Breeding

 日課に定められたヨガ・ストレッチを終えて、ゆかりは部屋の三面鏡に向かった。
 そこに写る自分の細く整った若々しい裸身を、なだらかな女の曲線に目を這わせるように下から上に一通り眺めたあと、彼女は左胸の小さな「トカゲ」を指で撫でてにっこりと微笑む。
 「トカゲ」はトカゲではない。
 熟れた果実のような綺麗な丸みを帯びて膨らんだゆかりの乳房にしかとしがみつき、桃色に色付く乳暈に這わせるように尻尾を巻き付かせたそれは、ワンポイントの黒いトカゲのタトゥーであった。身体のあちこちに彫られたタトゥーの中で、彼女のお気に入りの一つである。
 「トカゲ」の尻尾がくるりと巻き付いた左の乳首にはアレイ型のピアスとリングを着けていた。右乳首にも同様にピアスとリングが施されている。乳首に開けられた穴一杯に金属を貫かれているその痛々しさは、しかしその形良く熟した乳房をマゾヒスティックに美しく飾り立てていた。
 耳や唇、小鼻、眉、臍……いたる所に彼女はピアシングを施していたが、それはゆかりの身体の魅力を損なうどころか、鮮烈なマゾの官能美を加えて一層輝かせていた。
(今日もまた一つ、ピアスしてくれるのかな……?)
 ゆかり自身もそんな自分の身体をうっとりと眺めている。いやらしくぬめらせた赤い舌先でピアスを施した唇をチロチロと舐めながら、両手で乳房を持ち上げるように揉みしだく。人さし指で乳首を押し込みながら。
「ひ、……ぅうっん」
 柔らかい乳肉の内側をコリコリと刺激する乳首の感触に、思わずゆかりは背筋をびくんっとのけぞらせてしまう。
(すごくエッチになっちゃった、私の体。あの人に可愛がられるようになってから、どんどん、どんどん変わってる……)
 乳肉に埋められながら、ゆかりの乳首は昂っていく。赤血球一粒一粒が流れ込んでくるのが分かるくらいに神経は敏感になり、どんどん硬くしこっていく。
「あ、あっ……!」
 一層ぐりぐりと乳首を乳肉に押し込める指の力。貫通したピアスとリングの硬い感触。それはめくるめく性感となってゆかりの意識を煽り立て、さらにじわじわと子宮に訴えかける。
 乳房がこね回されるのにあわせて「トカゲ」が蠢く左胸をそのまま揉み続けながら、ゆかりは右手をゆっくり体に這わせ、臍の下のあたりにもっていく。
 そこに施されたタトゥーは、ゆかりの体へ一番最初に彫り込まれたものである。と同時に、彼女の一番のお気に入りでもあった。
 まず脚の付け根あたりに両側対称に鹿の角のような形のタトゥーを入れ、自然と視線がその中央――今の生活に入る前は可愛らしくしとやかに陰毛を茂らせていただろう部分に流れるようになっている。
 その部分はすっかりきれいに脱毛されていた。そこに、西洋の紋章のような色付きのタトゥーが彫り込まれていた。蛇に巻き付かれた胎児の両側に男根を勃起させた動物を配置したデザインの下には、英語とは違った綴りのアルファベットの文章が書かれていた。
 以前に「飼い主」である恭輔にその意味を聞いたところ、彼はにっこり微笑んで言っていた。
 ――「この中に、甘くて美味しい牝の肉がたくさん詰まっている」
(アソコが……アソコがどんどん熱くなってくるっ!)
「あぁはあぁっ! もう、もうらめぇっ!」
 たまりかねたように鏡台に片足を乗せ、ゆかりは股を大きく開いた。
 そこには下腹部のタトゥー以上に彼女が気に入っているピアスがあった。
 小指ほどに膨らんだ赤いクリトリスに穿たれた銀色のリングが、愛液でぬめった輝きを鏡に反射させる。
 さらに小陰唇に左右それぞれリングが二つ、勃起しきったクリトリスを一層飾り立てる。
 あられもなくぱっくりと開いた股間に、ゆかりの指が潜り込む。
(すごく熱くなってる……子宮の奥までじんじん疼くぅ……あぁ、アソコの、アソコのお肉がトロトロになってるぅ! こうやって、こうやって甘くなっていくんだ……こうやって、私の子宮がおいしいコブクロになっていくのね……!)
