いとおしくて いろんな愛しさの中に生きてみて 嬉しかったり、優しかったり、ほんの少し寂しかったり だから人生はやめられない 金色の髪は夜でも月光を浴びれば煌いた。 ゾロリはイシシとノシシの双子のお供と、そのまたお供のプッペを連れて森の中を歩いていた。 「今日はこの辺で寝ようか」 川から少し離れた木の下に広がっていたのは大人一人と子供が数名、焚き火を囲んで眠れるくらいの小さな広場だった。ゾロリの言葉にイシシとノシシはその場にへたり込んだ。 「はー、やっとだかー」 「逃げ切れたって感じだな〜」 「…悪かったよ、まさかあそこで警報が鳴るなんて思ってなくてさー」 久しぶりにかいけつらしい事をしてみようとデパートの宝石展に白昼堂々と盗みに入ったまではよかったのだがいつものパターンで大失敗、4人で慌てて逃げ出してきたのだ。プッペの石頭がなかったら、ビルの窓を割ることも出来ずに今ごろ捕まっていたかもしれない。 プッペには割れるガラスの音と煌く破片が強く印象に残った。 「窓ガラス…割っちゃったっピ」 「大丈夫だよ、そんなこと気にしなくて。プッペのおかげで助かったよ。ありがとう」 そういって頭を撫でてくれるゾロリの手は暖かくて優しいから大好きなのだが、いけないことを容認されるとなるとどこかひっかかるものがあるプッペだった。 まあ、いかんせんお師匠様のせんせがイタズラクィーンなのだからしかたがない。 ゾロリは慣れた手つきで火を起こすと、イシシとノシシが拾ってきた薪を火にくべた。 「せんせー、おなか空いたー」 そういってべったり背中から抱きついてきたノシシの頬をゾロリは指でプニプニとつつく。 「お前らはいっつもおなかすかしてるだろーが。んー、でも俺もおなか空いたし…そこらでキノコ拾って来い、美味しいの作ってやるから」 「はーい」 背中で甘えていたノシシはイシシを誘ってキノコを拾いにいった。プッペはご飯を食べないけれど一緒に連れていって薪を拾ってもらうことにした。 「プッペ、行くだよー」 「はーいっプ!」 仲良く手を取り合って駆け出していく3人を見送ってゾロリは穏やかに微笑んだ。 プッペはすっかり自分たちの仲間になった。どんなときも一緒にいて、笑って、泣いて、怒って…でも笑った。 マイナスのデンキウナギが見つかって、おばけの森が元に戻ったらプッペはどうするだろう。 いつかその手を離さないといけないんだとわかっていても、考えるたびにそれは激しい寂しさを呼ぶのだ。 ゾロリはふるふると頭を振った。 今は考えるのをよそう。プッペがいる今を大事に旅をするほうがもっともっと大事で、とりあえず最優先事項は『ごはん』なのだから。 ゾロリはどこからともなく年季の入った鍋を取り出すと水を入れて火にかけ、湯を沸かした。 しばらくして3人分の足音が戻ってきた。 「せんせー」 「よう、おかえり。キノコ取れたか?」 ゾロリの問いかけにイシシとノシシはにっこり笑った。 「もー、食べきれないってほど取れただ」 しかし彼らはキノコを、ちょっとしか持っていなかった。プッペは薪を持っているだけ。 「…で、キノコは?」 「ここ!」 じゃーんという効果音つきでイシシとノシシはプッペの頭のふたを取った。プッペの中は空洞になっていて物が入る。そこにぎっしりキノコが詰まっていた。本当はマイナスデンキウナギをつれて帰る水槽の役割を持っているのだが、それはそのとき、今は有効に利用されている。 「うわー、いっぱい取れたなー」 「でしょー、せんせ、これで美味しいのつくってぇ〜」 「はいはい、分かったよ。じゃあお前たちは火を見ててな。俺はキノコの石附取っちゃうから」 「はーい」 イシシが火に薪をくべて、ノシシがふうっと息をかけると火は一瞬ぼおっと音を立てて燃えた。 「危ないから気をつけるだよ」 「わかったっピ」 元来がお兄ちゃんであるイシシもさることながらいつも甘えてばかりいるノシシもプッペにを弟のように可愛がっている。 そんな3人が微笑ましくて、ゾロリは食事を必要としないプッペのぶんまで美味しく作ってあげようと思うのだ。 キノコだけのキノコ鍋を完成させると、イシシとノシシは満足そうに平らげた。 「んまーい」 「おらもう動けないだぁ〜〜」 「はいはい、じゃあそこに転がって火の番してろ。プッペ、片付け手伝ってくれな」 「はいっピ」 プッペは素直にゾロリに従った。もはやカスしか残らなかったお鍋に、3人分の食器とお箸とおたまを入れて頭の上に乗っけた。 