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話は一ヶ月前に遡る。
目立たないデザインのスーツに身を包み、肩にポーチをかけて、ゆかりは夜の街の光景をあちこち見回しながら歩いていた。
行く当てなどない。しかし黙って家から逃げてきた以上もうゆかりには帰る場所などなかった。ただ彼女は夜の街のネオンライトや光る広告の洪水に身を任せているだけであった。
金は家から数万ほど持ち出している。しかし結婚する直前まで門限を強いられていたゆかりは夜遅い街での振る舞い方を知らないでいた。ホテルに泊まってしまえばいいのかもしれないが、彼女はどこかでうさを晴らしたかったのだ。とはいえ居酒屋やバーは女一人で行くには抵抗がある。夜遅くまで開いている洒落た喫茶でコーヒーを飲んでみたりもするが、そんなので胸中に抱えた憂鬱を晴らせるわけがない。
再びはけ口を求めて街を歩いていると、ゆかりは黒背広の男達に声を掛けられた。
「仕事の帰りですか? もしお暇でしたら、うちの店に来てみません?」
ホストクラブの客引きだ。
「結構です」と言いながら早足で振り切ろうとするが、中にはしばらくしつこく追い掛ける者もいる。彼ら特有の野獣にも似た威圧感が、ゆかりには怖くてたまらない。
同じような男達に声を掛けられ続けているうちに、彼女の体はすっかりぶるぶると恐怖で震えていた。足をもつれさせて転びつつ、彼女はひたすら逃げ続ける。
歓楽街から少し離れたところにやってくると、ゆかりは公園を見つけた。中央に寂しくともる街灯のそばにブランコがある。
(ここは、私の来るところじゃなかったのかな……?)
ブランコを揺らしながら、彼女は夜の街に逃げ込んできたことを後悔した。
(でも……じゃあ自分ば一体どこにいればいいんだろう?)
地に足をつけないような不安感が、ゆかりの憂鬱を膨らませる。
(いるところなんて、ないのかな?)
目にじわりと熱いものが湧き出すのを感じる。ゆかりは目頭を押さえながら、しかし胸につっかえる憂鬱までは押さえ込めなかった。
ついには両手で顔を覆って泣いてしまった。
その時、一人の男が声を掛けてきた。
「一体どうしたんですか? こんなところで」
きっとホストクラブの客引きに違いない。ゆかりは顔を上げもせず、その場にしゃがみ込む。
「……こんな夜道に一人だと危ないですよ。そこのレストランにでも行きませんか? そこで気を落ち着けて、話を聞かせて下さいよ。何か力になれるかもしれないし」
さっきまでの客引きとは違った雰囲気がその言葉にあるような気がした。そもそも言っていること自体客引きのセリフではない。
男の方を見上げるゆかりに、ハンカチが差し出された。オーデコロンの匂いが彼女の鼻をくすぐる。
涙を拭いて見上げると、まず目に飛び込んできたのはその鋭い眼光だった。脳天まで射抜かんばかりのその目に、ゆかりは反射的に怯えて肩をすくませる。
しかし殺意や悪意は全く感じ取れなかった。確かに男の端正な表情には狡猾な肉食獣を思わせるとげとげしい鋭さを含んではいたが、頬の肉はこころなしか綻んでいるように見える。
「さあ、立って。あそこはとても美味しいんですよ」
きっちりと整った黒い背広に身を包んだ男の指し示した店は近くにあった。それほど混雑していない店の中で、客がなごやかに歓談している様子が見える。
ようやくゆかりはゆっくりと立ち上がり、貸してもらったハンカチを差し出した。
「ごめんなさい、取り乱しちゃって……」
「まぁまぁ、人間生きているといろいろありますよ。……お話は店の中で聞きましょう」
そのまま、男の手引きで店の中へと入っていく。
質素な宮殿を思わせる店内の装飾に、心地よいクラシックが流れる。差し出されたメニューも高級な食材のオンパレードで、思わず遠慮してしまう。
「あの……こんな……」
「ははは、構わないですよ。今夜は私におごらせてください」
「そんな、でも――」
「見返りのことなど気にしなくて結構ですよ。遠慮せずに好きなものをどうぞ」
だがゆかりはただただ遠慮するばかり。結局三品ほどしか注文しなかった。
どこか緊張しがちの彼女に、男は話し掛ける。
「このあたりは僕も結構行き来してるんです。でもあなたみたいに道ばたで泣いてる人は初めてみた。本当に、何かあったんですか?」
「ごめんなさい、本当に何でもないんです。ただちょっと、今までの悩みが不意に出てきちゃって……」
「聞いてあげますよ。遠慮しないで話して下さい。それだけでも気分はすっきりするでしょうし」
