すたー・にゃっき!
(ネタ系。N●Kクレイアニメ ニャッ●!のパロ)


にゃっ…にゃっ…にゃっ…
二匹のしゃくとりむしが地を歩く。
正確には歩いているのではなく這っている。
だが、彼らはそれでも体中使って精一杯歩いているつもりなのでここでは歩くという表現にするほうが正しい。
二匹はフェンスを登ろうとしていた。
青い金網フェンスだ。細い針金の上を、彼らは器用に歩いて行く。

(あにきー)

先頭を歩いていた青いしゃくとりむしが歩くのをやめ、身体を起こした。

(そんなところでとまるなー)

後ろを歩いていた赤いしゃくとりむしが頭をあげた。

彼らの名前は”ごう”と”れつ”。学校のまわりを住処としているしゃくとりむしだった。
葉っぱを食べていきている。
人間には彼らはただの赤い虫と青い虫にしか見えないだろう。
けれど彼らはちゃんと意思を持って、フェンスを登っていた。

あのむこうには、なにがあるのか。

最初に知ろうとしたのはごうだった。

そして、フェンスを登り始めた。
自分の身の幅ほどしかない金網を、必死で上り、超えたかった。

(もうやめようよ、ごうー)

れつは必死にそう言った。けれどごうは頑としていうことを聞かなかった。

(おれはもっと広いせかいに行く!)

そう言って、身体をせいいっぱい空へ向けた。
(おれは、いろんなこと知りたい。おれの知らないせかいがしりたい)
(ごう…)

れつは、この世界ではめずらしい”赤いしゃくとりむし”だった。
そんなれつをごうはいままで守ってきた。けれど、もうそれも限界かもしれない。

だから、新しい場所へいこう。
おれたちが平和に暮らせる場所を。

(いっしょに、いこうぜ)
ごうはくるりと後ろをむいた。そして。

(うわあああ――――!)
(ごう――――――――)

れつは必死にごうを呼んだが、なにもできなかった。
ごうはフェンスから空中になげだされ、落ちていった。

ぽてっ。

(いたたた…)
なんとか草がクッションになり、ごうは死ぬことはなく地面に転がった。
(ごう――――――!)

(あにきーだいじょうぶみたいだ)

ごうが叫ぶと、れつもフェンスから体を伸ばして一気に落ちた。

ぽてっ、ぽてっ、と跳ねて、地面に落ちる。
やがて、むくむくとれつは起き上がった。
(こわかった…)
(あにき…)
さすがのれつも自分のからだを空中へ伸ばすなど、やってことがなかったからだ。
(あにき、すごいぜ!)

ごうは精一杯からだを伸ばし、高いところからその地を見た。
(すごい…)
れつも同じようにのばす。そこは、黄色い砂地が広がっていた。

れつとごうが見たのは、学校のグラウンドだった。
人にとっては狭い世界でも、れつとごうにとっては、この上なく広い世界にみえた。

(あにき、これなんだろ?)
(え?)
ごうが少し歩いていくと、赤い物体と、緑の物体が見えた。
れつが少し食べてみる。
(これは…食べものだ!)
(おお、すげー!)

小さな口で、れつとごうはその赤い物体と青い物体を食べ始めた。
それはリンゴと呼ばれるもので、芯の部分とすでに一部腐っていたため、捨てられたものだった。

(あまいなー)
(う、ここは…にがい)

腐った部分を食べてしまい、れつは表情を変える。
(なぁあにきー)
(んー)

(これって、だれがおいていったのかな、こんなにたくさんあるのに…)

ごうにとっては、このリンゴは山盛りにされたごちそうだった。
れつにとってもそうだった。れつはすこし悩んで、答えた。

(うーん、にんげん、ってやつかな)
(にんげん?)

ごうは食べるのをやめてれつを見る。
(いちばん強いいきものなんだって、あと、ぜったいにみつかっちゃいけないって)
(どうして?)

れつはまたすこし、悩む。

(ぼくたちはきもちわるいから、ころされちゃうんだって)
(ころされる、ってなに?)
(わかんない…まえにそうきいた)

しかし、れつ自身も誰に聞いたのか、もう忘れてしまってしまっていた。
(そんなことはいいよ、これをぜんぶ食べちゃおう!)
(そうだな!)

二匹はぱくぱくとリンゴを食べていく。
そんなことは誰も知ることもなく。


今日もどこかで、この二匹は知らない世界へあるいていく。


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