What Happen?! 


物語は突然、ある朝のことだった。
「うにゅ…」
「ん〜〜〜、師叔?」
昨夜の熱い情事のあと太公望の部屋にお泊りとなった天化は自分の横で小さく丸まって眠る太公望を抱きしめようと手を伸ばした。
「あいかわらず可愛い寝顔さ」
そして抱きしめたそのとき。
ぷよん。
天化の素肌に柔かいものが当たった。
「…ぷよん?」
違和感を感じた天化がその物体の正体を確かめようとそーっと体を離して見た。そしてしばしの沈黙のあと
「にぎゃああああああああああ!!」
「ん〜〜、うるさいのう、なにごとぢゃ…」
天化の叫び声に太公望がむくりと体を起こす。天化はわたわた手を振った。
「師叔っ! 起き上がっちゃだめさ! それ仕舞うさ!!」
天化は真っ赤になってくるりと背を向けた。今更恥ずかしがる間柄でもなかろうに…。そして太公望もやっと自分の身に起こった出来事を把握した。
「ojroni@igvn0iuq@8u4gto-[qiruq540unvu[:p@oi[9u5iut,mx:paojwtjmv?!」
声にならない叫びが木霊する。
「なっ…なんじゃこりゃ…」
 
――太公望の胸が膨らんでいた(笑)。


太公望が巨乳になっていた。
何でこんなことになったのかわからぬまま、とりあえず服を着ることにした。
下はちゃんと穿けたが、問題は上だ。まず黒の肌着を着なくてはならない。
「天化〜」
「何さ?」
「苦しい…」
「へ?」
言われて天化は振り返る。見ると肌着は何とかはいったものの胸のところだけ張っていて今にも破れそうである。もともと細身の太公望だ、ちょっとやそっとではない胸に服が追いつけるはずはない。
「と、とりあえず着ておくさ」
「うむ…」
とは言うものの肌着は胸の部分に布を取られ、腰まで届かない。次は長い切れ込みの入った黄色の上着だが、これも胸で引っかかってしまい、天化に手伝ってもらってようやく着ることができた。
「ふい〜〜」
この上着もいつまで持つか。最後の青い上着はちゃんと着れたけれど『飛熊』と書かれた止め具がやはり邪魔である。
「大丈夫かい、師叔」
「うむ、なんとかな…」
服を着るのにこんなに苦労するとは…。太公望がやっとの思いで服を着、天化とともに部屋を出ると歩いて来る楊ゼンと出会った。
「師叔、おはようございます」
「うむ、楊ゼンも早いのう」
そのとき。
ぱちん、ざしゅっ、かっ。
「……へ?」
楊ゼンの髪が何本かさらさらと地に落ちた。何があったか説明しておこう。実は太公望の『飛熊』がはやりふくらみに耐え切れずに時速?キロで吹っ飛び、太公望の前にいた楊ゼンの頬を掠めて壁に突き刺さったのである。
「師…叔?」
何が起こったのか未だに事態を把握できない楊ゼンは呆然と立ち尽くすばかり。


やがて事態はみんなに知れ渡った。
「こらこら、男どもはあっちに行ってなさいよ」
もはやいつもの服では限界のある太公望のためにまず尺寸を測ってから服を選ぼうと蝉玉が計り紐をもって太公望とともに部屋に入る。
「すまんのう…」
「いいって。けどさぁ、なにやったらこんなに育つわけ?」
今は女の子同士の気安さで蝉玉が太公望の胸をつつく。
「こっ、こら、よさぬかっ」
「うわー、すごい、揺れる揺れる」
「やめいというておるに〜〜」
部屋の中から聞こえる声に太公望を想う輩はつい聞き耳を立てる。
「じゃあ真面目にはかろーね! えーっとぉ…トップは××で、アンダーは…△△…ってことは」
何のことやらさっぱりわからないが今は蝉玉に従う以外に方法はない太公望である。
「ずばり! Fカップね!」
「…それって大きいのか?」
「巨乳よ、巨乳!!」
「そ、そうなのか…」
とりあえず当面の服が揃うまで大き目の服で過ごす事になったわけだが…。

