浴槽迷宮
 


兄貴とは、ここしばらく口をきいてない。喧嘩したわけじゃない。気まずいわけでもない。
ただ、兄貴がそうして欲しいって言ったから、そうしただけ。
2,3日ならよかったけど…。

「烈兄貴…」

こっそりドアを開けて、呼びかけてみる。
兄貴はずっと、背中を見せてるだけで、あのまんまだ。
いい加減にして欲しい。俺って恋人だよな?そりゃあ、兄貴の力になれないことくらいわかってるけど、けど、愚痴くらい聞くし、見てられない。
「しょうがないか…兄貴が悪いんだからな」
こっそり呟いて、ドアを閉めた。
ぐちぐち悩んでることが、一度リセットしたら割と簡単に答えが出せたなんて、よくあることだ。
「30分悩んで答えが出なかったら明日やれ」とか、有名な開発者も言ってることだしな。
寝た程度で兄貴がリセットできないことなんて知ってる。
だから。

「兄貴ー、風呂入ろうぜー」
「…は?」
まずは芯まで温まってもらわないとな。

「…なんで、いきなり風呂なんだ?」
ペンを置き、眉根を寄せて俺を睨んだ。
「だってさ、もう4日目だぜ、兄貴が篭ってるの。もう我慢の限界」
ぎゅうーっと抱きしめようとすると、手で払われた。
「兄貴…?」
「最近シャワー浴びてるだけだから、抱きしめるのはやめとけ」
そういって、苦笑いした。
「じゃあ、なおさらだ。沸かしたから入ろう」
「…なんでそんなことするんだよ」
「もう4日そんなことしてたら、思いつくものも思いつかないって。一旦リセット。風呂は心の洗濯っていうだろ?」
笑顔で言ってやると。兄貴は困ったような、仕方ないとでも言いたげな、そんな笑みを浮かべた。
「心の洗濯か、お前も言うな」
「ま、友達の受け売りなんだけどな。一度さっぱりして、それからやるのも悪くないぜ」

「…それって、お前も入るのか?」
「もちろん」
「……」

どうやら、意味がわかってきたらしい。
もう一度確認すると、俺と兄貴は恋人で、ベッドで二人で過ごしたのは2度ほどだ。
それくらいの関係。
つかず離れず。恋人としては、理想なほど近くて心地よい距離感。
そんな二人が一緒に風呂に入る。まぁ、予想はつくよな。
兄貴はしばらくゆっくりと瞬きを繰り返すと。
「じゃあ、入るか」
そういって、少しだけ笑った。
「そうこなくっちゃ」
ちょうどよく最近風呂場は改装したばかりで、多少広さがある。高校生二人で入っても多少余裕があるくらい。
母ちゃん様様だ。



◆   ◆   ◆



豪が僕を抱くときは、鍵を開ける感覚に似ている。
音はしない。理性とか、羞恥とか、そういう形の無いものを一つ一つ崩して、素のままの自分をこじ開けてくる。
そういうときの自分は、頭の中が何もかもぶっ飛んでて、豪しか入ってこなくなる。
視界も、心も、身体も。
ただ、豪に手を伸ばし、求めて、受け入れて、また求めて、狂おしいくらい揺さぶられて、恍惚に支配される。
信じられないくらい、豪でいっぱいになる。
その感覚は、言葉では現せない。歓喜と、幸福と、苦痛と、憎悪と。持ちうる感情総てを開放すると、おそらくあんな感じになるのだろう。
自分の白濁で豪を濡らして、豪の白濁を自らの中に飲み込んで、同性のはずなのに、兄弟のはずなのに。なんて疑問すら蹴散らして、絶頂に達するあの瞬間を、忘れられるはずがない。

ただ、終わった後に、少しだけ罪悪感が残る。

豪を自分だけのものにして、こんなに汚して。苦しくなる。
そんな、記憶が戻るようにして訪れる後悔を、豪は優しく抱きとめた。
だけど、その優しさに慣れてしまわないように。傲慢になってしまわないように。
僕はその温かさを、ずっと奥底に閉じ込めておくことにした。
ずっといられるはずがないのだから。
いつか、別れは来るのだから。そのときに、女々しく引き止めないために。
だけど。

