時の再誕/糸の紡ぐ先






豪の言ったことは本当だった。



縛らない、けど、影響は与えるっていうあの言葉。



手首に結ばれた見えない糸。


それは、ふとしたときに現れた。

 
気が付いたら、大学にある一本の銀杏の木を見ていた時があった。


なんとなく、風が吹くのを感じている。


雨が降る日を、嫌と思わなくなった。


毎年、夏祭りだけは必ず行って、豪と一緒に行った川辺で過ごす。


光るものも見えないし、豪が現れることもなかったけれど。


その日だけは、豪がいるような気がした。


雪が振ると、たまに窓を開けてココアを飲む。


人並みに女の子とも恋をした。


自分が人を抱くほうなんだ、と思うと、なんだか不思議な気分になった。






僕が豪を思うのはその程度。

誰にも、僕にも邪魔はしない。ただ、ふとしたことで気づく、手首に巻かれた見えない糸。

その先は、繋がっているのかいないのか。

繋がっても、たまに豪が悪戯で引っ張ってるだけ。

最初は自覚していたけど、年月が過ぎていくにつれて、わからなくなっていく。

アルバムさえも残らない、1年の記憶。

風化していく記憶は止められないけれど、代わりに新しい記憶で満ちてくる。



「あー」


声が聞こえて、そのほうを向いた。


また遊んでるのか。飽きないあたり、さすがだと思う。


雲が多い、空の下。雨が降りそうなほどに、湿気った空気の春の日。


1台のミニ四駆を抱えて、地面に転がして遊んでいる。


「おいで」


腕の中に抱えあげると、体重が増えたなと思った。
まだミニ四駆で遊んでいる。壊れるほど強く振り回さないだけましか。
よだれまみれにされても困るけど。興味津々なので、取り上げるとかわいそうだと思ってやめた。


「お前も、ミニ四駆が好きなんだな」


「うー」


笑うと、笑い返してくれる。
ふにゃふにゃした笑顔で。

いつか、大きくなったら、誰も離さなかった弟の話を、この子にだけはしてもいいかもしれない。
信じてくれるくれないは、関係なしに。

(豪、俺は幸せだと思うよ。でも、お前は羨ましいと思うかな)

まだ、先はわからないけれど。


お前のところにまだ行きたくは無いから。



腕の中の、生まれて一年の小さな命。


血を分けた子供。今の一番大切なもの。



「お前を、守るよ。今度は、俺が守るから」

「……」

きょとんとした表情をして聞いている。
呟いた言葉を、理解していたのだろうか。
「あ……」




小さな小さなその手で。




その子供は、烈の指をしっかりと握り締めた。







  time rebirth    end.


 

 


画像:noion




「time rebirth」全編終了です。
ここまで読んでくれてありがとうございました。 

最初に書いたゴーレツがこんなものでいいかとも思いましたが
しっかりゴーレツさせたのでいいかな。

1話1話完結方式で書いたのは初めてです。
いかがだったでしょうか。

気が向いたら、感想でも書いてくださいね。
励みになります。




2006/6/20 桐宮柚葉





 

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