ゆかりは最初言うかどうかとまどっていた。だが、彼の言うことにも一理あると考え、ぽつりぽつりと身の上を話し始めた。
ゆかりは自身の美貌を自負していた。実際周辺の人間ばかりでなく、赤の他人からさえも、彼女の顔やスタイルのことを良く褒められた。それを機に、高校時代からミスコンなどに応募するようになった。
どのミスコンでも、ゆかりは上位の賞を貰うことが出来た。高校から大学に進学すると、入学したその年の学園祭のコンテストで見事グランプリを獲得した。さらに翌年も連続してグランプリを勝ち得たのである。
清純さの中に秘めた艶やかさ、あるいは草むらの中に咲いた鮮やかな花――言葉の巧拙こそあれ、彼女を評価した人間は異口同音にそう述べた。どちらかといえば目立たない人間であるゆかりは、しかし目に止まれば身体のパーツ一つ一つが見とれるほどに美しく、さらに身体を動かし、あるいは肌を露出することによって一層その美貌が薫りたった。
その薫りが、彼女に幸運を呼び込む。
雑誌のグラビアやインタビューなどの仕事もするようになったゆかりのもとに、縁談が舞い込んできたのだ。
相手は会社社長の子息。しかも会社自体この不景気な中で順調に売り上げを伸ばし続けている優良企業。もちろん家にも多くの資産があり、しかもその相手もなかなかの二枚目で性格もよさそうだった。
突然もちかけられた話にゆかりはさすがに当惑したが、一年ほど交際した末に、それまで頑に守っていたバージンを捧げる決心をした。
学校を中退して、ゆかりはついに結婚した。
それからも男はゆかりを愛し続けてくれた。蜜月の濃厚で熱い幸福の絶頂の中で、いずれはゆかりも彼の子供を身籠るはずであった。周囲の沢山の人々からもその期待が寄せられた。
だがここで、ゆかりをどん底にひきずり落とす衝撃の事実が医者から述べられた。
――不妊症。
愕然とするゆかり。だがゆかりは、周囲の失望がとても大きいことに重ねてショックを受ける。
なにより夫の態度の急激な冷え込みは、傷心のゆかりにはひどくこたえた。
さらに不運は重なる。口煩い姑が家にやって来て、ねちねちとしたいじめを受けるようになり、その上に夫の浮気を知る。家にやってくる夫方の親戚は陰口で離婚話をし始め、やがてそれがゆかりの体調と精神を揺さぶり始める。
ついに、ゆかりは床に臥せってしまった。
そんなとき、姑がぶっきらぼうに一枚の紙を差し出して来たのだ。
離婚届。しかも夫の自署と判がはっきりと押されていた。
「子供も作れない、家事も出来ない……そんな嫁などこの家にはいりません。それにゆかりさんも、これ以上息子と夫婦をやっていくのもたいそうしんどいでしょうしね。さ、これにあなたの名前を書いてすっきりしなさいな。あなたなら、色街あたりでも充分やっていけるでしょ?」
どれだけ冷たくされても、どんな境遇にさらされても、ゆかりはずっと夫のことを愛していた。それなのに、こんな仕打ちはあんまりであった。
そして離婚届を丸めて捨て、ゆかりは家を飛び出したのである。
身の上話の後半には、夫や姑の悪口がとめどなくゆかりの唇から吐き出された。
しかし男の言う通り、さっきまでの憂鬱な気持ちが吹っ切れて、随分晴れやかになった。自然と笑みすらこぼれてくる。
男はそれを黙って聞いてくれていた。
「しかしひどい家ですよねぇ。子供を産めなかっただけでお払い箱なんて。人をなんだとおもってるんだろうね」
「本当に、私のことを壊れた子供の製造マシーンにしか考えてないようなふうなの。あんなところ、もう帰りたくない」
ようやくゆかりが、最後の一皿の料理を食べ終えた。
ウェイトレスが食後のドリンクを持って来て、その皿を引き上げていった。
「離婚してしまえばいいじゃないですか。どうせ金持ちの家なんだし、慰謝料がっぽりとっちゃえばいいんすよ。何なら、いい弁護士紹介しますよ」
「うん、ありがとう。……でも……いい」
それまで晴れやかな表情だったゆかりが、突然顔を曇らせる。
男にはゆかりの表情の意味を理解していたようだった。だがあえてそれを言わず、こう切り出した。
「これから、ちょっと飲みに行きません? 家に帰るつもりはないんでしょ?」
「え……でも……」
「いいじゃないですかぁ」
その男の目に、ゆかりはまるで自分の視線を釘止めされたような気がした。
実際彼の申し出を断ったところで、行くあてなど彼女にはない。それがゆかりを、男のいいなりになるしかないような気分にしたのだ。