「じゃあ、行こうか」 束子はゾロリが持っている。ゾロリとプッペは仲良く並んで川に向かって歩き始めた。 小さな茂みをいくつか抜けたところでゾロリがあっと声をあげた。プッペがピと顔を上げる。 「どうしたっピ?」 「手ぬぐい忘れちゃった。取ってくるから先に行っててくれ。分かるな、ここをまっすぐ行けばいいから」 プッペがしっかり頷いたのを見て、ゾロリはにっこり笑ってきびすを返した。 小走りに消えていくゾロリを見送ってプッペは言われた通りまっすぐ歩こうとした。 歩こうとして足元を注意しなかった。 「ピっ!?」 プッペは足元にあった小石に気がつかずにつまずいた。つまずいたせいで鍋の中身をぶちまけた。お椀もおたまもお箸もプラスチック製だから割れなかった。 鍋は金属だからもっと大丈夫だろう、と思いきや、その鍋は年季が入っていた。さらにプッペはビルの強化ガラスさえ割るほどの石頭だった。 プッペが転んだ拍子に鍋は金属とは思えぬほど軽やかに宙を舞い、そしてプッペの頭上に落ちてきた。 そして鍋は割れた。 「ピー!?」 プッペが起きあがったとき、彼の目の前には見事に真っ二つになった鍋が転がっていた。 試しに割れたところをあわせてしばらく置いてみたが、くっついているのはほんの一瞬でまたぱかっと二つになる。何度試しても同じだった。 「ど、どうしよう…」 「プッペ? どうした?」 プッペはひと声甲高くピーっと叫ぶとゾロリのほうを向き直った。明らかに身長が違うのでプッペが背中に隠してもすぐにばれてしまう。ゾロリは何が起こったのかすぐに感づいた。散らばっているお椀とお箸もその証拠だ。 「ご、ごめんなさいっピ…」 プッペがしゅんと頭を垂れると、ゾロリはかがんでプッペを見つめた。 「何があったか、話してくれるな?」 ゾロリがいうと、プッペはぽそぽそと話し始めた。転んで、故意ではないとはいえお鍋を割ってしまったことを正直に話してくれた。そして最後にもう一度『ごめんなさい』と言った。 「そっか…お鍋割れちゃったか」 そう言うとゾロリはお鍋をくっつけてみた。すると一度はくっつくもののまたすぐに割れてしまう。 さっきプッペがやったことを、ゾロリもやっているのだ。 「割れちゃったものはしょうがないよな。もうこのお鍋も古かったし…」 「ごめんなさいっピ…明日の朝ご飯…」 まるで消えそうなほど小さくなるプッペに、ゾロリはそっと手を差し伸べた。 「お鍋って、意外とあちこちに落ちてるんだよ。だから大丈夫。心配すんな」 「でも…」 「それよりよくちゃんと話してくれたな。偉いぞプッペ」 「ピ…」 プッペはゾロリの腕にぎゅっと抱きしめられていた。でも分からなくて、プッペは混乱して、ゾロリをぐいと押した。 「ゾロリさん、ボク分からないっピ。窓もお鍋も割っちゃいけないのにどうして怒らないっプ?」 「簡単だよ、ワザとやったわけじゃないからさ」 「プ?」 ゾロリはプッペをまっすぐ見つめた。 「あのな、プッペ。確かに窓ガラスは割っちゃいけない。だけど、例えば火事になったときに、逃げられる場所が窓しかなかったら、プッペはどうする? 窓ガラスを割るだろう?」 「割るっピ」 「世の中にはな、やっていいことと悪いことがある。やらないにこしたことはないけどやらなきゃいけないときもあるってことさ」 いたずらはしても、人に怪我をさせないのが信条のゾロリだ。 「じゃあ、お鍋は?」 「それは事故だよ。プッペがお鍋を割ってやろうと思って割ったら怒るけど、そうじゃないだろう?」 「ボクはお鍋を割りたいと思ったことはないっピ!!」 プッペはゾロリに思いっきり抱きついた。石造りの体は冷たいけれどプッペのあったかい気持ちはわかる。 「ごめんなさいっピ…」 「うん、分かってる。素直に謝れるって、すごい勇気だぞ、プッペ…」 不安に怯える自分の背中をなでてくれる手だけ。プッペには温かいと感じられた。 「でも、今度から足元には注意しような。叱るのはそこだけだ」 プッペが落ちついたころを見計らって、ゾロリはそっと彼を放した。 「お椀とお箸を拾って、洗おうか。な?」 「…はいっピ!」 にっこりと笑いあって、ふたりは散乱した物を拾い集めて洗った。 その夜のことだった。 イシシとノシシ、そしてゾロリとプッペが並んで寝ていると、イシシがのっそり起き出してきた。 「せんせ…せんせ…」 「ん? どうした、イシシ?」 イシシがなにやら起こすのでゾロリも眠い目をこすりながら体を起こした。薄暗い闇の中で、イシシの顔が歪んでいるのに気がついた。 