キスというのは、こういうものか…、とぼんやりと思った。
画像でしか見たことがなかったものを、いざ自分がしてみると、なんともこそばゆい気持ちになった。
柔らかい感触と、流れ込むような感情。そしてとんでもなく、恥ずかしい。
優しい豪の表情と、泣きだしそうになった自分の理由がわからない。

「…どう、だ?」

豪が好きだ。
ただ、愛情の名前がわからなかった。
それがいまわかった。どうして、うまく言えなかったんだろう。気付かなかったんだろう。

「…お前が、好きだよ」

泣きながら告げるなんて、馬鹿みたいだ。
それでも、豪はそんな僕をただきつく抱きしめるだけだった。

「…烈兄貴?」
「ん……」

いつのまに、眠っていたらしい。豪によりかかるようにして目を閉じていた。
ぼんやりと瞼を開ければ、表情がすごく、間近に見える。
「起きた?」
「寝ちゃってたんだ」
「結構遊んでたもんな…あと2駅で着くぜ」
「そっか…」

夢と現実の境界がわからない。
ここは、電車の中…だ。クリスマスイルミネーションの帰りの、電車の中…だ。
水仙の庭で、豪とデートをして、キスをした。
そこで生まれた感情は、間違いなく恋と呼べるものだった。
泣きながらそれを告げた。事実だけがそこにある。
反芻したのは、ただの夢だ。

「烈兄貴…?」
「…夢じゃ、ないんだな……」

「何の事だかわからないけど…ここは夢じゃないぜ」


そうか…、豪が言うんだから、夢じゃないんだろう。


人が少なくなった、寂しい車内で指を繋いだ。
何も言わずに、駅にたどり着くまで、繋ぎつづけた。



Bliss splinters



兄貴は恋愛を知らない。
正確には、知っていても自分の感情が恋愛だと理解できない。
愛情は知っていても恋愛を知らない兄貴は、近い感情で俺のことを思っていても、それが「本当にそうなのか」と疑った。
確かめたら、本当に恋愛感情だった。

思いを告げて、10か月。
兄貴が受け止めて、9か月。

ようやく、俺たちはホンモノの両想いになった。
翌日のクリスマスは、きっと最高のクリスマスになる。
そう、思っていた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。



24日、クリスマスイヴ。振り替え休日のこともあって、出かける人も多い。
母ちゃんたちもその中に入っていた。夕方には帰るといって、出かけてしまった。
「俺たちは、昨日行っちゃったからなぁ…」
「そうだな」
俺たちは特に出かけることもなく、兄貴の部屋でだらだらとすごしていた。
クリスマスケーキは買ってきてくれるから心配はいらない。出かけなければ、緩やかな午後の日差しが部屋の中を照らし出しているだけだ。
ベッドの上でごろりと回転する。そのベッドは兄貴が普段眠っている。
きれい好きなこともあって、整理されているその掛け布団の上を、寝転がってくしゃくしゃにした。
兄貴はずっと、本を読んでいる。
なんだか堅苦しい本ではなさそうだ。しかしハードカバー。何読んでるんだろうかと覗き込んでみても、ブックカバーを掛けていてわからない。
「兄貴ー何読んでるの?」
「ああ…携帯小説」
「携帯小説、って…あの携帯小説かよ、そんなものまで読むんだ兄貴…」
「…押し付けられただけだ」
意味深な言葉をいい、また視線を文章に眼を落としていた。
じいっと見つめて、微かに瞳が動くそのさまでさえ、兄貴は綺麗だ。姿勢がいいんだろうな。
しかしこっちを向いてくれないというのはいささか不満でもある。
昨日の今日なのだ。キスしたのが。