次に彼が連れていってくれたのは、電車の高架下にある、小さな焼肉屋だった。
先ほどの店とは対照的な、小汚くボロい店である。焼けた肉の独特な匂いをあたりに漂わせ、既に二、三人いる男性客は全員赤ら顔で下品な大笑いをあげている。
「焼酎ロックで二つな、おやじ」
戸惑った様子のゆかりの背中をぽんと押して店に入れると、男は一緒にカウンター席についた。
「おう、恭輔クンか。今日は稼ぎ――あ、仕事中?」
カウンターの中にいた店員が、いやらしい目つきでゆかりを見やる。
「いや、違うんだ。あの仕事、もうやめたんだ」
「えーっ! 何で? 随分儲けてたじゃない。 いつも女侍らすような仕事やってて何が不満だったんだよ?」
「いや、その話は……今はやめてよ」
恭輔クンなどと呼ばれた男は、オールバックの髪をぽりぽりと掻く。上着を椅子の背もたれにかけてYシャツ姿になると、店員の詮索を完全に止めようとするかのように注文をする。
「コブクロの刺身を頼むよ」
あいよ、と店員はカウンター奥の冷蔵庫の方に行った。
「食べたことある? コブクロ」
ゆかりに質問しながら、男は焼酎のロックをカラリと揺する。
「何ですか? コブクロって」
「知らないならいいんだ。ま、出て来たやつを食べてみたらいいさ。美味しいから」
ふとゆかりは店員の方を見た。コブクロがどんなものなのか見れるかもしれないと思ったのだが、店員はすっかりこちらに背を向けて調理しているところだった。何かを包丁で丁寧に切っているのは分かったが、どんなものを切っているのかがわからない。
待っている間、すっかり酔っぱらった他の客の大きな声が耳障りに聞こえる。
ふとゆかりが恭輔に聞いた。
「ホスト、されてるんですか?」
「うん、してた。でも今日店に辞表出して来た」
あっさり答えて、恭輔は焼酎を一口飲んだ。
「あ、そうだおやじ、二人分ね二人分」
だが彼ははあまりそのことに触れられたくない様子であった。
ゆかりはそのまま黙ってコブクロを待つ。
ようやく店員が振り向いた。手にはガラスの皿。赤みを帯びたピンク色の生肉のようなものの切り身がきれいに並んでいる。物自体、見た目はねっとりとしていて、どこかグロテスクにも思えた。
「じゃ、先に一人前ね。で、これがタレ」
ゆかりの目の前に、そのコブクロの刺身とタレの入った小皿が置かれる。
割り箸でそっとつまんで持ち上げてみる。どうやら管になっているようである。多分内臓なのだろう。
「あの、これって一体何の肉――」
「そういうのは、こういうところで聞くもんじゃないよ。店出た後でも教えてあげるから、まずは食べてみてごらん」
あっさり質問の回答を拒否されて、ゆかりはすすめられるがままにそのコブクロなる刺身をタレにつけるとそっと口に入れた。
舌にねっとりとした淡い甘味が広がる。噛めばコリコリとしていて、ますます旨味が増した。
「これ、おいしい」
「だろ? 僕のお気に入りの一つだよ」
恭輔の前にもコブクロの刺身が置かれた。
「塩タンとかテッチャンとか、肉の美味しい部分は数あれど、やっぱりコブクロは一番美味しいよ」
本当にうまそうに食べているゆかりを、恭輔はただ焼酎を飲みながら見つめていた。その目はどこか少し笑っているような雰囲気であった。だが、当の彼女は気にすることなく、どんどんコブクロを食べていく。
「お気に召しましたか?」
知らぬ間に、ゆかりの気持ちはすっかり和やかになっていた。恭輔にそう言われて、改めてそのことに気付く。
「ありがとう。おかげさまで」
「何か他にも食べる?」
「あ、いえいえ、もう充分」
「なんだったら、僕のコブクロも食べてよ」
すすっと皿を寄せる恭輔。だがゆかりは恭輔のコブクロに手を着けようとしなかった。結局彼女は最後まで箸を運ぶことはなかった。
だがゆかりは全く気付いていない。彼女がコブクロの刺身を一口食べるのを見て、恭輔は口元をほころばせて喜んでいたことに。だが例え見ていたとしても、その時のゆかりには、恭輔が喜ぶ理由など知る術すらなかっただろう。仮に、ゆかりの身体を中までまさぐるように見つめる彼の目線の動きに気がついていても。
しかし酒はひどく進んだ。アルコールの強さに自信などないくせに、ゆかりは恭輔にのせられるまま、ライトビールをグラスで二杯も注文してしまった。
おかげでゆかりはすっかり酔っぱらってしまう。
だが、かえってその方が気持ちいい。ものすごく気分が軽やかになった。悩んでいたことなど、もうどうでもよくなっている。ていうか、なんでそんなことで私ったら頭をもたげてたんだろ?