自分を追い詰めて、限界まで別のことをしていても、豪はそれを引き戻す。
温かい腕に抱きとめられたら、正気を保っていられるかわからない。
わからないけど、1つ言えるのは、豪をそれくらい求めている、ということだ。
言ってなんかやらないけど。
なのに、なんでこんな場所で二人きりになってしまうんだろう。
裸体で浴槽に、二人で向き合っていたりなんかしたら。

「…烈兄貴?」

なんだか、自分のほうが煽られてしまいそうだ。
豪はというと、前髪も後ろ髪もびしょびしょで珍しくオールバックだ。
たまにこっちを見てなんだか意味深な笑みをしてくる。

「…なんでもない。したいならさっさとしろ」
風呂でこうしているってことは、3回目が今から行われるってことだ。
欲求不満だっていうなら仕方ない。あいにくと、恋人と認めてしまってるのだ。豪も。僕も。
「つれないなぁ…」
「仕方ないだろ…さすがに、風呂でやるだなんて、はじめてだからな…」
「あったかくていいだろ?」
「ちょっと、心もとない」
準備も何も、最初から無防備な状態なんだから。
湯船から腕を出して、手を伸ばす。こうなったら、とことんやってやるまでだ。
「こっちに来い」
「うん」
豪を抱きしめた瞬間には、唇をも塞がれていた。ゆっくりと口を開け、戯れに舌を遊ばせる。
ねとねとしてるはずのその舌は、豪のものと思うと、別物のように思う。
息が苦しくなるのも構わずに、目を閉じて、その感覚だけを感じ取る。十分に絡ませて離せば、潤んだ青い瞳が見えた。
「…ずいぶん、上手くなったじゃねーか」
「お前のせいだろ」
「違いないな」
苦笑して見せると、豪も笑って見せる。狭い浴槽の中で交わす口付けっていうのは、ベッドの中とはまた違う感覚がする。
毛布の代わりに、体温に馴染んだお湯を。そのおかげで、身体が自然と上気して、二重にのぼせ上がってしまう。
とろんした目に、眠りそうになる。
「こら、烈兄貴。寝るにはまだ早いって」
「悪い。つい…」
気持ちよくてたまらない。寝てしまうにはもったいないけれど、まどろんでしまう。
何度か触れるだけのキスを繰り返して、ようやく、意識が戻ってくる。
「なんだか、新鮮な感じがするな」
「そうだな」
今から禁断の行為だっていうのに、なぜか豪も僕も落ち着いていた。
慣れなのか、余裕なのか。それとも、完全に心を許している故か。
「いつもだと、一回兄貴をいかせてるんだけど、どうしよっか?」
「今日は俺がやってやろうか?」
「烈兄貴が?」
「…たまには、いいだろ?それにな…、出すほうの苦労もたまには味わえ」
「え…?」
「いろいろ悩むんだぞ、それを教えてやる」
「じゃ、教えてもらおっかな」
本当はすっごく恥ずかしいのだけど、もうどうってことはない。
何度もしてもらったことはある。だから、大丈夫だ。怖くない。そう自分に言い聞かせた。

