明日はきっと晴れるだろう 雨の日は嫌いだ 歩きにくいし、濡れたら寒い まあ、ほどほどに降るぶんは構わないけど 「ガオン、ガオンってば」 「何だ、ゾロリ」 天蓋の降りるふわふわのベッドの上で金色の狐が抗議の声を上げた。 「いつまで乗っかってる気だ、いい加減にしろよ」 「こんな状態でも減らず口がきけるんだな、君は」 そういうとガオンはぐっと身を進め、露わになっていたゾロリの乳房に手を伸ばした。 「あうっ…んっ…」 繋がっていた状態からさらに深く押し進んできたガオンを受け止め、ゾロリは体を震わせる。 豊かな乳房はガオンの手の中で形を変え、桃色の乳首に指が触れるだけでも反応してしまう。 「あっ…はうっんっ…」 「かわいいよ、ゾロリ」 耳元で囁かれた甘い言葉にゾロリはキッと、自分に圧し掛かる男を睨みつけた。 ことの起こりはごく簡単なことだった。 突然の大雨に足止めを食らっていたゾロリ一行を車にのっていたガオンが発見し、城まで連れ帰ったのだ。 しばらく雨宿りするつもりで同行したゾロリだったが、翌日になっても雨はやむ気配を見せず、今日でとうとう3日目を過ごす羽目になった。 「だからって、3日も続けてやることはないだろう!?」 「本当なら三日三晩続けたかったところだがな。そういうわけにはいかないだろう、私もお前もっ」 「だったらっ…あんっ、もうやめっ…はああんっ!!」 全身に広がる快感にゾロリは身をよじる。胎内に吐き出されたガオンの精がまだあふれているのが分かる。 男根を引き抜かれてようやく自由になったゾロリは起き上がってなおもガオンを睨む。 「中に出したな…」 「安心しろ、子供ができたら責任は取る。むしろ君を旅立たせない、いい口実になるな」 そういうとガオンは真っ白なローブをまとってゾロリをぎゅっと抱きしめた。 「けっ。俺は子供ができても旅は続けるからな」 そういうとゾロリはガオンをふり解いてさっさとバスルームに入ってしまった。 情事のあとはいつもこうだ、甘い雰囲気のまま終わったことなんかありはしない。 どんなにその思いをぶつけても彼女には届かないのだろうか。もしかしたら自分と寝るのは単なる処理行為に過ぎないのではないか、そんな不安さえ頭をよぎって、ガオンはベッドの上に行儀悪く寝そべった。 そのころゾロリはシャワーで丹念に体を洗い流していた。 首筋や乳房、太腿の内側に残る赤い跡は全部ガオンがつけたものだ。 ガオンのことは嫌いじゃない、むしろかなり気に入っている。一緒に寝るものそうしたいからだ。 でも相手は王子様だ、いつかきっと自分という存在が邪魔になる日がやってくる。 (人魚姫にはなりたくないな) 幼いころ聞いた昔話。王子に思いを寄せながらもそれを告白することさえできずに消えていった悲しい恋の物語。 ガオンには自分の想いは伝えたし、彼も自分のことは必ず守るといってくれている。 なのに、押し寄せるようなこの不安は何だ? ゾロリはシャワーにうたれながら冷たいタイルの上に座り込んでぎゅっとわが身を抱きしめた。 「随分遅かったな、ゾロリ」 「俺は風呂が好きなんだ。いつものことだろ」 ゾロリは真っ白なローブをぞろりと着流している。ゆるく開いた胸元から乳房がこぼれそうだ。 金の髪をタオルでがしがし拭きながらベッドにいたガオンの横に腰掛けた。尻尾はぴるぴる振って水を飛ばしてきたのか、ふわふわに乾いていた。 「なあ、ガオン」 「なんだ?」 「…もしあの時、雨が降っていなくてもお前は俺をここに連れてきたか?」 ゾロリは手を止めて、少し寂しそうにきいた。ふっと顔を上げる。 ガオンを見つめる瞳はなんだか泣き出しそうだった。 「もしすれ違うことがなければ…そうだな、ここじゃなくても一緒にいられる場所を探しただろうな」 「そうか…」 ゾロリはふっと立ち上がって窓の外を見た。高いところにあるこの部屋からは遠い向こうの風景が激しい雨にかすんで見えた。自分が旅してきた道は決して平坦ではなかったけれど、それでもこの男に会えたことはわりといい出来事だったのだ。 