輝く運命はこの手の中に 〜映画『メイド・イン・マンハッタン』より



空は灰色だった。でも心はばら色だった。
なぜなら彼は見つけてしまったからだ、この世でたった一人『妻』と呼ぶべき女性を。
そして彼女は今、自分の横で寝息を立てている。



ホテルの廊下で小さな双子の男の子が客の荷物を運んでいた。小さくとも一生懸命に働くその姿は客の目を引き、このホテルの客寄せにもなっていた。
双子の名前はイシシとノシシ。茶色の耳が愛らしいイノシシの双子だ。
もともと小間使い程度の仕事しかさせられないが、その愛くるしい姿からいつしか固定客もついた。チップだけでもかなりの稼ぎになる。
「じゃあ頼んだよ」
「任せてほしいだよ〜」
ふたりで一緒に手を上げる姿に老年の夫婦は相好を崩した。なんとも孫を見ているような雰囲気である。二人はよっこらしょっと掛け声も勇ましく荷物を持ち上げた。そして老夫婦を部屋に案内しがてら荷物を運ぶ。
「足元に気をつけてほしいだよ」
「おら、手を引いてあげるだ」
そんなさりげない優しさで彼らはいつも人気者なのだ。
そのころ上の階では手際も鮮やかにベッドメイクを済ませる一人の女性がいた。金色の髪に尻尾、黄色い耳をピンと立てている。のんきに鼻歌など歌っているがその手は一向に休まらない。シーツよし、枕よし、カーテンよし、カーペットよし。いろいろ指差し確認しながら取り替えたシーツを抱えて急いで部屋を出る。洗濯物用のワゴンに乱暴に突っ込んで、彼女はほおっと息を整えた。そして目の前に立ちはだかるドアをノックする。
「お客様、お呼びでしょうか」
ドアごしに聞こえた声は横柄だった。こういう客は珍しくない。彼女はもう一度深く息を吐いてそのドアを開けた。
部屋にはドレスが溢れていた。備え付けの大きな姿見の前で女性がドレスをひっかえとっかえしているのだ。あれでもないこれでもないとベッドの上に投げ捨てられていく。客は女性2人で、姉妹であった。姉はシンディ、妹はレイラと言う。
ドレスを選んでいるのは妹のレイラのほうだ。シンディは入ってきた金色のメイドを目の端に捕らえると、ぽんぽんとレイラの肩を叩いた。
「ほら、来たわよ。えーっと」
「ゾロリでごさいます、お客様」
「そうそう、ゾロリさんだったわね。妹のドレスを見たててやってちょうだい」
彼女――ゾロリは内心でまたか、とつぶやいた。山と積まれた衣装の中からふさわしいものを、と言われても自分の仕事は掃除と給仕だけなのだ。それでもこの二人はホテルにとって常連の上客であるが故に扱いは慎重にと言われている。
ゾロリはベッドの上から数枚のドレスを抜き取った。
「今度はどのような会合なのです?」
ゾロリがそうたずねると、鏡の前の妹が体ごとゾロリに向き直った。
「大会社の創立記念パーティーなの。そこで御曹司と出会って恋に落ちたりしてぇ…うふふふふ」
そう言って衣装で口もとを隠して笑う妹にゾロリはアホかと突っ込んだ。もちろん、声にも態度に出さずに。
ただにっこり笑ってドレススーツを何点か示す。
「こちらのライトグレーかブラックのドレススーツがよろしいですよ。創立記念パーティーなら華やかさはもちろん、クールに出来る女を演出するのが一番!」
「んー、でもねぇ」
地味じゃないかと言わんばかりのレイラにゾロリはすかさずアクセサリーを提示する。
「このダイヤのネックレスをあわせれば地味にはなりませんわ。これと揃いのピアスもつけて。そう、パンプスはヒールの高いものを…そう、こちらなんかいいですわ」
彼女の首元にネックレスを添えながら、ゾロリは一生懸命に微笑んだ。正直に言えばどうでも言い話である。
それでもレイラはゾロリの案を気に入ったのか、不敵な笑みを見せた。
「よし、これにするわ。今からシャワーを浴びるから、ここ片付けておいて。ああ、それからこのスーツはクリーニングにね。そうそう、ベージュじゃなくてライトベージュのパンストもお願い。このメーカーのね」
「…かしこまりました」
ゾロリは代金を前金で受けとってから部屋を出た。どうせ掃除をするのは彼女らが出かけた後なのだ。廊下の隅の見えないところに隠していた洗濯ワゴンを押しながら彼女は詰所に戻った。そして客の依頼で外に出ると告げてデパートに向かった。
メイド服の上にしっかりコートを着込んで外に出る。マンハッタンの石畳の上を歩きながらふと空を見上げた。
(…ママ)
ゾロリの母親は、まだ幼いゾロリを残して天国に召された。父親が失踪してすぐのことだった。それ以来彼女はずっと一人で生きてきた。自宅の小さなアパートと職場であるホテル、そしてスーパーマーケットと、客の依頼で出向く高級デパートだけが彼女の世界だった。
「せんせー」
少し急ぎ足だった彼女の歩みを止めたのは、例の双子だった。ゾロリは双子を見ると途端に笑顔になり、視線を合わせるためにしゃがんだ。
「イシシとノシシ。あ、お客さんをご案内してるのか」
ゾロリの言葉にイシシとノシシはにっこりと笑った。先ほどの老夫婦がにこにこと微笑んで立っていた。
「マンハッタンを案内してるだー」
「せんせはなにしてるだか?」
「おつかいなんだ。おまえら、気をつけていけよ。それでは」
最後は客人に向けたものだった。ゾロリは丁寧に一礼すると足早にその場を去った。すぐに人ゴミにまぎれてしまったが、黄色の耳と金色に輝く髪のおかげですぐにわかる。
イシシに手を引かれていたご主人がそっと尋ねた。
「どうして先生なんだい?」
聞かれたイシシとノシシはにっこり笑った。
「おらたちにお仕事を教えてくれた人なんだ。だからせんせなんだ〜」
「せんせはお仕事が上手で、とっても優しい人なんだ」
「まあ、そうなの」
そういって婦人は品よく微笑んだ。その微笑に、イシシとノシシも返すようににこにこと笑った。でも。でも、本当に笑ってほしい人は、笑ってくれない。
彼女は笑顔を作ることに、慣れてしまっていたから。