シャワーが降り注ぐなか、豪のものに指を絡ませ、くすぐるように扱く。
元から濡れてて、さらに透明な液が先端から染み出していた。湯気の中でそれは茫洋として見える。
「…気持ちいい、のか?」
「うん、すっごく。もっとやって」
「ああ…」
曖昧な返答で答えただけ。まるで意識が半分持っていかれたみたいに、豪のものを両手で揉みほぐす。
けれども柔らかくなどならない。ますます大きく、硬くなっていって、時折震えが起こるたびに、豪からため息が漏れた。
豪の指が、髪に絡む。梳くように撫でで、頬に触れる。
「なぁ、烈兄貴…」
「ん?」
「舐めてくれる?」
「舐めるのか?」
「俺は、いつもそうしてる」
そのとおりだ。確かに、豪は僕のものを口に含んで舐めまわす。ひくひくと震えて限界を訴えても、豪は止めてはくれない。
結果、やってくる選択肢にどうしようもなくて、僕は一度心の中で悲鳴をあげてる。
それを、豪にも味あわせてやる。
「わかった」
すっかり大きくなってて、口に含めるかどうかもわからなかったけれど、ゆっくりと、口の中に飲み込んだ。
「んっ…」
豪が感じたのか、微かにたじろいだ。
唾液を絡ませて音を立てるなんて、器用なことなどできない。動くスペースなどほとんどない舌を、僅かに動かして、熱さをすくい取った。
「…あ、あっ……」
出したり、入れたりするたびに、豪から呻き声と快楽に浸る音が、シャワーの音に混じった。
すっかり腰についてしまいそうなほど反り返っても、まだ僕はそれをやめようとはしない。豪をいかせなかれば意味がない。
「や、もう、…いい、からっ……!やめっ……あ…」
そろそろ、豪にも限界が来たらしい。さらに舌を動かし、さらに指で、その奥にある柔らかいひだまでも触れて、さらに豪を追い詰める。
僕は確かに受け入れる側にあるけれど、今の主導権は僕が握っていた。
「…やっ…れ、れつあに…き……やめ…ん…だし…ああっ」
恍惚と苦痛に顔をゆがめて、呼吸が不安定になる。
苦しいだろ?豪。
この状態で出してしまえば、僕は豪の精液を飲むか、体に掛けられるかのどちらかしかない。
どちらにしろ恥ずかしいのは出してしまったほうだ。
こんな戸惑いと焦りを、豪にしてもらうたびに味わってきたんだ。少しは思い知るといい。
「あ、ああっ……」
戸惑いの声が、悲鳴じみたかすれ声に変わった。
ひくひくと口の中のものが激しく震えている。解放の時は、もうすぐそこまできていた。
(……かけさせるか)
そう思って、口をはなした瞬間だった。
「…っ……」
ぴしゅ、と頬から口にかけて、温かい何かが降りかかった。
「はっ……はっ…」
荒い呼吸で、豪が虚ろな目を天井に向けていた。豪が無理やりいかされたのは、たぶん、これが初めてなんだろう。
唇にかかった白濁に触れて、少しだけなめてみた。
「…苦い……」
まぁ、精液だし、しょうがない。
「豪…大丈夫か?」
「烈兄貴…」
シャワーを止めて近づいてみると、豪はとたんに真っ赤な顔をした。
「ご、ごめん、烈兄貴…!抑えられなくって…!」
「ああ…」
そういえば、洗い流してなかった。
「どうだ?いかされた感想は?」
「…気持ちいいけど…烈兄貴のそれはやばい…って……」
ちらちら僕を見ては、眼をそらしていた。
「それ、って…あ…」
「…ご、ごめん」
手をふと当てると、べたべたしたものが頬についていた。シャワーでもこの部分は流せなかったんだろう。
顔射ってやつか…とぼんやり思いながらも、べろりと舐めとった。
「あ、兄貴っ…!」
「どうだ?いかされて自分のものをぶっかけられた相手を見た感想は」
「う…」
「気持ちいいんだけど、恥ずかしいだろ」
「う、うん…」
シャワーを再び出すもの少々面倒なので、そのまま猫みたいに手の甲を舐める。
苦いのだけど、まぁ初めてではない味なので2,3度舐めていると、急にその手首を握られた。
「兄貴…もしかして誘ってる?」
「…かもな」
