BAD BLOOD

             作/石榴 舞


 里鈴(りれい)は村一番の美女である。十六才の誕生日を迎えたこの日、彼女は村はずれにある立派な祠の巫女として仕えることとなった。
 それはとても名誉なことであった。神に仕えることももちろんのことだが、それ以上に神に祝福された子供を身籠ることができるのだ。
 ほとんど外界との交流のないこの村で、「神の使い」とされた異邦者と巫女の産んだ子供は今後ますますの繁栄を意味するものとされている。だからこそ、村は総出で立派な祠を立て、成人したての若い娘からよりすぐりの美人を巫女として捧げてきた。
 里鈴も過去に巫女を務めた女達からいろいろと話を聞かされていた。村に訪れた「神の使い」が祠の巫女に熱い抱擁と共にどんな贈り物をくれるのか――それは子供ばかりではない。短い日々の中での燃え盛る愛、身体がとろけるような想い、そして――。
 広い祠の片隅にある大鏡に身を映しながら、朝露に濡れた百合の花の模様がうっすらと入った袖の長い白い衣を身体に纏っただけの巫女装束の帯を整え、つやつやとした長い黒髪を梳いて束ねる。ちょうどうなじが見えるように頭の上左右に丸くまとめて留めた後、小さな布でそれを覆う。
 準備は万端だ。あとは祠に訪れる客人を待つのみである。
 もうとっくに夜も更け、満月が空高くこうこうと輝いているのが窓から見える。
一体どんな人が来るのだろう? ――祠の奥に鎮座した、男女会い合わさる小さな石の神像に手を合わせながら、里鈴の胸は高鳴っていた。
 そこに、祠の扉を叩く音。
「どちらさまですか?」
 凛とした声で応対する里鈴。扉の向こうの者が答える。
「近くの村に紹介されて来たのだが、一晩泊まらせてはくれまいか?」
「申し訳ありません。今、神様に祈りを捧げている途中なので……」
 一度断るのは昔からの習わしである。
 異邦者だからといって、だれでもかれでも「神の使い」にしてしまうわけではない。そもそもこの祠は外界に通じる大きな道から遠く外れたところにあり、村に立ち寄った旅人の中で村人たちが慎重に選んだ人間を祠への細道に案内するのだ。
 もし扉の向こうの者が村人に差し向けられた旅人ならば、しかるべき返答をするはずである。
「実は村人に言われて餅を持ってきたのだが……」
「そうでしたか。そうとは知らず、礼を欠いたことをお許し下さい。さあ――どう……ぞ」
 扉を開けてその向こうの客を見た時、里鈴は思わず言葉を途切らせてしまった。
 まず彼女の目に飛び込んできたのは丈の長い暗黒の外套であった。里鈴より一回り大きい男の身体を、まるで夜の闇がすっぽり覆ってしまっているように見えたのだ。
 しかし彼の顔は、外套の持つ異様な雰囲気とは対照をなしていた。肌は白く、茶色い毛の混じった短い金髪は旅のせいで多少ほつれているようであったが丹念に整えられており、顔立ちに至っては村の男衆の誰も立ち向かえない程美しい。
 だが外見からして気軽に声をかけれるような親近感は全くなく、むしろどこか知的で高尚な威厳を放っていた。
 男は外套のふところから村人に託された餅を包んだ包みを差し出した。開けて中を確かめると、供え物のために作られた紅白の餅が入っていた。確かにこの男は村人たちが差し向けた「神の使い」だ。
 男を祠の中に入れ、里鈴は受け取った餅を神像の前に供えて手を合わせる。奇妙な嬉しさとこれから始まるだろう未知なる体験への不安が心の中で交錯し、それが微かな指の震えとなって現れる。しかし村の長老に教わった通り、つとめて平静を装わないといけない。これは村のための大事な儀式なのだ。いたずらにそわそわして、何も知らない客人がこちらの様子を不安がって逃げ出してしまったら意味がないのだ。
 ゆっくりと男の方に向き直り、里鈴は問いかける。
「旅の方ですか?」
「ああ、ちょうど東の方へな」
「どちらから?」
「いや、あちこちを放浪しているのだ」
「それはそれは……さぞかし大変でしょう」
「旅は楽しいものだ。それに俺は何一つ不自由がない」
「お金持ちの方なんですか?」
「それは違う。まあ旅芸人みたいなところだな」
「……そうなんですか。どんな芸をお持ちなんですか?」
「多少奇術を、な」
 しかし結局男は帰る直前まで奇術を見せることはなかった。
 それでも話は盛り上がった。話し方は淡々としていたが、男は実に沢山の話題を持っていうようだ。
 男は東の方角に行くために、ここからすこし離れたところに遠く深く広がる森を横断するという。晴れている日でも黄昏のように薄暗く、夜になれば盲目になってしまったかのように何も見えなくなるこの広大な森は、非常に迷いやすいために誰一人入るものはいない。この辺りを行き通う旅人や商人は誰も嫌がって森に近付こうとしない。実は里鈴の村が外界とあまり交流がないのも、森に少し入った辺りに位置しているためだからでもある。