酔いですっかり考えることをやめたゆかりの顔に笑みが浮かぶ。
今夜会ったばかりの恭輔の肩に擦り寄り、抱き着いた腕の太さを思い付いた言葉で誉めてみたり。その声も呂律がときおり上手く回らない。
そんなゆかりの口に、恭輔は自分のグラスの中身を含ませる。強い香りに深い苦味が交錯したウィスキーのロック。ゆかりの舌はすっかり火照り、一層彼女の脳をふわつかせる。
もう自分が何を言って何をしているのかいまいち把握できずにいた。
気がつけば、焼肉屋の外に連れ出され、恭輔と夜道の風に当たりながら他愛無い会話をしていた。
「随分酔っちゃってるね」
「ら、大丈夫。ひゃんと、ちゃんとあるけててるでしょ?」
呂律の回らぬ舌で馴れ馴れしくそう言っては見せるが、ゆかりの足はふらふらである。やもすれば、足を挫いてしまいそうなくらい、歩き方が心もとない。
そんな彼女を見て恭輔は言う。
「でも、今のゆかりさん、好きだなぁ」
「やん、はは、好きだなんて、らははぁ」と酔った顔で照れるゆかりであったが、恭輔に背中からがばっと手を回された時は驚いて黙り込んでしまった。
「このまま放っておくわけにはいかないなぁ。どこか泊まりましょうか? いいところ知ってますよ」
夜風の冷たさに、しかと抱き着いてくる恭輔の体温が気持ちよく思えた。頷きはしなかったが、しかし申し出をはねのけるわけでもなく、ゆかりはただ黙っていた。
今のゆかりは、ただ恭輔に流されるがまま。心のどこかで、彼を信用し、期待していた。
だからゆかりは安心して自分の意思を酔いにどっぷりと浸らせていれた。
そうして、二人は近くにあったホテルに入っていった。
どんなホテルなのか、酔いでまどろんだようになっていたゆかりの目は全く捕らえていなかった。そのまま恭輔につれられるがまま建物に入り、殺風景なエレベーターに乗り、薄暗い廊下を歩かされた。
室内に入ると、どこか赤っぽいような照明の中に大きなベッドが置かれているのがわかった。その他に冷蔵庫、棚、トイレの入り口と浴室への入り口。カーテンで覆われた窓は、さらに鎧戸が締まっていてさらに鍵がかけられている。
それら一つ一つを確かめるようにふらふらと部屋を歩き回るゆかり。だが彼女の目は物をこれととらえずあやふやに彷徨っているだけ。
そのゆかりを、恭輔が突然ベッドに突き飛ばした。
抗いようなく、ゆかりはそのまま布団の中に突っ伏す。
突然のことに、ゆかりの酔いはすっかり吹っ飛んでしまった。
振り返った彼女が見た恭輔の視線は、先程までの穏やかなものではなくなっていた。
しかし「狂暴」や「野性」といった言葉とは程遠い口ぶりで、恭輔は話し掛ける。
「なんで、俺がホストやめたか、わかる?」
ゆかりは怯えた目で彼を見るのが精一杯であった。
「確かにがんばって店のナンバーワンになって沢山稼いだよ。たくさんお金があるのはいいことだよ、確かに。本当になんでもできるからね」
突っ伏したままのゆかりのそばに恭輔が腰掛ける。その際に生じたマットレスの揺れがゆかりの身体を揺さぶる。
「でも、うんざりになったんだよ。好きでもない女に媚び売るのがさ。俺が働いていた店なんか、客のほとんどが化粧のケバい商売ババアばっかりだ。連中、いつもキモい男相手にしてるもんだからいろいろストレス溜まってるんだろうな。ネチネチとプレッシャーをかけてくる。口じゃあ言わないんだ、仕草や表情で急かしたり訴えたりしてくるんだ」
ゆっくりと恭輔が背を後ろに傾けていくのが、ゆかりには恐い。
「それでも、金のためなら自分の本心欺いてでもやってのけたさ。でもそのうち、金以外にものすごく欲しいものができたんだ。仕事をすればするほど、ますますその気持ちは強くなってくる」
ゆかりが一番怖がっていたことが起こった。
彼女をベッドに押さえ付けて身動きがとれないように覆いかぶさったのだ。
「そうだ、教えてやるよ。焼肉屋で食べたコブクロがどの部分かをね」
コブクロどころではない。ゆかりはなんとか彼から抜け出そうともがく。
「いやっ……やあっ!」
「何処だと思う? 内臓には違いないんだけどね。ヒントといえば……微妙だけど……モテナイ君が喜んで嬉しそうに食べることくらいかな」
眉間に皺を寄せて激しく身体を動かすゆかりをしかとベッドに押さえ込む。
そっと、彼女の履くスカートのホックをぱちりと外した。それから恭輔の手が遠慮一つなくその中に潜り込む。
パンストの薄い生地に潜り込み、ショーツの中に指先が潜り込む。
「なにするの、いやああっ!」
腰をよじろうとするゆかりの強い力に恭輔は跳ねのけられそうになったが、なんとかふんじばる。
その時に、彼はついに本性を見せたかのような荒々しい声を上げた。
「教えてやろうってんだよ、おとなしくしやがれ!」
殴られはしなかったが、ゆかりはまるで頭をバシンと叩かれたかのようなショックを受けた。動きの止まったゆかりの下腹部を、恭輔の手のひらが強く掴む。
「ううっ」
「分かるか? コブクロってのはここだよ。女の性器だ」
「いやあああぅ!」
痛くはなかったが、パンツの中へ侵入して来た手に荒々しく掴まれていることに耐え難い不快感があった。
その手が外に出ると、今度は無理矢理ゆかりのスカートをずり下ろす。
「やだああっ! やめてぇ!」
