テンプレート・ファンタジー ”今週土日は、台風13号の影響で雨が多くなるでしょう…" ドラマの合間に流れた天気予報は、全て同じことを伝えていた。 「…つまんねー」 ぽいっとクッションを真上に投げ上げ、キャッチして豪はぼやく。 「豪、ほこりが飛ぶからやめろ」 「へいへい」 何故かこの曜日、この時間だけは烈と豪は揃ってドラマを見る。 どういうわけか分からないが、どんなにドラマのクールが移動しても、1つだけは一緒に見るものがある。 それが、今回の場合、なにか違っていた。 夜11:30にやるのだからそれなりに内容もハードで、異母兄妹と男女2人が織り成す愛憎織り成す…というCMが踊るもの。 他の人がこれを見てると聞いたら驚くような内容のものだった。 1つしか噛みあわなかったドラマがまさかこれだとは、と二人して驚いたものだ。 母親はとっくに寝ている。部屋はこの烈と豪の二人だけ。 寝る仕度は済ませて、あとはこのドラマ見て部屋に戻る、といいのが最近のパターン。 「なぁ〜どう思う?今日の展開」 「禁断の愛情、ってやつだろうな。来週は」 豪が聞くと、烈はくすくす笑っている。 異母兄妹の二人が最後でお互いに恋に気づく…というのが、今日までの内容。 予告を見れば、またもめていた。 しかし、事の顛末を見るのが目的なのだから、まだわからない。来来週が最終回だった。 「禁断の愛情、ねぇ…。まだ異母兄妹だからいいよなぁ〜」 カーペットの上に寝そべり、うなる。 「そう変わらないだろ」 烈はチャンネルを変えて、ニュースにすると、それをじっと見ていた。 そういうことにあまり興味がない豪が退屈でしょうがない。 「な〜兄貴〜」 たまらなくなって、烈に抱きついてみる。 「なんだよ、重いっつの」 抱き付きをものともせず、テレビを見ながら呟く。 自分よりも体格が大きい豪が抱きついてくることは、稀にある。 犬みたいに、暇でしょうがないときに、そうしてくる。 烈もそういうことがわかってきた。抱きついてきてもそこは兄弟で兄だ。 重みでひっくり返ることはしない。 最近はこうして平然と対応することができる。 「兄貴のバカ〜」 やっと豪から解放され、烈はため息をつく。 (前は、僕のほうがダメだったからなぁ…) 豪が抱きついてくると、烈のほうがどきまぎしてしまい、真っ赤になってしまう。 それが二人きりの部屋の中でも、リビングでも。 紅くなった烈を見ることが豪にとっては楽しかったらしい。 しかし、そこは兄のプライドがある。 思い切って、普通にしてみたら、案外出来た。 そのあとは、もう豪の抱きつきも怖くなくなった。 「兄貴ぃ〜」 「なんだよ、うっとうしい」 「こっち向いて」 なんだ、と豪を向いた瞬間。 豪の微笑みが見えて、 肩に、手が乗せられる。 そして、急激に青い瞳が近づいてきた。 「〜〜っ!」 唇に、温かい感触が滑る。 「ん…ん〜っっつ!」 歯列をなぞられる。蕩けそうなくらいに甘い。 舌が柔らかい。この脆弱な口を開けてしまったら、きっとこれは中に入り込んで、思う存分蹂躙するだろう。 そんな奴だから。 下唇を柔らかく食み、角度を変えてなぞられる。 何度も何度も、続けてくる。 「ん……」 息が苦しい。なんでこんな長時間キスして来るんだバカ豪。 そんな気分でもないのに。 眼を閉じたまま口を開こうかどうか迷う。そうして考えているうちに、ふっと口が離れた。 「……はぁ……はぁ……」 やっと呼吸が許され、息を吐く。豪はしてやったり顔だ。 「何するんだ…」 上目遣いで豪を睨む。 「いや、さっきやってたから…いきなりやればちょっとは変わるかな、と…」 「あのな…」 確かに今日の放送で、兄妹の兄はいきなり妹に口付けしてたけど。 そのままそんな行為に流れ込んでたけどっ…! 「ご〜う〜」 「あはは…悪い悪い。でもさ、つまんない。兄貴抱きついただけじゃもう反応しなくなっちゃったし」 「それはお前が悪い」 あんな一日一回も紅くなってたらこっちの身が持たない。 「禁断の愛情やってるのはお互い様、だったら俺たちもやってもいいだろ?」 「…う……」 そんな目を細めて髪を撫でるな。 そんでもって首触ってくるな。 顎持ち上げるな。 けど、言えない。どこかで期待してる自分が居る。 否定できない。 「もうちょっと、続きしよ?」 そんな目で言ってくるな。 なんでそんな低い声で言うんだ。 「ごう……」 「なに?」 「……ずるいっつの、やっと平気になったのに…」 抱き付きがスルーできるようになったからって、平気なわけじゃない。 本格的に抱かれているときはどきどきしてるし、声が低くなると、どうしようもなくなる。 生活に影響しまくってる。 それを1つずつ、平気なようにしてるんだ。 「じゃあ平気にならないようにすれば?」 あっけらかんと言う。 「バカ、そんなことできるか」 「しちゃってよ」 「しない」 「して」 「しない」 押し問答だ。 しない、と言い切ると豪は諦めて、息を吐いた。 「まぁ、兄貴がそういうならいいけど。でも今からやることが平気になると俺めげそう」 「…それは、ないと思う」 下を向いて言うと、豪は笑って、もう一度僕を思い切り抱きしめた。 かなり初期のもの。 ゴーレツらしい?今じゃきんしんそーかんだって平気でドラマでやってそうだ。 テンプレート・ファンタジーとは話そのものがゴーレツ甘甘のテンプレ話みたいだから、という意味合いでした。 |