 里鈴もそんな生活環境の中で育っていたので、森の噂は知っていた。もちろん彼女も森の中の恐ろしさを伝聞していたのでやんわりながら男に止めるように促したが、彼は不敵に微笑み、
「俺は奇術師だ。普通の人なら迷う森でも私はまっすぐに通ることができる」
 と言ってのけた。
 時機のいいところで、さぞかしお腹が空いているでしょうと里鈴は土間から簡単な料理を装って男に差し出す。煮物と汁物、山菜の漬け物に軽く焼いた餅。酒も勧めたが、男は断った。
 食事に口をつけた男は、それまで何かを憂うかのように細くしか開いていなかった目を大きくして舌鼓を打った。
「これはうまい。いや、これはお世辞などではない。旅をしていて今までいろんな食べ物をたべてきたし、腹に納まらぬほどの馳走も目の前にしたこともあったが、こういう食事のほうが私は好きだ」
「あ……ありがとうございます……」
 実際里鈴自身本当に嬉しかった。これまで料理は何度も作ったことはあったが、これほどまでに誉められたことがなかったからだ。
 緊張ぎみだった里鈴であったが、今の彼の言葉ですっかり穏やかになった。
 ――今なら思いきって打ち明けられる。
 男に悟られぬように息を吸い込んで覚悟を決めた里鈴。
 だが彼女が何をか言う前に、男がちらりと彼女を見てこういった。
「どうせならば、お前を旅に連れていきたいな……これだけうまい料理が作れるならな」
「あ――、そうですね、旅をするのも、いいかもしれませんね、え、ええ」
 せっかくの好機を逃してしまい、しどろもどろ返事する里鈴。
 しかし男の目は彼女の顔を見据えたままである。
「遠慮はいらない。一緒に来ればいい。俺は本気だ」
「――え……?」
 その時初めて里鈴の目が男の目と合った。
 ほんのりと金色を帯びた小さな瞳。鋭くとがった眼の中に強い意志を感じる。その力に気押されたかのように、里鈴の身体は金縛りさながらぴくりとも動かなくなった。
 しかしどういうわけか、彼女にはそれが苦痛に感じない。今までの不安が焦げるような熱い思いに変わっていくのが、肺からじわりじわりと漏れる吐息から感じとれた。耳には自分の胸のひときわ強い高鳴りだけがずんずんと響く。
 男の片手指が里鈴の頬に触れる。
「あっ……ああぁ……」
 なんてはしたない声を出しているのだろう――わずかに男の繊細な指で顔をそっと撫でられて不意に自分の口から漏れた声が、里鈴には恥ずかしくて仕方ない。
「なかなかいい声を持っているじゃないか。ますます気に入った。……お前はこんなところで交合うのを待つような女ではない。俺の側にかしづくべき女だ」
 里鈴の頬は男の両手で愛おしく撫で回される。それだけで里鈴はすっかり暖かい花園に横になって微睡んでいるかのような穏やかな感覚に包み込まれそうになる。
 だが、男の一句が夢見心地の彼女の頭に妙な形でひっかかる。
「お待ち下さい、お客人様。こんなところで交合う、とはどういうことなのでしょう? 私は好きこのんで異性と寝るようなはしためではございません」
「美人を巫女に仕立てて祠に入れ、村の一族に新しい血を迎え入れるために客人と交合らせ、子供を身籠らせる――」
「そんな――なぜそれを……?」
「俺とて世界のあちこちを旅する者だ、この地の風習のことは知っている」
 男の行動に隙はなかった。里鈴に何ら口にすることを阻むように彼女の目の前に自分の顔を近付けて、さらに彼女の瞳を凝視してささやく。
「哀れだ。夜の花になって急いで実を結ぶことはなかろう。父が誰かもわからぬ子供を身籠って何が嬉しいのだ? ――村の将来のために利用されているだけというのが、お前にはわからないのか?」
「……お待ち下さいお客人様、あなたは何か勘違いを――っんむんんっ!」
 唇が奪われる。
 男が里鈴の口に自分の唇を寄せ、甘く強く吸い付いたのだ。
 深い接吻の強要に里鈴はとても驚いた。とっさに抵抗しようとしたが、自分の舌に男の舌の先が触れた途端に何故かその気持ちは萎えた。そのまま彼女の口は、侵入してきた男の口にまさぐられていく。
 口の中に流れ込んでくる、男の舌の味。
 いつしか里鈴はそれを求めて自分から舌を男のそれに絡み付かせ始めた。
 やがて男の味が口の中に溢れた時、里鈴の目から涙がこぼれた。一体何故なのか彼女にも分からない。いやでもない、苦しくもない、悲しいわけでもない。しかし嬉し涙というわけでもない。胸から沸き起こった熱いものが、喉奥から鼻の奥にかけて発散されたような感覚が、目の辺りを熱くさせたのだ。
「ん……ぬむっん……ふぬんっ……」
 きゅっと目をつむりながら、里鈴は必死に男の舌に絡み付いていく。
 だが、甘くとろけるような接吻はいつまでも続かない。男のほうからゆっくりと口が離された。
「あっ……」
 未練がましく口から突き出た自分の舌先から男の口にかけて唾の糸がきらめいているのを見た時、里鈴は思わず顔を覆った。
 ――私、私ったらすっかりこの人のことを欲しがってる……ああ里鈴、あなたはいつからこんなに淫らになってしまったの……?