「おとなしくしろよ! これからお前のコブクロを楽しんでやろうってんだよ!」
……ビキ、ビリリッ。
おもいっきり引っ張ったスカートの布地が断末魔の悲鳴を上げる。
それがまるで、ゆかりには自分の身体の皮膚を痛々しく破かれたように思えた。
「ひいいいっ! ……もうやめて、許してっ!」
「往生際が悪いなぁ。ほら、俺に見えるように大きく股を開けよ!」
言いつつ、恭輔は荒々しくゆかりのパンストを破く。その激しさにゆかりは恐怖を覚え、抵抗することすらやめてしまった。
「いや、いやぁあ……」
生きたまま猛獣に食いちぎられる動物の心境もこんなものなのだろうかとゆかりは思う。相手の獰猛さを前にどうすることも出来ないまま、ただただ無惨に散りゆく自分の姿を呆然と眺めるだけ。
パンストを全部破いた後、恭輔はショーツをつかみあげると一気に引きちぎった。
「あ――」
悲しき獲物のほとんど声にならない悲鳴。ゆかりはすっと股間の辺りが涼しくなったのを感じた。
(私のアソコ、丸見えになってるんだ……)
そう思った途端、羞恥の鳥肌が全身を襲う。両手のひらを胸で組み、きゅっと肩をすくめて震えに耐えようとするが、無駄な努力だった。
恭輔がゆかりの両膝を拡げた時、彼女の身体は震え極まってびくん、びくんと跳ねていた。
開いた股間の中央に顔を近付け、ゆかりの今一番敏感になっている部位にふっと息を吹き掛ける。
「んやっ」
「綺麗なピンク色してるじゃないか。ヒダヒダも整ってるし、まるで男を知らないみたいだ。人妻だなんて思えないなぁ」
その時、すすっとゆかりの小さな陰襞をくすぐる。
唾液で湿り切った恭輔の舌先が、ゆかりの部分も濡らそうとしていた。伝うばかりでなく、襞の皺を暴かんばかりに潜り込んで拡げ、あるいは時折唇の中にぷぴゅっと音を立てて吸い込む。
それだけで、ゆかりは胎内が熱く火照り始める。
(そんな……私のが、そんなにおいしいの?)
潤んだ目で、ゆかりは股間に口寄せる恭輔に問いかける。
と、小さな秘裂を全部吸い込まんばかりに、突然恭輔の口が突然大きく開いてがっぷりとかぶりついてきた。
ぐぴゅ、ぴち、ぷぶっ……。
卑猥な音をわざとらしくたてる恭助の口の中で、捕われたゆかりの秘唇が彼の舌で徹底的にねぶられる。さっきよりもさらに襞の奥をくすぐられ、窄み気味の膣口を舌先でねちねちと舐め回される。
「んううううっん」
膣口の奥に舌が侵入してくると、思わずゆかりは背筋をのけぞらせた。経験があるとはいえ、しばらくぶりだった愛撫に、彼女の下の口はすっかり敏感になっていた。
恭助はゆかりのはだけた腰を両手で持つと、ねぶる様子が彼女によく見えるように、ゆっくりとひっくり返すように持ち上げていく。
「ああ、いや……」
ものすごく恥ずかしいはずなのに、愛撫で生じたむずがゆい感覚が体中を駆け巡ってかすれた声しか出ない。
恭輔にひたすらむさぼられるゆかり自身の秘裂が、彼の唾液でてらてらと光りながらなすがままにされているのが、彼女の涙目にもはっきりと見えた。これだけいやらしく弄られているのに、肉襞は朝に開く花弁さながらに鮮やかなピンク色を帯びて咲き乱れている。
それがさらに彼女の恥じらいを一層燃え上がらせた。身体の芯から、熱くたぎったものがじわりじわりと、しかし確実なスピードでせり上がってくる。
「おおっ。ゆかりの熱いお汁が沸き出して来たぞ」
舌先を肉襞根元奥の膣口に忍ばせてちろちろ動かしながら、恭輔はゆかりによく見えるようにさらに彼女の腰をせり上げる。
「んううううっんっ」
自分でも分かっていた。恭輔の唾液よりも熱く、しかも粘っこくて濃厚な淫臭を漂わせた自分の愛液が、クレバス奥からじわじわ吹き出しているのが。もうゆかりは自分の秘部が花開いていく様子を見ることが出来なくて、思わず腕で目を覆う。
だが視界を覆っても、恭輔の舌の感触がその代わりになって、むざむざと彼女の頭の中に自分の秘裂の様子を甦らせる。
しかも、舌はさらに彼女の恥ずかしい部位を暴いた。
「ひゃ、ああっああああっ!!」
肉襞の奥をなぞられるよりも、膣口を巧みに舐められるよりも、意識が吹き飛んでしまいそうなくらい強い性感がゆかりの身体を駆け巡った。
「いつのまにかこんなところも元気に育ってるじゃん。上等上等。知ってるかい? これがぴんぴんなほど、コブクロはおいしいんだよ」
舌を絡ませるだけでなく、唇で咥えてさらに音を立てて強く吸い込む。
「やはっ、やあああっ、あああああっあ、あーっ!」
不定期に快楽の波が脊髄を通るたびになやましく背筋をのけぞらせて、つまらせたようなかん高い、だだをこねる少女の出すような嬌声を上げるゆかり。眉間に縦皺を寄せ、頭の中でスパークする感覚にぎゅっと閉じた目の奥をちらつかせる。
クリトリスの包皮が剥かれた途端に、そのスパークはさらに強烈に弾ける。
「ひ、ひっ、へあっ、えああああああーっ!」
涎こぼれる口からひっきりなしに吐き出される嬌声が、こころなしか震え始める。
限界が迫っていた。自分が自分でいられない、心の中の何か大事なパーツが弾け飛んでしまう瞬間が、もうすぐそこまで近付いていたのだ。
「うあああ、らめぇ、らめぇっへええええぇっ!」
目尻から涙を流してゆかりは訴える。どうか、これ以上私を私でない何かにしないで……!