ある日ゾロリは上からの言いつけでとあるスイートルームを担当していた。
そこに滞在する客は上客中の上客であるから、ほんのわずかなミスさえも許されないと言われている。しかしやることにかわりがあるわけでもなく、ゾロリはいつもより少し丁寧に黙々と仕事をこなした。
その上客というのは下院議員だった。代々議員を務める家柄のお坊ちゃんで、今度上院議員選挙にも出るのだという。
彼は飼い犬とともに宿泊していた。
彼がリビングで話をしている間にゾロリは急いでベッドをメイクしていた。まさか予定時間よりも早く来るとは思っていなかったのだ。
「時間通りに来やがれってんだ」
時折聞こえてくる笑い声にゾロリのさして太くもない堪忍袋の緒はあっさりと切れた。が、声を立てて暴れるでもなく、ただフフフと笑いながらベッドを美しく整えるのであった。
そして運命は意外なところに転がっている。
トイレの備品を確認しようと向かった先で、彼とばったり出くわした。
お互い顔を見合わせ、そしてゾロリは何もなかったかのようにドアを閉めて立ち去った。
…これが最初の出会いだったのだ、冗談でもなんでもなく。



頼まれていた買い物を済ませてホテルに戻り、さらに部屋まで出向くと姉妹はちょうど出かけるところだった。
「よかったー、パンスト間にあってぇ。じゃあお部屋の掃除お願いね」
「お戻りは?」
「んー、うまくいったら今日中には戻らないかも」
そういってにこやかに手を振る姉妹に、ゾロリは丁寧に頭を下げつつ、けっ、と侮蔑の色を滲ませた。
しかし上げた顔はいつもの様ににこやかで、通り過ぎる男性客を虜にした。
「さて、部屋の掃除でもしますかね」
そういうとゾロリはパンと腰を叩いて気合を入れるとまずベッドの上に山積みにされた衣装類にとりかかった。一枚一枚はゾロリからすればかなり高価なものだった。聞いたことのあるブランドのものも多い。
「はー…お金持ちは違うねぇ」
ゾロリは一着のスーツを取り上げた。ホワイトともライトグレーともつかぬ色合いのジャケットにパンツがセットになっている。先ほどクリーニングにと言われたものだ。インナーには白のYシャツでも黒のカジュアルなTシャツでも似合うと思う。
「…どうせクリーニングに出すんだし、ちょっとくらい…いいよね?」
風もないのにカーテンがふわりと揺れた。
ほんの小さないたずら心が、彼女の運命を大きく変えることなど、このときは誰も知る由もなかった。
外に誰もいないことを確認して、ハンガーから服をはずす。そしてメイド服のエプロンを取り、黒のワンピースを脱ぐ。
鏡の前に立って、インナーに選んだ黒のシャツに手を通した。パンツをはいてベルトを締める。最後にジャケットを羽織ると、ほおっとため息が聞こえてきた。
ゾロリは驚いて声のほうを振り向いた。そこにはいつの間に入ってきたのか、イシシとノシシが目をキラキラさせて立っていた。
「なっ…いつの間にっ…」
「そんなことはどうでもいいだよ、せんせ…」
「きれいだなぁ…」
ふたりはひょこひょことゾロリに近づくと上から下までじっと見て、それからもう一度ため息をついた。
「髪は下ろしたほうがもっと可愛くなるだ」
そういうとイシシはひょいとゾロリの髪から髪留めを奪った。金色の光を弾きながら髪がさらりと彼女の背中に流れる。
「んでもって、オレンジのリップがいいだよ〜」
「そ、そうかなって、そうじゃないだろ? この服はクリーニングにって言われてるんだ。お客様のものに勝手に手を出したらいけないんだよ」
「でもよく似合うだよ」
二人の揃った声に、ゾロリは鏡の中の自分を見つめた。こんな機会がなければもう二度と着ることもないだろう。
心はだんだん動かされていく――ちょっとだけなら、と。
「ここはおらたちが片付けておくだよ。だからちょっと散歩してきたらいいだよ」
「え、でも…」
「いいからいいから」
そういうとイシシとノシシはゾロリを丁寧に部屋から出した。
「じゃあ…頼むな、なるべく早く帰ってくるから」
「ゆっくりでいいだよ」
そうしてゾロリは運命への一歩を踏み出した。ほかのメイドに見つからないように、あくまで隠密にではあったが。


