夢のような日々


ほんの小さなその出来事が
ある程度幸せな未来の予想図なら
その日々はきっと夢のような日々


「ああ、本格的に熱がありますねぇ…」
水銀を封じた体温計を見つめながら申公豹はため息をついた。赤い液体はぐんぐんとのびてついに38度線を越えてしまった。
どうやら風邪を引いたらしい。
ここ数千年の間、風邪なんてひいたことがなかったのに。しかもこんなときに限って仙丹を切らしているだなんて。
申公豹は体温計を入れ物に戻した。手つきがなんとなく危うい。
「申公豹、大丈夫? 申公豹が風邪ひくなんてきっと世界の終わりだね」
「そうかもしれません…」
「…あらら」
黒点虎の冗談も通じないくらい、申公豹は落ちこんでいるらしい。
「すみませんね、黒点虎。退屈でしょう?」
「ううん、ぼくはいいんだ。でも本当に大丈夫?」
「ええ、寝てれば治ります…」
そう言って申公豹はすうっと瞼を落とした。黒点虎は彼が眠ったのを確認するとそのまま洞府を飛び出し、西へ飛んだ。


薬を取りに。


夜の真ん中、剣月の下。いくつもの星が煌く。
今日はゆっくり眠るつもりで寝室にはスープーをつれている太公望は夜着に着替え空を眺めている。
「星がキレイっすね、御主人」
「本当だのう、近頃は忙しすぎて星はおろか空を眺めることもなかったからのう」
髪を下ろし、道士服を脱いだ姿はただの少女。いつも凛としている姿もかっこいいけどこういう姿も可愛い。
いつも忙しい彼女がほっと一息つけるのはこういう時間だけだ。
スープーはそんなことを考えながら星空に視線を戻す。瞬間、星がキラリと光るのが見えた。
「あ、今星が光ったっスよ」
「ほう、流星かのう…」
二人でのんびり眺めた星はどんどん輝きと大きさを増してくる。
「…なんか、大きくなってないっスか?」
「…てゆーか、こっちに近づいて来てないか?」
なんて言い合っていたのも束の間、その輝きは軍師殿にある太公望の部屋を直撃した。轟音を聞きつけた警備の兵が騒ぎ出す。
「うわああああ!!」
部屋は一瞬のうちに戦場と化したかのように物が散乱していた。スープーがかばっと顔をあげた。
「ごしゅじ〜ん、大丈夫っスか〜〜」
窓を砕かれ、書簡が舞う。太公望の叫び声が聞こえたけれど姿が見えない。スープーは一生懸命、主たる少女の姿を探した。
「…御主人?」
彼女はどこにもいない。
「…御主人? どこっスか?」
返事がない。ただの空間のようだ。
「……御主人がいなくなったっス―――!!」


強引につれてきちゃった…ごめんね、呂望
でもどうしても薬が必要なんだ。


太公望がゆっくりと目を開けるとそこは良く知っている背中だった。柔らかい毛並みがふわふわとして愛らしい外見のくせに実は最強の霊獣と名高い。
「黒点虎ではないか、どうしたんじゃ」
黒点虎は彼女を乗せて月明かりさえ心許ない夜空を少し急いで飛んでいる。
「ごめんね、呂望。どうしてもお願いしたいことがあるんだ」
「お願いしたいこと?」
薄い夜着に覆われただけの体に夜風は冷たい。黒点虎の背に縋るように張り付いて。
太公望は黒点虎の行くままに夜空を飛んだ。


ごめんね、ごめんね。


「ここは…」
自分を恋人だと憚ることなく宣言する最強道士の洞府。黒点虎から下りた太公望――いや、ここではもう呂望と呼ぼう――は不自然さに気がついた。
申公豹がいない。
黒点虎に攫われ、連れていかれるときは大抵彼が待っている。この世界できっと唯一自分を甘やかしてくれるだろう、男が。
「申公豹に何かあったのか?」
察しのいい彼女に黒点虎は頷いた。
「風邪引いて寝てるんだ」
「…風邪?」
あまりにも定番だが申公豹にはあまりにも縁遠い病名に呂望は軽く眩暈すら覚えた。
「明日が地球最後の日ではあるまいな」
「ボクもそう言ったんだけど」
彼は取り合ってくれなかったと聞かされた呂望は黒点虎を優しく撫でた。
「それでわしを攫ったわけじゃな」
「ごめんね、忙しいんでしょ?」
「なに、構わんよ。どうせ周を離れてニ、三日気分転換するつもりじゃったからな。気にするな」
「うん…」
呂望の細い腕が扉を押し開けた。