と、唐突に恭輔がゆかりの秘裂から口をすっと離した。
快楽の波から解放され、ようやくゆかりは元に戻れる……はずだった。
だがどうだろう。
恭助の口の愛撫から自由になったゆかりの陰部は、再びその神経をざわつかせ始めた。肉襞の先端まで、まるで失ったものを求めるかのようにむずがゆい感触が小さな蟻のようにかけずり回る。
(そんな……何で?)
肉襞の異様な感覚は愛液をさらに分泌させ、クリトリスを痺れさせる。
(いや、あ……だめ、抑えられない!)
「どうしたんだ? ひょっとして、アソコがじんじんしてるのか?」
すっかり敏感になった肉襞に息を吹き掛けて恭輔が問いかける。
「ひあっ……うう」
図星をさされたゆかりは、なにも答えられなかった。ただ彼の息に、まるで秘部を指で撫でられたような錯覚を感じて喘ぎを漏らす。
「教えてやろうか? それは、ゆかりが獣みたいにさかってる証拠なんだ。このヌレヌレのアソコをもっと弄り回して欲しがってるんだ」
「そんな、違う! ちが――ひゃああっ」
大きすぎもせず、小さすぎもせず、しかし適度に肉づいた柔らかそうなゆかりの乳房が左右でたらめにたぷたぷと揺れる。
すっかり彼女の肉裂は恭輔の息だけで感じてしまうようになっていたのだ。我慢していても、息を吹き掛けられた途端におもわず身体を揺さぶってしまう。
「うううううっんっ」
なんとかいやらしい声を我慢しようと唇を噛むゆかりの顔を、恭輔はにたにた笑って見つめる。
愛おしそうに恭輔はクリトリスにキスをしてきた。ぴちゅっと小さな音を立てて吸い付く。
「えあああああっん!」
出てしまう、あの裏返ったような嬌声。
「ほおら、それだけ嬉しそうな声だして。本当は期待してたんだろ?」
「違う……」
「さっきみたいにねぶってほしかったんだろ?」
「違う」
「俺にこのやらしいコブクロを奥までむさぼってほしいんだろ!」
「違う! ――っひ、ぅああああああああ!」
否定しているのに、ゆかりは再び恭輔に秘部をしゃぶられて嬌声を上げる。――しかもその声はさっき以上に丸みを帯び、得るべき快感を得て満足しているかのようであった。
「あーっ、あーっ、ぁああああああーっ!」
「これがお前の本性なのさ。いい加減自分を受け入れろよ」
「ひがうぅぅっ、ちが……ゃあああああーっ!」
またゆかりは獣に食べられる獲物に戻った。だが恭輔に秘部をねぶられるのを見つめるその目はとろんとして、どこかマゾヒスティックな光を宿していた。
恭輔が顔を上げて脚から手を離しても、ゆかりは大きく股を開いた格好のまま、起き上がることすらしなかった。まるで恭輔の目に自分の全てを晒しているかのように。
「じゃあとどめに暴露してやる。ゆかりがスケベでさかりのついた牝の獣であることを教えてやるよ」
恭輔の指が、ねっとりと濡れそぼった秘部にあてがわれる。
そこで愛液を塗りたくると、容赦なくゆかりの膣内に突き立てた。
「んううっ!……あぁあ……」
最初こそ抵抗はあったが、愛液の潤滑もあっていともあっさりと人さし指の根元まで入ってしまう。だが、ひさびさの来客にゆかりの膣壁はすっかり緊張してすぼまる。
その窮屈さの中で恭輔の指がかぎ状に折れ曲がった。
「あうっ!」
しかもその指先が探り当て、さすり始めたところは――
「やはあああああぁあぁああ! そ、そこ、ああ、いやあっはあぁああ!」
激しく首を横に振りながらも、身体は恭輔の指に刺激されるままに波打つように揺さぶられる。
愛液がさっき以上に溢れ返る中で、恭輔の人さし指はコリコリとゆかりのGスポットを弄りまわしていたのだ。
これまでにない快楽の大きな波が、彼女の意識を包み込んで押し流してしまわんばかりに襲い掛かってくる。しかも今度は、それに抗う力も術も全くなかった。
そんな中で、ゆかりは自分の身体に訪れたものをいやでも感じることになる。
「ぃいいいいいっ、……いや……なにか……出るぅう」
たぷたぷと乳房を揺れるその下で、ゆかりの腰が緊張したようにぶるぶると小刻みに震え始めた。だが、恭輔はGスポットへの刺激を止めようとしない。どころか、
「ほおおら、いよいよゆかりの本性が現れたぞ。見届けてやるから、ほら、とっとと出しちまえ!」
「やあああっ! いやああああ!」
「我慢しても無駄だ。獣の自分を受け入れるんだ!」
「そんなの、やあああああああ!」
ゆかりの悲鳴は、快感から来る嬌声の響きを含ませながらも切羽詰まっている。