「へあああっ、あうっ、あうぅううぅ!」
 何本もピアシングした唇からぺろりと犬のように突き出したかわいらしい舌も、その中央に一センチ強の大きさの真珠色をしたビーズを穿っている。
 体中をピアスやタトゥーで埋め尽くされ、鏡の前で激しく乱れて自慰に耽る女。
 しかしゆかりは、そんな自分がとても可愛くてしかたがない。
 昔なら、そんな自分を見ていられなかったかもしれない――しかし今では、さかりのついた牝獣のように涎を首筋まで垂れ流し、膣奥まで指を潜り込ませて暴れさせて愛液を飛び散らす自分の姿を心地よく受け入れることができる。
「れあああぁっ! えうぅっ、えうぅぅっ!」
 いつしか彼女は両手指で自分の陰唇を拡げて、その裏側に指を這わせていた。
 ひっきりなしに舌っ足らずな喘ぎ声をあげ続けるゆかり。恭輔に「どんな動物よりも可愛い」と褒められた鳴き声。そして、アドバイスも受けた。
 ――「そうやって心の底から可愛い声で甘く鳴き続けていけば、子宮の肉もどんどん甘くて柔らかくなっていくんだよ」
「えうぅぅんっ! んんんんんっう――!」
 性器に貯えられていた性感がぱああっと弾けていくような感覚を覚えて、ゆかりはぶるるっと背筋をわずかに弓なりにして緊張させた。
 ふわりと意識が飛んで、思わずその場に崩れそうになる。
(はわぁあっ……軽く……イッちゃった……、でも……でもぉっ……!)
 小さな絶頂がさらに彼女の身体の中の快楽を増幅させていく。尖りきった乳首、はちきれんばかりのクリトリスのしこりが一層強く感じて、彼女の神経を熱く灼いていく。
「あぁあっ、……はぇあああぁあっ!」
(灼き切れちゃうぅ! 感じ過ぎて、神経が灼き切れちゃうよぉお!)
 しかし秘襞をいじり回す手指は止まらない。それどころか色惚けきった彼女の身体は背筋をよじらせて美乳をたぷたぷと揺すり、乳肉が弾む感覚さえも快楽に変えていく。
 一緒に揺さぶられる「トカゲ」の姿さえ、彼女には官能的に見えてしまう。
「えううううぅっ! とま……とまらあいぃひぃぃっ、あひょこ……あひょこじんじんすりゅよぉおっ、……んんんんんうっ! ……ああ、くるぅう……きひゃうよぉぉ――!」
 大量の愛液が太ももを伝って膝まで流れ、さかんにうねらせる背筋をぶるぶると震わせる。
 ゆかりの身体の中で快楽のビッグバンが起ころうとしていた。
 潤んだ瞳を鏡に写る自分の姿に向け、指を愛液でびしょびしょに濡らした左手をそこについた。
 ――「いいかい? イクときはいつも自分の子宮のことをイメージするんだ。そのとき、どれだけ子宮がいやらしくピクピク反応してるか、ヌルヌルになった膣の壁がどれだけ熱く火照ってるか、細かいところまで頭の中でイメージしながら、思いっきり果てるんだ」
 いつだったか恭輔にアドバイスされたとおりに、彼女は頭の中で今の自分の子宮の姿を鮮明に写し出していく。性器の分厚い淫肉はいたるところでピクピクとひきつり、子宮はエクスタシーを前にとびっきり嬉しそうに卵巣を揺すってダンスを踊っている。
(ゆ……ゆかりの子宮がびくんびくん跳ね回ってるぅ!)
 それはまるで、際どい衣装で腰や胸を振りたくって踊るサンバのダンサーに似ていた。興奮と享楽に身を任せ、ひたすら夢中に身体を激しくくねらせるのだ。
「えぁあ、あああイク、イク、イク、イクおおぉぉっ!」
 尻をぶるぶるっと震わせて、ゆかりは片頬も鏡に擦り付けて絶頂を迎えようとする。
 しかし、指でクリトリスをビンタしてるだけでは達することが出来ない。
(イキたいぃ、イキたいよぉ、イキたいのにぃぃ……!)