ふんわりと温かい香り。


申公豹はゆっくり目を開けた。まだ視界がぼんやりとしている。熱のせいだろうか、状況がうまく把握できない。
ここは自分の洞府で、同居人は霊獣の黒点虎のみ。
それなのにこの香りは一体…?
「おお、目が覚めたか?」
目の前に空色が広がる――ああ、ここは天国と呼ばれる場所?
「…って、呂望じゃありませんか、一体どうしたんです!?」
いるはずのない人、あるはずのない状況に申公豹はざっと50年ぶりに驚いた。彼女は盆を持って立っている。さらに盆の上には椀と蓮華が乗っていて、暖かそうな湯気がゆらゆらと揺れていた。
呂望はにこり微笑むと寝台の横に据えられた小さな机に盆を載せた。
「黒点虎がおぬしを心配してわしを呼んだんじゃよ。主人思いのいい霊獣ではないか」
「…忙しいんじゃないんですか?」
霊獣は主人に似るのだろうか。
「黒点虎にも言うたが周を離れてニ、三日気分転換するつもりじゃ。気にするでない。それに…」
「それに?」
呂望の笑顔が不意に寂しげになった。
「おぬしはわしが討つと決めておる。風邪なんぞに殺されてたまるか」
申公豹の額に呂望の手が優しく触れた。冷たい指先が今の申公豹には心地いい。
「私も風邪なんかに殺される気はさらさらありませんよ。どうせ死ぬならあなたに討たれて、あなたの腕の中がいいですね。ああ、腹の上でもいいですけど」
「…そーゆーことが言えるなら充分元気じゃな」
要らぬ言葉のせいで申公豹の額はぺち、といい音を立てた。
実際、呂望にあえたので体力は2割ほど回復している。
「まぁ、呂望がせっかく看病にきてくれたんですから、せいぜい看病されましょう」
申公豹はいつもの笑顔を見せた。まだ熱が引いていないせいなのか、心なしか顔が赤い。
呂望は申公豹をいじるのをやめた。
「あまりうまくないかもしれんが、粥を作ったから食べるといい」
「食べさせてもらえませんか?」
「甘えおって」
「いいじゃないですか、たまには」
そう言われるとなんとなくその気になって、呂望はゆっくりと申公豹を抱き起こし、上着を着せてやる。そしてその場に椅子を引いて腰掛けると盆を膝にのせた。
蓮華でお粥をひと掬い。
まだ熱かろうとふーふー息を吹きかける。すぼめられた唇が可愛い。
(…風邪ひいて良かった)
申公豹の不謹慎な心の言葉は聞こえない。
「ほら、口を開けよ」
「はい」
蓮華が申公豹の口に納まった。咀嚼する申公豹を見つめながら呂望は次の匙を出すタイミングを計っている。
「うまいか?」
「ええ。とっても」
「それはよかった。食欲もあるようじゃし」
二口、三口と食は進み、結局申公豹はお粥全部を呂望に食べさせてもらった。
「もう少ししたら仙丹を飲まんとな」
「煎じてくれるんですか?」
「甘えるつもりならとことん甘えてみたらどうだ?」
呂望のいたずらっぽい微笑みは違う意味で申公豹の熱を上げる。
「ああそうだ、夜着のまま攫われたんで服を借りとるが、いいか?」
「ええ、構いませんよ。いつかあなたがここに来てくれたときのためにと用意した物です。こんなにはやくそれが叶うとは思いませんでしたけど」
空はあなたを育み、生まれる風はあなたを守る。
空色は彼女を護る色。
傍らの黒点虎がゆるりと申公豹に近づいた。
「ボクが教えてあげたんだよ」
「そうですか…やっぱりお前は頼りになります。黒点虎」
「黒点虎、霊芝はどこにしまってあるのかのう?」
「教えてあげてください、黒点虎」
「うん」
こっちだよ、と呂望を導く黒点虎。後ろ姿を見守って申公豹は目を閉じる。
この時間は、懐かしいようでいて――それなのにどこか優しい未来を暗示していて。
(全てが終わったらと…望んだ時間です)
ほんの少しの楽しい空想に過ぎなかったのに。
彼女の魂は平和を求め、彼女の運命は戦いの道を行く。
――平和とはあるものではない、護るものだ
この手で、この体で。
呂望でなくては、成し果せない歴史の変革。
だから今だけ、ちょっとだけ――束の間の平和でいいから。
そんなことをぼんやり考えていると器を持った呂望と黒点虎が不安げな顔で現れた。 
「できたぞ…」
差し出された器を覗きこんだ申公豹は思わず引いた。
「…なんか凄い色してませんか?」
みょうに毒々しいというか、呪われているというか。
霊芝は本来はとても鮮やかな緑色で仙薬にしてもその色を損なうことはない。それなのになんだ、この不吉な国防色は。
「すまん、仙薬づくりは苦手でのう…よくサボっとった」
黒点虎と楽しそうに話しながら作っていたのは聞こえていた。材料も配分も聞こえる限り間違いはなかった。
「大丈夫でしょう。では戴きます」
申公豹は国防色の仙薬を飲んだ。呂望は液状の薬を嚥下する喉元を心配そうに見つめる。
一気に飲み終えた申公豹の眉間に皺が寄る。
「何入れたんです? 妙に甘いですけど…」
「シロップ」
「…は?」
「だから、シロップ。わしは薬はシロップか糖衣でなければ飲まぬ。苦いなら飲まないほうがマシっ」
言いきった。呂望の甘い物好きは知っていたがまさかここまでとは。小さなわがままを見つけて、また彼女が愛しく思える。
「さ、もう休め。明日には熱も下がっておろう」
「すみません、呂望」
呂望は器を受け取ると申公豹を横たえ、布団を着せ掛けてやった。
「お休み、申公豹」
「おやすみなさい、呂望」
申公豹の瞼が閉じられる。呂望は額にそっと唇を落とした――良く眠れるようにと、小さなおまじない。 