恭輔は、いまわの時を迎えんばかりのゆかりの顔を見据えて、こう言った。
「俺の、ペットにしてやるから」
「ペット」という言葉に、ゆかりはぴくりと反応する。
だが、目線を恭輔の方に向けた時、彼女の心に隙が生じた。
それは来るべきものを食い止める堰を不意に解放させてしまった。
「あ、あああぁ――」
力の抜けた、ため息のようなゆかりの声と共に、大きな放物線を描いてベッドの上に弾けて濡らす液体。
勢い衰えることなく彼女の尿道口から出るその液体は、見事なまでに高く吹き上げていた。
「ははははは、気持ちよすぎてこらえられなかったのか?」
恭輔は意地悪く笑って、ゆかりの淫裂から吹き出す潮を悠長に眺めていた。
「いままでいろんな女の子相手にしてるけど、こんなに高く潮吹きやらかすインラン女は初めてだよ。ゆかり、わかったろ? お前の本性は快楽に飢えたドエロい牝獣なんだよ」
「や、ああぁ……」
反論しようがなかった。ゆかりはただ弱々しい悲鳴を上げて、自分の股ぐらから高々と吹き出す潮をのぼせたような目で呆然と眺める以外にできなかった。
「もうこんなにベッド濡らしやがって。お前みたいなのは俺がしっかりしつけてやらないとな」
「ペットに……しちゃう……の?」
胸が締め付けられそうになった。どこかの家の庭に置かれた狭い犬小屋の前で、外気の肌寒さに身を縮こまらせながら、皿に盛られたドッグフードを四つん這いで犬食いしている全裸の自分を想像して、ゆかりはひどく自分が哀れな存在になってしまったような気分になった。
なのに、胎内はそんな気持ちに反比例して熱くなり始め、吹き出す潮もこころなしかさらに勢いを増す。
みじめな気持ちの中に、ゆかりは快楽を見い出してしまっていたのだ。
「そうさ、忠実な俺のペットにしてやる。……いや、家畜と言った方がいいかもな」
ゆかりは四つん這いを強要されて、そのままバスルームに入っていた。愛撫で汗ばんだ身体を、恭輔がていねいに洗ってくれている。
「ほら、このおっぱいだって、随分な熟れようじゃないか。丸々としているくせに、『食べて下さいね』といわんばかりに柔らかそうに垂れてるしな。ミスコンの前日とか、審査員に見せつけてたんじゃないの?」
「そ、そんなことないです! あれはちゃんと手続きして、正々堂々と――」
「ふっ、どうだかなぁ。清純そうな顔してて、心の中はドロドロだったりな。ま、そのところも含めて、これからしっかり調教してやるからな」
「そんな、調教なんて……」
意地悪な言葉のわりに、恭輔はきれいな紡錘状になって下を向いているゆかりの両乳を、硬くしこる先端まで念入りに優しく手洗いしていた。石鹸の泡が、卑猥な恭輔の指の動きをいっそう際立たせる。
その調子のまま、まるで我が物顔で体中を伝う十本の指の感触を感じながら、ゆかりはすっかり自分が恭輔のものになっているような気分に陥った。
肩をさすり、脇の下を滑り、横腹をくすぐられ、臍の中に沈みこみ、下腹部を撫で回す。
それから臀肉を念入りに揉みしだかれ、押し広げられた谷間に忍び込んで、
「ああ、や、やあっ!」
彼の指が繊細に、しかし力強く会陰の部分を洗い上げる。肉襞や蟻の戸渡り、肛門の皺の一本一本にまで石鹸の泡が浸透していくかのようだ。
「あ、あんっ」
心地よさに思わず尻をぶるるっと振りたくってしまう。
「やらしく鳴くじゃないか。そんなに気持ちいいか?」
「……はい」
消え入りそうな声だったが、ゆかりは正直に自分の気持ちを答えた。
(もう、いい……気持ちよくなれるんなら、獣でも家畜でもいい……)
くねくね、くなくなと尻を揺すって、ゆかりは自分の気持ちを体全体で表そうとする。今のゆかりには、自然にそんな意思表現ができるようになっていた。
「随分な反応のしようじゃん。ようやく自分の姿を受け入れられたんだね」
「はい……」
ベッドですっかり潮を出し切ったはずなのに、まだじわじわと肉裂に愛液が溢れ出てくる。
身体が欲していることを、恥じらいながらもゆかりは口にする。
「今、すごく欲しいです、恭助さんの……オチンチンが……」
「ほほお、いいことだ。こいつはいい家畜に育つぜ。コブクロもますますおいしくなるだろうな」
石鹸まみれの肉裂に、恭輔が舌を忍ばせる。
ずっちゅ、ちゅびっ。
「あああああっ」