「なぁ、兄貴ー」
「んー?」
「いや、なんかそっけないなーって」
「素っ気ない?」
「だって、昨日の今日だぜ?兄貴が俺に泣きながら告白したの、照れたりするもの…じゃないのか?」
「……」
ぱたん、と本を閉じた。
「うわー昨日豪とキスしちゃったんだ…うわーうわー」
「烈兄貴……」
「と、いって欲しかったのか?」
にこやかな笑顔で、思っていたセリフを棒読みで言ってくれた。
「ま、こんなことを言ってはみたものの、なんか信じられなくって、さ」
「信じられない、って…」
「今日の朝、お前の表情が全然違って見えて、びっくりした。なんていうか、夢じゃなかったんだな。とか、恋人になったんだな、とか。いろいろ考えて…しばらくした
ら、元に戻ってた」
「あ、それ俺もわかる。なんか、どきどきしたっていうか。兄貴表情出さないんだからわかんねーよ」
「…押さえてたからな。母さんの手前だったから」
「そっか」
兄貴も兄貴なりで、複雑な感情を抱えていたらしい。
じゃあ、今は母さんもいないことだし、夢でないことを今一度、兄貴に教えてやらないと。
「こっちきて」
「なんだ?」
言われるがままに、兄貴はベッドへとやってくる。その腕を取り、強引な力で持ってベッドへと横たえる。
その間に、俺のほうは兄貴を囲う。
兄貴が何をされていたのか気がつく頃には、もう視線から逃げられない。
逃げることも、しなかったけれど。
きょとんした表情で俺を見ていたが、やがて、したいことがおぼろげにわかったのか、
「…また、するのか?」
烈兄貴は戸惑いながらも、抵抗はせずに聞いた。
「今度は、もっと深く。口あけてやってみたいなーと」
「……」
目を背け、しばらくして、俺の目をじっと見つめてきた。
本気かどうか、確かめてるみたいにじっと見つめてくる。その視線を受け止め、見つめ返す。
しばらくして、兄貴は一度ゆっくりを瞬きする。どうやら審査が終わったらしい。
「…勝手にしろ」
「では遠慮なく」
指を髪に埋め、兄貴の唇を舐めるように塞いだ。
最初は昨日と同じ、触れるだけ。彷徨う兄貴の指は、ゆっくりと、俺の後ろ髪に絡む。
貪るように、唇を食む。こんだけ求めるキスは、俺だってはじめてだった。兄貴を、食べてるみたいだ。
舌を突き出した。
奥を潜り、兄貴の舌を微かに撫でて、温かい感触を味わう。
「ふっ…う……」
苦しそうに、息が揺らいだ。
溶け合うような口付けは長くは持たない。名残を惜しみながら、唇を離した。
「はぁっ…はぁっ…」
息が荒い。息を止めていれば、それは当然だろう。
唇からわずかに唾液を零れさせ、不安定な息を吐き、潤んだ眼で、こちらを見つめていた。
「ご、ぅ…」
指の力が、強くなる…囁かれた言葉に、理性の糸が張り詰める。
「烈、兄貴…」
「…やり、すぎだ」
唇の端から零れた唾液を拭った。
目を細めて、蕩けそうな笑みを向けた。