自分でも、よくわからなかった。抱かれたいと思っているのか。曖昧で、ぼんやりと豪を見ていた。
まだ灼熱感も高揚感も実感が沸かず、育ち始める自分自身のものでさえ、なんだか自分のものではないような感覚。
「そんな風に誘われると、俺、兄貴をめちゃくちゃにするよ?」
「…それは、嫌だな」
「嘘ばっかり」
「嘘じゃない」
「嘘だ。じゃあなんで兄貴のこれはこんなになってるの?」
「んっ…」
不意に握られて、微かに全身が震えた。
正面から抱きしめられて、身動きが取れない。それなのに、豪の腕が背中から腰に、腰からさらに下へ伸びてくる。
「う…」
まさぐるように、入り口を擽られて、何かにすがりつきたいものの、しがみつくものがない。豪の身体を、強く抱きしめることしかできない。
「入れるな」
「…う、ぁ…はぁっ…」
入り口からゆっくりと長い指が食いこんでくる。
「あ、ああ…」
ほんの数センチ、身体の中に入れられただけで、がくがくと震えている。
お腹のあたりに、硬いものが当たって、それが豪のものだとわかるのはすぐだった。
「う、あ…」
すでに2回、ここは限界まで開かれたことがある。けれども、もともとそんな器官ではないゆえ抵抗も大きく、唯一の救いといえば豪も僕も、全身濡れているということだ。
抵抗を和らげるには不十分かもしれないそれも、何度も何度も内壁を擦られていくうちに、抵抗そのものが無くなっていく。
「ご、ごう…!」
「兄貴、いま指が何本入ってるかわかる?」
謎々でもかけるよな口調で、問いかけた。
「そ、そんな…」
「じゃ、ヒント」
「うあっ…、はっ…」
一本、また一本と、身体の中で触れる場所が変わっていく。豪の奴、僕の中で指を順番に折っている。
「ひうっ…」
「…わかった?」
「…さ、さんぼん…」
「正解」
「この…!」
「兄貴、わかる?中に、指が三本も…兄貴は俺にすごく感じてるんだよ」
そんなこと言われてもわからない。身体が勝手に受け入れてるだけなのか。
それとも、僕自身が望んで受け入れてるのか。
心臓の鼓動がいつもより速い。今から、豪の全部を受け入れることになる。
初めてじゃないはずなのに。初めてのようにどきどきしている。
「もう、いいかな」
入り口をかき回されてとろとろになったころ、ようやく指が離れた。
「はっ…はっ……」
僕自身ですら、しっかりとたち上がってしまっている。鼓動の音が、頭から離れない。
「兄貴を、抱くからな。悩み事、全部ぶっ飛ばしてやるよ」
「豪…」 
涙かお湯かでわからないが、潤んでしまった目で、豪を見上げた。
豪は、呆然としてる。そんな表情すら、愛しいと思ってしまう。                                                           
「兄貴…?」
「僕は…豪に欲情してる、んだな…」
自分のことなのに、まるで、他人事のような口調だった。
「お前が、こんなに近くにいる。もっと、触りたいとか…そんなことばっかり考えるんだ。おかしいよな…お前は…僕の弟なのに」
「烈兄貴…」
「こんな兄貴で、本当にいいのか?お前を、幻滅させるだけだぞ?」
そういって、少しだけ笑った。
豪はきょとん、とした表情で僕を見て、そして。
「あったりめーだろ?兄貴は、どんなことをしてても俺の兄貴で、恋人。どんなに兄貴が狂ったって、俺が一緒に狂ってやるからさ」
そういって、笑ってくれた。
「豪…」
「だから、入れてください、って言ってみな?」
「っつ…!」
最後の最後までこれか。でも、引き下がってなんかやらない。
「…入れてやる」
「へ?」
「僕の中に、お前を入れてやる」
「……烈兄貴…」
「もういい、黙れ」
こんなこと言うのは、恥ずかしくて仕方がないんだ。
確かに、僕が受け入れるけれど、お願いなんて真っ平ごめんだ。豪に狂っていても、それは譲らない。
僕が豪に溺れてしまったように、豪もまた、僕に溺れていることを知っているから。
だから、力関係はいつだって対等でいたい。