「せんせ、おなか痛いだ…」 「なんだって!?」 ゾロリはがばっと跳ね起きた。これまで怪我とか微熱になら対応してきたがおなかが痛いというのは初めてだ。 膝をすりむいたら消毒して絆創膏を貼ればいい、熱があっても温かいものを食べさせて一晩中抱きしめていれば翌朝には治っていた。 けれど今回は違う、痛みようが半端ではないのだ。 「イシシ、いつからだ?」 「今さっきから…ズキズキ痛いだ…」 体中びっしょりになるほど汗をかきながらイシシはおなかを押さえていた。その騒ぎに、さすが双子、ノシシも苦しそうに起き出した。 「せんせ…」 「しっかりしろ、イシシ…」 ゾロリはイシシをぎゅっと抱きしめて、携帯電話を握った。ただの腹痛ではなさそうだと判断したからだ。 四の五の言っている場合ではない。 折りたたみ携帯を開いてたったひとつ登録されている番号を押した。 こんなとき彼のような存在はとても助かる。こんなときしか頼らないことを彼は寂しいとさえ言うけれど。 イシシを膝に抱き上げて、ゾロリはコール音を聞いた。 しかしいくら待てども彼からの反応はなかった。決して圏外ではないにもかかわらず、だ。 「ちくしょ、なんで出ないんだ!?」 イライラしながらもう一度掛けてみたがまたしても繋がらなかった。こうしている時が惜しくて、ゾロリは頭の中の地図を開く。そしてここからいちばん近い病院を探した。自分たちのような人間でも見てくれるようなところを、ゾロリは数箇所押さえている。 (国立魔法病院…!) そこはかつてダポンと対峙したとき足を骨折したゾロリを治療してくれた病院だった。 魔法の森に関する事件がすべて解決したあとはいつでも来てくれと言われていた。 そのとき、ダポンから傷薬はもらっていたのだがめったに風邪を引かない、腹痛など起こさないのでその種類の薬はもらわなかったのだ。 (備えあれば憂いなしって、ママはあんなに言ってたのに…) 「せんせ…」 膝の上のイシシはいっそう苦痛で顔をゆがめ、ノシシは不安いっぱいでゾロリと兄を見つめていた。いつしかプッペもそばにいる。 ゾロリは決断を下した。 「ガオンと連絡がつかないんだ。今から国立魔法病院にいく。ここからいちばん近いからな。プッペは急いで火を消してくれ。それからノシシはイシシの荷物を持って、それからプッペとはぐれないように俺について来い。イシシは俺が背負う」 そういうと各自が一斉に動き出した。 ゾロリの指示通りプッペはそばの焚き火に足を突っ込んでもみ消した。土偶ならではの荒業だ。 ノシシは荷物を担ぐ前にイシシを背負わせるのを手伝った。ゾロリはイシシを背負うと襷に使う紐でしっかりとイシシを自分にくくりつけた。 「よし、行くぞ」 一行は国立魔法病院への道を急いだのだった。 その頃国立魔法病院では国賓を迎えるという魔法国政府の役人が訪れていた。国賓の急病などに対応するためである。 会議のメンバーの中にロジャーとダポンがいた。 ロジャーは魔法国情報局のエージェント、ダポンは国一番の薬剤師だ。もちろんそれぞれに役割があって呼ばれている。 会議が終了するとロジャーはダポンと連れ立って部屋を出た。 「国賓をお迎えするというのは大変ですね、いったいどなたが来られるんです?」 「この近辺にある大国のシンシア女王陛下と御子息のガオン王子だ」 「そうですか」 そういって入り口の角を曲がったところでふたりはドアを叩く音に気がついた。 「こんな時間に急患ですかね」 「病院の人に知らせたほうがいいな」 ロジャーが向きを変えようとしたとき、彼らはドアを叩いている金色の女性に気がついた。 「ゾロリ!」 「ゾロリさん!?」 ダポンは慌ててドアに駆け寄った。が、鍵がかかっていて開かないのでやはりロジャーが人を呼びに行った。病院は防犯上の都合で対魔法施錠を施しているので魔法では開けられないし通り抜けることもできないのだ。 すぐに鍵を持った当直の医師と看護士さんが来てくれてゾロリたちは病院の中に入ることが出来た。 ゾロリははあっと息をつくとそのままきっと顔を上げた。 「頼む、イシシを助けて!!」 「落ち着いてくれ、ゾロリ。すみません、ストレッチャーを!」 ロジャーは冷静にゾロリからイシシを抱きうけるとそのままストレッチャーに乗せて診療室に運んでくれた。場合によってはダポンの薬が必要なので彼もイシシについていった。 「イシシ…」 運ばれていくイシシを見つめるゾロリの目が薄く潤んでいるのに気がついて、ロジャーは彼女をそっとソファに座らせた。 