しばらく散歩していると後方から一匹の犬が突進してきて、ゾロリは服を汚さないようにと必死で避けた。
さらにその後ろから飼い主と思われる男が慌てて走ってきた。
「ルーファス! だめじゃないか! 大丈夫ですか!?」
ルーファスと呼ばれた犬はゾロリの前にちょこんと座った。大人しくしていればなんとも可愛い犬である。駆け寄ってきた男に、ゾロリは驚きながらも応じた。
「は、はい…」
男は、トイレで出会ったあの上客だった。下院議員で名前は確か…
「私はガオンというものです、私の犬が失礼しました。あまり誰にもなつかないのに…よほどあなたを気に入ったと見える」
「そうですか…」
ゾロリはそれだけ言った。それだけしか言えなかった。
彼の笑顔が何よりも眩しくて、本当の貴公子というのは彼のような人物を指すのだと知った。こんな仮初の自分なんか、到底及ばないと。
そう思ったとき、彼女は皮肉を込めて笑っていた。
はじめから、及ばないのだ。
自分はメイド、彼は上院議員さえ狙えるエリートで。
今着ているものを脱いでしまえばいつものゾロリに戻るだけ。それだけだ。
「あの…」
「あ、いいえ。なんでもありません」
ゾロリはにっこりと笑った。
「お名前を教えていただけますか?」
「…何のために?」
ゾロリがそう言うとガオンは一瞬答えに詰まった。が、迷うことなく言った。
「…あなたをランチに誘いたいのです」
ゾロリは名を告げた。
そこですべては終わるはずだった。


次の日、いつもの部屋にいくとレイラがうきうきと鏡の前に立っていた。
「ご機嫌ですね、何かおありになったんですか?」
ゾロリがそういうとレイラは気色悪いほど満面の笑みを見せた。
「そうなの! 下院議員のガオンにランチに誘われたの。いずれ上院議員になる人よ、考えただけでうきうきしちゃう」
「よかったですね」
「ねぇ、あの服もうクリーニングに出しちゃった?」
テーブルの上を片付けていたゾロリを身ながら、レイラはどっかとソファに腰掛けた。
「いいえ、もしかしたらお気が変わるかもしれないと思ってまだクローゼットに」
「…あなたって気が利くわね、私の秘書にしたいくらい」
「ありがとうございます」
ゾロリは丁寧に頭を下げた。
彼女があの時告げた名は自分のものではなく、この部屋の現在の住人であるレイラのものだった。
レイラはゾロリのコーディネートしてくれた服を着てうきうきと外に出た。
が、間が悪い時は完全に間が悪かったりするものである。
「は!? 私が!?」
「そうよ、だってあなたはチーフになりたいんでしょう? そのためにはテーブルセッティングはきちんとできなくては。今日はいい練習になるわ。行ってらっしゃい」
「は、はぁ…」
選りによってあの部屋のテーブルセッティングを仰せつかろうとは、思いもしなかった。
ゾロリは給仕のプロとも言うべき給仕長の指導の下、ガオンとレイラの昼食を給仕することになってしまったのである。