「えあーっ! あぁーっ! あはぁあーっ!」
 なかなか来ないエクスタシーを自分の胎内に呼び込むように、ひたすら大声で鳴きつづける。引き続きぺちぺちとクリトリスを指で弾き続けながら、もどかしそうに尿道口に指を這わせる。
 ――と、その時だった。
 ピーン、ポーン……。
(あ、あ……恭輔さんっ! ……そんなぁ、もう少しなのにぃ……)
 しかし、このままないがしろにして自慰を続けることはできなかった。「飼い主」の帰りを迎えるのは、彼に飼育されている今のゆかりに課せられた大切な仕事なのだ。
 性感を貯えてすっかり赤く火照った身体をふらふらとさせながら、ゆかりは濡れそぼった秘裂を両手で隠してのたのたと玄関に向かう。
 鍵を開けて、やや股を開けた女の子座りでその場に尻をつける。
 扉はゆっくりと外に開かれ、背広姿の若い男が入ってきた。オフィス街にいるような風ではなく、むしろ夜の街で働いていそうなていの風貌である。肌黒く爽やかに灼いた肌、銀色を交えた黒髪はオールバックに整え、その目には野獣の狩猟本能を覚えさせるような鋭い眼光をたたえている。
「随分励んでたじゃないか。鳴き声が外から聞こえてたぞ」
 男は冷やかし笑いを浮かべてゆかりを見下ろす。
「そ、……外まで響いてたのれすか……」
「まぁ飼い主が久々に外出してたもんな。相当寂しかったんだな」
「はい……恭輔さんに……ペニスでちゅらにゅいてほしいれす」
 舌のピアスが口の中でつっかえるせいか、恥ずかしそうに漏らす言葉にろれつが回っていない。
「ははは、言えてないじゃん。ペニスでちゅらちゅらって、フェラチオしたいのか?」
「うぅぅ、違いますぅ、……お、オチンチンでちゅらにゅいて……えぅ、ちゅらにゅ……むううぅぅ!」
「今のゆかりは普通に喋ってるより『えうえう』って鳴いてた方がお似合いってことだな」
 唇を噛んで自分の舌を呪うゆかりの頭を、男はそう言ってぐりぐりと撫でる。
 玄関での会話はそのくらいにして、男――この家の主人であり、ゆかりの飼い主でもある恭輔は、股間を両手で押さえながら内股でのたのたと歩くゆかりを後ろに従えてダイニングキッチンに向かう。
 そのまま上着を脱いで椅子の背もたれに放り投げると、恭輔はキッチンの側に掛けてあった白いエプロンをつける。
「腹減ったろ? すぐに料理作ってやるからな。だがその前に……」
 恭輔の手指が、未だにぴんと斜め上に硬く勃つゆかりの乳首をかき鳴らす。
「えああっん!」
「その火照りまくった体をクールダウンさせないとな。まだオナニーの途中だったんだろ?」
 図星を突かれて、ゆかりは股間の両手をさらに強くぎゅっと押さえる。
 その手を離させて、恭輔は彼女の湿りきった淫裂にそっと指をはわせた。奥のほうからゆっくりと陰唇の割れ目を滑らせて肥大しているクリトリスを探り当てると、その裏の辺りを優しく指の腹でくすぐってやる。
「いうううううぅっん! ふーぅ、ふーぅ、ふーぅ……っう!」
 愛液でてらてらに濡れそぼる股間を開きつつ、ぎゅっと目をつむって体を硬くするゆかり。
 恭輔はクリトリスのリングを軽くきゅっと引っ張った。
「や、ああああああぁぁっ!」
 それはまるで栓をひねった水洗トイレのように、無上の快感が一気にゆかりの体になだれ込んできた。たちまち彼女は背筋をびくんびくんと大きく跳ね上げて、そのままバランスを崩して倒れてしまいそうになった。
 すんでのところで恭輔にすくわれてなんとか転ばずにすんだが、ゆかりの表情はどこか不満そうだった。その表情から、飼い主は的確に彼女の思惑を言い当てる。
「アソコに指を入れてイキたかったのか?」
 こくりとうなづくゆかり。
「ダメだ。言っただろ? ゆかりのアソコはおいしいお肉なんだって。味見こそすれ、膣内をあまりいじり回すと商品価値がなくなっちゃうからね」
「ひうぅ……」
「そんな声で鳴いてもだめだぞ。さ、きっちりアクメに達したことだし、御飯にしような」