「大丈夫、今診察しているから。それにしてもよく迷わずにここに来たな」 道に、ではなく、手段として、である。 「命に関わることだったら、悔やんでも悔やみきれないから…」 「…そうだな」 きっとゾロリは自分がかいけつゾロリとして逮捕されてもイシシを救う道を選んだだろう。ロジャーはそっとゾロリの手を握った。 「ロジャー?」 「大丈夫だ、きっと大丈夫だよ」 「…うん」 ノシシはゾロリの横に座って、ロジャーがしたように彼女の手を握り締めた。ノシシ自身、そうしていないと怖くて仕方がなかったのだ。プッペははじめて来る病院にきょろきょろと目を彷徨わせていた。消毒液のにおいが気になるのか、はたまたイシシが心配なのか落ち着かないようで、今度はおろおろと診察室の前を歩いていた。 そこにブーツの足音が響いた。 ロジャーがふと顔を上げると見覚えのある男が立っていた。 「ゾロリ…」 低く凛とした声にゾロリがばっと顔を上げる。彼を見ても、ゾロリは立ち上がらなかった。ノシシの手を解けなかったのだ。 そんな彼女の前に、男は跪いた。 「…遅くなってすまない、ゾロリ」 「…ガオン」 彼の名を聞いたロジャーはあっと声を上げる。今度の国賓来訪の中に彼の名があったはずだ。『地球最後を阻止しようプロジェクト』で出会ったことも思い出した。そのとき彼は『博士』だと名乗っていたのだが本当は王子だったのだ。 が、今の彼は『博士』のなりをしていたのでロジャーはあえてそのように振舞った。 「あなたは確か、ガオンさん?」 「ああ。君は…」 「ロジャーと言います、魔法の国の情報局でエージェントをしています」 彼らは挨拶もそこそこにゾロリがここにいる事情を話し合った。 「そうか、イシシ君が…」 「いつもはこんなことないんだ。だけど痛がり方が普通じゃなかったから…」 「せんせ…」 隣のノシシがゾロリをぎゅっと抱きしめた。 「せんせ、イシシなら大丈夫だよ? おらのお兄ちゃんだもん。おら双子だからわかる。イシシは大丈夫だよ」 そう言っているノシシの体が小さく震えているのが誰の目にも明らかだった。彼はただゾロリを安心させようとして歯をくいしばっているのだ。誰よりも心配なのは母のおなかにいた頃からずっと一緒にいたノシシのはずなのに。 ゾロリの周りに、こんなに思ってくれる人がいる。 「…イシシは大丈夫さ、俺の弟子だもん。ノシシ、ありがとう」 「うん…」 ゾロリがノシシの頭を撫でたとのとき、診察室からイシシの叫び声が聞こえてきた。 部屋の前にいたプッペがびっくりして転んだ。 「イシシ!」 「やだあああ!! おら、そんなでっかい注射嫌だああああああああああああああああああああああ!!」 廊下いっぱいに響く声に何事かと一同は不安になった。ノシシがゾロリから離れて診察室にかけていく。ゾロリも後を追った。 「イシシ!!」 二人が診察室に駆け込もうとする前に、カラカラと引き戸が開いた。 イシシは綺麗な女性の看護士さんに抱っこされてどこかに連れて行かれるようだ。ゾロリが声をかけようとすると看護士さんはにっこり笑って会釈してくれた。 「大丈夫ですよ、先生からお話がありますので」 「は、はあ、ども…」 看護士さんの腕の中のイシシはえぐえぐしゃくりあげながら『男の子でしょ、泣かないの』とたしなめられていた。 ゾロリはイシシを診察してくれた先生から話を聞くために中に入った。 「あの…」 医師はゾロリを見て微笑むと座ってくださいと椅子を勧めた。 「先生、イシシは」 「…便秘ですね」 「はあっ!?」 医師の説明にゾロリは素っ頓狂な声を上げた。あんだけ大騒ぎして便秘だとは。 と言うことはさっきイシシが大騒ぎしていた『でっかい注射』とは浣腸のことだったのだ。 「多分胃腸にはなんの異常もありませんね。小さい子は便秘でおなかが痛くなることもあるんですよ」 食事と水分摂取に気をつけるように指示されたゾロリはほっと胸をなでおろした。 「よかった…」 「出るべきものが出れば元気になります」 魔法治療なし、投薬のみ。 医師がカルテの続きを書こうとしたとき、後ろで大きな音がした。緊張の糸が切れたゾロリが気を失って椅子から落ちたのだ。 「せんせー!!」 「ゾロリさん!?」 ノシシとプッペがゾロリを助け起こし、柔らかな頬をぺちぺちと打った。 そこにガオンとロジャーが駆けつけてきた。 「ゾロリ!?」 立て続けの病人(?)にその夜の病院は大騒ぎとなった。 