その頃、ガオンはといえば部屋をうろうろして落ち着かない様子であった。
秘書のロナルドがルーファスと戯れながら呆れた様に彼を見ている。
「落ち着けって、ガオン。君の愛しいご婦人は必ずやってくるよ」
来るか来ないか――返事は聞かなかった。
彼女は名を告げたあと、微笑みながら木枯らしとともに去ってしまったのだ。同じホテルに泊まっているレイラだと、彼女は言った。
「レイラか」
ガオンはポツリと呟いた。
柔らかな金色の髪に、闇色の瞳。黄色の耳にふわふわの尻尾。
このマンハッタンに天使が落ちてきたのかと思った、とはガオンの言葉である。それほどまでにレイラと名乗った女性はガオンの心を捉えた。
先ほど絶対に来るといってしまった彼だが、ガオンのそわそわと落ち着かない様子に言葉を変えた。
「来てくれるといいねぇ、君の想い人は」
「…来るさ、必ず」
ガオンは何故か絶対の自信を持っていた。自分は下院議員で、地位も身分もある。財産もある。それに自分でも言うのもなんだが見栄えは決して悪くはない。むしろいいほうだと思う。
こんな自分を放っておく女がいるとは思わなかった。
そう、彼女以外には。
予定時刻より少し前に、レイラはガオンの部屋にやってきた。
「お招きいただいてありがとう、ガオン!」
入ってきた女性に、ガオンは目を丸くした。あの日の女性とは似ても似つかない女性が入ってきたのだ。
姿だけではない、声も、振る舞いもまるで違う。
「どうなさったの?」
「ああ、いえ、お越しいただいて嬉しいですよ、レイラ」
そういってガオンは不本意ながらも彼女の手をとり、指に唇を押し付けた。彼女は尊大に笑った。
「給仕長!」
彼はこっそり囁いた。
「本当に渡してくれたんだろうな」
「ええ、レイラ様にお渡しいたしましたが…何か?」
「違う女性が来たぞ、どうなっているんだ?」
給仕長はガオンと、レイラとを見、そして隣の部屋で何故か顔を隠しながら仕事をしているゾロリを思い出してははーんと察した。
「確かに申し付けられたとおりに、レイラ様に伝言をお渡しいたしました」
「じゃあ、あれは誰だったんだ?」
彼が出会ったというマンハッタンの天使は、実は隣の部屋にいる。


給仕はほとんど給仕長が行った。ゾロリは隣の部屋にこもったままほとんど出てくることはなく、それゆえに正体を知られることもなかった。
「彼が呼びたがっていたレイラは、君だね?」
給仕長の言葉にゾロリはびくっと背中を逆立てた。
「な、なんのことですか?」
「とぼけなくてもいいよ。長年こういった仕事をしているとなんとなくわかるものさ」
彼は人のいい笑みを浮かべた。が、きっと表情を変えてゾロリに向き直った。
「だが、シンデレラの夢は12時の鐘とともに潰えるものだよ」
「給仕長…」
ゾロリは胸の前で手を組み合わせた。
そう、自分に掛けられていた魔法はほんの一瞬。そして王子様に出会ってはいけなかったのだ。
「ゾロリ君」
「はい」
「どこかで終わりにしないと、君は不幸になる。君は私の教え子の中でももっとも優秀だ、失いたくない」
ゾロリは泣きそうになるのを堪え、そっと目を閉じた。
「…はい」
もう、魔法を解かなくては。
いたずら心と、少しばかりの女心とを満たした今、もう『彼女』はこの世界のどこもいないのだ。
数日後に開かれるパーティーで、ゾロリはすべての魔法を解くことにした。


シンデレラのドレスと馬車は魔法使いのおばあさんが用意してくれた。
ゾロリの場合は、仲間たちが用意してくれた。
彼女の体を包むドレスは澄んだ空をそのまま切り取ってきたかのように鮮やかな空色。身を飾るアクセサリーなど必要がないほど美しいが、しないわけにはいかなかった。世界屈指の宝石ブランドの、1960年代最高の傑作といわれたダイヤのチョーカーにイヤリング。
そしてその場にいる招待客のすべてを虜にしてしまうほどの美貌は彼女自身のものだったが、今日は知人のエステティシャンにさらに磨いてもらい、つやつやのペカペカだ。
「せんせ、とても綺麗だぁ」
「んだ、おらが10年早く生まれてたらお嫁さんにしただよ〜」
「いんや、おらがもらうだ」
「いんやおらだ」
彼女を会場まで送るタクシー運転手も、知人である。
ゾロリはにっこり笑って車に乗った。でも不安でいっぱいなのか、未だに行くのをためらっている。
「心配しないで行ってらっしゃい。大丈夫、うまくいくよ」
「でも…」
「何かあっても、私たちがついているんだ。さあ」
メイド仲間とイシシ、ノシシに見送られて彼女はタクシーに乗ってパーティー会場に向かった。
会場にはたくさんの著名人がいた。
ガオンと、そしてレイラもそこにいた。
「ガオン、お前が探している女性が、今日ここに来るとでも?」
「…なぜかそんな気がするよ。そして不思議とそこから何かが始まる気もするんだ」
終わるのではなくはじまるのだと、ガオンは信じている。
そこに突然ざわめきが起こった。あれはどこの誰だという声が聞こえてきて、ガオンは人垣を押しのけて躍り出た。
絹を零したような金色の髪が印象的だった。
見つけた、とガオンは呟いた。
輝く彼女の存在と、ガオンが出てきたことで、誰もがそっと道を譲る。まるでその場に二人以外の誰も存在してはいけないかのように。
「…ようやくお会いできましたね」
「…はい」
レイラという名のゾロリは差し出された手に、そっと自分の手を重ねた。
「一曲踊っていただけますか?」
「…一曲だけですわ」
「何故です?」
「…今夜が夢だからです」
強引にガオンの手を引いて、ゾロリはステップを踏んだ。
ワルツが終わるまで、その夢は続く。けれど曲が終わると、彼女は逃げるようにその場を去った。
シンデレラのように、靴のかけらも残さずに。
ただ、そこにいたレイラにひとつの疑念だけを残した。