 ゆかりを席につかせて、恭輔は料理を始めた。包丁や炒めものをしながら、かれはちらちらと彼女の方を見て様子を伺っている。
 まだアクメの余韻を引っ張っていた。ゆかりは心底疲れたようになで肩になって、ベランダからの外風景をうつろに眺めていた。
 ちょうど今夕日が沈み、空が暗くなり始めた頃である。15階建てのマンションは最上階から眺める夜景が次第に輝きはじめる時でもある。
 ここに来てから数日程が経過したゆかりだが、一度だけ恭輔と一緒にベランダに出たことがある。彼に背後から両胸の乳肉を下からたぷたぷと揺すられながら、鋲のついた黒い首輪以外何一つ身に纏わぬ姿で彼女はその綺麗な夜景を不思議な高揚感を感じながら眺めていた。
 街が見渡せるほど高いところに立って景色を見ている感動に、全裸で外に出ているという羞恥心が合わさった時、あれほどに自分の体の奥――美味しい牝肉にすることを誓わされた子宮があれほどじわじわと甘美に熱くなるとは思ってもみなかった。
 今でも、思い出すだけで全身に鳥肌を感じると共に、胎内にじわりと熱いものが湧き起こるのを感じる。そこに意識を傾けた途端、ピアスしたクリトリスがじんじんと疼いているのに気付く。
 両手できゅっと股間を押さえるゆかり。手のひらにじわじわと愛液がたまってくるのがわかる。
 そうこうしているうちに、恭輔はようやく料理を終えたらしい。
「おい、今日もちゃんとストレッチしてたか?」
「ちゃんとしまひた……」
「ならいい。オナニーもお肉のためにはいいけど、適度な運動もまた大事だからな」
 そんなことを話しながら、彼は手際よく料理を皿に盛ってゆかりのいるテーブルに置いていく。
 そのあと、彼は冷蔵庫の扉を開けて奥のあたりをごそごそと探る。
 料理はそれだけではなかったのだ。朝夕かかさず、彼はゆかりのためにあるものを仕込んでいる。ゆかりは一層きゅっと股間を掴んで縮こまる。あまりその顔を嬉しそうではない。
「いやぁ……、それもうやらぁ。御飯食べられなくなっひゃうよぉ」
「だめだ。これは栄養満点のドリンクなんだ」
「おいひくないもん」
「いつも幸せそうな顔してるじゃないか」
 恭輔はゆっくりと、透明なプラスチックのボトルを取り出した。牛乳のようであったが、どこか黄味がかっている。
「さあ、椅子から降りて飲む準備をするんだ」
 いやな顔をしつつも、ゆかりはおとなしくそれに従った。テーブルに手をついて、ちょうど馬乗りのような姿勢で足を肩幅に拡げ、尻を突き出す。
「口のわりには、アソコは随分もの欲しそうにしてるじゃないか。イったばかりなのに、こんなに濡らして」
「違うよぉ……そんなんじゃない」
「じゃあ何か? エッチなこと考えてたのか?」
 そう聞かれて、ゆかりは恥ずかしそうに口ごもった。口の中の舌ピアスが無性に気になるくらいむずがゆそうにきゅっと唇をかたく閉ざして、彼女は正直にうなずいた。
「ゆかりはすっかり牝の家畜になってしまったな」
(やだ……それは言わないでっ)
 恭輔にそう言われて、ゆかりはきゅっと体を固くした。その一言で、彼女は膣口のあたりにじゅんと熱いものが沸き出すような感覚を覚えたのだ。それが淫唇を濡らし、内ももに筋をつくって流れていくのまで、はっきりとわかる。
「ふふ、下の口から涎がでてるじゃないか。悪い悪い、とっとと食事にしないとな」
 再び冷蔵庫を開けて、ごそごそと何かを取り出した。長さ三十センチ、太さ直径二、三センチもある、シリンダ式の浣腸器。
 表面を白く曇らせたそれを見て、ゆかりは悲鳴をあげる。
「や、いやっ! そんなの冷やしてたの?!」
「コーヒーだって、カップを暖めてから煎れた方が上手いだろ? ビールだって、ジョッキを冷やして飲んだ方がいいじゃないか。同じ理屈だよ」
「そんなぁ、肛門凍っひゃうぅ!」
 浣腸器の先をボトルの中の液体に突っ込んで吸い上げる。たちまちシリンダの中に黄味がかった白い液体が充満する。