「何も恥ずかしがる必要はない。お前が俺のそばにいるのならば、いつでもしてやる。さあ、顔を覆うのをやめろ。俺にその目を見せてくれ」
「ああ、いや、いやっ!」
「さあ、ちゃんと瞳を見せるんだ、ほらっ!」
 またも里鈴の瞳が男の視線に貫かれる。
 逃げようがなかった。恐怖と羞恥と接吻の余韻がないまぜになって、里鈴は身体一つ動かすことができない。
「あ、ああぁ……ああ」
 心底怯えたように何一つ言葉にできない里鈴の口からは、喘ぐような声しか出せない。
「ふふ……ますます俺のものにしたくなったぞ。もっとお前の身体を楽しんでやろう」
 有無を言わさず、男は里鈴を床に押し倒して衣の襟に指をかけると、するりと上半身を剥き始めた。
 華奢な丸みを帯びた両肩があらわになり、それと対照的に大きく突き出た白い乳房がその熟れた果実のような容貌をさらされる。
 二つの白い肉の果実の先端には、桃色の乳首が張り詰めたように尖り切っていた。男の指の腹が、琴を弾くようにぴんと触れた。
「あんっ」
 口から漏れたその声もどこか琴の音を模したかのようである。
 それが気に入ったのか、さらに男は両乳首を弾いてみせる。
「あ、あああぁあ、ああもう、やめてぇ、もうやめえぁあああっ!」
 目尻に涙をにじませて嘆願する里鈴の言葉など男は聞いていない。なにか彼女が喋ろうとすれば、さらに強く激しく乳首をつま弾く。そして彼女の言葉が崩れていやらしい呻き声に変わるのを心底嬉しそうに聞き届けるのである。
 次第にそれにあきたらなくなったのか、男はその手のひらで里鈴の乳房を強く掴んで弄び始めた。
 握りつぶして、揺さぶって、転がして、くすぐって、ひねって……。
「ふぁぁああ、うぁああっ、ああああっ!」
 ――私の、私のおっぱいが、こんなにぐちゃぐちゃに、変な形にこね繰り回されて……ああ、やめて、いやっ……でも……。
「ずいぶん気持ち良さそうに喘ぐじゃないか。構いやしない、存分に甘い声を絞り出すがいい。いずれはこの乳房から存分に乳が出るようにしてやるからな」
 親指と人さし指で輪を作って、里鈴の乳肉を中腹あたりで締め付けて強引にひょうたんの形にしてしまう。それから、一気に絞り出さんばかりに胸の根本側を残る指でぐっと強く握りしめた。たちまち、指の輪から先の乳首の部分が赤紫に染まる。乳首自体はこれまでになく大きくはりつめて、やもすれば破裂してしまいそうだ。
「ふうぅうううううううっん!」
「想像してみるがいい、お前の乳首から甘くて白い母乳が噴き出すさまをな」
 根元の辺りを握ったり離したりして、男は強要した妄想をさらにあおる。
 皮が裂けるような乳首の痛みはいやらしい感覚となって里鈴を責め立てる。
 ――ああやめていたいやめてぇえええ! 本当に、本当に何か噴き出しちゃうぅう!
 里鈴の両手は男の手首を掴んでいたが、引き離すわけでもなく、ただ乳房の責めに耐えるために強く握りしめているだけである。
「んあああああぁ、やめでぇえええええ!」
 次第に握ったり離したりの男の手指の動きがさらに激しくなっていく。熱い血流がさらに乳首に送り込まれ、張り詰めた乳肉の芽の皮の痛みがさらに里鈴を責め立てる。
 ――あああ、痛い、苦しいぃ……もう、もう――
「出したい……」
 彼女自身も何だ何だかわからなくなっていた。焦らすような愛撫の苦しみから逃れるために、ただ快楽を求めて意識は彷徨い始める。
「うん? 何を出したいんだ?」
「……ああ、乳首が……乳首から出したい、我慢できない、我慢できないぃいいい!」
 ぐっと胸を反らし、乳首の辺りにたまりたまった熱い奔流を外に出さんと力みはじめる。
 そこに都合良く、男の指弾き。
 ぱつんっ!