「ありがとう、呂望」
申公豹の部屋を出ると黒点虎が客間に案内してくれた。ここ数千年にわたって使われていなかったがつい最近申公豹が何を思い立ったのか掃除したばかりだという。
「呂望をつれてきてよかったよ。ボクじゃ申公豹の世話はできないから」
空を飛び、千里眼で事物を見る。だけど人型じゃないからこういうときは困る、と黒点虎は言った。
悲しそうにうなだれる黒点虎の姿に呂望は自分の霊獣の姿を思い起こした。
今ごろきっと自分がいなくなったと大騒ぎしているだろう。あちこち飛び回って探してくれているに違いない。
「のう、黒点虎」
「なあに?」
「人にも霊獣にもそれぞれ向き不向きというものがある。どうしても出来る事と出来ない事がある。ならばその出来ることを精一杯やればいいのじゃ」
呂望は黒点虎を優しく撫でると灯りを点し、書簡をしたため始めた。自分の居場所を告げるだけの簡単な内容なのですぐに書き終えた。
「良いか、黒点虎。おぬしはどんな理由があろうとわしを攫ったのは事実じゃ。だからこの手紙を周に届けて欲しいのじゃ。できるな?」
「…うん」
黒点虎はしっかり頷いた。呂望もにっこり微笑んだ。
黒点虎は首輪に手紙をしっかりさしこんでもらうと、とてとてたったと飛び立った。しばらくふよふよ飛んでから一気に夜空を駆け抜ける。
風邪に乱れた髪を直しながら呂望はぽつりと呟いた。
「早いのう、もう見えん……さて」
申公豹の様子でも。


心配された夜中の急な発熱も見られず、申公豹はすやすやと眠ってる。こんなに無防備に寝ているところを見るのは実はめったにない。
閨の最中に無粋にも『おぬしは眠らないのか』と尋ねたことがあった。
すると彼は笑って『あなたの寝顔を見たいんです、眠るなんてもったいない』と言った。
あのときはただ変な男だと思ったのだがこうして立場が逆になってみるとよくわかる。
寝顔というものは、実は飽きない。
ましてや相手は最強道士と言われた申公豹だ。くーくーと寝息を立てるとは知らなかった。
「良く眠っておる…」
呂望は再び部屋を後にした。


客間に戻るとほぼ同時に黒点虎が戻ってきた。
「ただいま、呂望。手紙渡してきたよ」
「おお、ご苦労だったな」
「返事もらってきた」
黒点虎は首輪に挟まっている、と言った。引き抜き、開いてみると流麗な文字が並んでいる。署名は姫発になっているが文字そのものは楊ゼンのものだろう。
内容は休暇許可証、今日も入れてあと3日とある。明後日には帰ってこい、とのことだ。
「なんて?」
「明後日の夕方には戻ってこいとのことだ」
呂望は穏やかな表情で書簡を畳むと寝台の上に仰向けに転がった。