「待って!」
月の綺麗な夜だった。
ガオンは逃げるように会場を出たゾロリを追って飛び出してきた。
「離して! 私はあなたから離れるためにここに来たの!」
「どうして? どうして離れなければならない?」
ガオンはゾロリの腕を、赤くなるほど掴んだ。彼女が苦痛で顔を歪めた時ようやく緩めはしたものの、離すことはなかった。
ゾロリはガオンから顔を背けた。瞬間光るダイヤも彼の目にはただの石に映る。
「聞かせて欲しい、何があったのか」
「言えない…」
言えば、きっとがっかりさせるから。同じ落胆を味わうにしても、夢を見たままでいるほうがどんなに幸せか分からない。それは自分が今味わっている現状があるからこそ言える。ゾロリはキッと顔を上げた。
「…世界が違うんだ! 私とあなたじゃ!」
「そんなことはない!」
そんなことはないんだといって、彼はゾロリに口づけた。
「ガオン…」
「好きなんだ…」
囁きが闇に消える。この恋も消えてしまえばいい。
そう、ぼんやりと考えた。
気がついたらホテルの、ガオンの部屋だった。
ベッドの上に座らされて、再び彼の、今度はゆっくりとした口づけを受けた。
「愛してる…」
ゾロリは答えなかった。答える事は出来なかった。答えてもいけなかった。夢を夢のままで終わらせるのに、答えなんか要らなかった。でも、自分の中には答えがあった。初めて出会って彼の笑顔を見たとき、自分にも彼につりあうだけの何かがあればいいと思った。それを欲しいと思った。それは翻せば彼を愛しているという答えでもあった。
彼の手が背中に回る。背中のファスナーをゆっくりと降ろされる感覚に、ゾロリはきゅっと身を竦めた。
「可愛いね」
「からかわないで…」
裸にされていくのは、体だけではない。
ガオンに抱かれるうちに心まで裸にされそうだった。けれど必死で耐えた。
「レイラ…」
そう、彼が自分の本当の名前を知らなかったから。別人の名前を呼び続けたから、耐えられた。
「ガオン…」
彼に縋る腕も、繋がった体も全部自分のものなのに。
涙が出そうだった。
でも泣かなかった。
忘れればいい、これは全部夢なんだ。


朝になって、ゾロリはようやく目を覚ました。ルーファスだけは彼女がゾロリだと知っていた。でも彼女の意図を組んでくれたのか、くぅ〜んと一声鳴くと、ゾロリのそばを離れてくれた。手早く髪をまとめ、ドレスもアクセサリーも全部紙袋に無造作に押し込んだ。
そして着るものがなくなってしまったゾロリはガオンのセーターを拝借して足早に部屋を出た。
出ようとして、ふと、夢の名残を残した。
幸せそうに眠るガオンの耳にそっと、愛していると囁いた。
そこを、レイラ本人に見られたことで二人の関係は大きく変わる。
レイラは支配人を呼んで、数日前の防犯カメラの映像を見せてもらった。そこにレイラがクリーニングに頼んだはずのスーツを着て出て行くゾロリが映っていた。彼女はすぐにこのメイドを呼ぶように支配人に言いつけた。
支配人はすぐにゾロリと、その直属の上司である給仕長を呼び出した。
「君はお客様の服を盗んだ、ということになるよ。幸いお客様は君を告訴しないと仰ってくださっている。どういうことか説明してもらおうか」
「…すみませんでした」
「謝れとは言っていないわ、説明しろといっているの、私の服を勝手に持ち出して、私の名を騙って、一体どういうつもり?」
「申し訳ありません」
それは断固とした拒絶だった。支配人もレイラも呆れて声も出ない。
そこにガオンが入ってきた。レイラが呼んだのだ。彼はわけもわからずに、そこにいたメイドを見つめた。
「君は…」
ゾロリは俯いたまま顔を背けた。
「ゾロリ君、私としても君は惜しい。しかし」
「わかりました。辞めます」
彼女はあっさりと言い切った。
通用口にあるカウンターで制服と職員専用ロッカーのかぎ、それに社員証を返上する。彼女は不法行為を理由に解雇されたことになる。
ゾロリが辞めたあと、給仕長も責任を取って辞めた。彼は散々引き止められたのだがもうここにはいたくないからと自主退職を申し出て、支配人がそれを認めないままさっさと辞めてしまった。ゾロリは驚いて給仕長に尋ねた。すると彼は笑って『自分はこの世界にいすぎた』と言った。
「君はちゃんとけじめをつけに行ったのに、残念だ」
ゾロリは泣きそうになった。けれど給仕長は彼女の頭をぽんぽんと撫でてくれた。


