その境界が混じるとき


心臓が高鳴る音も、どこか遠くの世界のようだった。
着ていた上着は脱げそうだったが、辛うじてまだ腕が通っている。
豪は烈の肩を抱いて、首筋に再び吸い付いた。
「んっ…」
喘いで、喉が反り返る。
あまりの刺激に、目の前が霞んだ。
(……)
豪が喉を吸い上げる。背中に手を回して抱きながら。
これが、烈のしたいことなのだという。
考えていることが、豪にはわかってしまう。
一方通行に繋がっている、豪の気持ちは、烈にはわからない。
「ごう…」
うわごとのように、名を呼んだ。
呼ぶと豪は首筋から唇を離す。じっと、烈の顔を覗き込んだ。
深い色の、青の瞳。濡れている眼球も、元が幻だとは思えない。
頬を撫でる感触にうっとりした。
(烈兄貴より、俺のほうが溺れそう)
豪はそういって笑う。
(兄貴から感触を貰えるまで吸い取って、おまけに興奮に煽られて。俺のほうがどうにかなっちゃいそうだよ)
「ふふ…」
薄目で見て、烈も笑った。
「じゃあ、もっと持っていっていいから、豪も僕を求めてよ」
このままじゃ、言うとおりにしてるみたいで嫌だから。
煽られるなら、気が狂うくらいに浮かされてしまえばいい。
いまの烈と、同じように。
(大胆なこと言うなぁ…)
「お前だからな」
聞こえないらしいし、と烈は目を閉じた。
(烈兄貴、好きだよ)
豪は確認するように呟くと、もう片方の手を烈の腰に伸ばした。
ゆっくりと、腰から腹へと滑る。
「ひうっ……」
普段撫でられることに慣れない部分を撫でられ、身体が自然とびくっと震える。
蕩けそうな思考は、その刺激でいっきに覚醒した。
「あ……」
やがて両手で撫でられ、しばらく彷徨ったかと思うと、終にその下へと触れた。
パジャマの下と下着を一気に下ろされ、全てを晒される。
見られている。羞恥心にさらに熱が上がった気がした。
たどたどしく掴む。ゆっくりとした動きで、上下に扱かれる。
「あ、んんっ……」
(ね、気持ちいい?)
豪はそういって、目を細めた。再び震える雄を舐める。
陳列台に置かれたような烈は、纏った上着の袖を握り締めて、じっと快感に耐える。
与えられる感覚に思考が少しだけ揺らぐ。
先走った液に、豪の手が濡れていく。あまりにも自然な動きで、指先についた液を舐り取った。
ぼんやりとした表情で、豪は呟く。
(…苦い……けど、嫌じゃない。もっと、飲んでいいよね)
腰を撫でられながら、烈の中心を銜え込んだ。
「う、あっ……!」
高い悲鳴が喉から迸った。温かい。けれどどこか冷たい。
唾液を絡め、豪は烈の雄を舌でくちゃくちゃと絡める。
(すっごく、熱い、よ……)
「あ、んっ……」
気絶しそうな感覚の中で、烈の頭にそんな声が響いた。
やはりわからない。気持ちいいのだけれど。波にもまれるような気分だった。
少し、目を閉じる。
ことん、という、静かな音。相変わらずの刺激にくらくらする。
限界は知らないうちに訪れた。
「っ……!」
瞬間、身体が跳ねた。一時遅れて、達したことを知る。
口腔に烈の白濁を出されて、それでも豪はそれを飲み込む。全ては飲みきれず、口の端から零れ落ちた。
(熱い……)
口元をぬぐい、豪はぼんやりと言う。
「……ごめん、豪、大丈夫か?」
(うん……)
それでもまだ嚥下はせず、口に含んだまま。
豪の視点は定まっておらず、まるで熱にあてられたように彷徨う。
(どうしよう、これ)
言葉に出さずに呟くと、目をゆっくりと何回も瞬きした。
「…豪……」
口元を押さえる、白濁の味がわかるのか、僅かに眉を寄せた。
頭の中だけで、声が聞こえる。
(烈兄貴、やっぱ、いきなり入れるのって痛いんだよな)
「へ?」
豪が見ている目線の先、そこは烈の身体の最後の領域。
「…まさか、おまえそのつもりで?」
(まぁ、そんな感じ)
少し笑うと、烈の双丘に手をかけた。
「やっ…」
曝されたことと、足を広げられたことで小さく悲鳴を上げた。
その場所に、白濁を少しずつ垂らしていく。
指で表面を擦られて、違和感に息を詰める。落ちてくる液体と、指の感触。