ゾロリはそのあとすぐ目を覚まし、出るものの出たイシシはさっぱりした顔でゾロリたちの元に戻ってきた。 「せんせー」 「イシシー、良かったな、心配したんだぞ」 「エヘへ、ごめんなさいだぁ」 イシシはいつもの笑顔に戻っていた。そしてその夜はせっかくだからとガオンが泊まっているホテルに部屋を取ってもらうことにした。 「じゃあお前ら、ここで大人しく寝てろよ」 「はーい」 いつもならぎゃーぎゃー騒ぐイシシとノシシもゾロリに心配をかけたんだからと大人しくガオンのところに送り出してくれた。 「…すなまい、電話に出られなくて」 「仕事してたのか?」 「ああ、来月早々にも母上とこの国を訪れることになっていてね、会議中だったんだ」 「じゃあ…」 ガオンはゾロリの言わんとしていることを察した。 「君からの着信を確認した。GPSを使って君が移動しているのも確認できたんで、ヘリで追ってきたんだ」 ガオンがヘリを出している間にゾロリはイシシを担いで既に病院に到着していた。 「わざわざ、俺のために?」 「言っただろう、君のためなら何でもすると。私はそのための力を持っている」 「…本当は、怖かった」 「ゾロリ…」 ゾロリは手近なソファに腰掛けたまま少し俯いて、言った。 「お前と連絡が取れなかったとき、泣きたいくらい怖かったんだ。でも俺がそこで泣いたら、ノシシもプッペも心配するだろう、イシシも苦しんだまま。だから…」 自分の中にガオンを頼る気持ちがあった。それほどまでにこの男が自分に捧げてくれた想いの強さに安心していた。 得られないときの恐怖をひどく感じるまでに。 彼のすべてを愛しく思った。 それが、ガオンには嬉しかった。強く凛とした彼女も、強いままではないとわかっている。父親とニアミスしたとき見せた涙をガオンは今でもよく覚えている。 悲しいこと、寂しいことが嫌いだから笑っている、そんな彼女をずっと守りたいと思った。 「わかっただろう、私は何があっても君と、君の周囲を守るよ」 「ガオン…」 自分の隣に座ったガオンに、ゾロリは迷わず抱きついた。 抱きついて、わずかに泣いた。 「ガオン…ガオン…」 「泣きたいだけ泣いたらいいよ。そばにいる。抱きしめているから…」 「…欲しいって、言ったら?」 「…君の望むままに」 ガオンは顔を上げてゾロリの頬を撫でた。薄く濡れた頬に触れ、指先がしっとり濡れている。 「ゾロリ…」 なにも言わず、ガオンはゾロリに口づけた。 包み込んだ頬がほんのり紅潮しているのを見て、ガオンはわずかに微笑んだ。泣いているのと、照れているせいで染まる薄紅の頬が可愛かったからだ。 唇を離し、もう一度抱きしめると、ゾロリはそっとガオンの首筋に抱きついてきた。 「なあ、ガオン…」 「なんだい?」 少し体を離したゾロリは、上目遣いでガオンを見つめる。 「あのさー…」 「ん?」 「…おなか空いた」 彼女の言葉にガオンは嘆くか怒るか、迷った。 こーゆーシチュエーションで出る言葉が『おなか空いた』では期待しかけた機能が無駄に思えてならない。 しかし『君の望むままに』と言ってしまった言葉を翻すことも出来ない。 「…ルームサービスでいいかな!?」 「うん」 ガオンはため息をつくことを選んだ。ゾロリはソファの上で御機嫌でメニューを見ている。ふりふりと尻尾を振る姿にほだされたのは間違いなく自分。 こうなったらとことん付き合わなければならないことも知っている。 「決まったかい? なんでも好きなものをどうぞ」 「海鮮五目焼き蕎麦辛子つき。フカヒレスープつけて」 「…仰せのままに」 ガオンは備え付けの電話からルームサービスを注文した。背後から飛んできた『杏仁豆腐もー!!』という声にもめげずに。 電話を終えるとガオンはつかつかとゾロリのそばに歩み寄った。 「…なんか怒ってる?」 「別に」 「安心したらおなか空いちゃったんだもん」 なおも黄色の尻尾をふりふりされると弱い。そしてつられるように自分も尻尾を振っているのに気がついて、ガオンはたまらず左手で顔を覆った。 「…お前がいてくれたから、安心できた。ノシシやプッペが俺を元気付けようとしてくれたのはもちろん嬉しかったけど…やっぱりどこかでお前にすがってる自分がいるんだなーって思ったよ」 「ゾロリ…」 さりげない独白にガオンは顔を上げる。ゾロリが少し照れくさそうに笑っているのが見えた。 「…いつまでもお前を一人にはしないよ。それは約束する。だからもう少しだけ…」 欲しいのは、時間。 心も体も、とっくに重ねて交し合った。