翌朝、申公豹が目を覚ますと表から賑やかな声が聞こえてきた。上着を羽織り、出てみると呂望と黒点虎が愉しそうに戯れている。
「やだ、呂望、くすぐったい」
「よいではないか、よいではないか」
「くすぐったいったらー」
「何してるんです? 楽しそうですねぇ」
転がる黒点虎に圧し掛かっている呂望はその声に振り向いた。黒点虎もゆっくり顔をあげる。
「あ、申公豹。だって呂望がボクの肉球に触らせろって言うんだもん」
「肉球のある霊獣はおぬしくらいなもんじゃからのう。ところで申公豹、もう起きても平気なのか?」
すっと伸びた呂望の繊手が申公豹の額に触れた。彼はにっこり笑った。
「ええ、貴女…と、黒点虎のおかげでもうすっかり」
その言葉どおり、申公豹の額は普通の温かさを保っている。
「いつまでここにいてくれるんです?」
「明日の夕方にはここを発つよ」
「なら今日まであなたに甘えることにしましょう。黒点虎も久しぶりに愉しそうですしね」
「だってボク呂望のこと大好きだもん」
その日一日は申公豹の体調に気を使いつつ、どうでもいい話をしたり、食事をしたりとのんびり過ごした。
封神計画のことはお互いに一切語らなかった。
運命は苛酷という道を彼女に用意している。今まさにその道中だ。
けれど時にはこうして休むことも大事なのだ。
いつか全てが幕を閉じ、彼女が太公望としての役目を終えたとき、自分のそばにいてほしいと願う。
そしていつか呂望が明日へと無邪気に進んでいける日が来たとき、その傍らにいたい。
いてほしいし、いたいと思う。
そう、誰もが。
「呂望…」
「なんじゃ?」
「いつか全てが終わったとき…あなたはなにをするつもりですか?」
呂望は一瞬だけきょとんとしてみせたが、もう何かを考える表情になっていた。
「そうだのう…まだ終わりまでどのくらい来たのかわからんから考えてみたこともないのう。ただ…な」
「ただ…なんです?」
「もしも…ということを考えることがあるよ」
もしも普通の女として生きていけたら。姜族の統領の息女ではなく、平凡な女として生まれていたのなら、と。
「そのときはもう死んでおるかもしれんがな。夫を持ち、子を孕み産んで、育てて、その子がまた子をなし、たくさんの孫やひ孫に囲まれておるかもしれんなぁ…と。そういう一生を送ったものもおるのだな、と」
「呂望…」
「わしはまたおぬしに甘えたようじゃのう」
「なんでです?」
「うーん…なんかこう…看病というものは、不謹慎だがいいものだな。心配出来る家族や仲間がいるというのはいいものじゃ。おぬしを看病して、ああ、夫がいたらこんな感じかなーって…」
ここまで言って、呂望はしまったと口をつぐんだ。
彼女にしては珍しく自分の心情を吐露している。
あっけに取られたのは申公豹も同じことだ。黒点虎だけが嬉しそうに笑っている。
「し、しんこうひょう…?」
呂望はおずおずと顔をあげた。一時は呆然としていた申公豹もにっこり微笑んでいる。
「…嬉しいですよ。そんなふうに思っていてくれると」
もしも、ではなく、いつか。
(随分と欲深になったものです)
申公豹は静かに茶をすすった。


時間はあっという間でもう次の日の夕方になった。
西の空を茜色に染め上げている。そんな空を眺めながら呂望は少し寂しそうに囁いた。
「そろそろ帰らねばならんな」
「そうですね」
申公豹は名残惜しそうに呟いた。
「…引きとめんのか?」
呂望のいたずらっぽい微笑に申公豹もつられてしまう。
「出来るならやってますよ」
「違いない」
呂望はくすくす笑いながら黒点虎の頭を撫でる。
「また遊びにおいでよ、呂望」
「そうさせてもらおうかの」
「じゃあ、周まで送りますから乗ってください」
呂望は申公豹の後ろに横座りで乗ると、彼の腰に腕を伸ばした。
申公豹の手が重なると彼女はさらにしっかりとくっついた。
「行きますよ」
「ああ…」
夜着の上に空色の衣をつけた呂望は申公豹の背中で幸せそうに目を閉じた。