「はああああぁぁ……!」
 身体の芯にまで突き刺さるような痛みが乳首を襲う。そこで彼女の意識が破裂したようにぷっちり途絶えたかのようになる。
 里鈴の乳首からは勿論何も出ることはなかった。だがそのかわり、接吻の後に味わったものより深い気だるさか彼女を包み込む。
 ぐったりした里鈴の、まだしこりを残す乳首に男は強くむしゃぶりついた。わざとらしくぢぷっ、ぶつゅっとねちっこい吸引音を立てて。
 しかし里鈴は両手で彼を退けようとするどころか、そのまま彼の頭を優しく抱き締めた。
「あぁ……、あ……、あぁは……」
 鼻から漏れたような切な気な喘ぎ。愛撫で絶頂を迎えてなお、彼女は乳首に感じていたのだ。男の舌先で転がされる自分の乳首を想像しながら、そのあまりのいやらしさに思わずおののく。
 乳首にむしゃぶりつく間、邪魔なために乳房を離した片手は彼女の身体を衣の上からまさぐっていく。まるでその手のひらで彼女の柔らかい肌の感触を味わうかのように、指を蜘蛛の足にして這わせる。
 それが股間にやってくると、おもむろに衣をめくり上げた。
 下着すら着けていない。脱がされた衣を背に縛り付けた帯以外は何ら身に付けていない。
 里鈴の白い裸。黒い恥毛の小さな茂みが男の手で愛おしく撫でられる。
 ぬめった透明な液体に潤わせて。
「気持ちいいのだな。……身体をまさぐられただけでこの乱れようか。人の皮を被ったさかりのついた牝犬か?」
「そんな、私、犬なんかじゃ――いぎっ、うううっ! ……きつ……いぃ」
 反論しようとする里鈴を阻もうとするかのように、男の指がずぶりと彼女の小さな肉裂を突き刺した。愛液で濡れそぼっているせいか指は抵抗なく入ってしまったが、彼女の恥肉の締め付けはあまりに強かった。
「なるほど、……お前は処女か。じゃあやはり男根で貫かれた方が本望だろう。違うか?」
「ああ、あはぁあ、や、やぁああ……」
「どうなんだ牝犬っ!」
 恥肉に埋まる男の指がぐりっと折れ曲がる。指先が里鈴の膣壁の粘膜を荒々しく抉る。
 またもびくんっと反り上がる里鈴の背中。
「あああぁあ!」
「さあ、言え。欲しいんだろ、男根が」
「あ……あぁあ……」
 膣の中で指が動いたのが相当効いたのだろう、息絶え絶えに里鈴は放心している。
「『だんこん』という言葉がわからないのか? じゃあ実物をみせてやる……さあ、こいつがほしいんだろう?」
 里鈴の肉裂から指を抜き取ると、男は着ていた黒い外套を脱ぎ捨てた。
 同じくらい濃い黒い装束の袴の帯を緩めて、その中からぎんぎんにいきり立った肉の竿を突き出してみせる。
 男の美しい顔と対照的に、それは周りをつたのように赤黒い血管がまとわりついており、気持ち悪く紫に染まった先端の膨らみは、祠の灯の弱い光を鈍らに反射している。
 それを頬になすり付けられて、里鈴はその悶々として禍々しい生暖かい気炎とわずかばかりの尿臭をその鼻で感じ取る。
「ああ……やめて……」
「やめてじゃないだろう。欲しいんだろこれが、牝犬め。正直に答えてしまえよ。おら、どうなんだよ」
 巧みに腰を動かして、男は里鈴に醜い剛直をぐいぐい押し付ける。
 しかし彼女はそれ以上に、男の態度の豹変ぶりに不安を抱いていた。どこか威厳を感じさせつつも楽し気に自分と会話していたあの和んだ雰囲気は、すっかり獲物をいたぶる怪物のような様相に変化してしまっている。
 巫女になった時から、知らぬ男と肉体的な交渉をするのは覚悟しているつもりだった。その上、この男ならば自分を優しく抱いてくれるだろうという安堵の思いも多少はあった。
 だが今、そんなものすっかり吹き飛んでしまった。
「いやぁああああっ! 許して、ごめんなさいぃ、ゆるしてぇ!」
 上体を起こして腰を引きずって後ずさり、剛直の感覚を払い除けようとするかのように激しく首を横に振る里鈴。恐怖と怯えから目から流れ出す大粒の涙。