そしてそれは銀の指輪の形を取って証となした。 ガオンは自分が座っていたソファから離れ、ゾロリの傍らに立った。 そして王子の風格を見せる。彼は王子でありながらゾロリの前に跪き、細く柔らかなその手を取って口づけた。 「いつでも君を思ってる。離れていても、心はそばにいることを忘れないでくれ…」 「うん…」 抱きしめあえばそこにほら …ルームサービスがやってくる。 絶妙のタイミングで注文の品を持ってきたボーイはガオンからチップを受け取って嬉しそうに帰っていった。 「ほーら、お姫様。御注文の品だよ」 ほくほくと湯気を立てる海鮮五目焼き蕎麦辛子つきはゾロリの大好物だ。 彼女は食べるという行為に貪欲だ。食べられるものは徹底的に食べる。残したりムダにするなんてとんでもないという、ごく当たり前のようでいて、でも立派な思考の持ち主だった。好き嫌いは基本的になく、毒と腐りものには手を出さない。 目の前のぷりっぷりのエビを見て、ゾロリは黒い瞳を輝かせた。 「んまそ〜〜、いっただきまーす」 まずはエビに手をつけるゾロリを、ガオンはどこか幸せそうに眺めていた。 「? どーした?」 見つめられていることに気がついたゾロリの口からわんとはみ出すエビの尻尾。ガオンは迷わず尻尾を食いちぎった。 「!?」 エビの尻尾など食べる部分ではない。分かっているはずなのに何故か食んでみたくなったのは彼女のくちびるが美味しそうだったからに他ならない。 ガオンはエビの尻尾を吐き出すと口を押さえているゾロリに向き直った。 「食べやすくなったろう?」 「…なに考えてんだ、お前」 「いやなに、君がいとおしいから」 そういった瞬間、ゾロリの動きが止まった。喉に詰まらせているようだ。 「…大丈夫かい?」 「メシくらい、フツーに食わせろ…」 それから彼女は杏仁豆腐の上に乗せられている莇の実まで残さずしっかり食べたのだった。 すっかり満腹になったゾロリは行儀悪くもソファの上に転がった。ガオンはカートを部屋の外に出しに行って戻ってきたところだった。 「こら、寝るならベッドで寝ろ。風邪を引くよ」 「ん〜、お前が一緒なら寝る〜〜」 ズギューン、と、何かがガオンを射抜いた。初めてではないのに毎回ドキドキする。 海鮮五目焼き蕎麦をおいしくいただいたゾロリを、おいしくいただくのもアリだ。 ガオンはそっとゾロリを抱きあげてベッドに運んだ。 でも何もせずにそのまま寝かせた。彼女は既に寝息を立てていたからだ。 「君には振り回されっぱなしだな」 だがそれがいい、と、自分の中で囁いた。 彼女と出会ってから自分は変わったんだと思う。これまで王子として重臣たちを振り回してきた自分が誰かに振り回されるという体験を持って、彼はまた王子として進化していく。 そして人知れず牙を磨き、爪を尖らせる――狼の誇りとともに。 彼が守りたいものすべてを漏らさず守るために。 (だが…) 無意識に抱きついてきたゾロリをそっと我が腕に抱いてガオンは小さく微笑んだ。 その牙と爪で彼女を裂いてしまわないように、そっとそっと抱きしめる。 『愛してる』なんて言葉がどれだけ役に立つのかは知らないけれど、でも。 (愛してるよ、ゾロリ…) 言わずにはおれない。 翌朝いちばんに目を覚ましたのはプッペだった。 おばけの彼は元来あまり睡眠を必要としないためか起きるのが早い。 ベッドから降りてよいしょと背伸びしてドアを開ける。ソファのおいてあるリビングを抜けてもうひとつ隣の部屋にいく。 そこにゾロリとガオンが寝ていたのだが、プッペにはベッドからはみ出すゾロリの尻尾しか見えなかった。 「まだ寝てるっピ…」 プッペは静かにドアを閉めてもといた部屋に戻っていった。 それからしばらくゆっくりと昨日のことを思い出してみた。 イシシが『おなかが痛い』と言って倒れても、ゾロリは冷静な判断を下して行動した。 すごいと思った。自分ならきっとおろおろとうろたえて、誰かを呼びに行ったかもしれない…いや、呼びに行ったかどうかもわからない。 でも、強がることもないんだとゾロリは教えてくれた。 ロジャーという男の人に『イシシを助けて』と叫んだ彼女はいつものゾロリではないような気がした。 ゾロリの中にも不安や寂しさや悲しさがある。 問題はそれらとどう決着をつけていくか、なのだ。 ノシシも、ゾロリと同じだ。 双子の兄であるイシシの急変に不安と心配でいっぱいだったのに、ゾロリを励ますほうを選んだ彼の選択はある意味でとても強くて優しい決断だった。 