「え…えふかっぷ…」
歩くたびに揺れる太公望の胸に誰もが釘付けなのはいうまでもない。もともと女性が少ない上にこんな巨乳美少女に歩き回られたのではたまったものではない。 
「おお、姫発、周公旦」
「た、太公望…」
ふたりは慌てて目をそらす。太公望自身は自分の胸がどうなっていようと仕事は山積みだ、休んでいるわけにはいかない。
「今度の進軍の件で話があるのだがのう」
「あ、ああ、その話な、うん」
「?」
どこか落ち着きのない姫発に構わず太公望は彼のそばにより、地図を広げ始める。
「よいか、ここからここまで進んだからのう、ここが朝歌だから…」
と指差す先よりも胸に視線が行っている姫発は聞いちゃいない。
「…聞いておるのか?」
「ああ、ちゃーんと聞いてるぜ」
いや、聞いてない。
「今度は北軍をな、進行させようと…こう、な」
そう言って地図をなぞり始めた太公望は姫発にぴたっとくっついた。何の事はない、無意識のうちに、である。しかし姫発はそうではない。これまで数多くのプリンちゃんと遊んではきたがこんな巨乳にくっつかれてただで済むはずはない。
(た、たまんね〜〜)
「こら、聞いておるのかっ?」
「プリンちゃん…」
「はい?」
そういい残して姫発は気絶した(笑)。


 
気絶した姫発は今手当てを受けている。何で気絶したのかよくわからないがそれ以上は話にならないので執務室から出てくると三時のおやつに興じていた天化と天祥、それに楊ゼンとあった。
「おお、おやつにしておるのか」
「わーい、太公望もおいでよ」
無邪気な声に優しく微笑んで太公望は天祥の招きを受けた。今日のおやつは桃まんである。
しばらく和気藹々とおやつを食べていると突然天祥が太公望をじーっと見つめているのに気がついた。
「ん? どうしたのだ?」
「胸おっきーなーって思って」
天祥は躊躇なく答える。天化と楊ゼンは思わず茶を吹きそうになった。すると天祥は今度は迷わず太公望に抱きついた。太公望も困惑することなく天祥を抱きとめた。
「うわー、柔かいなー。温かくて…」
子どもっていいなー、なんて思う天化と楊ゼン。
「まるで母様みたい…」
「天祥…」
天祥は黄飛虎の末っ子だ。母親である賈氏は妲己の姦計にかかって義妹とともに自害しており、幼かった天祥は突然母親を失ったことに戸惑いさえ見せず、気丈にも殷を離れる父に従って今に至っている。とはいってもまだまだ甘えたい年頃には変わりない。艶やかな黒髪に白い肌、線の細い体、そして意志の強そうな瞳をもつ太公望は天祥にとっては母のぬくもりを感じられる唯一の存在だ。天化のほうがはるかに母親に似ているけれど天祥は太公望に懐いている。
「母様と一緒にいるみたい…」
天祥はそのまま眠ってしまった。
ちょっと羨ましいと思いつつ、昼下がりは過ぎていく。


その後も次々と無自覚のFカップは被害者を出した。
夜になってようやく自室に落ち着いた太公望は寝台の上にうつ伏せになった。が、またしても胸が邪魔をする。
「う…うつ伏せにもなれんのか…」
ころんと転がって仰向けになるとようやく一息つけた。
「師叔ぅ。いるさぁ?」
「天化、開いておるよ」
軋む音だけが静かに響いて天化が入ってくる。よっこらせと起き上がると胸も遅れて揺れる。
「どうした、天化」
ぱっちりと大きな瞳が天化を射抜き、天化は一瞬言葉に詰まる。
「あ、いや、今日はもう…寝るさ?」
「うむ、することもないからのう」
「じゃあ、お休みさ師叔」
天化は何をしにきたのだろう、それだけ言うと部屋を出ていこうとする。太公望は慌てて天化の腕を掴み引き止めた。柔かい温かさに天化は頬を染めて立ち止まる。
「まて、一緒に寝らんのか?」
「寝れるわけないさ?! 」
「…わしが嫌いか?」
僅かに潤んだ瞳は行くなと行っている。でも…。
「嫌いとかそういうんじゃないさ。師叔は今…」
それ以上は言葉にならず、天化も太公望も押し黙ってしまう。
「のう、天化」
「…何さ」
捕まれた腕は振りほどけないまま。
「…わしは…その…お主に、そばにおってほしいだけじゃ」
「師叔…」
「…こんななりになってしまって…不安でたまらぬ……」
そう言った太公望を抱きしめる。みんなは好奇の目で、あるいは良からぬ妄想を含んで太公望を見るけれど、彼女にしてみれば原因もわからぬ事故である、不安になって当たり前だ。
「天化…」
「…いっしょに寝てやるさ、師叔。けど俺っちは男さ。もしかしたら、その…」
いつもより激しく襲っちゃうかもしれないさ、と小声の天化。太公望はそんな天化に小さく笑みをもらすと一言
「天化なら、いい」
とだけ告げた。