 牛乳浣腸――それはここに来てからの日課になっている。しかしこれだけはゆかりには辛いことこの上なく、馴れることなどとんでもなかった。
「さあ、いつもの挨拶はどうした?」
「――ひゃ、あっ」
 肛門の上あたり、尻の谷間の小さなくぼみを恭輔は浣腸器の先で突っついた。敏感なところに触れられてびくんと背を弓なりに跳ね上げてしまう。
 ゆかりはテーブルの上の美味しそうな料理を眺めながら、言い始めた。
「恭輔さん、いつも美味しい料理を作ってくれてありがとうございます。沢山食べて、精一杯調教されて、おいしい牝のお肉にします」
「じゃ、おあがんなさい」
「いただきま――あうっ!」
 ゆかりの菊門に、ずぷりと冷えた浣腸器の嘴が根元まで差し込まれる。その後、ゆっくりと冷たい牛乳が直腸の中にゆっくりと流れ込んでいく。
「や、あ……あがぁっ」
 尻にえくぼを作り、眉間に皺を寄せ、口を半開きにして、ゆかりは苦しそうにはぁはぁと息を漏らしながら体を硬直させる。
「やっぱり浣腸器冷やしといて正解だったな。いつもより飲みっぷりがいいじゃないか。ええ? まるで自分から吸い込んでいくみたいだ」
「そ、そんな、……あ、そんなことな……ぅ……」
 反論しようとするが、それ以上言葉にならなかった。
 入ってくる浣腸液が、腸壁の温度を奪っていくのだ。それが強烈な異物感となってゆかりを苛む。
「そら、最後の一滴までちゃんと飲み込めっ!」
「ひぁっ!」
 恭輔がぐっとシリンダを押したせいで、一気に浣腸液が腸に噴射される。勢いの強さの余り、直腸の肉壁がはちきれそうになった。
 注入し終えて浣腸器の嘴が引き抜かれると、ゆかりの肛門はぴゅるっと白い雫を一滴漏らしてしまう。
「ほぉら、すぐに漏らしたら浣腸にならないだろ? がんばって我慢我慢」
「だめぇえ、もうトイレいかふぇれぇ」
「トイレかフェラ? どっちもだめだ。食事前だぞ」
「ちがうぅ……、ああ、お腹がぁ……」
 ゆかりの腹ではもう浣腸の効果が現れていた。グルル……と大きな音を立てて、浣腸液で冷やされた大腸が激しい蠕動運動を起こしている。それが便意の圧力となって、ゆかりの小さな肛門に押し寄せてくる。
 ピアスで呂律の回らない舌を呪う余裕すら、ゆかりにはない。
「そぉら、御飯食べるぞ。早く椅子に座れ」
「あ、あ! らめっ! 出ちゃうぅ!」
「何言ってんだ。いつも我慢できてるじゃないか」
 いやがるゆかりの制止も聞かず、恭輔は彼女の腕を掴んでゆっくりと立たせると椅子に座らせる。
 恭輔の言う通り、動いてたちまち漏らすことはなかったが、それでも強烈な便意はなお強くなるばかりである。ゆかりは座ってからも尻をもぞもぞと動かして耐えようとする。
「……挨拶は?」
「ぅう……やっぱりだめぇ、先にトイレいかふぇれぇ」
「舌っ足らずにおねだりしてもだめだ。さあ、早く」
「んううぅ……、今日もおいしそうな料理を作ってくれて――ああっ!」
 ゴグルルルルゥウゥ……。
 腸内で爆発したと思うくらい大きな音がゆかりの腹から響く。苦しそうに呼吸をしながらうずくまる。
 それでも恭輔は許さない。
「まだ途中だぞ」
「おいしそうな料理作ってくれて有り難うございます……。ひううぅ……、しっかり食べて、私の……私の美味しいお肉にします……」
「じゃ、おあがりなさい」
「い……頂きます……うぅ」
 時折尻をもじもじとさせながら、ゆかりは料理に箸をつける。
(浣腸さえしてなかったら、この料理も美味しいかもしれないのに……)
 実際恭輔の料理の腕前はなかなかのものだ。浣腸さえしていなかったら思わず御飯をお代わりしていただろう。
 だが、浣腸液が腸を圧迫している今の状態では、味わうことすらもかなわない。
 どうせなら御飯を残してトイレに駆け込みたかった。だが、恭輔の作った食事を残すことは許されていなかった。
 ――「ちゃんと一日三食食べれないような牝はいらないよ。アソコに張型咥えて家から放り出すからね。せいぜい路地裏で凍えながらオナニーでもしたらいいさ」