みんなどこかで頑張って、でも決して一人ではないんだと知っている。 プッペはちょっと前にガオンが言っていたことを思い出した。 ――ゾロリにはいろんな友達や仲間がいるからね。おばけや妖怪、海賊に魔法使い、科学者、そして…王族とかね そう、彼女の周りにいろんな人がいるんだと、プッペは改めて知った。 じゃあ、自分の周りは? プッペは指折り数えてみる。 プラスのデンキウナギさん、ゾロリさん、イシシさんとノシシさん。ガオンさん…もいいのかな、と悩みつつ勘定に入れた。 それから、旅で出会ったいろんな人。 人だけじゃない。目に映る景色も、流れていく光と風も、そして経験も。 プッペはスポンジが水を吸うようになんでも吸収した。 ゾロリが直接教えてくれること――食べられるキノコとそうじゃないキノコ、火の起こし方と消し方。イシシとノシシの喧嘩の止め方。 そしてさりげなく感じて学んだこと――人を悲しませたり、傷つけたりしないこと。何事にも本気で取り組むこと。 誰かを大事に思うこと。 一人だと思わないこと。 強く優しく、そして素直であること。 (ボクは…みんな大好きだっピ) いとおしくて、プッペはにこおっと笑った。 でも…ボクは好きだけど、みんなは? カッチーナはプッペのことを弱虫ちびだといって嫌っていたみたいだった。他のおばけたちも、きっと。 今度はしゅんと肩を落とす。 これが甚だしい勘違いだと知るまでにそう時間はかからない。 かからないけれどそれはプッペにとっていちばん大好きな人たちとも別れでもある。 今は誰も、そのことを知らないけれど。 プッペは顔を上げた――勇気の種が少しずつ芽吹いていたから。 イシシとノシシがのそのそと起き出してきた時、ゾロリとガオンはすでに朝食を取っていた。プッペはゾロリの横にちょこんと座っていた。 なれない手つきで入れてくれるお茶も、微笑ましくておいしかった。 「あーん、せんせズルイ〜〜」 「起こしたけど起きなかったのはお前らだろーが!」 「おなかすいただよ〜〜」 イシシがそういうとゾロリはふっと相好を崩した。茶色の髪を優しく撫でる。 「おなかすいたなら大丈夫だな。ふたりで下のレストランに行ってこい、朝食は食べ放題バイキングだから」 「食べ放題!」 「食べ放題!」 ひゃっほーいと声を上げて双子は一目散に部屋を出た。 「廊下は走るなー」 「はーい」 お返事だけちゃんとして、イシシとノシシは廊下を駆け抜けた。 「やれやれ、食べつくさなきゃいいけど」 「それは無理な相談と言うものだろう」 ガオンは『パーティーの料理を子供二人に食べつくされた』と料理長に泣きつかれたのを思い出した。けれどここは魔法の国、何とかなるだろうとも思った。 「まったく、君の周りには幸せがいっぱいだな」 「…だーかーら。それはいずれちゃんと分けてやるって」 「よろしく頼むよ」 食後の紅茶を楽しんでいたガオンはそれからしばらくしてやってきた請求書を見ても驚かなかった。 なんのことはない、大人ふたりと子供ふたり、それに魔法の国ならではのその他お一人の宿泊料金に昨夜のルームサービス代、朝食ビュッフェ子供ふたり分の請求ですんだのである。もちろん、レストランの朝食はイシシとノシシによって食べつくされたことは言うに及ぶまい。 ホテルをチェックアウトすると、ガオンは待機していたヘリに乗り込んでそのまま自国へと戻っていった。 「十分気をつけて。それから…愛してるよ」 「早く帰れ、みんな見てるだろ」 ヘリの周りに何事かと人だかりが出来ていた。 本当は口づけをしたかったのだがバラを投げて寄越すに留めた。 高く遠ざかっていくガオンのヘリを見送ってゾロリは国立魔法病院へ赴いた。イシシをもう一度診てもらうためである。 イシシはもうなんともなかった。 「やっぱり腹痛と風邪の薬も持っていたほうがいいですよ。傷薬もね」 ゾロリはダポンと薬剤室にいた。イシシとノシシはプッペをつれて魔法学校へ。ネリーちゃんに会いに行ったのだ。 「悪いね、ダポン」 「いいんですよ。ゾロリさんたちのおかげで私も…今こうやって病院でも働かせてもらってますからね」 鎮痛剤を作るためにダポンは三日に一度、病院の薬剤室に来ているのだと、あとからやってきたロジャーに聞かされた。 「君が駆け込んできたときは幻かと思ったよ」 「ここがいちばん近かったんでね。ところでミリーさんは?」 「ああ、元気だよ。あとで会ってやってくれ」 「そうするよ」 ゾロリは何気なく笑みをこぼした。 