「ときどきどうでもよくなるんだよ」 「ゾロリ…」 「双子も、パパも、旅のこと全部…」 ゾロリは窓に手を触れた。ここから出てゆけば次の安息は当分先だ。 自分に翼があったなら、パパも見つけられるし、ガオンのそばにも簡単に戻れる。 でも、何かがそれを許さない。それが何かは分からないけど。 「ずっとお前のそばにいて、お前に抱きしめられて過ごせたら俺たちはとっくにハッピーエンドなのにな」 そういって振り返った彼女の笑顔は寂しさをにじませていた。 「ゾロリ…」 「甘え方って…知らないんだ」 父がいなくなって、母が女手ひとつで自分を育ててくれた。夜遅くまで一人ぼっちだった。 食事もお風呂も寝るのも。疲れて帰ってくる母のためにわがままを言ってはいけないんだと幼いながらに理解していたからだろうか、こうして恋人ができてもどう接していいのかわからない。もっと言えば甘えろといわれても甘え方を知らないのだ。 だからガオンが差し伸べる手をとっても、どうしたらいいのかわからない。 そばにいたいと思うのに…。 「何でだろうな…」 「お前がどうしたいか、じゃないのか」 「ガオン…」 ガオンは窓辺に立ち尽くしていたゾロリを背後からそっと抱きしめた。その腕の中でゾロリはゆるりと目を閉じる。 ガオンの体の熱さにゾロリはわずかに身をよじった。 戸惑うことなく自分を抱きしめてくるこの男に何もかも預けてしまえればいいのに。 「ガオン…俺様は……」 ゾロリはガオンの腕に自分の手を添えた。 「お前のことが好きだよ…」 「ゾロリ…」 「抱いてくれるか?」 「喜んで」 ガオンはゾロリを左腕に抱きなおすとそのまま彼女を持ち上げた。ゾロリもきゅっとその首にしがみつく。 「ガオン…やっんっ…」 「いいといったのは君だぞ」 「わかってる。いやじゃなくてもこーゆー声が出るもんなんだっ…あんっ」 ぴんと伸びている黄色い耳がへにょんと寝てしまっている。その耳をはむっと甘くかんでゾロリの官能にスイッチを入れた。 「やめろっ、耳は弱いんだ…」 「ほう、そうか」 いい事を聞いたとガオンは彼女に見えないようにほくそ笑んだ。耳に舌を差し入れ、ぺろりとなめる。 「やっああっ!! いやっ、やめろっ…あんっ!!」 「かわいい」 「くっ…」 ゾロリはガオンから逃れようと身をよじるが、彼はそれを許さない。なおも敏感な耳を攻め続け、抵抗する意欲を奪う。 「あ、ああ…」 たったそれだけの行為にゾロリの頬は真っ赤になっていて、闇色のつぶらな瞳も潤んでいる。 「が、ガオン」 ゾロリの呼びかけにガオンは微笑んで応えた。そのまま彼女を抱き起こし、自分は背後に回る。 するりと手を伸ばしてゾロリの乳房を下から支えるように揉み上げた。指先で桃色の乳首をくりっと弄った。 「あんっ、やっ…」 ゾロリはその腕に自分の手を重ねた。けれどガオンの手が彼女への愛撫をとめることはない。乳首を指先できゅっと 摘み上げそしてくりくりと転がした。 「はあっ、はあっ」 首筋に顔を埋め、あとを残すように口付ける。ゾロリは荒い息をしながらガオンの愛撫から逃れようと身をよじるが、快楽を与えられたいという欲求に勝てずになされるがままだ。 「かわいいものだな、ゾロリ」 「言うなっ、かわいいって言うなっ」 「だがこうするといい声で鳴いてくれるな」 ガオンの手の中でゾロリの乳房が形を変える。もにゅもにゅと音がしそうで恥ずかしい。 「ガオンっ…恥ずかしいっ…」 ゾロリの声は今まで聞いたことのないような艶な声だ。その声をもっと聞きたくてガオンの手がゾロリの敏感な部分に伸びる。 「やっ、ガオン、そこ…」 「ここが感じるんだろう?」 ガオンはゾロリの秘所を弄る。花びらの周囲は透明な蜜を滴らせている。秘芯にその蜜を塗りこみ、くりくりと転がすとゾロリは体を弓なりにそらせた。 「あんっ、ああんっ」 ガオンはゾロリの左の脇に入り、腕を担ぎ上げて自分の肩に乗せた。そして自分の右手で乳房を、左手で秘所をいじった。