LADY NAVIGATION 〜竜吉公主・その愛〜 ここは崑崙山脈の一角・鳳凰山。ここに竜吉公主という美仙女が住んでいます。 「はぁ〜〜〜っ」 この美女は今日も溜め息。 「…はぁぁ〜〜〜〜っ」 また溜め息。ここ数年、溜め息をつくことが多くなりました。なぜって 「太公望が封神計画とやらで下山してしまって以来、ちっとも会っておらぬ」 からなのです。いくら美仙女といわれようと強いといわれようと太公望がおらぬでは無意味じゃ…と嘆きは深くなる一方。 「かといって用もないのに下山しては迷惑だろうし…」 …一応、理性は保ってます。そこで彼女は太公望専用モニターを覗いてみることにしました。そこには四不象にのって行軍する太公望の姿がありました。 「はあっ(´д`)今日も太公望は激プリじゃのう〜〜」 ぱっちりと大きな鮮緑の瞳はきらきらと輝き、少年らしい風貌に愛らしさを添えています。 「可愛いのう…録画じゃ録画っ」 ピッ…。どこぞでカウンターが動きはじめました。 しばらく進軍していると突然妲己が現れました。公主は驚いて画面に釘付けです。 『あは〜ん、お久しぶりん』 「なっ…何がお久しぶりじゃ!! 私の太公望にちょっかいだしおって〜〜」 『ああ〜〜ん、太公望ちゃん、可愛い〜ん』 「この女狐め! 私の太公望に触れるでないっ!! ええい、楊ぜんは何をしておる!! こういうときこそ体を張って助けぬか!!」 もはや言いたい放題の公主に突っ込む余地はありません。また、こんな彼女に誰が突っ込めるというのでしょう。 「きぃぃぃ〜〜、このようにみておることしかできぬとは…口惜しいのう…」 そうこうしている間に妲己は数人の人質をとるとそれを趙公明に渡し、朝歌へ帰っていきました。 『またねん、太公望ちゃん』 「何がまたじゃ!! もう来んでいいわ!!」 決して聞こえてはいないでしょうから言いたい放題です。太公望はそんなこととは知らずに人質を助けることと全体のレベルアップを図るため趙公明と戦うことになりました。 竜吉公主の出番はその戦いの第3ラウンドでした。 「大変です、公主様」 太公望の出番がなかったため公主はモニターを録画にしたままで離れていました。そこへ赤雲と碧雲が慌しく飛び込んできました。 「何事じゃ、騒々しい」 「土行孫様が敵に囚われてしまいました!!」 碧雲は一度落石事故に巻き込まれて行方不明になっていたところを土行孫に発見され、楊ぜんに助けられたことがありました。故にいつかお返しをしなくては、と思っていたのです。今まさにその機会が訪れていました。なのに 「…で?」 と竜吉公主はそっけない返事。彼女は太公望以外にははっきり言って興味がないのです。 「公主様、土行孫さまにはいつか恩返しをと仰っていたではないですか〜」 「…別に今でなくては良いではないか」 「公主様〜〜(^_^;)」 本当は碧雲が行けばいいのですが自信がありません。公主にとって下界の空気は毒のようなものですがここは公主に出張ってもらうほかありません。そこで姉弟子である赤雲が一計を案じました。 「あらっ、太公望さまがっ!!」 「太公望がどうしたっ!!」 赤雲の言葉に鋭く反応しました。 「こんなところに挟まっておいでで…さぞお苦しいでしょうに…おいたわしいこと…」 みると太公望が細い隙間に挟まって動けなくなっていました。後ろから黄天化が何とか太公望を押し出そうとしていましたが無理なようです。すると碧雲も赤雲の魂胆がわかったのかさらに続けました。 「超硬化宝貝合金で誰も助けられないようです。こんなとき強い方がいてくださったら…」 「〜〜〜私が行くっ!! 十二仙などに任せておけぬっ!!」 公主は意外と単純でした。 「そうですわ、公主様。ここで公主様がお強いだけでなく、礼節をわきまえ、恩義に厚い女性だとアピールしておけば太公望様も公主様を素敵な恋人としてみてくださいますよ!」 赤雲が重ねて言うと公主はぴたっと止まり嬉しそうに微笑みました。 「そうかのぅ〜〜、太公望は私に惚れ直してくれるかのう〜〜」 「もちろんですとも、公主様!」 こうして三人は下界に降りていきました。 下界の空気も何のその、太公望が呼吸している空気が毒なはずはないっ!! 公主はむちゃくちゃでした。 渭水に浮かんでいるクイーンジョーカーU世号までたどり着くと竜吉公主の脳内はもはや妄想でいっぱいでした。何年かぶりに太公望と再会するのですから無理もありません。 『ああ…太公望、もうすぐ会えるのじゃな…』 果てしなく目的をも違えていますがこの際放っておきましょう。 そのころ3階では蝉玉と劉環が対戦し、蝉玉のピンチです。けれど挟まったままの太公望と、中にはいれないでいる天化にはどうしようもありません。 『ふふふ、太公望、私の雄姿をしかと見るがいい!!』 「天化、そこを退くのじゃ(太公望、今助ける!)」 公主は勢いよく水を放出すると超硬化宝貝合金の壁をいとも簡単に壊してしまいました。 「おはつにお目にかかる…私は竜吉公主と申すもの」 あくまで冷静さを装って竜吉公主、登場です! 