恋愛だって、兄弟だって、一人ではできないんだから。


◆   ◆   ◆



兄貴の身体は、綺麗だった。
そりゃ風呂入ってるんだから、綺麗だっていえばそうなんだけど。
不安定に息を吐いて、一気に吸って、俺を受け止めようとする姿は、それだけで頭がくらくらする。
ぐっと自分のものを食い込ませて、びく、と兄貴の身体が震えた。
「う、あ…」
「…痛い?」
「う……」
3回目だっていうのに、身体にはまだ痛みが伴う。痛いというより、苦しくてきつい、と前に兄貴は言ってた。
こっちだってきついけど、あともうちょっとで全部入る。
「…ぜんぶ、はいった」
「……う…ごう…」
荒い呼吸を繰り変えずばかり。時折ぼんやりと瞳を開けて、もう俺のことさえ視界に入っているのかわからない。
柔らかい肉が震えて、俺を締め上げてくるけれど、たぶん兄貴は無意識だ。
このまま押さえつけて、めちゃくちゃに突き上げて悲鳴をあげさせるのもいい。けれど、それはもう2度やった。
「ちょっと動くな」
「っつ…あっ…」
体をつなげたまま、胸まで密着させて、隙間なく抱き合った。
兄貴の顔が、限界まで近付いている。
「烈兄貴、俺が見える?」
「豪…」
快楽で光をなくしたように薄らいだ眼が、しっかりと、俺をとらえた。
「苦しい?」
「…大丈夫、だ……なんかじんじんするけど…」
「そりゃ、まぁそうだろうな……気持ちいい?」
「…まだ、よくわからない……でも……すごく熱い」
「兄貴の中は、いつもあったかいな」
「当たり前だろ」
そう言って、兄貴は少しだけ笑った。だらりと床に触れるだけだった腕をのばして、俺の首に回してくれる。
「烈兄貴…」
「…こういうときは、その言い方はやめておけ」
「え…」
「お前の、好きなように、呼んでいい。こんなことしてるんだ。俺たちは…血の繋がり以上に繋がってる」
兄弟であるが故に、触れられなかった。実の兄だったから。
思いを告げ、身体を繋げても、まだ俺は烈兄貴としか呼べなかった。
いきなり呼んでいんだろうかとか、いろいろ戸惑いがあったから。
今俺が繋げているのは、烈兄貴だけど、だけど…それ以上に。
「…れ、つ……」
「ん、なんだ?」
苦しいはずなのに、それなのに、そんなことを微塵も見せずに、烈は唇をぺろりと舐めるような、口付けをした。
「れつ…れつっ、れつっ……」
誰だってそう呼ぶはずなのに。自分だけはその言葉が特別な響きに思えた。
子供みたいに、何度も名前を繰り返して呼んで。そうするたびに、口付けを繰り返して。
自分自身を烈の中に沈めていることも半ば忘れて、抱きしめあった。
「…っ…」
ふと、兄貴が何かを感じたように震えた。
「…烈?」
「……」
苦笑しながら俺を見つめた。どうやら、兄貴の中でまた大きさを増してしまったらしい。
その間にも、柔らかな肉が締め付けて、びりびりとした快楽を生み出してくる。
「めちゃくちゃに、動いていい?動きたい」
「…壊れない程度になら」
「それも、ちょっと無理っぽい」
「そっか…」
今度は、少し困った顔をした。それでも表情は快楽に潤み、とろんとした目で、俺に身を委ねた。
「いいよ、動いても。気絶したら…ちゃんと後始末しておけよ」
「わかった。サンキューな」
二人で見つめあい、少しだけ笑って、舌をを触れ合わせた。
それが、合図だった。
「くっ…うう………うぁ…」
兄貴を揺さぶって翻弄するたびに、声が震えて返ってくる。
すっかり意識は吹っ飛んでいるんだろう。ただただ、快楽に翻弄され、それでも声だけは抑えようとする兄貴は、健気だったけれど、どこか嫌だった。
「声、もっと出してみたらどうだよ?」
「う、き、きこえるからっ…」
「じゃ、聞かせて」
「ああっ…」
胸の飾りを愛撫し、腰辺りをなぞっていくと、背をしならせて仰け反り、微かに涙が零れ落ちた。
もっと、感じてくれればいい。
そんな声の羞恥すら吹っ飛ぶくらいに、脳の隅々まで俺のことしか考えられなければいい。
「ご、ごうっ…」
「…なに?」
「さ……わっ、て」
そういって、かくんと首を振った。
「いいぜ…烈。お前は、俺だけのものだから」
こんなセリフ、ゲームくらいしか言うことないと思ってたんだけどな。
でも間違いなく、今この瞬間の烈は、俺だけのもの。
俺のことだけ考えて、俺のことだけ感じて。俺の身体に、快楽を与えてくれている。
「あ…いや…だ……くうっ…」
びくびくと震える烈のものから、透明な液体が溢れ出す。
「こんなに溢れてて。すっごく感じてるんだな……気持ちいいんだよな」
「ひあっ…!」
感情の暴走により声はほとんど意味を成していなかった。
ぬるぬるなった烈のものに指を絡ませ擦りつけ、解放させようと強制的に。
「う、やっ…ご、ごぉっ…うあっ…ひぃ…」
声は裏返っているのか、高くなる。濡れた髪を振り乱し、口の端から微かに唾液を零して、その眼は快楽におぼれていた。
同意のはずなのに、なぜか強姦しているような気持ちになってしまうのは、ここまで兄貴を堕としてしまったからだろうか。
いつも、みんなを支えてて、笑顔を振りまいて、頼れる「兄貴」だった星馬烈を、女のように抱いてしまったからか。
禁忌である、近親相姦までして。兄貴もそれは知っている。
全部知ってて、兄貴は受け入れている。だけど、ここまで乱れる兄貴を、俺は知らなかった。
混ぜこぜになった感情を振り切るように、俺は腰を振った。
兄貴のものの先端に爪を立て、精を吐くように強要する。
深く自身を突き刺して、抜いて、絶頂まで高めてゆく。
「…うぁ…ご…う……もう、…で……」
切れ切れに、兄貴が泣きながらそう言った。限界だと。
「…うぁっ…」
兄貴の中に包まれた俺が、大きく震えた。
解放される瞬間、ぴったりと身体を重ね合わせた。
包むように抱きしめて、俺自身、解き放たれた快楽に震えながらも、零れていく兄貴の涙を、ゆっくりと舌で拭った。
「ひ…ひぅ…ご……う…」
ひくん、と兄貴の身体が震える。それを繰り返している。あまりにも激しい快楽に、兄貴の意識がないのかあるのか見てわからなかった。
空ろに瞳を開け、こぼれる唾液も、腹にかかった精もそのままに。 
「はぁっ…はぁっ……」
ようやく大人しくなった俺自身を引き抜くと、白濁がこぼれていった。
「れつ…?」
ゆっくりと、腕が伸びる。それに吸い寄せられるようにして、身体を抱きしめた。
「……っと、して」
微かな声で、囁いた。そうして、微笑んだ。
「大丈夫なのか?」
「…うん」
普段の兄貴では到底考えられない、お願いだった。
「じゃ、もっとやろうか」
「……」
言葉もなく、ただ身体を重ねた。