こうなるとゾロリはその腕から抜けられない。唇は左の乳房をちゅうっと吸った。 「あんっ、はああっ、ガオン、ガオンん…」 「どこまでかわいいんだ? 君は」 「知るかっ! もうっ、ああんんっ!」 ゾロリはくねくねと体をくねらせた。ガオンの愛撫から逃れようとしているのに彼は執拗に彼女を攻め立てる。 「はあんっ、ガオンっ…くふうっ…」 きゅっと身を縮めるとゾロリはがくがくと体を震わせた。秘裂からぶしゅっと体液があふれ出た。 ガオンはそれを手に取り、彼女の唇に塗りつけた。 「あふっんっ」 ゾロリはぺちゃっとその指を舐めた。肩で荒く息をしながら潤んだ瞳でガオンを見つめた。 「が、ガオンっ…」 「ゾロリ…」 彼女の目の前にガオンの男根が現れた。 「ガオン、これ…」 「咥えてくれないか?」 ガオンはずいと自身の肉塊を押し付けた。ゾロリは恐る恐る口をつける。 「…したことないんだけど」 「なに、ちょっと舐めてくれればいい」 ゾロリはおずおずとガオンの亀頭を舐めた。 「んっ、ちゅ…」 「初めてのわりには上手じゃないか」 「んぶぅん、で、できない…」 ゾロリは先端を口に含んだだけでつぶらな闇色の瞳から涙をこぼした。彼女の口にガオンのものは大きすぎたのだ。それでなくてもこれまでの前戯で嵩が増しているのだ。ガオンの男根を目の前にしてゾロリは困惑気味だ。 ガオンは流石にかわいそうに思ったのか、無理強いはしなかった。 「じゃあその君の胸で私を満足させてもらえないか」 「…胸で?」 「ああ、はさんでくれ」 ゾロリは小さく頷くと豊かな乳房でガオンの肉棒を挟みこみ、むにゅむにゅと自身の胸をもみ出した。 乳房と乳房の間からガオンの先端がひょっこり顔を出している。ゾロリはそれには舌を這わせた。 「んっ、んんっ」 「いいよ、ゾロリ…」 膣内で擦るのとは違った感覚がガオンの中に広がっていく。どうしたらいいのかわからないと言っていた彼女がそれでも一生懸命奉仕してくれるのが嬉しかった。 「はふい…あむっんっ…」 「ゾロリ…ふっ…」 彼女の胸の中のガオンがどくんっと脈打った。 「んっ!?」 そしてそれが一気に顔の前にあふれ出す。目の前が白濁して、ゾロリは顔を背けたけれど遅かった。ガオンの精液は顔や髪にかかり、どろりとこぼれて白い胸の上に落ちた。 「はっ…はあっ…」 「ゾロリ…」 「ガオンっ…」 二人は何も言わずに口づけを交わした。 「やればできるじゃないか。かわいいよ」 「…ばかっ、またぶっかけやがって…」 そういうとゾロリはガオンをぎゅっと抱きしめ、擦り寄った。 「…して」 「わかっているよ、ゾロリ」 向かい合わせに抱き合い、ゾロリをよこたえたガオンは彼女の女陰に自身の分身を擦りつけた。 「やんっ、あっ…じ、じらすなっ、ガオンっ」 「行くぞ」 「はやくっ…」 体を紅色に染めるゾロリに、ガオンの肉棒が侵入する。 「あっ、ああっ…」 ガオンは一気に奥まで貫いてしまうとそれからは緩やかな律動を刻んだ。揺さぶるたびにゾロリの乳房が揺れ、白い肌から淡い芳香が香り立つ。きらきらと光る汗は玉結んで彼女の肌を流れていく。 「あんっ、はあっ、ガオンっ…はああっ…」 肉棒が内壁を擦る感覚にゾロリは嬌声を上げる。 今は繋がることでしか寂しさを埋められないけれど…いや、寂しさを埋めるために抱き合っているけれど、いつかただそばにいるだけで満たされる日が来たなら。 その日はきっと晴天の空の下。 拘束を嫌がって自由を求めるくせに、孤独を嫌がって抱きしめてくれる腕を求める。 「ガオン…」 「なんだ?」 「俺たちはきっとっ…んっ、矛盾してるっ…ぁあ…んっ」 ガオンの唇が首筋に触れた。噛み付く様に口づけ、跡を残す。 「そうかもしれないな、ゾロリ」 「あうっ…ううっんっ…」 深く内奥をえぐる様にせめたててくるガオンのものにゾロリは思わず仰け反った。 「君を自由にしてやりたいし、束縛もしたい。いったいどちらが本心なのだろうな」 「んっ、それはっ、俺だってっ…ぁあはあっ…んっけどっ今はっ…!」 