それがどれくらい続いたのか、不意に指を突き入れられた。
「っ…!」
自分の出したもので濡らされて入れられたとしてもまだそこは硬く閉ざされている。
それでも豪は半ば強引に奥に進んだ。ぐいぐい入れられ、少し広がったと思うと、直接口付けて中に残りを注ぎ込む。
「うあ……っ!!」
烈は中で広がっていく、液体の感触に喘いだ。体をが反り返り、がくがくと震える。
舌が入ってくる。烈は堪らず頭を左右に振った。しかし逃げようとしても豪は足を掴んで逃げることを許さない。
嘗め回される異質な感覚。身体が沸騰していくように、火照りはじめる。
「ん…んあっ……」
やがて、そこがふわっと広がった。
なんで、と烈がそのとき思ったのは疑問だった。これじゃ、まるで身体が受け入れてしまったみたいだ。
歯を思い切り噛んだ。しかしもう後戻りはできない。全てを、晒してしまえ、と自分自身の声がした。
豪が唇をやっと離した。烈は薄目を開ける。
「…来いよ、豪」
(うん)
豪のそれに、何の意味があるのか、烈にはわからなかった。たぶん、何の意味も無いのだろう。
あるとすれば、烈の身体に突き入れられるためだけにある剣だと思った。
(…行くよ)
ぐっと圧迫感が襲った。ぎちぎちに固められた部分から、無理やりに広がっていく。
「…っっああ!!」
悲鳴なのか、絶叫なのかわからなかった。
先ほどとは違う、圧倒的な感覚に烈は声を上げた。重く、強く、硬く。言葉を並べても表現できないような圧迫感。
そして、身が引き裂けそうな痛み。
目を思い切り見開いた。身体が大きく反り返る。
(烈兄貴っ…)
たまらず痙攣する。彷徨う手に、豪が指を重ねた。
「うあ……」
(…っつ……!)
痛みが僅かに引いていく。少しだけ自分を取り戻した烈が見たのは、痛みを共有する豪の姿。
(めちゃくちゃ痛い…大丈夫?)
はあっ…と、深く、豪が息を吐く。下で繋がる部分と、指で繋がる部分と、痛みで繋がっている。
鈍く痛みが続き、終わったときには、豪は全部を烈の中に収めていた。
弱く呼吸を繰り返し、内壁を擦られるうちに、何かが変わってくる。
しばらくすると、体内に豪がいるという恍惚感が押し寄せた。痛みを豪が少し引き受けてくれたおかげなのだろう。
「っ…んぁ……」
入り口が豪の存在を認め始めて、柔らかく締め付ける。ぬめりを帯びた液体が濡らして、烈の喉から自然と嬌声が溢れだす。
(中ってすごく、温かいんだな……)
ふらりと髪が揺れて、豪の前髪にかかる。身体に響くような律動に眩暈がする。
動かすたびに、内壁は収縮して豪のものがリアル感を持って烈を支配した。
ここにいる。豪は、今、ここに、いる。
「はぁっ……あんっ……」
熱に浮かされて、視界が揺らめく。もっと、溶け合っていたい。こんな身体の交わりじゃなくて、もっと近くに。
身体の境界線など越えてしまうくらいに。
(…烈兄貴、聞こえる?)
ふと、豪から声がした。
「っつ……」
どくどくと蠢くモノと、焼ききれそうな思考。聞こえたが、答えることが出来ない。
身体はうっすらと紅く染まり、今自分がどうなってるのかさえ、よくわからない。
もうやめて欲しいのか、果てまで駆け上がってしまいたいのか。
ごちゃごちゃとイメージがめぐり、真っ白に染まる。
「ご、ごぉ……」
(ん…なに?)
無意識に手を伸ばし、豪の身体に触れた。
こんなときにでも、豪は優しい。なんだか余裕面してるようで、悔しい。
身体の奥深くに、弟の全てを。指をゆっくり動かすと、よくわからないまま、豪の角張った指が絡む。
やっぱり、わかってる。何に、感じてて、自分が、どうして欲しいのか。それはとても甘美だが。
なんで、僕にはわからないんだろう。繋がった指に意識を集中し、痛みに酔う。
ことん、と音がした。また。
(…わかる?俺、すっごく気持ちいいんだけど)
困ったような色の、暗闇からの声。快楽も感情も、言葉では表現できない。わかるのは、溶けていくこころ。共有するぬくもり。貪り尽くす思い。
そっか、一緒だから、わからなかったんだ。
ここではじめて、烈はつながったんだ。と芯から認識した。