「おお、公主ではないか」 呼びかける声さえ懐かしく、公主は今すぐにでも抱きしめたい衝動を抑えていました。 「久しいな、太公望よ(ああ、やはり生太公望は可愛いのう〜〜(´д`))。ここは私に任せるがよい」 「…体は大丈夫なのか、公主」 「うむ…心配かたじけない(太公望に心配してもらった…ヴィヴァ! 純血!!)」 「…俺と蝉玉の時間を邪魔するやつは許さん!! 死ねっ!!」 「ふむ、下は溶岩か、これを何とかせぬときりがないのう(お前こそ私と太公望の時間を…お前が死ねっ)」 劉環は溶岩から火の鳥を生じさせ、公主を襲います。しかし公主は余裕でした。 「宝貝・霧露乾坤網」 静かに水の網が火の鳥を捕らえ、消していきます。大量の水を前に溶岩はすべて冷やされ、使い物にならなくなりました。愛しい太公望との再会を邪魔され、公主、ちょっと目が据わってますΣ( ̄□ ̄川)。 「ひゅー、静かな攻撃さ、勉強になるさ」 「うむ、余裕があるのう…」 淡々とした賛辞でしたが公主はとても嬉しかったりします。 「お前の宝貝は死んだ、立ち去るがよい」 「何で…邪魔すんだよーーーっ!!」 そういうと劉環は公主に向かって火の矢を放ちました。しかしそれは公主には届きません。 「無駄じゃ、私の周りを常に薄い水の幕が護っておるのだからのう(私に触れてよいのは太公望だけじゃ!!)」 今度は水の槍が劉環の手足を貫きました。 「殺生は好まぬ(優しさアピール!!)」 公主には敵わないと見て取るや、劉環は蝉玉と心中を図ろうとします。蝉玉を取られては公主も動けません。天化も間に合いそうにありません。そんなときでした。劉環の死角にいた土行孫が土竜爪で彼の背後を狙ったのです。それは見事に命中しました。蝉玉は助かり、劉環は封神されました。 「魂魄が出口を探して彷徨うたか…あの男、迷わずに出られたかのう…」 太公望が敵方にさえ見せるちらりとした優しさに公主は思わず胸キュンです。 敵を倒しほっとしたのか、下界の不浄な空気のためか、はたまた久方ぶりに見る生太公望にあてられたか、公主の体がぐらりと揺らぎました。 「公主様!!」 赤雲と碧雲はあわてて公主のもとに駆け寄ります。 「…どうじゃった? 太公望は私に惚れ直してくれたかのう…」 「ばっちりです、公主様!! あとは少しばかりか弱いところをお見せになったら完璧です!」 「そうか…ならば…ううっ!!」 「公主、どうした?!」 容態が急変したふりをして公主は巧みに太公望を呼び寄せます。赤雲はそっとそばを離れ、公主は倒れこむように太公望に抱きつきました。太公望の顔を間近にし、公主はもう妄想が爆発しそうです。 「公主、しっかりせい…」 「ああ、太公望…私はもうだめだ。おぬしの手助けがしとうて降りてきたが…ごほっ…」 「何を言っておる、わしは公主を死なせとうない…」 「太公望…(ああ、今すぐ封神されても悔いはないのぅ)」 「公主、またおぬしの力を借りるときが来るやもしれん。それまでしっかり養生してくれ」 「…うむ、かたじけないのう(ううっ(i_i)離れとうないのう…)」 太公望はにっこり微笑むと、碧雲と赤雲に公主を任せ、先に急ごうとしました。しかし公主はさりげなく天化を呼び止め、こう念を押しました。 「太公望のこと、くれぐれも…ごほっ…頼む…ごほごほっ……」 …目が据わっていました。流石の天化も頷くしかありません。 「わ、わかったさ、師叔が心配するから早く帰って休むさ」 「太公望を〜〜〜〜」 「はっ、早くつれて帰るさっ!!」 流石に怖くなって天化は走り去り、碧雲と赤雲は公主を引きずって帰っていきました。 「…何を話しておったのじゃ?」 「…師叔をよろしくってさ」 「そうか」 想われていることなどこれっぽっちも気がついていない太公望なのでした。 鳳凰山に帰った公主は床に伏せ、太公望の無事だけを祈っていました。 『太公望…どうか無事で…』 祈りが通じたのでしょうか、その後太公望は見事に趙公明を撃退しました。 一方朝歌では…。 「いや〜ん、公主ちゃんたらおいしいところ持っていったわ〜ん、ずるいぃん」 妲己も太公望専用モニターを持っていました。 「け・ど。最後に笑うのはやっぱりわらわよん♪ 必ず太公望ちゃんをゲットしてみせるわん」 どこで入手したのか、太公望のぬいぐるみを抱きしめ、ひとり悦に入る妲己の姿がありましたとさ。 ――太公望争奪戦はまだまだ続く……のでした。 ≪終≫ ≪誰のせいにもいたしません≫ えーっと…竜吉×太公望…。公主、ちょっとどころじゃなく壊れてますけどうちの公主はこんな感じです。妲己と太公望の取り合いを…。取り合いは好きなんですけど、こんなに公主壊しちゃって大丈夫かな…って、ちょっと思ってます(^_^; )。 土行孫よりも太公望…。そりゃそーだ(笑)。 ところで全く余談なんですけど、『太公望専用』って入力したくて『たいこうぼうせんよう』って入力して変換したら『対攻防戦用』って変換しちゃって…ビビりました。同じ読みなんですけどね…。ふひー。 …脱兎の如く逃走(びゅんっ) |