(もう、捨てられるのはいや……それだけはいやだから――)
 便意をこらえながらも、食べるしかなかった。尻をくねくねとゆすり、時折打ち寄せてくる大きな波にはうずくまってこらえながらも、御飯を口に運んで必死に嚥下しないといけなかった。
 そんな必死なゆかりの様子を、恭輔はにやにやしながら眺めている。そのねちっこい視線は、彼女の乳房を撫でる。
(いや、恭輔さんそんな目でおっぱい見ないで……)
 ついつい気をとられて自分の胸に気をやった時に、
 便意の大きな波がやってきた。
「ひ……あああぁっ!」
 寸でのところでなんとかこらえたものの、かなりぎりぎりのところまで便意が迫っていた。肛門の括約筋がぴくぴくとひきつっている。
 箸を落とし、背をのけぞらせてゆかりが叫ぶ。
「出ちゃうっ、……もう出ちゃう! はあはあ……ら、らめぇえ、もう我慢できないっ!」
「全く、こらえ性のない奴だな」
 目に涙を溜めて苦しそうに息をするゆかりに、恭輔は悠長にそう言って席を立つ。
「じゃあそこのトイレでしろ」
 彼が指差したのは、部屋の隅に置かれた底の深いプラスチックの桶であった。縁の両側が丸く切り込まれた形になっている。
 右手できゅっと尻の谷間を押さえ、ゆかりはうちまたでのたのたと桶の方に行く。椅子から桶のあるところまでの距離は2メートルほどしかないが、その距離を歩くことさえ彼女には苦痛であった。
「ああっ、漏れちゃう、漏れひゃうぅ……」
 一歩一歩歩くのも、桶の上にしゃがむのも、ゆかりの動きはゆっくりである。
 彼女の尻はすっぽりと桶に収まってしまった。ちょうど丸い切り込みに彼女の太ももがぴったりフィットした形になる。
 桶はゆかり専用のおまるだった。
「よし、いいというまで出すなよ」
「んうああぁっ、らめぇっ」
「言ったことがわからないのか?」
「もう、もう、もぉおおっ! んうううぅうっ」
 両手でぎゅっとおまるの前あたりを掴んで背を弓なりに反らして硬直させ、ゆかりは歯を噛み締めてうめく。
 ひときわ大きな腹の音が、部屋中に響く。
 ぶるぶる震えるゆかりの目から涙がこぼれる。
「……よし、出していいぞ」
「あ、ぅあ、……ああああああぁぁぁ!!」
 破裂音にも似た、粘っこくぬめった大きな音が桶の中で炸裂する。壮絶な排泄をしながら、ゆかりの体はびくんと一度大きく跳ね上がり、その後しおれるようにうなだれた。
「あああっ、ん……あ、や、まだ出ちゃうっ」
 激しい音はやがて、びちびちとした小さな音に変わっていく。しかしなかなかキリがつけられない様子で、ゆかりの尻はおまるからはなれない。
「長いトイレだな。いい加減にしろよぉ」
「ら、らってぇ、らってぇ……あぁ、まだ、まだ出るぅ、出てくるぅ」
「しょうがねぇな、手伝ってやるよ」
 恭輔はおまるにまたがるゆかりの後ろに回ってしゃがみ込むと、彼女の腹を拡げた右手でぐぐっと押さえ込んだ。
「ひゃ、ああっ!」
「そら、大腸が空になるまで出してみ、そら、そらっ!」
 蠕動運動を促すように、波を立てるように指先を順に腹に押し込んでいく。
「ふぐぅぅうっ」
 力のないうめき声を漏らして、ゆかりはなおちびちびと軟便を出し続ける。そのかいあって、彼女便がようやく途切れた。
 おまるから重そうに尻を上げるゆかり。その汚れた尻の穴を、恭輔がウェットティッシュでぬぐってやる。
(ああ……自分で拭きたい……)
 一切服を身にまとわぬ裸の姿で生活しているにも関わらず、ゆかりは羞恥に体を震わせていた。しかし自分で拭きたくても、恭輔は許さなかった。浣腸をした後は、必ず恭助が彼女の尻を拭うことになっていたからだ。
「きょうもゆかりの肛門はつやつやしてるな。それにどこか括約筋のあたりがふっくらしてるぞ」
「そ、そんなこと、言わないで」
「いいじゃないか。それだけお前に美味しい肉がついているということなんだから」
「ああ、う……」
 肌が赤くなるのではと思うくらい体の中の官能の炎を煽られて、思わずゆかりは右手人さし指の関節を噛んだ。