 だが男は簡単に許さない。頭の両側にまとめていた里鈴の髪の片方に手を伸ばして荒々しく鷲掴みにすると、今度はその赤黒い鉾先を彼女の顔に向けて、腰を巧みに動かして文字どおり突き回し、叩き付け、撫で回す。
「なんで謝る必要があるんだぁ? お前これ好きなんだろ、な? 何だったらおいしそうにしゃぶってみろよ」
 肉厚の亀頭の先が、今にも突き抜けんばかりに彼女の唇に当てがわれる。鈴口から垂れた透明な粘液に唇が汚されていく。
「んんんーっっ!」
 さっき以上に首を振って逃れようとする里鈴。しかしそれでも男の剛直は執拗に口の中に入りたがる。どれだけ力を入れて貫こうとしても口の中に入れないとわかると、男は鷲掴みにした彼女の頭を自分に引き付け、なおも強引に彼女の口に入れようとする。それでも首を振って拒もうとする彼女の顔の上を、太く赤黒い肉芋虫が醜悪に這いずり回る。
 その気持ち悪い柔らかさが、里鈴に隙を作ってしまった。
「い、いやあああ――」
 悲鳴を上げようとわずかに開いた里鈴の口。肉芋虫は待ちかねたように強い勢いで唇を押し分けて中に潜り込んだ。
「――あむぉおおおおおぉ!」
「入ったぞほらぁ。なかなかいい具合じゃないか。そら、接吻した時にお前が俺の舌にしたように、その舌をこいつに絡ませてみろ。じっくり舐め回すんだ。やってみろ。いいか、少しでも歯を立てたら、」男はさっきまで鉾先を定めるために肉刀の根元を掴んでいた手で頬の辺りをつかむと、少し爪が鋭く伸びた親指の先を彼女の目にちらつかせる。「……わかるよな?」
「んぅん、ふむむむぐぅ……」
 こんな屈辱は生まれて初めてであった。まさか男の物を口にくわえさせられるとは。
 舌の表面にじわりと広がる生暖かくてわずかに青臭さを秘めた奇妙な味覚。口全体を支配する剛直の熱い温度と無気味な脈動――いやでいやでたまらない。
「ほら、どうした。なんだったら、手伝ってやろうか。ほら……ほれ」
 肉棒は男の腰の動きでさらにずんずんと突き進み、里鈴の喉元にまで入り込もうとする。
 両手で彼の腰を掴んでなんとか口の中の肉棒の動きを押さえようとする里鈴だったが、ほとんど無意味であった。
 それでも、せめてこの汚らしい男根が喉を犯すのを阻止しようと舌で肉棒を押さえようとする。
 ちょろちょろと肉茎の幹を健気に這いずり回る小さな舌先。
「おお、ようやく動かしてくれたか。それでいいんだよ。よしよし、そのまま続けるんだ。首とかも動かして、もっと美味しそうに俺のを舐めるんだ」
 男は口元を引きつらせて笑みを浮かべて里鈴の頭を優しく撫でる。しかし彼は腰の動きを止めようとしない。
 ――ああ、もういやなの。許して……
 涙に潤みきった縁の赤い両目を男に向ける。切実な上目遣いの、静かな嘆願。
「いい表情でしゃぶるじゃないか。……どうだうまいだろう俺の男根は」
 里鈴の前髪を整えてやりながら、男は彼女にとって見当違いの返事をする。
 口の中で肉茎がびくんと跳ねる。
「うむんっ!」
「ふふ、こうやって自分のをしゃぶらせるのもなかなか見物だな。……お前もどうだ。その口の中で俺をしっかり感じ取れるんだものな。ほら、感じるだろ? 俺の男根はお前の口の中でますます大きくなっているんだぜ」
 それから男は、彼女の頭を前後に揺らして剛直が唇で出入りする様子を見てさらに喜ぶ。
「おお、おお。すっかり俺のがお前のやらしい涎でべたべただ。……何、遠慮はしなくていい。美味しいんなら歯を立てないようにむしゃぶりついていいんだぞ」
「んううう、むんぅうううっ」
 ぴんと張り詰めた里鈴の口角からは彼女の涎が、多少の泡を伴って噴き出してくる。
 ――ああ、もういやぁあ、こんなのだめ、なんでこんな仕打ちに遭わないといけないの?