「あーーっ! 御主人が帰ってきたっス!!」
ぴるるるーと飛んできたのは四不象、あの日呂望を見失って以来ずーっと落ちこんでいたのに帰ってきたとなると上機嫌だ。
周に戻れば彼女は呂望から太公望へと変わる。
黒点虎から降り、スープーと再会を喜ぶ彼女はもはや太公望であった。
「お借りしていた太公望はお返ししますよ」
「申公豹様〜、うちの御主人を勝手に借りないでほしいっス」
「それはすみません、今度は断ってから借りることにしましょう。ではまた」
そういうと申公豹は黒点虎と共に東の空に消えた。東の空はまだ薄い青、白い黒点虎は見る見るうちに光の粒になった。
「行ってしまったのぅ…あ」
青い空を見て呂望は大変なことに気がついた。
服を借りっぱなしである。
しかしスープーでは黒点虎には追付けない。
(どうしたもんかのう…)
考えあぐねているとばたばたと数人の足音が聞こえてきた。
振り返り様にもみくちゃにされる。
「太公望、どこいってたんだよ!!」
「心配したさぁ、師叔」
「お怪我はありませんか、師叔?」
「いや、その…」
一度に聞かれると流石の太公望もしどろもどろ。彼女に思いを寄せる男たちには妙な迫力もある。
「随分可愛いカッコで帰ってきやがって」
太公望の肩をそっと抱きよせて少し屈んで頬に口付けたのは姫発。呂望は思わず頬を押さえた。
天化と楊ゼンの顔が一瞬にして修羅となる。
「お〜さま〜〜、なにしてるさぁぁぁぁ…」
「ちょっとお灸を据えたほうがいいですね」
「ちょ、ちょっとまてよ、挨拶だろ、こんなの」
うろたえて両手をわたわたさせる姫発に天化と楊ゼンはずずずいーっと迫った。
「「問答無用!!」」
「あ〜〜〜、王なのに〜〜〜!!」
男たちの喧騒をよそに太公望とスープーは回れ右、前に進め。
「一生やっとれ」
「でも御主人、その服本当に可愛いっスね」
「そうか? 誉められると嬉しいのう」
太公望はご機嫌でスープーの頭を撫でた。スープーも嬉しそうに笑う。
「ほんとうに心配したんスよ」
「すまんすまん」
呂望はとてとてと廊下を歩きながら遠ざかる喧騒を聞いていた。



ふよふよと空を舞う霊獣・黒点虎は申公豹に呼びかけた。
「ねぇ、申公豹」
「なんです、黒点虎」
「今度のこと、やっぱり怒ってる?」
黒点虎が珍しく小さくうなだれた。
「なんでです?」
「だって申公豹はいっつも呂望は忙しいんだって言ってるじゃない。それはボクだってちゃんと知ってるよ。でもボク、申公豹のこと心配で、呂望にしか頼めなくって…それで…」
大事な時間を奪ってしまっていると思っている。
呂望は黒点虎にも申公豹にも気にするなと言った。
そして自分のことを主人思いのいい霊獣だと誉めてくれもした。
けど、申公豹は?
「そうですねぇ…怒っているとしたら、自分に、ですかねぇ」
「自分に?」
黒点虎は意外な答えにちょっと驚いている。
「そうです。今は少し戦況が落ちついているとは言え、風邪なんかひいて彼女の手を煩わせたのは私自身ですからね。だから黒点虎が気にすることはありません」
申公豹は黒点虎の頭をゆっくり撫でた。
「それに、お前のおかげで思いがけず呂望とゆっくりした時間を過ごすことが出来ました。この数日はまるで夢のようでしたよ。感謝こそすれ、怒るだなんてとんでもないことです」
「…よかった」
黒点虎もようやく元気が出てきた。
「さて、どこへ行きましょうか」
「呂望が好きそうなお花をつんで届けてあげるっていうのはどう?」
「おや、いい考えですね。では南のほうへ行ってみましょう」
ばびゅーんといい音で黒点虎は空に一直線の雲を描く、すべては彼女のために。




ほんの小さなその出来事が
ある程度幸せな未来の予想図なら
その日々はきっと夢のような日々



きっとステキな未来のある日
――そうなると信じて、花を捧げよう





≪終≫





≪あとがき〜〜≫
今日の日付は死んでも言えない。
乱文乱筆にも程があんぞ!! とお叱りの声が聞こえてきそう(||゜Д゜)ヒィィィ!(゜Д゜||)
ちょっと甘めの申公豹×呂望が書きたかっただけなのさー! 
んでもって黒点虎×呂望とか四不象×呂望がちらっと見たかっただけなのさー!
( ゚Д゚)ノフォラァヨ!! ---===≡≡≡ω シュッ!ぐはぁズサーc⌒っ゚Д゚)っ
すみません、もうしませんから許してください…。注: 文字用の領域がありません!

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