(この人の目の前で、私の体、どんどんいやらしく成長していっているのね……)
 恭助に体をまさぐられながら肉体の評価を受ける時、気恥ずかしさのあまりゆかりの体は熱く火照る。なぜならそれは、彼女の体の淫乱の度合いを評価していることでもあるからだ。
「しかし、だ」
 突然恭輔は、ゆかりの尻を平手打ちした。スパァンと乾いた音が家具の少ない部屋に反響する。
 ひゃぁうっ! と悲鳴を上げたゆかりの左乳首のリングを、恭輔は強く引っ張った。
「食事中にトイレとは感心しないな。おかげで俺の食欲がなくなってしまったよ」
「ごめんらさい……でも、でも……」
「まあすんだことだ。今さらどうこう言っても仕方がない。だけど、もう僕は御飯を食べる気にはならない。ゆかり、おまえが残りを全部食べろ」
 リングを引っ張る手を離し、恭輔はテーブルの上で何やらいろいろ作業をし始めた。しばらくして彼は、おまる近くでしゃがんで様子を見ているゆかりの前に皿を置く。
 彼は、テーブルの上の食べ物全てを大きな皿一枚に混ぜて盛ったのだ。
「手をつかわずに、きれいに食べるんだ。もし残すようなことがあったら、アソコにでっかい張型ぶちこんで公園あたりに捨ててやるからな」
 つまり、恭輔はゆかりに「犬食い」を命令したのだ。
 ある意味それは虐めにも似てあまりにみじめな仕打ちだった。だが、ゆかりは逆らわなかった。
 皿の上の食べ物に顔を近付けて、大きな口を開けてそれを頬張る。鎖骨にかかる程度の長さのウェーブがかかった茶髪に米粒がからみ、口元や頬は脂でたちまちてかてかに汚れてしまう。
「よしよし、いい食べっぷりだ。さすがは俺の家畜だな」
 恭輔はゆかりの食べる様を見ながら、彼女の尻肉をいとおしく撫で回す。
「おいしいか? おいしいなら、ケツを高く上げてぷりぷり振ってみ?」
 テーブルの上では美味しかった食事も、こうなってしまっては残飯同然だ。見た目からしてももちろん、実際の味も決して美味しいものではない。
「なんだ、まずいのか? まずいんなら、食べなくていいぞ。だけどその時は容赦なく外に捨てにいくけどな」
「――お……おいひいれふ、おいひいれすぅっ!」
 恭輔の言葉に慌てて、ゆかりは尻を彼の前に高く突き上げ、犬が尻尾を振るうように尻を横に振りたくる。
「そうかそうか、よしよし」
 尻を撫でて嬉しそうに言う恭輔。
 その恭輔が、口から彼女の肛門目掛けて大量の唾液を垂れ流した。
 生暖かい感触が肛門を包み込む。ゆかりの尻がおどろいてえくぼを作る。
「ひゃっ! 何――」
「ほら、何残してるんだ! 全部食べないと外に放り出すぞ!」
 ゆかりにそう脅しをかけながら、恭輔は唾で濡れた彼女の菊門を指でいじりはじめる。
「む……は、ひゃぁ、……んむ」
 食べるのをやめるのは許されない。だが尻の谷間で肛門をいじる恭輔の指の動きが気になって仕方がない。時折敏感なところをさすられては、湿っぽい息を漏らす。
 すると突然、恭輔の指がぬぷりと菊門を貫いた。
「ひっ――ぇあ、あぁ、あっ!」
 浣腸で弛み唾でぬめった括約筋は、恭輔の指を押さえきれなかった。ただ、狭い直腸内ををぐりぐりといじり回す人さし指の根元に必死に食らい付いていた。
「いやぁあっ! お尻いじらないでぇ、やはああぁっ!」
「ほら、御飯食べる口が止まってるぞ」
「ひょんなぁ、らって、らって――んあああああっ!」
 突っ込んだ指を激しくインサートされる。直腸の奥を貫かんばかりのその力にゆかりの尻はただただ翻弄される。ただ尻をくねくねと動かして耐え忍ぶしかなかった。
 食べることなど出来はしない。うめき声をあげるためだけに彼女は口を開く。
「ぇあああっ、ぇああああぁ!」
「……無理もないよな。ゆかりのアヌスはもう一つの性器になっちゃったもんな」
「やはらぁぁあっ」
(そんなこといっちゃやだ! そんなこと言われたら私が、私がアヌスにしか感じない変態みたいじゃない!)