 男根は口の中一杯に張り詰めて、なお男の腰によって喉を貫こうとせんばかりに迫ってくる。それから逃れるためにも、里鈴は必死に舌を動かし首を動かざるをえない。だが男の手がしっかりと彼女の頭を押さえ込んでいる以上、口の中から男根を吐き出すことはできなかった。
 その彼女の動きは、事情知らぬものが見れば自分から男の物を口で愛撫奉仕しているようにしか見えないだろう。
 この苦しい口辱は、少なくとも里鈴には長いこと続いたかのように思われた。
 それをようやく終わらせたのは、男の方であった。
「……んんっ――? むぁぱっ!」
 里鈴の口から、ぎんぎんに張り詰めた肉刀が抜き取られる。彼女の唾液ですっかり濡れそぼり、妖しい輝きを見せていた。
 しかし口の中から抜かれてもなお、里鈴の口にはまだ男の醜い身体の一部が残っているかのようであった。それを振り払うように、激しく咳をする。
 そんな里鈴の髪をまたも荒々しく掴んで、男は強引に彼女の顔を自分の物に対峙させる。
「ほら、すごいだろう。お前の口があまりに具合がよかったから、こんなに強々しくなったんだ。これでお前の処女をじっくりと頂いてやるからな」
「ああ、いや、いやああ――うぁんっ!」
 髪を掴まれた頭から後ろに投げ倒され、男はその上に覆い被さった。
 すっかり怯え切った里鈴は身体をすくめてぶるぶると震えていた。そこへ男が彼女の口に吸い付いた。
「む……ふぬぅうっ!」
 顔を押さえ付けて抵抗しようとした里鈴であったが、男の舌が自分の舌に絡み付いたとたん、その手から力がふっと抜けてしまった。舌と舌とが触れあうことで、身をとろかされるようなくすぐったい感覚が起こり、それが彼女の身体の力を奪っていく。
 今度の接吻はさっきより短かった。しかしそれでも里鈴の抵抗意欲を弱めるには十分であった。
 有無を言わさずに男は里鈴の両脚を大きく開かせる。涙を流した里鈴の目と同様にすっかり潤みきった赤い肉薔薇が、その花弁をわずかにひくつかせながら不安そうに顔を覗かせた。
「や、いやっ!」
「こら、手で隠すな。もっと良く見せるんだ。こんなきれいなものを隠すなど、何ともったいない」
 里鈴の手を払い除けながらも心底うっとりしたように男は呟いて、その桃色の肉裂を見つめる。
「お前のこの女陰、俺がさらに美しいものにしてやろう。ますます咲き乱れ、見るものの劣情をいやでも沸き立たせるようにな」
「許して――」
「だ、め、だ」
 引導を渡さんばかりに男は熱くたぎった剛直で肉華の前あたり、ちょうど小さな肉豆がわずかに膨らんで包皮から顔をのぞかせている辺りをぺちぺちと叩いてみせた。
「ひゃ、あぁっ」
「ゆっくり入れてやる。全神経を傾けて感じるがいい」
 そのまま肉刀は里鈴の陰唇をかき分けて、肉の花弁の中央の奥、さらに奥を目指してゆっくりその先を沈めていく。
「う、う……ぁ、きつ……」
 眉間に縦皺を寄せて苦悶の表情を浮かべる里鈴。
 男の剛直がぴたりと阻まれる。処女である里鈴の性器で一番狭いところに差し掛かったのだ。
「いくぞ」
 ぽつりと言った直後に、彼は勢い良く腰を突き立てた。
 ぶつっ。
 肉のちぎれる鈍い音がしたかしなかったか、それに関係なく男の一物はその血管を大いに脈打たせながらじゅぶじゅぶと音を立てて奥に駆け込んでいく。
 処女膜を破られた里鈴の悲痛の悲鳴。
 涙を流す彼女の口を、男の口が封じた。舌が優しく彼女の口の中を愛撫する。舌ももちろんだが、それ以外の部分、歯茎や唇の内側の付け根に至るまで、舌で届く限りの部分を撫で回す。
 その間中、彼は目で語るようにじっと里鈴の瞳を見つめ続けた。
 腰は全く動かさない。二人が深々と交接した部分からは赤い血がこぼれ始めている。
 ようやく里鈴は悲鳴をあげるのをやめたが、静かな嗚咽は未だに納まらない様子であった。男はそっと口を離して話しかける。
「痛かっただろう、まだ疼くか?」
 うなづく里鈴。彼女は、男のこの優しい語調での問いかけがとても嬉しく思えた。確かに知らぬ男に処女を奪われた痛みは痛烈であれ決して心地いいものではない。だが、どこか複雑なその思いは、彼の言葉で女になった喜びと昇華されたのだ。
「新しい人生の始まりだな」
 さっきと同じ口調で男は里鈴にささやく。この一言がさらに彼女の胸をときめかせた。居丈高だった男に励ましとも祝福ともとれる言葉を口にさせたことも嬉しかったし、その言葉で明るく輝く将来を見せてくれたようで心の中に心地よく涼しい風に当てられたかのような爽快感すらも覚えた。
 しかし当の男は口元を邪悪に歪ませて笑っていた。そして彼はさらにこう問いかけた。
「で、お前の膣に俺の男根はどう感じる?」
「……え?」
 そこで里鈴ははっきりと男の顔を見た。
 もし悪魔の中に一番美しい者がいれば、多分この男と同じような顔をしているに違いない。さらに、もしその悪魔が邪な企てを全うすることに喜びを見い出した時、迂闊でも果たしてこれほど邪悪な笑みを浮かべるものなのだろうか?