理性の糸が、ほつれて、切れた。

「…つっ、なに、するんだ…」
ぎゅっと、肺を締め付けそうなほどに強く抱きしめた。
大好き。兄貴のこと。
全部、自分のものにしてしまいたい。その心をすべて支配してしまいたい。
「兄貴…抱かせて」
「…え?」
「キスが終わった恋人がやることは、あと1つしかないだろ?」
あとやれることは、最後の領域まですべて晒して、抱き合うこと。
今は二人きり。誰も邪魔するものはない。
乱暴な思いで、首筋に口付けを落とした。絡む体温が、感情を暴走させようともがいている。
「いいだろ、烈兄貴…それとも、言ってる意味がわかってない?」
「ちょ、ちょっと待て…意味は……わかるけど……俺たちじゃ無理だろ……」
「無理すればできる」
「そんな…」
絶望と、驚愕が合い混じった声色を震わせて、呆然と俺を見た。
「本来入れる場所じゃないけど、穴はあるんだし」
「あな、って…」
「大丈夫、だから」
どこに入れるか、わかってしまったのだろう。
瞼に口付けして、兄貴の瞳を閉じさせた瞬間、兄貴の身体が激しく震えた。
恐怖か、なにかで。
そのあとの動きは、信じられないほど早かった。
「あ、う………やめ、ろっ…!」
「うわっ!」
突然突き飛ばされた。兄貴はそのまま逃げ出して、ゴミ箱にしがみついていた。
「うっ…げふ…うう……」
顔を真っ青にして、吐きそうな顔をしていたのだ。
「あ、兄貴っ……」
「わ、悪い…豪………うっ……」
なんてことだ。
そこまで、気持ち悪いのか。
こんなことされたら、すっかり気分もクールダウンだ。
「…大丈夫かよ……」
「大丈夫、だ…でも、豪……それは…無理だ……」
「…あ、うん……わかった」
苦しそうにティッシュを何枚も乱暴に取り出して、口を押さえてる。
「ごめん…」
「…はぁ……はぁ……」
背中をさすってやると、ようやく兄貴は落ち着いたらしくて、疲れきった顔で息を吐いた。
「ありがと…」
内心は複雑だ。兄貴がこうなったのは、嫌悪感ゆえだろうと思う。
「気持ち悪かった…のか……?」
「それもあるけど…、急かせ過ぎだ」
口をぬぐい、唇を噛み締めて悔しそうな、泣きそうな表情でにらみつけられた。
「なぁ、豪…いくらなんでも、それは無理だろ…どういうことか、わかるよな?」
「……わかるけど、だけど…」
「少しだけ、時間が欲しいんだ」
「…え?」
ようやく吐き気が収まったらしく、一度深呼吸して、俺を見た。
「無理…とは言ったんだけど、な……いつか、そうなるとは思ってたんだ」
「そうなる、って抱かれるってことを?」
「ああ…告白のときにな…」
そう、だったのか…
嫌悪感だと勝手に思っていた。そうでなくても、やろうとしたことは近親相姦だ。気持ち悪いと思うのは当たり前だ。
「覚悟は、したつもりだったんだけど…ごめん、なんだか…身体が勝手に”それは受け入れられない”って言ってるみたいだった」
「烈兄貴…」
そんな思いをしても、兄貴は俺に謝った。拒絶したことを。
「じゃあ、嫌で弾き飛ばしたんじゃないのか?」
「わからない…いいかなって思った瞬間、気がついたら弾き飛ばしてて」
「なんだよ、それ……」
「だから、わからないっていってるだろ」
兄貴も、自分がどうして突き飛ばすようなことをしたのかわからないって。そんなのありか?
なんか、訳でもあるんだろうか。考えても仕方ないけど…どうすればいいんだ?
「烈兄貴…俺……」
「大丈夫だって、この程度で豪を嫌いになったりしない。だから、そんな顔するな」
苦笑しながら、腕をこちらへ伸ばしてぎゅっと俺を抱きしめた。
「あ、兄貴…?」
「抱きしめるだけなら、全然平気だろ?」
くすくす笑って、背中を撫でてくる。
「豪並みに何度も言ってやろうか?」
「…いや、一回でいいや」
「そっか」

座ったままで、兄貴と俺は何にも言わずに抱きしめあっていた。
言葉はいらない。キスもいらなかった。
温もりも、思いもここにある。



◆        ◆        ◆



クリスマスケーキと、プレゼント。
そのどれもが嬉しいし、ケーキは美味しかったけれど、どこか心は晴れなかった。

拒絶した。豪のことを。
全部わかってて、豪を好きだと言ったはずだった。
深い口付けをすれば、いつかはそうなることも、心のどこかで、思っていた。
なのに。
豪に抱きしめられて、視界を塞がれた瞬間感じたのは。