月が淡く部屋を彩り始めるころ、太公望は天化の腕の中で安らぎだけを感じていた。
「…起きておるか、天化」
「…眠れないさ? 師叔は」
「…何故このようになったか、考えておった」
巨乳になった太公望の声はいつもとなんら変わりない。
「太乙さんか、雲中子さんの仕業さ?」
狂科学者と変人による薬の可能性もあるがそんな不審物を服用するような太公望ではない。
「のう、天化」
「何さ、師叔」
「おぬしはわしで満足しとるか?」
「どういう意味さ? 俺っちは胸で恋人を決めたりしないさ」
天化はぎゅっと太公望を抱きしめた。柔らかな胸が自分の肌に触れるたびに彼は僅かの頬を染めた。
「いつか、離れる時が来るやも知れぬ」
「師叔…」
恋人同士であるが故に互いに戦いの中で生き残ることを望んでしまう――戦争をしている、だから戦いのなかで死んでしまうかもしれない、それは覚悟している。でも、やはりそれは考えたくないと、彼女の中のやるせない我侭が天化の腕の中でふっと口をついてしまった。
どんなに思いあっていてもそれを理由に離されるとしたら…。
「…いやだからのう」
「師叔…」
「…離れとうない…天化…」
ぽろぽろと。あの太公望がぽろぽろと涙をこぼしている。天化は太公望を抱き起こすと、そっと口づけた。
「天化…」
「大丈夫さ、師叔。俺っちは師叔が師叔だから惚れたさ。男でも女でも、動物でも植物でも宝貝でも、それが師叔ならきっと惚れたさ。そして師叔のためなら死ねるなんて言わない。師叔のために戦って、そして生きるさ」
ちゅ、と目尻の涙を吸う。太公望の煙る鮮緑の瞳はぱちくりと天化を見つめている。
「…ちょっとくさかったさ」
赤くなって片手でぽりぽりと頭を掻く天化が、また好きになった。
「ううん、とっても嬉しいぞ」
 
月影はどこまでも優しくふたりを照らす。重なる影が心さえ深く重ねていく…。



翌朝になっても太公望は巨乳のままだった。
先に起きていた天化は太公望におはようの口づけをするために近づいた。
「…いつになったらもとに戻るかね〜」
「戻ってほしいのか。男はみんな大きな乳が好きなのではないのか?」
「それはそれぞれの好みさ。もっとも俺っちは大きくても小さくても感度がいいほうがいいさね」
「そんなものかのう…」」
「そんなもんさ♪」
幸せそうに微笑んで、おはようの口づけを交わす。。そのまま太公望は天化を胸に抱きしめた。
「天化っ、好きじゃぞっ」
「師叔! 嬉しいけど…胸に埋まるさ〜〜」
ギブギブ、と背中を叩く。やっと気がついた太公望はぱっと天化を離す。
「あ、すまん。つい嬉しくて…」
「窒息するかと思ったさ…」
言うわりには嬉しそうな天化君だったりする。

そのころ。
 「「「「天化め〜〜、羨ましい…」」」」
愛憎入り混じった感情が部屋の外に渦巻いていることなど、このバカップルは知る由もなかった…。



――結局太公望はもとに戻ったのはこれから一週間ほど先のことである。
原因は結局わからない。


「あはん。おっぱい大きな太公望ちゃんもかわいかったん♪」
 



≪終≫





≪ぱらっぱぱー≫
↑今私の脳内を端的に表現するとこうなるでしょうね。
天化×太公望で太公望が巨乳になっちゃうという定番ネタです。天化と太公望、いちゃいちゃしてます。
Fカップに埋もれてます、天化。埋めてます、太公望。…いえ、やめときます。これ以上は…。
結局誰が太公望を女の子にしたのかは不明なまま…。逃げちゃえ。注: 文字用の領域がありません!

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