりかばわれたりした。 そして好きだよとキスもした。 「鼻が曲がらなくてよかった……」 瞬は自分の鼻をなでる。星矢はくすくす笑った。 「心配しなくてもちゃんと美人じゃん」 「おかげさまで。ああ、でもやっぱり気になるから仮面被っちゃおう」 「俺の前でははずせよ」 仮面を持った瞬の手を、星矢のそれがいち早く止めた。 なんて、速さ。 もうあの頃のように普通の少年と少女ではいられないのだと認識した瞬間だった。 「…強くなったんだね、星矢は」 「瞬だって。こうしてたって分かるよ。瞬のあったかい小宇宙感じる……」 「星矢……」 聖闘士に必要なもの、それは守護星座の聖衣と小宇宙。 小宇宙はその純粋な思いが強ければ強いほど熱く大きく燃え上がる。 星矢の柔らかい髪をなでながら瞬はそっと小宇宙を燃やした。 「感じる?」 「…うん。綺麗な薄紅色」 俺も、と横たわったまま星矢も小宇宙を燃やす。 瞬はうっとりと目を閉じた。 「大きいね、星矢のは。まるで銀河に抱っこされてるみたい……」 「……瞬はアンドロメダなんだよな」 「そうだよ。星矢は?」 「ペガサス」 アテナに愛された希望の天馬。銀の翼を光らせて秋の夜空を舞い駆けるその姿を星矢に重ねる。 「星矢はペガサスって感じだよね」 「魔鈴さんに全天図見せてもらった事があるんだ」 「星座の?」 星矢はこっくり頷いた。 「ペガサスとアンドロメダって、同じ星を星座に使ってるのな」 秋の夜天の頂のそばに寄り添うペガサスとアンドロメダ。王女を形作る星のひとつをペガサスもその中に抱いている。 瞬は頷いた。 「私の先生が言ってた。アンドロメダの聖闘士は遠く神話の時代からペガサスの聖闘士と行動を共にする事が多いんだって」 「じゃあ、一緒だ」 「うん、一緒だよ」 だけど、とふたりはため息をついた。 「銀河戦争で戦わなきゃいけないんだよなー」 「本当にね。私は兄さんや星矢たちに会いたくて戻ってきたのに…」 「俺だって」 星矢は引き離された実の姉に会うために主催者サイドが出した条件を受け入れて今度の銀河戦争に参加する。 「瞬と当たりたくないなぁ…」 「私だってヤダ。星矢とやって勝てる自信ない」 その言葉が嘘だと分かるのは銀河戦争が始まって5日目のことだった。 トーナメント形式で進んでいくこの戦いで星矢と瞬は決勝まで当たる事はなかった。 「仮面しとくのか?」 「星矢がしとけって言ったじゃない」 俺の前でだけ素顔を見せて、と言ったのは確かに星矢だった。その星矢は紫龍との対戦でともに重傷を負って今は療養所のベッドの上だ。 (見ててくれてるよね……) 仮面の少女が闘技場に上がると、観衆がざわめいた。 素顔を隠すのが女性聖闘士。そのアナウンスに観衆はさらにざわついた。 細く華奢な体を薄紅色の聖衣で覆うこの少女さえも戦うのか、と。 アンドロメダ瞬に対するはユニコーン邪武。彼は瞬を一瞥すると鼻で笑い飛ばした。 「見せられない顔でもしてるのか、瞬…」 「邪武も相変わらずだね。見せてもいいけど、星矢を倒してからにしたほうがいいよ」 「なんだと?」 一角獣の聖闘士である邪武。彼はその星座の宿命だったのか、6年前に沙織の馬になった男だ。ユニコーンは乙女にしか背中を許さない。 瞬は思い出して小さく笑った。 「星矢の前でしか、仮面を取らないの」 「じゃあ俺が剥いでやるよ」 「……やってみる? 無理だと思うけど」 挑発的なその態度は昔の瞬にはなかったものだ。しかし弱虫で泣き虫だった瞬しか知らない邪武は楽勝だと思い込んでいた。 浅はか過ぎるほどに。 (おバカさん…) 瞬は心の中で小さく呟いた。 少女の周囲を乱舞するのは銀河の鎖。アンドロメダ聖衣の鎖は生身の拳と蹴だけで戦うとされた聖闘士の中でも武具として使用を認められている数少ない装飾の一つだ。 「さっさと終わらせて星矢のお見舞いに行こうっと」 瞬は両腕の鎖を投げ出した。 アンドロメダは鎖に我が身を縛り、故国エチオピアのために生贄となった王女の姿が星になった。 その星図の中に抱く銀河こそ、アンドロメダの星雲鎖。 主たる少女を守る2本の鎖が瞬の周囲に鉄壁の防御を敷く。 「おいで、邪武……」 愚かなるユニコーンよ、王女の手のなるほうへ。 「でかい口叩くな! 弱虫瞬ちゃんが!!」 