 男の口からは歯が見えていた。普通に笑えばすがすがしく映るのであろうが、今の彼の笑いはその歯を牙に見せていた。目もまた、その裏に潜めた悪どい企みのせいでかどこか重みを感じさせるような鈍い光を見せていた。
 彼の邪な笑いに里鈴の心が萎え始めたその時、
「ひうっ」
 彼女の膣の中で男の剛直がびくんと跳ねた。
「聞けば聞くほどいい鳴き声だ」
 悪魔の笑みのままで男はそう言ってから里鈴の顔を舐めてみせる。
 男の腰が、荒々しく動き始めた。
 処女を破った彼の剛直も、里鈴の膣の中で暴れ始める。
 未だに痛みの引かない処女地に、剛直の動きは文字どおり暴力的で遠慮がない。
「ひぎいいいぃ、痛い……いいいい痛いいいぃっ!」
「ははは、こんなものお前みたいな牝の獣ならすぐに慣れるだろうさ、いひひひひひ」
 男の笑い声まで、里鈴には悪魔のそれに聞こえる。
 痛がる彼女の悲鳴に一切耳を貸さず、男は一方的に話し始めた。
「今まで黙っていたが一つ教えてやろう。俺の持つ数ある奇術の中で一番気にいってるのがあるんだ。……教えてやろうか?」
 彼の言葉は怖いくらいに研ぎ澄まされて、里鈴の耳に入るのではなく、すっかり敏感になった肌を貫いていく。
「俺はなぁ、女の腹から人間以外のものを産ませることができるんだよ」
 その言葉はまるで禁忌の言葉を密告するかのようなささやきとして彼女の耳にもたらされた。言った後に彼は息だけで、くふ、と笑う。その無気味に歪んだ口元と、それとは対照的にぴくりともほころびを見せぬ目を、里鈴は見てしまった。
 快楽むせかえる片隅にわいた一抹の不安。
 悪い冗談を、と笑い飛ばしたかったし、冗談であることを聞き正したかった。だが、男根の激しい突き上げが彼女の口から言葉を吐かせるのを阻む。
「え……えあ、あああ、あああ、あっ、あっ、あっ、ああっ!」
「女の腹から卵を産ませることもできれば、鰐だって産ませられる。お好みなら刀だって産ませて見せるぜ。もっともそんなことになったらお前の女陰はずたずただぁ。……へへへ、これくらいぐちゅぐちゅに女陰濡らしときゃ、絶対奇術は成功するぜ。うひひひひひ」
「あぁぇあ、ぇやああああぁっ! あぇあ、ああ、ああぁっ!」
 喘ぎ声に悲壮の色が入り交じる。里鈴の顔は性交の快楽に悦ぶそれとは違い、ひどい焦燥と絶望に青く染まっているように見える。
「ではおまえには毒の怪物を産ませてやる。一匹で村一つ潰れるくらい強力なやつをなぁ」
 男はその美顔に悪魔の笑みを浮かべたまま、不穏な言葉を里鈴に浴びせていく。
「ひうんっ、んううぅ、っぅううう……」
 男の腰の動きに途切れ途切れにさせながら、里鈴は泣き始めた。
「身籠ったらお前の腹の中で早速うごめきはじめるぞ。出たい、出たいってな。早くこんな狭苦しい肉壷突き破って、人を食いまくりたいってなぁ」
 彼女の腹を蜘蛛さながらに指を立ててまさぐり、無気味に語る男。
「ひいいいいぃ、やぁいやああぁ、やああああああああ!」
 こんなことが許されるわけがない。聖職の巫女が怪物を産み落として村人を皆殺しにするなんて……。
 しかし祈りも嘆きも後悔も、今となってはもう遅い。
「ああぁ、いやらしい牝犬とはいえやはり処女は締まりがいい。もう、もう俺は精をひり出してしまいそうだ……そら、お前の肉壷にたっぷり注ぎ込んでやるからな。せめて思いっきりよがってみせろやぁ!」
 激しい腰の動きは最高潮に達する。子宮も膣も、暴れる剛直に翻弄されるがまま。
「い……ひぎっ、いい、いやぁ……ああいやぁあ」
 弱々しく里鈴はかぶりを振る。団子にした二つの髪結いは解けて、ひどく乱れていた。
「ああぁ、はぁ、出るぜ、おお、出すっ、出すぞぉっ!」
 雄叫びをあげる男。その腰の動きは里鈴の性器すら壊さんばかり。
 ついに来るべき時がきた。
 びびゅっ。
 生暖かい液体が子宮の肉壁に跳ね掛かってねっとりと垂れ流れるのを感じ取る。
 里鈴は衝撃の余り、夜の帳を引き裂かんばかりの悲壮な絶叫をあげた――。

 絶倫の餌食となり、処女地を食い荒らされ、もはや初々しい巫女の面影は全くない。
 里鈴は、着けていた帯に両手首と両膝を縛られて大股開きを余儀無くされていた。少しでも脚を動かせば、帯の真ん中に結わえた首がきつく締まるようになっている。
 その格好でさらに衣を細く裂いた布で猿轡と目隠しをされ、身体は白濁とした青臭い粘液にまぶされて汚らしく灯火に照らされている。