 しかしゆかりは肛門を弄られる快感に思わず背筋をうねうねと動かしていた。指が腸壁を抉るように折れ曲がれば、たちまち彼女の体はビクンと跳ね上がる。
 彼女の肛門はすっかり恭輔の手で「性器」に仕立て上げられていた。
 激しいインサートの中で、彼女の秘唇は再び濡れ始めていた。クリトリスにじわじわと血が集まり、ラビアの端まで熱くなっていくのがゆかりにはわかる。
 いじって欲しかった。いや、どうせならば恭輔の男性で強く激しく貫いて欲しい。
 しかしそれはかなわない願望だった。なぜなら彼は会ってからいつも――
 肛門から指が抜き取られると、今度はそれよりも熱くて太いものの先端があてがわれた。
「――あ、それやあああ!」
「もう一回、今度は俺の愛の詰まった浣腸をしてやるな」
「いやぁ、いらな、あ、――ぇあああああおおお!」
 ゆかりの肛門を強引に押し広げ、狭い直腸壁をかき分けて、それはいとも簡単に自らの先端を奥の壁にめり込ませた。
(ああ、入ってきた……入ってきちゃった……。裂けちゃいそうで、たまらない……!)
 残飯にまみれながら苦しそうな表情で弱々しく首を振るゆかり。
 しかし恭助は熱くたぎる勃起をゆかりの肛門の中でゆっくりと動かし始めた。亀頭のえらが腸壁をえぐり、その先は奥を貫かんばかりに突き上げる。
 なすすべなく、ただ恭輔の唾液とにじみ出てきた腸液にてらてら輝くゆかりの菊門は、彼の陰茎を必死に咥えこみながらも、その抽送に出たり引っ込んだりを繰り返す。引かれれば名残惜しそうに外に伸び、押し込まれれば耐え切れなさそうに奥に引っ込む。
 肉厚の柔らかい臀肉は、恭助の腰がぶつかるたびにぶるぶると弾む。
(だ、だめっ……もうこれ以上されたら、もう、もう……)
 ずんずんと突き上げられるゆかりの体に、変態的な願望が沸き起こってくる。何度も何度も経験しておきながら、彼女は今までそれを認知したがらない。――いつもそれに打ち負かされているのに。
「やあぁお……ぅあ……ぇおおおおっ」
「気持ちいいんだろ、もっと正直に感じていいんだぞ」
「ぅあ、あ、……んあ、んあ、んあぁ、んあっ!」
 次第にゆかりは喘ぎのオクターブを上げていく。変態的な願望が彼女の官能をぐいぐいと押し上げている顕著な証拠であった。
「そうか、イキたいんだな。よおし、ちゃんと頭の中に今の子宮の様子をイメージしてイクんだぞ」
 その言葉が、ゆかりの意識の堰を壊す。
「うあああっ、あんぅ、イ……イクぅぅっ……」
 恭輔の大きな陰茎でぱつぱつに膨らんだ直腸にぐにぐにと押さえ込まれ、なおかつ揺さぶられる性器の姿を頭に描きながら、ゆかりは直腸の衝撃に身を任せてそのまま意識を遠のかせる。
「ぇあああああっ!」
 頭を皿の上の残飯に押し付けて、ゆかりはいまわの声をあげる。
 同時に直腸の中へ、熱く粘った液体が大量に放たれる。
 冷たい浣腸で冷やされていた腸壁が暖まっていく感覚がアクメの気だるい余韻とあわさって、ゆかりは奇妙な安堵感を覚えた。
 ゆっくりと恭輔のペニスが引き抜かれる。するとしばらくして、完全に閉まらないゆかりの肛門からねっとりと白い精液がこぼれてきた。それはゆっくりと彼女の蟻の戸渡りを伝い、濡れきった秘唇の愛液に絡んで混じり、そのままラビアをくすぐりながら奥の方に流れていく。
 抽送の余韻で未だにびくんびくんと動く彼女の尻の光景を、恭輔は嬉しそうに眺めている。そういえば彼は最初に会った時からその光景を嬉しそうに眺めていた。
 それがなぜか、ゆかりには快かった。残飯にまみれた顔で下からその様子を覗き込みながら、ゆかりは体の中に再び淫らな炎をともらせる――。

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