「あー、懐かしい呼ばれ方……」 瞬はそっと目を閉じる。けれど仮面の下のこと、それは誰にも分からない。 こうして目を閉じていても、鎖が邪武をズタボロにしているのを感じる。 前後左右、いずれも突破できずに一角獣は傷を負い続ける。 瞬はため息をついた。 「もうやめれば? 私もこれ以上やる気はないの。手を抜いてなかったら邪武、死んでるよ?」 「手を抜いてるだと!? 女に負けてたまるかってんだ!! 上がガラ空きなんだよ!!」 そう言って飛んだ邪武に瞬はまたため息をついた。もう何度目だか分からない。 「ひどいなあ。女の子だからってみんながみんな弱いとは限らないのに」 じゃあ全力でやっちゃうよと瞬。彼女の鎖が『うちの姫様に触るんじゃない!!』とばかりに天へと駆けのぼっていく。 「バカね、この星雲鎖の防御でいちばん強固なのは上なんだよ? うちの鎖たちはそんなに頭弱くありません。むしろ邪武よりお利口さんだよ」 そのとおり! と鎖はジャラララーと音を立てて邪武を打ち砕いた。 「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!」 無様な声を上げて邪武が闘技場に落下した。 鎖の中で瞬がまたため息をついた。 「だから言ったじゃない、無理だって。もう止めよう? ね?」 仮面の奥で瞬は心からそう言った。 さっさと終わらせて星矢のお見舞いに行くんだと決めていたから。 神話の時代からアンドロメダにはペガサスと決まっている。ユニコーンに入る隙は微塵もない。 銀河戦争はTVでも中継されている。素顔を見せない謎の少女聖闘士の回は最高の視聴率をたたき出した。 療養所の一室で頭に包帯を巻いた星矢が紫龍とともに瞬の戦いぶりを見ていた。 「瞬すげーなー」 ベッドの上で星矢が嬉しそうに呟いた。 大好きな瞬が頑張っている姿はカッコイイし、仮面をとらないでいてくれるのも星矢を嬉しくした。 椅子に座っていた紫龍とその幼馴染の春麗も同じように頷いた。 アンドロメダの鎖の防御本能は88ある聖衣の中でも、青銅聖衣でありながら上位に入る。 その美しい姿はほかのどんな聖衣もおそらくは及ぶまい。 「瞬さ、本気でやっても俺には勝てないなんて言ってたけど…」 「彼女なりの嘘だろう」 そう言って二人は笑った。 しかしこのあと事態が一変する。 そしてそれはこれから始まる聖戦の序章中の序章に過ぎなかった。 この戦い以降、瞬が仮面をすることはなかった。 残された仮面が師・ダイダロスの唯一の形見になってしまったこともあったが、それ以上に顔を隠す必要性を感じなかったからだ。 最愛の兄と、友らとともに最後まで自分らしく戦うと決めた少女。 喜びも悲しみも何も隠さずに。 戦う決意と守る強さをその瞳にこめて。 「私は、アテナの聖闘士。アンドロメダ瞬……」 美しい王女の姿をした女性聖闘士。 彼女の傍らにはいつも愛すべき鎖の姿があった。 のちに瞬は人として、聖闘士として、そして女性として数奇な運命を辿る事になる。 が、それはまた別の話。 「ねぇ、星矢」 「うん?」 「…大好きだよ」 「俺もだよ」 異腹の姉弟だとわかってもその思いがかわることはない。 勇敢なペガサスのそばに心優しきアンドロメダ ヒロインの条件は単独でも強く美しく そしてヒーローを愛しく思うこと ≪終≫ ≪なんら間違ってはいないと思う≫ 瞬も女性聖闘士なんだから仮面くらい持っているよね、という事から始めたお話です。 (*゚д゚)『聖闘士星矢』のヒロインはアンドロメダ瞬だと思ってますよ、私は。こんな瞬をして冥王様は『世界で一番清らか! (゚∀゚)』とか言うんですから、やっぱり節穴ですな。 今回は星矢×瞬。13歳組。邪武の出番はこの先、おそらくありません(*゚д゚)クワッ。 邪武ファンの方、ごめんなさいだ(*´д`)。 如月個人的には星矢を甘やかすのは瞬だと信じています。星矢も思いっきり甘えてくれればいいよ。 そんな事を書きながら『我が家の瞬はわんこに好かれるんだな』と思うのです。 星矢然り、カノン然り、冥王然り。この3人は普通に耳垂れて瞬に尻尾振ってると思うwwwwww あっ、いやっ、ごめんなさい、石投げないでっ!! ギャラクシアンエクスプロージョンでお願いしますゞ(*゚д゚)/ |