恐怖と、気持ち悪いという感情だけだった。

特に理由は見当たらない。同性愛がたどる最後のボーダーラインを踏み越えるなと、理性が最後の警告を発しているのだと思う。
もともと、僕は人とのゼロ距離には慣れていない。
豪は一番近い距離にいるものの、普段の距離はゼロではないのだ。
抱きしめられ、肌を触れ合わせ、ぬくもりを共有し、キスという一番原始的手段で思いを伝える。
たぶん、恋人同士なら、至極当たり前なのだ。

「烈、どうしたの?浮かない顔して…」
「あ、ううん。なんでもないよ」
少し曇った感情でケーキを切り分けた。
「それにしても、二人ともクリスマスだって言うのに家にいるのよね。彼女とかいないのかい?」
彼女はいない。
好きな人はいる。両思いの人は。彼女でないだけだ。
「俺は…好きな人は、いるぜ」
どき、と鼓動が跳ねた。
目を細めて笑ったさまをみて、良江と改造が「これは本物だな」と確信した。
「で、どんな子なんだい?」
「んー、すっごい不器用。だけど…優しくて、俺のこと考えてくれてる」
「そっか…豪のことをねぇ…今度母さんに紹介しておくれよ」
「恥ずかしがるからやめといたほうがいいって」
そういって笑った。
「烈はどうなの?」
「まだ秘密なんだ」
「そうか、烈も豪もそういう歳になったんだな…」
「そうねぇ…」
しみじみと頷く二人に、豪の顔をちらりを見ると。困ったように微笑んだ。
自分もつられて。
きっと、自分の恋はこの二人を不幸にする。

それがわかっていても、止められなかった。
豪のことが好きで、締め付けられるほどの思いを持っても、たぶん告げられない。
好きなのに、触れられることさえ慣れない。

なんとか、しないといけない。

「…烈兄貴、どうしたんだよ。ケーキ食べようぜ」
「ああ」
クリスマスイブの夜。

いつも受身で、豪からアクションがないと何も出来なかったけれど。
思いを受け止めよう。そのために何かしないといけないなら、そうしよう。

食べたケーキは、甘くて、少しだけ、涙のような味がした。






その夜。
こん、と豪の部屋の扉を叩いた。寝巻き姿という格好で。
「…烈兄貴?」
「入ってもいいか?」
できるだけ、普通を装う。
「なんだよ、改まって…」
そういいながらも、豪は部屋に招きよせてくれた。どこかぎこちないのは、クリスマスイブの夜だからだろうか。
それとも、こんな格好でいるからか…
豪も寝巻き姿で、いて、ベッドで漫画でも読んでいたのだろうか、漫画が置かれていた。
「…わがままを、聞いて欲しいんだ」
「なんのだよ」

「…添い寝してくれ」

言ってみた。
すごく、呆然とした顔だ。目が点になると体現するとこうなんだろうな、とわかるくらい。
ぱちぱちと数回瞬きをすると、おそるおそる、といった様子で、尋ねた。
「…ほん、きでいってる?」
「本気で、言ってる」
こく、とうなずく。
「…なんで……?」
「わからないのか?」
「だって、兄貴は……」
抱こうとしたら、気持ち悪いと突き飛ばされたんだからな。豪が、戸惑うの当然か。
「あのな、豪…」
「うん…」
「お前も気づいてたと思うけど…、抱きしめられるの、苦手なんだ」
「うん、気づいてた」
「だから…、少しでも、克服したい」
好きなのに、それでも、勝手に拒絶してしま自分を、なんとかしたい。
せめて、豪の前だけでも。

「…お前は、少し大変だと思うけど……」
「なんで?」
「だって…そうだろ?」
キスして「抱かせて」って言ったことは、自分にそういう欲求があるってことだ。
添い寝して、我慢しろって言ってるのだから、豪にとってはたぶん大変なことだ。