指を解いて、首を撫でて、そこから下へゆっくりと滑る。はだけた胸を僅かに押すと、胸板が返す。
「あ……」
虚ろげな目で、豪を表情を見た。
目を細めている。息が上がっているのを見て、自分と同じようになっているとわかってほっとした。
もっと、近くに行きたい。
引き寄せるように。震える指がくっと力を込めた。
ずぶっ。
(……!)
波紋が、広がる。
水のようなゼリーのようなものに手を突っ込んだ感触がした。
びくん!と豪の身体が痙攣して仰け反る。
(ああっ!!)
とたんに、豪が悲鳴を上げた。
自分の手が、豪の身体の中に埋まっている。
(う…)
一瞬だけ、豪の眼から光が消えた。
尽きたように豪の力が抜け、身体の上に倒れた。
「うぁ…!」
中にあるものの形が変わり、たまらず烈は精を吐いた。
身体が激しく跳ね、内壁が蠢く。
(くっ、ああっ……)
豪が苦しげにうめく。
指が豪の背中から突き出して、まるで刺し貫いたようだった。
一気に解放され、烈は意識を覚醒させる。
「…っ!!」
今、僕は何をした?腕が豪の背中から伸びている。
「ご、豪っ…」
腕が、豪の身体を貫通している。通っている腕はまるで水のような、つかみ所の無いひんやりした感覚。
身体が震えている。体温が下がっていくが、重なった烈が熱いため、吸い取っていくかのように豪は少しずつ、ぬくもりを取り戻す。
(あ、はぁっ…)
整えるように、切なく吐息を漏らす。
「豪、起きろ……」
(ん…わかってる。まだ抜かないでくれよ)
豪はようやく呼吸を落ち着かせた。下で埋まっていた自分のものを引き抜く。
ずるりと音がして、それが抜け落ちる。
「んんっ……」
抜ける瞬間さえ感じて、びくっと烈の身体は跳ねた。
まだ胸には、貫かれたまま。
(……痛くない、から…もうちょっと、このままでいてくれよ)
それだけ言うと、豪は烈の身体を起こして抱きしめた。
腕で押し込むように、根元まで貫いた。
煩いのは、誰の鼓動?でも、動いているのは烈しかいない。
「…うん……」
突き出した背中から、腕だけで抱きしめる。
しどとに濡れた下半身は、やっぱり豪に抱かれた証のような気がした。
(烈兄貴、顔…見せて)
少し、身体を離して、烈の顔をまじまじと見る。
「…なんだよ」
(何にも。もう、こうしてられるのも限界みたいだから)
もう片方の手で、烈の髪に触れた。しかし、烈には何も感じなかった。
「…豪……」
(この姿になって。はじめて烈兄貴とひとつなんだって感じた)
豪からのキスは、強くて深かった。やはり人より冷たかったけれど、構わない。
唇を離すと、豪はわずかに顔を紅くして、俯く。
(でも、ごめん)
「……」
その意味は、複数の意味があった。その理由を、烈はすべて理解した。

「いいよ、豪…僕は、……もう、…」

全てが終わっていく。指の感触さえ消えて、起き上がっていた烈の身体が、ベッドへと堕ちる。
腕が抜け落ちる瞬間、烈は豪のなかにあった何かに触れた。
「……」
まどろみの中で、掴みかけた。
とても温かい。そして、包み込むような。
あれは、なんだったのか。

(…れつ、あにき……)

ベッドに沈んだ瞬間、烈の意識も無くなっていった。
魂というものがあるのなら、あれがそうなのかもしれないと、最後の意識で思った。


 

 


烈が頑張るエロシーン。
やりたかったのは、胸に手を突っ込まれて悶える豪。

ほら、こういのってファンタジーしかできないから。
あはは・・・・

ブラウザバッグで戻ってください。


この進行について、疑問をもった人、聡いです。

8/17 修正しました。
理由は単純。烈が叫びすぎたから(笑)




実は、この話、豪は烈の感情に「当てられている」だけで本人は元々性欲なんかありません。幽霊なので。
なので、イクことが無いんです。それ以前に出せない。
かといってそのまま烈の望みどおりに実行すると烈は確実に大ダメージをくらいます。
それで、実行したのがあの行為。

 

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