「…拘束、だな」 ずん、とくる刺激にゾロリは大きく目を見開いた。感覚のすべてが背中を駆け上がり、全身を瞬間硬直させる。 「ガオンっ! ガオンっ〜〜!!」 「ゾロリっ…くぅっ!!」 ゾロリの肉壁がガオンの男根をきゅうっと締め上げた。ガオンも堪えきれずにゾロリの胎内に精を吐き出してしまう。 「はあっ、はあっ…」 びるびるっと注がれる体液を感じながら、ゾロリはそっとガオンに抱きついた。体はまだ繋がったままだ。 「ガオン…」 「ゾロリ…離れてくれ、まだ入ったままだぞ」 「やだ、もう少しこのまま…」 雨がやんだら、ここを離れるから――ガオンのそばを離れるから。 ガオンはゾロリの背中をそっと撫でるしかできなかった。 「ん…」 「目が覚めたかい、ゾロリ」 「…外は?」 「残念ながら晴れているよ」 「そっか…」 ゾロリはガオンの腕の中でもぞもぞと動いた。 「なんだ?」 「…キスしないのか?」 「…あとでいい。さ、シャワーにいって来い。双子が起きてくる前にな」 そういうとガオンはするりと束縛をといた。 けれどゾロリはその場を動こうとはしなかった。ガオンの胸元に頭をこすり付けるようにして抱きついている。 「ゾロリ…」 ガオンはよしよしと金色の髪を撫でた。汗で湿っている髪は少し重さを感じさせた。 「ん〜〜」 「気が済むまで甘えていればいいさ。どんなに説得しても君は自分の思うとおりにするんだからな」 ゾロリは顔を上げることができなかった。ただその温かさに安住していたかった。 ガオンの汗のにおいは、いなくなった父親のそれとよく似ていたからだ。 (…パパ) いつか会うことができたなら、話したいことがたくさんある。 でも今は… (だめだよな、そんなこと) ガオンを父親代わりにしている自分に気がついて、ゾロリはぱっとガオンから離れた。 「…シャワー、借りるな」 「あ、ああ…」 すらりとした足をベッドから下ろし、ゾロリは金の尻尾をふりふり浴室へと姿を消した。 シャワーのノズルをひねり、温かな湯を体に注ぐ。体中を支配していたけだるさが消え、すっきりとした感覚へと生まれ変わる。けれど体には赤い跡が残ったままだ。 ――所有の証だ。 肌を触れ合わせなければ刻まれることのない刻印に、ゾロリはそっと手を触れた。 痛くも痒くもないのに、心がふわっと揺れる。 水音がやむ、ぎいっと音を立てて浴室のドアが開かれた。 部屋に戻るとガオンがベッドの端に座って待っていた。 「…シャワー、ありがとな」 「ああ」 バスローブであわられたゾロリに、ガオンはすっと指で示した。そこにはきちんと洗濯された旅着と新しい晒しが置いてあった。 「いつも悪いな、ガオン」 「なに、大したことじゃない。それよりも、君が無事であることを祈ってるよ」 「…お前もな、ガオン」 交わした口づけが、どうか最後ではありませんように。 二人はいつもそれを祈って口づける。 空はよく晴れていた。三日も雨が続いたので道がぬかるんではいるものの、旅慣れた彼女たちには大した支障ではなかった。 「せんせ、ようやく晴れただね」 「そうだな、あのまま止まなかったらどうしようかと思ったよ」 「やまない雨なんてあるだか?」 哲学的なノシシの発言にゾロリはほうとため息をついた。 「やまない雨はないな。いつかきっと晴れるんだ、待っていればな。でも自分の足で進まなきゃダメなことだってあるんだぜ」 彼女の左右に控える双子は足取りも軽く、歌いながら踊りながら歩いていく。 ゾロリは空を見上げた。 蒼空は彼女に進めと言っていた。 いつか終わるだろうこの旅の果てに待ってくれている恋人を思いながら ≪終≫ ≪医者はどこですか?≫ すみません、マジで医者呼んでください! 私には絶対医者が必要です! 脳外がいいです! ガオンのことをどう思って接しているのか、って言うのをゾロリせんせが甘え下手という設定で書こうとしたら自滅しました。 ぶら下がってきます。ぶら〜〜ん |