ひとりで生きて、一人で死ぬ。 そう思って踏み出した一歩、それはもう遠くに思えた。 そしてひとりじゃないんだってことがプッペにも…いや、誰にでも伝わればいいんだと思う。 『いとおしくて』 言葉に出来ないほど、いとおしいから。 その日のうちに、ゾロリたちは魔法の国を発った。何かあったらまた頼ってほしい、という優しい言葉をもらって。 「ま、よくなってよかったな。イシシ」 「よかったっピ」 イシシはエヘへと照れ笑い。その横で今度はノシシが難しい顔をしている。 「どーした、ノシシ。おまえもか?」 なにやら考え込んでいたノシシはゾロリに見つめられてぶんぶん首を振る。 「な、なんでもないだ…」 「なんでもなくはなさそうだな…」 じいっと見つめられてもノシシは何も言わなかった。そのかわりゾロリはノシシの向かって右の頬が腫れているのに気がついた。 「あっ、あれはなんだ!?」 「えっ? どこどこ?」 ゾロリの指が天を指す。つられてノシシが口をあけて上を向く。ゾロリはその隙を逃さず、ノシシの口に指を突っ込んだ。 「ふがっ!?」 「古典的なイタズラにひっかかりやがって」 なになに? とまだ上を探しているプッペに、イシシが『口を開けさせる作戦だ』と教えてあげている。 「ほら、口を開けろ…開けろって!!」 ふがふがと抵抗するノシシの口をゾロリは強引にこじ開けた。見れば下の奥歯、左右ともぽっかり穴が開いている。 「…虫歯か」 ゾロリはふうとため息をつく。虫歯の治療は早いほうがいい。 「…魔法の国に戻るぞ」 即日戻ってきたゾロリたちにロジャーは唖然としつつも歯科医を紹介してくれた。 歯医者さんには別れたばかりのネリーとミリーも来ていた。 「ゾロリさん」 「ノシシが虫歯で…。ちょーどいいや、イシシ、おまえも診てもらえ」 「お、おら虫歯はないだよ!」 「いーから行って来い!!」 ふたり一緒に診察室に放り込む。 「魔法の国の歯医者さんって、魔法でやるから痛くないんだろ?」 ゾロリの言葉にロジャーたちが顔を背けた。全力で否定している。 「え、ちょっと」 尋ねかけたゾロリの耳に双子の絶叫が聞こえてきた。 国立魔法病院では、実は重篤な、あるいは急を要する症状以外には魔法治療はしないという方針なのだ。すぐに、なんの痛みもなく治ることに慣れてしまうのはよくないという意見が出たためで、多数の医者が賛同した。 そういうわけで歯医者さんでの魔法治療はほとんど行われないのが慣例となっている。 「ここの歯医者には私も小さい頃通ったんだが…麻酔なんかしなくても大丈夫だって先生が…」 麻酔なしで虫歯を削られた幼いころを思い出し、ロジャーの顔が青くなる。 「名医なんですけどねぇ…」 ミリーの呟きを、双子の絶叫がかき消した。 「助けてせんせー!! 殺されるー!!」 「そんな大げさな」 またしてもロジャーが顔を背けた。 イシシとノシシは半べそをかきながら出てきた。 「せんせー…」 「よく頑張ったな、エライぞー」 誉められても撫でられてもあんまり嬉しくなくて、双子はじいっとゾロリを見上げた。 「な、なんだよ」 「虫歯治ったんだから、腹いっぱい食うだよ」 「んだ」 「わかったよ」 というわけでゾロリは普通のレストランでおなかいっぱい食べさせた。 「うまいかあ?」 「んまいだ!」 「歯が治ると何でもうまいだね〜〜」 ガオンと一緒にいても舌が肥えなかったのは不幸中の幸いだった。虫歯の憂いがなくなったノシシが実においしそうに食べているのは嬉しいのだけど。 財布は肥えずに逆に痩せていくばかり。 (ま、いっか) 大事な人たちが、元気でそして幸せでいてくれたらそれでいい。 もりもりとご飯を食べる双子と、すくすく育つプッペを見つめて、ゾロリは幸せそうに微笑むのだった。 いとおしくて言葉に出来ない だったらぎゅっと抱きしめて 悲しみも寂しさも、強さも優しさも ≪終≫ ≪かわいければすべてよし≫ それでいいのか自分wwww 今回は『プッペに学んでほしいこと』のひとつとして書いてます。 タイトルは緒方恵美さんの同名の楽曲より。 せんせにも不安こととかあって、困った時には素直に助けを求める、そして回りに誰もいないんじゃなくて、必ず誰かいてくれるし、そんな人たちを自分で見つけていかなければいけないんだってことを、気がついてくれるかなって。 せんせとガオンの関係も、ロジャーたちとのこともせんせがひとつひとつ築き上げてきたものだっていうことが書きたかっただけです。それが伝わればいいです。 |