「あ、そうか…大丈夫だって。そりゃあ…大変だけどさ。兄貴がそういうなら、抱いたりしないから」
「…ありがと、な」
「じゃ、寝ようぜ」

豪が壁際の奥に。僕のほうが外側に。狭いけれど、もともと豪のベッドはセミダブルで、そんなにきつくもなかった。
体温が直にある。
触れられた瞬間、身体が震える。嬉しいのか、怖いのか、よくわからない。
敷き布団を掛けられれば、もう、視界は豪しか見えない。
豪は…悪戯好きな子供のような表情をして、笑った。
「サンタクロースもびっくりだな、入ったら男二人で寝てるんだぜ?」
「お前、まだ信じてるのか?」
「もし、の話だよ。兄貴はいつまで信じてた?」
「小学4年くらいのときには、もういないんだなって思ってたけど…豪は信じてたみたいだから、言わなかった」
「そっか」
「…思い出してみたら、あんまりこうやって抱きしめられたことも、あんまりなかったな」
「……」
豪のお兄ちゃんでいなくちゃならなかったから、甘えることなんて、ほとんどできなかった。
抱きしめられたのは、いったいいつのことだろう。
豪だけにしか、されていない。豪に抱きしめられた記憶しかない。
「じゃ、今まで俺がもらってた分を兄貴に返すつもりで、思いっきり抱きしめてやるよ」
「んっ…!」
背中を指を絡ませて、限界ぎりぎりまで密着する。
怖い。不安になる。でも温かい。なんだろう、この気持ちは。
それを和らげるかのように、豪の吐息が髪をなでて、耳元にゆっくりと風を送ってくる。

目を閉じよう。豪のことだけ、思っていればいい。

思いきって胸に顔を埋めると、豪の生きている音がした。
とくん、とくん、と少しだけ早い鼓動の音。生きてる。当たり前のことだけど、不思議に思ってしまう。
目を開けて見上げれば、呼吸が不安定な豪がいた。
「ちょっと、緊張してるか?」
「当たり前だろっ…!」
照れながら言う豪にちょっとだけ、笑ってしまった。
「…いきなりだったもんな」
「いきなりだったからな」
今日一日だけで、ディープキスやって、豪を突き飛ばして、一緒に寝て。
こんな一日になるとは、想像もしていなかった。

「そういえば、言ってなかったよな」
「何が?」

「メリークリスマス」
「あ…」
そういえば、言ってなかったっけ。クリスマス当日まで、あと1時間を切っている。
「…メリークリスマス」
「兄貴からは、すっごく嬉しいプレゼント貰ったな」
「え…?」
「一緒に寝れるんだぜ、嬉しいに決まってる」
「豪…」

ふわりと包み込むような笑顔で、苦しくない程度に。
不安も恐怖も包み込むように。
「プレゼントのつもりは、なかったんだけどな」
「なぁ兄貴…その…」
「ん…?」
「いや、なんでもない…」
「…なんだ?……いいか……おやすみ、豪…」
言いかけた豪の言葉がわからずに、それなら仕方ないと、僕は目を閉じた。

もう、眠りへ落ちる時間だ。

「兄貴…」
「……なんだ?」
「おやすみのキスは?」
「……お前、そんなことまで…したいのか?」
「せっかくだから」
「…1回だけじゃないのに……」
「そうなの?」

この添い寝の目的は、豪の体温に馴染むことだから。
抱きしめられても、怯えないくらいに。身近にあると、この身に覚えさせる。
そんなこと言ったら、豪は大喜びしそうだから、言ってやらないだけ。

「それじゃ、兄貴と添い寝する初めての夜に」
「ん…」

軽く、濡れた唇を触れ合わせる。
数秒の口付けは、すぐに離れた。

「おやすみ、烈兄貴」
「…おやすみ」

今はまだ、卵のように硬い殻で覆われる。
それでも、この心は温もりに震え、理由がわからない恐怖に怯える。

いまこの瞬間を、至上の喜びと感じている。


クリスマスイブの夜。
僕が目醒める日は、ここからはじまる。


               素材提供:素材通り


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