                                                       



◆   ◆   ◆




「……」
水の、音がする。
ごぼごぼと絶え間ない。泡の音だ。目を閉じていてもわかる。すごく、温かい。
そうか。風呂に入っていたんだっけ。そして、たぶんうつらうつらとして、眠ってしまったんだ。
「……き」
いま、誰か僕を呼んだのだろうか。
「れ…にき」
声が、明瞭になっていく。知ってる声。泡の音にまぎれていても、はっきりと聞こえる。
「れつあにき」
そうだ。これは、豪の声だ。一番、大切な人の声だ。
「……う…ん…」
目を開けると、真正面に見えたのは、真新しい浴槽の蛇口だった。
浴槽には湯が張られており、ごぼごぼとジャグジーの音がする。さっきの泡の音は、これだったと悟った。
「気がついた?烈兄貴…」
「豪…」
豪は、僕の後ろで抱きしめるような格好で一緒に浴槽に浸かっていた。
お湯そのものは少し温い。それでも温かく感じたのは、豪がずっと背中にいたから。
「とりあえず身体洗って、風呂入れちゃったんだけど…」
そういってぎゅっと抱きしめた。
「…豪……?」
「あのまま、兄貴が目覚めないんじゃないかって思って…すごく不安だった」
「お前…」
「…ごめん……」
首に腕を回して、ぎゅっと抱きしめてくれる。
相当激しくやったんだろうな…。僕が記憶に残っているのは、豪の上にまたがって跳ねて絶頂に押し上げられたときだ。
まだ、身体がしびれてる感じがする。
「大丈夫だって、ちゃんと目開いてるぞ」
「うん…」
まったく、後悔するなら最初からそこまでしなきゃいいのに。
結構こっちも大変なんだからな。
「ま、おかげで悩み事は吹っ飛んだし。またリセットすればいいか…」
「ホント?」
「ああ、だけど…風邪引きそう」
「あ…」
お湯、ちょっと温すぎる。
「まぁ、いいか」
「まぁ、いいよな」
未来なんてない。この禁忌の感情を、それでも楽しんでいる自分がいた。
それは、相手が豪だったから。
「なぁ、豪」
「ん?」
「いつまでくっついてる気なんだよ?」
「ん〜、いつまでにしようかな?」
「このっ…」
「うわっ」
お湯を手でぶっけかて、やっと豪の手が離れた。
それが名残惜しいのは、僕だけの秘密だ。




1回濡れた状態でのあれがやってみたかった。というもの。
浴槽迷宮といっているが浴槽には最後しかいってない。

兄弟の家の関係上、風呂場のほうが後始末楽なんじゃないだろうか。。

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル