レッドテイル・シークレット


みんな、秘密の1つは2つ、持ってると思うんだ。
もちろん、ノーテンキとか言われてるこの俺、星馬豪にな。
しかし…俺の秘密は一風変わっている。
言えるわけないし、言ったら…烈兄貴に俺はぼろぼろにされる。

「豪〜」

兄貴が俺を呼んでる。ということは、自分の部屋に来いってことか。
「わかった、行くよ」
漫画本を放り出し、兄貴の部屋に行く。ついでにブラシを持っていく。
ノックもせずにあけると、兄貴はベッドで寝そべっていた。
とろんとした目つきは誘っているようにみえるが、そういう問題じゃない。
夜だから活発なのだ…あれが。
証拠にどこかおかしい。シーツが不自然に盛り上がっている。
「烈兄貴ぃ、用も無いのに呼ぶの止めてくれないか?」
「ん…用はあるよ。暇だから」
「……」
黙るしかない。いや、確かに暇だから呼ぶってのはありだけど!
俺もやったことあるけど!
不自然な顔をしてるのはわかったのか、俺の目をじっと見て、
「豪、俺のこと嫌いなのか?」
一言、ストレートに言い放った。
「……!」
そんな上目遣いで見るんじゃねぇー!
ぶんぶん首を振ると、へらっと兄貴は笑って見せた。
赤い髪の中には、不自然に2箇所、逆立っている。
そして、着ているTシャツの中から不自然に出ている…しっぽ。
ふぁぁ、とあくびして、ごろりと足を投げ出す様は、まさにネコ。
「ほら、烈兄貴起きて」
ブラシを取り出して、髪に隠れている耳、ブラシで擦ってやるとふにゃりと烈兄貴の顔が笑う。
(か、かわいいっ―)
態度が180度以上変わっている兄貴を、撫でるのが最近の俺の楽しみ。
しかも、この状態になってるのに兄貴は気づいてない!
内心で思い切り嬉しそうなのを見透かしてるのか、兄貴は俺を見て、しっぽを揺らす。
尖った爪、赤い猫耳、赤い尻尾。
何故兄貴がこうなったかというと…事の始まりは数ヶ月前だ。


兄貴は同級生の八田と一緒に交霊会に参加しちまったんだ。
あんなにイヤだイヤだ言っていたのに、社交辞令には逆らえなかったらしく。結局夜に行ってしまい。
帰ったきたら、兄貴は幽霊に憑かれてた。
ネコの霊。さらにさらに、数日後には髪色と一緒の耳と尻尾が生えた。
性格まで夜になると一変。
突然甘えてくるわ、引っかいてくるわ。お風呂嫌がるわ。ごろりと寝るわ。
そのうち、服脱いじゃいそうで不安だ…
シチュエーションとしては美味しいけどな。
そして寝て翌朝になると、元に戻るけど兄貴は夜のことをけろりと忘れてる。
耳も尻尾も何にも無い。
兄貴は憑かれてることさえ気づいてない。きっと疲れてるから寝てしまったんだろう程度だ。


「どーすりゃいいんだ…」
俺の心配なんか毛ほども感じていない兄貴は、俺を膝枕にしてくぅくぅ寝ている。
「烈兄貴」
頭を撫でると、目を開けて、僅かに目を細めた。
ネコ科の眼らしく、虹彩の大きさが変わって俺を見てる。
「こんな俺は嫌か?」
「…そんなこと、ねーけど……何か、変な感じだから」
いつも怒られてばっかりだし、一つ何か言えば的確に論理的に返してくる。
兄貴は兄貴だから、決して甘えたりはしない。
こんな風にすることは、兄貴なら決して無いから、なんだか不安になる。
「…なぁ、豪」
「何?」
「お前、寝心地いいな」
「あ、そう…」
なんだか落ち着かない。寝てる兄貴は可愛いけど。
「ねぇ、兄貴は…元に戻るの?」
「ん…戻らなくてもいい気がするけどな」
「そうすると、俺が困るんだけどなぁ…」
「今まで俺が困ってたんだから、十分困っとけ」
「ひで〜」
豪が笑って見せると、烈も笑い、ぎゅっと豪の膝に顔を摺り寄せる。
そんなことなど烈ならしない。
だから、たぶんとり憑かれてる。
「兄貴は、戻らなくてもいいんだ」
「お前がいいって言うならな」
正直、これが兄貴の演技なのか、本当にわからない。
憑かれているなら追い出さなきゃいけないんだろうけど…そんな気にもならない。
「困るけど…まぁしょうがないよな。いつか出てってくれよ?」
「いつか、な」
しっぽを揺らして、兄貴は眼を閉じる。
その様子は高級猫みたいだった。

こんなこと兄貴が知ったら思いっきりぶっ飛ばされる。
というか憑かれたことに気絶するのが先か。
とりあえず、俺の秘密は兄貴には絶対にいえないんだ。

俺がこの烈兄貴猫を可愛がっていることもな。




猫耳ネタ。果たして彼は本物か霊か。
豪だけが幸せなSS


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