 荒々しい交合いの証しに、肉華の花弁は赤々と乱され、中心の奥から赤い血と白い精液がこぼれ出て、互いに混ざらぬままに混じりあい、紅白の雫となって床に滴った。
「んんっ、ぐ、んぬ……」
 涙が目隠しの布をずぶずぶに濡らし、さらに頬に流れ出て、ある雫は首筋を熱く伝って胸の谷間にいたり、ある雫は顔にぶちまかれた男の精液の水気としてその中に取り込まれる。
 嗚咽に暮れる里鈴のみじめな姿を見て、当事者の男はさも愉快そうにほくそ笑む。
「……ざまぁねぇ」
 靴を履いたかかとで里鈴の下腹部を踏み付ける。肉裂の奥から子宮の暖かさを伴ってぴゅぴゅっと大量の精液が噴き出した。
「こんなに俺の精液を飲み込みやがって。お前は本当にいやらしい牝犬だ。本当は、男の精液が欲しくて巫女になったんじゃないのか?」
 言葉なじりは確実に里鈴の心をざっくりと抉る。ぶるぶると弱々し気に首を振り、嗚咽の声をさらに大きくする。
「うるせえ。そうやって泣いてはいるが、大好きな男の淫液を体中に浴びて嬉しくてしょうがないんだろ?」
 男はさらにあらわな胸乳をその靴裏で荒々しく踏みにじる。
「ぎぃああぁあああ、あがぁああ……」
 痛くても苦しくても、里鈴は陰険な帯の緊縛のせいでもがくことすら許されない。ひたすら腹の辺りをひくひくさせて健気にその痛みに耐えるしかないのだ。
「まぁいい。どのみちお前は怪物を身籠るのだ。怪物は村に恐怖と破壊をもたらし、産んだお前は生き残った村人たちの手討ちに遭って追放されるだろう。お前はあてどもなく彷徨い、死ぬまで淫売として一生を送らねばならなくなるだろう」
 「今日の記念に一筆入れておいてやる」と男は懐から筆と墨壷を取り出し、里鈴の下腹部を彼女の衣で拭うとそこに筆先を走らせた。

 この女、邪悪な奇術師に処女を捧げ、悦んで精を受けた淫売なり。
 これはいずれ村に災いをもたらす魔獣を孕む腹に候。

「ひひ、はっきり書いておいたぞ。これで、様子を見にここにやってきた村人にも隠しだてできまい」
 さらに男は石の印を手に持つと、もごもごとその口に唱えはじめる。すると、わずかにちりちりと音をたてて、石の印は赤く燃えたぎり始めたではないか。しかし目隠しをされた里鈴にそれが見えるわけではなく、彼女はただただ石の燃えている音を聞いて恐怖に身体を震わせるばかりだ。
 そんな彼女の白々とした左内股に、男は赤熱した印を強く押し付けた。
「ぉおああああああああああぁ!」
 絶叫の中、肉の焼ける匂いがほのかに漂う。
 里鈴の若々しい太ももの内側に、黒く焦げた禍々しい烙印。薔薇のようにも見える幾何学的な円形の紋様が黒く大きく印された。
 しかし男に烙印の焼き具合をじっくり鑑賞する暇は与えられなかった。
 扉を盛んに叩く音。
「おーい里鈴ぃ! 一体何があったぁ! 返事しろぉ、おーいっ!」
 村人たちだ。彼女の悲鳴が遠く離れた村にまで聞こえたらしい。
 男はとっさに周りを見渡し、扉の反対側の壁、祠の天井近くに夜天の空を覗かせている窓を見つけた。そこに向かって数歩駆け寄ると、人間とは思えぬほどに高く飛び上がって窓の桟に乗った。
「んぶうぅ、んんんーっ!」
 猿轡された口で彼女は必死に叫ぶ。目隠しされた目から涙を流し、扉の向こうの村人の声を避けるように、その反対側へ行こう行こうとして、その哀れな痴態をよじらせる。
 その拍子に、はらりと目隠しが取れた。
 涙溢れる里鈴の瞳は必死に男を探す。そして、天井の窓に男を見ると、彼女は何かを求めるように叫ぶ。
「んんっ! んんんっ! んおおおぉ!」
 言葉は遮られて聞き取ることはできなかった。
 それでも里鈴は大声を上げながら、不名誉な文を書かれた腹をくねくねとよじらせ、縄で開かれた脚を関節が外れんばかりにぱたぱたと動かしては精液噴き出す女陰をぱくぱくと開かせて、自分の言いたいことを表現しようとする。
 男は後ろを振り返って彼女を見た。だが彼女の伝えようとしていることを解しようとはせず、ただ鼻で笑って軽蔑の視線を送ったあと、そのまま外に飛んで行ってしまった。
 里鈴は心の奥底に落とし込まれた深く辛い衝撃に身体を震わせながら、涙目を見開いて男の後ろ姿を見ることしかできなかった。
 村人が扉を蹴破って祠になだれ込んできた。
 彼らが里鈴の悲惨な裸を目前にした時、彼女は涙を流して、力なく猿轡された口でだらしなく笑い始めていた。

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