「私が本物のレイラよ。あのメイドは偽者なの」
「そうか…」
彼はふっとあの夜のことを思い出してわずかに微笑んだ。すべての謎が解けたのだ。何故彼女が自分から離れたがったのか、体をくれたのに愛していると言ってくれなかったのか。
レイラはそんなガオンの表情をとり間違えた。
「とんだメイドだわ。私ったら気づかずに信頼していろいろ頼んで…メイドのくせになんてこと」
「その言い方はやめたまえ」
ガオンの口から鋭い言葉が飛んで、レイラはびくっと体を竦ませた。
「メイドでも何でも、彼女は素敵な女性だった。君よりも何倍もね」
「そんな…」
抗議にも似たその呟きに、ガオンは苛立ちを隠せなかった。
「ああ、すまない。比べて失礼したね。君なんかと比べては彼女に失礼だ」
最後の最後まで、ガオンの言葉は容赦なかった。彼が部屋を出てドアを閉めると、そこにクッションが投げつけられた衝撃が響いた。
ガオンはゾロリを貶めたレイラにほんの小さな復讐を果たすと、ロナルドに命じて彼女の行方を捜させた。
ゾロリはあっさり見つかった。
近所のカフェでやけ食いをしているところを発見されたのだ。ゾロリはガオンの耳を見つけると慌てて食べかけのパイを包んで逃げ出した。
「待て、えーっと」
「ゾロリだよ、ガオン」
「ああそうだ、待ってくれ、ゾロリ!!」
前方をいく彼女は人ごみの間を器用に抜けていく。ガオンとロナルドは人にぶつかりながらようやく彼女を捕まえた。
「ゾロリ!」
「…わかったろ? 俺はメイドでお前はお偉い代議士さん。住む世界が違うんだ」
振り返った彼女に目に、うっすらと涙が浮かんでいる。
「なんで、私を騙したんだ?」
「…騙すつもりはなかった。ちょっとセレブの気分を味わってみたかっただけさ。でもお前は身なりで俺を判断したから。だからレイラに返そうと思った。服も、お前も」
「…身なりで判断したんじゃない、私ははじめから君を」
「メイドだってわかってもか? 彼女の態度を見ただろ!? 大抵の人間はメイドだっていうだけで一段低い人間みたいに扱うんだ。代議士のお前ならなおさらそうだろうな!」
「違う!!!」
マンハッタンに、彼の声が木霊した。ゾロリも、周囲も立ちすくむ。何事かと寄ってきたマスコミの人間が二人にカメラを向けているのさえ、気づかなかった。
「メイドだろうがセレブだろうが、私は君が君だから愛したんだ! メイド、結構じゃないか。そこら辺の下手なセレブより気が利いていて、特に君は可愛いじゃないか。議員の身分なんか、君が要らないといえばいつだって捨てよう」
「バカなこと言うな!! 親御さんが泣くぞ!」
「愛の前に人はバカにだってなんにだってなるんだ」
ゾロリはもう何も言わなかった。そしてマンハッタンから姿を消す覚悟を決めた。他の土地に移れば自分のことも彼のことも誰も知らない。
また一から始められる。
ゾロリはガオンの頬を叩こうとして手を上げ、ガオンはその手を止めて彼女に口づけた。


ゾロリがホテルをやめた日、イシシとノシシは公休日で休みだった。テレビをつけるとゾロリが出ていて、そこにガオンとかいう代議士が映っていてなにやら彼女ともめていた。ホテルのメイド控え室に連絡を取ると、そちらも大騒ぎになっていた。
事情を知っているのはほんの一部の人間だけなのだ。
双子はゾロリがホテルをやめたと聞かされて慌ててゾロリの住むアパートに行ったのだが、彼女は出てくれなかった。
残る手段は一つ。
二人は数日後に迫ったガオンの記者会見の会場にもぐりこむことにした。


ガオンは頭を抱えていた。
議員としての身分や行動に関してではないことは百も承知だった。
「ロナルド…」
「なんだい? ガオン」
「私は、どうすればいいんだと思う?」
泣いているんじゃないかと思えるような彼の呟きに、ロナルドはルーファスの頭を撫でながら言った。
「さぁ、私は君じゃないから。でも私が君だったらこの機会を利用しない手はないと思っただろうね」
「この機会…?」
「テレビ中継だよ」
ガオンはふいに顔を上げた。
「彼女を捕まえられるのはお前だけだよ。さ、行ってこい!」
そういうとロナルドはガオンの背中を無遠慮に叩いた。前のめりになりながら、彼は転ぶように歩き出す。
「…そうだな」
「そうさ」
ガオンの顔は晴れやかだった。たとえ彼女を捕まえられなくても、自分の気持ちはちゃんと伝えなくてはならない。
そのころイシシとノシシはアパートから出てきたゾロリを捕まえた。
「なにすんだよ」
「いいから来るだよ」
「おらたち、せんせには幸せになって欲しいだよ」
マンハッタンの裏路地で寂しく過ごしてきた自分たちを拾って面倒を見てくれたゾロリ。
仕事を世話してくれ、自分の持てるものすべてを叩き込んでくれた。だから今こうして暮らしていける。
今その恩に報いたい。
双子に引っ張られてやってきたのはガオンの記者会見会場だった。
それに気がついたゾロリは双子が手を引くのを乱暴に払いのけた。
「何の真似だ」
「せんせ、ガオンに自分の事ちゃんといわなくていいだか?」
「せんせ、本当はガオンのこと」
「言うな!!」
ゾロリの声に、双子はびくっと身を竦めた。しかし怯んではならないと顔を上げたとき、彼らは一番見たくなかったものを見た。
――ゾロリが泣いている。
「もう、もう終わったんだ…」
現下院議員である王子様との恋は、もう終わった。
ゾロリは両手で顔を覆い、動かなかった。イシシとノシシはそのまま顔を見合わせ、頷きあう。
彼らはゾロリをおいて足早に記者会見の会場へと向かった。


たくさんの記者に囲まれ、ガオンはいつもの作った笑顔を見せていた。早く彼女に伝えたい言葉があるのに、とはやる心を抑えつつ。
今度の選挙に向けての意気込みや、対立候補の話を30分ほど重ねたあと、彼自ら記者たちに質問はないかと尋ねた。彼らは先日のメイドとの恋を聞きたかったのだが、何故か誰も手を上げなかった。そこに小さな二人の男の子が転がり出る。
「はーい」
「おらたち聞きたいことがあるだよー」
ガオンは彼らを見知っていた。いつもゾロリのそばにいた小さな双子だ。あの頃はゾロリとは知らず、ただのメイドだと思っていた。
けれど本当の彼女を知ってからガオンは道端で出会うメイドに違和感を感じていたのを思い出す。
「なにかな」
「シンデレラが王子様に出会うのに、ドレスを用意するのにだね」
「うん」
「もしその方法がちょっと間違ってたとするだ」
「うん」
記者たちは彼らの会話に耳を傾けた。誰も、あのメイドのことをいっているのだとは思いもしない。
「シンデレラもごめんなさいって謝った時、王子様はシンデレラを悪い人だっていつまでも責め続けるかな」
「…いや、私が王子なら許しているね」
その言葉に、イシシとノシシはぱっと顔を明るくした。けれど最後の最後で詰めを誤ってはならない。
彼らは双子のユニゾン、同時に言葉を発した。
「王子様は、シンデレラが好き?」
「…ああ、好きさ」
それだけ言うと、ガオンは記者たちを丁寧に押しのけて会場をあとにした。記者たちも慌てて後を追う。
階段を駆け下り、建物の外に出るとそこにゾロリがいた。
彼女は足に根が生えたかのようにそこを動かず、ただただ建物を見つめていた。
「ゾロリ!」
甘く深く、でも凛とした声にゾロリははっとして声のほうを向いた。
「ガオン…」
何かに押さえつけられているかのように、足はおろか体も動かなかった。ただ彼に抱きしめられるのを待っているかのように、ゾロリはそこに立っていたのだ。
ガオンはゾロリをぎゅっと抱きしめて、その柔らかな唇にキスをした。
「君が好きだよ、ゾロリ…」
「…メイドでも?」
ガオンは小さく、笑うようにため息をついた。
「メイドでも掃除のおばさんでもウェイトレスでもなんでも、君が好きだよ」
「ガオン…」
ぽろぽろと零れた涙が彼のスーツを濡らしても、ガオンはゾロリを離さなかった。今離してしまえば、もうこの腕には抱けないと思った。
「…好きになってもいい?」
「もちろんだとも。君は私が下院議員で、今度も当然上院議員になるから惚れたのかい?」
あまりにも強気な言葉に、ゾロリはバカと呟きながら涙を拭った。違う、とただ一言告げる。ガオンの瞳はその理由を知りたそうに揺らめいた。
「…犬を追っかけてる顔が、可愛かった」
初めての出会いがホテルのトイレだったことはこの際すっきり忘れよう。
マンハッタンの小さな通りで犬を追いかけていた彼の顔はまるで少年のようだった。
ゾロリはガオンにしっかりと抱きついた。
「…好きだよ」
フラッシュがどんどんたかれて、レコーダーを向けられて。
彼らは初めて自分たちが置かれている状況を知った。
幸せですかと聞かれれば、もちろんですと答えてやる。
ガオンはきつく結われていたゾロリの髪を解いた。さらさらと流れる金色の髪のように、ゾロリは自分の心も解かれていくような気がした。


それから時間が経過した。
イシシとノシシはベルボーイ見習いから正式にベルボーイになり、長じて後はフロントを任されるまでになった。
シンディとレイラの姉妹はしばらくの間セレブとして過ごしていたが、父親の会社が大損害を被って倒産するとたちまち路頭に迷う羽目になった。今では場末のクラブで日銭を稼いでいるとかいないとか。
ある日、ホテルに一人の客がやってきた。彼は双子のベルボーイを見つけると迷わずそこに歩いていった。
「私の荷物を頼むよ。いつもの部屋にね」
「はいだぁ」
イシシとノシシはやってきたダーティブロンドの客に丁寧に頭を下げるとよいこらせの掛け声も勇ましく荷物を持ち上げた。
「副支配人は元気にやっているかい?」
彼の問いかけに二人はにっこり笑った。
「もー、元気すぎるだよ。でもガオンが帰ってきたらさらに元気になるかもしれないだな」
エレベーターの中には3人だけなので自然口調も砕けたものになる。
上院議員選挙の結果が開票されると、あの時の宣言通りにガオンは見事に当選、上院議員となった。その後ゾロリと正式に婚約、結婚した。
ゾロリは一度やめたホテルに再び就職した。そして実力が認められてとんとん拍子に出世、なんとメイドから副支配人にまで昇進していた。
3人はガオンの指定した『いつもの部屋』に入る。そして副支配人を呼ぶように言いつけた。
彼女はすぐにやってきた。
「あのさー、まだ忙しいんだけど」
「だって、家に帰っても君はいないじゃないか。だから泊まりにきたんだよ。君のそばにいたくて」
ゾロリは呆れたように小さく笑みを零してガオンの横に座った。彼の手が真直ぐ肩に伸び、抱き寄せられる。
「遊説お疲れ様。手ごたえはどうだ?」
「上々だよ。この分だと数年後の大統領選も狙えると思うんだ」
気が早い、とゾロリは笑ったが、ガオンが大統領選を狙っていることは彼が上院議員選に出馬した時からわかっていた。
しかし彼はまだ若く、あまり実績もないので実際はあと10年ほど先の事だ。もちろん、そんなころまで議員をやっていれば、の話だ。けれどゾロリはそんな彼の夢に付き合うつもりでいる。
「そしたら俺もファーストレディか。うわ、素敵な人生だな」
ガオンの腕の中で、ゾロリはくすくす笑った。あのときのほんの小さないたずらのせいでまさかこんなことになるなんて、思いもしなかった。
「今夜はここで一緒に寝よう。そして明日の夕方に一緒に家に戻ろう。ルーファスが寂しがっているかもしれない」
「…寂しかったのはルーファスだけじゃないぞ」
お互い様とは言わず、ガオンはゾロリに口づけた。一ヶ月ぶりのキスだった。
少し長い口づけのあと、胸を弄るガオンの手を、ゾロリはぴしゃっと叩いた。
「…ダメかい?」
「勤務中なの。夜になったらいくらでも」
そういって立ち上がろうとしたゾロリの腕を、ガオンはさっと掴んだ。
振り返ると、彼はサファイアブルーの瞳を細め、唇に薄い微笑さえ刷いていた。
「約束だよ、夜にね」
そういってガオンは彼女の手に自分の唇を押し当てるとそろっと離してあげた。


願うのはいつだって、あなたの幸せだけ


この数奇な恋の物語はメイドの起こした奇跡の恋物語として語り継がれる。
そう、世に言う『メイド・イン・マンハッタン』だ。
そうして彼らはたくさんの幸せとほんの少しの不幸を重ねながら暮らしたという。



大統領・ガオン
ファーストレディ・ゾロリ


この名が刻まれるのはあと数十年ほど先の話である。






≪終≫






≪ただ土下座しかできぬ≫
お疲れ様でしたー! 映画『メイド・イン・マンハッタン』のパロディということでお送りいたしました。実際の映画のあらすじはそのまま踏襲しましたが、人物の名前や家族構成などは思いっきり変えてあります。
書いている最中に『これは別にゾロリせんせじゃなくてもよかったんじゃないかなー』と思ったのですが、書き始めたからには最後まで一応書いてみようと、頑張ってみたら意外とはまっているんじゃないか、と思わなくもなくはないというわけです。
楽しんでいただければ幸いですが、石を投げる程度でお願いします。火矢はやめてください、お願いします_| ̄|○注: 文字用の領域がありません!

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