のけぞる背筋をわななかせて、まさに牝獣のいななきをもらすゆかり。もっと欲しい、もっと欲しいとばかりに、彼の顔にさらに尻を突き出す。
が、舌はつるりと蟻の戸渡りを通って、アヌスに写る。
「ひゃうっ!」
今までに味わったことがなかった感触を覚える。確かにそれはまぎれもなく、さっきまで存分に会陰の味を堪能していた恭輔の舌には違いなかったが、その肉感溢れる柔らかい感触が、すぼまるアヌスにひどく敏感に覚える。
「オレのチンポや精液でおいしいコブクロを台無しにするのは良くないからな。 こっちで楽しんでやるよ」
「……ひああ……恐い」
だが一度快楽の波に飲み尽くされたゆかりの尻は、恭輔の舌から逃げようとはしなかった。ただアヌスを舐める舌の感触に踊らされるように、うねうねと尻をくねらせる。
「ゆかりなら気にいるだろうよ。いずれ『オチンチンほしいっ!』とか言いながらお尻の割れ目大きく広げるくらいにね」
「やだ、そんな……こんな汚い穴に……」
「綺麗だよ、ゆかりのアヌス。ほんとうなら、コブクロ同様にそのままなにもしないでおきたいくらいさ」
ずにゅっと舌が入って来た。
「んうううっん!」
思わず括約筋をきゅっと閉める。
「うーん、さすがに舌じゃ無理か。仕方ない、じゃ、これで」
再び、肛門に何かが入ってくる。柔らかい舌と違って硬く、芯のあるものが。
しかも半ばまで入ったとおもったら突然ぐにっと折れ曲がって、腸壁をくにくにと撫でてくる。それだけでも、ゆかりの腸は激しく敏感に感じた。
「ああああっ、いやあああ!」
「すっごい締め付け具合だな。まるで抜いて欲しく無さそうだ」
恭輔は嬉しそうに、ゆかりの腸内に埋めた指をさらに動かして、腸壁に挨拶でもするかのようにつつき回す。
「ここの肉壁もすごく柔らかいなぁ。しかもなんだかツルンとしてるぜ。これなら、俺のも優しく飲み込んでくれそうだ」
「や、やめてっ! 入らない、入らないからっ」
だがそんなこと、恭輔は聞き入れなかった。アヌスに指を入れていないもう一方の手で、恭輔は自分のペニスに石鹸を塗りたくっている。
しかも、入れた指が、今度は奥に手前にピストン運動を始めた。
「ふあっ、あん、あああっ、あああっ!」
たまらないくらいの性感が、彼女の脚から力を奪わんとする。肩幅に開いて腰を支える膝がガクガクと震える。
と、ぷちゅっと粘っこい音を立てて指がコルク栓よろしく抜き取られた。肛門が腸液をだらしなく外に漏らしながら、名残惜しそうに半開きになっているのがゆかりにはわかった。
そんなアヌスが、太く熱いものでペチペチと叩かれる。
恭輔のペニスだ。これから入れるぞ、という無言の合図を送ったのだ。
ゆかりに返答の余地はなかった。そのままペニスの先がメリメリと肛門に身を沈めていく。
(やっ、きつ――)
「んあああああああ!」
硬くすぼまる括約筋が膨張し切った亀頭に突破され、息詰まるくらいの窮屈感がゆかりの身体を貫いた。口を大きく開けて、喉に詰まったような悲鳴をあげる。
だがペニスは気負い一つなくじりじりと直腸の奥に向かって入っていく。
苦悶の、しかしどこか壊れたほころびを見せるゆかりに、恭輔がささやいた。
「これからこうやって、お尻の穴でゆかりを愛してやるよ。これで感じれば感じるほど、淫らになれば淫らに乱れるほど、コブクロはもっとおいしくなるからな」
ギンギンに硬くなったペニスは、ついに奥に達した。直腸奥の腸壁に届いた時、一層強烈な窮屈感がゆかりの脳天を突き上げた。叫ばんばかりに大きく開かれた彼女の口からは、声にならぬ悲鳴が吐き出される。舌だけが苦しげに踊っていた。
「アナルセックスばかりじゃないぞ。可愛がっている証拠に、この身体にたくさんタトゥーを彫り込んでやる。それから、愛おしいところをピアッシングしてやるよ。だれがどうみても、お前が俺の家畜にしか見えないくらいにな。ああ、すげぇ楽しみだ、ゆかりが優秀な家畜に育っていく姿を見るのが……!」
ゆっくりと、ゆっくりとだが、腸壁や括約筋がめくれあがるくらいに力強くペニスが突き上げを始めた。窮屈感の極みとも言える感覚の波が、ゆかりの身体を串刺しにする。
「――ぁっ! ――ぁっ! ――ぁぁっ!」
白目を剥きそうになりながら、ほとんど声にならない喘ぎをもらすゆかり。だが、その詰まった鳴き声の中に、どこか微妙に艶かしさすら感じられる。
家畜としてのこれからの生活に、ゆかりが深く溺れていくのも時間の問題であった――