Loom

 ゆかりが家畜として飼いならされて、かれこれ一ヶ月が経とうとしていた。
 ホストをやめて以後しばらくは貯金で生活していた恭輔であったが、一方で、水商売ではなく、まともな仕事を探していた。
 ホストクラブでナンバー1の実績は伊達ではない。決して見かけ倒しではない話術と誠実さと計算高さをアピールして、中小ながらも給料の良い優良企業の就職が内定した。
 携帯でその知らせを受け、恭輔は急いで帰途につく。
 そう、今はグッドニュースを伝えたい相手がいる。俺の喜びに供してくれる女が。
(今日はディナーとしゃれこもう。あいつもさぞかし喜ぶだろうしな)
 ディナーのあとの楽しみをあれこれ考えると、自然と鼻歌さえ出てくる。
 足取りも軽やかに、恭輔は家のドアを開けた。
 だがそこは、彼の気持ちとは逆に暗く沈みきっていた。鍵を開ける音がしたら一縷もまとわぬ裸の姿で玄関で正座するようにしつけているゆかりの姿もない。
 かわりに、部屋の奥の方から弱々しく啜り泣く声が聞こえる。
 喜びの気分をすっかり萎えさせられた。だが、不機嫌に振る舞っている場合でもない気がした。
 照明の消えている廊下を大股で歩いて奥に向かうと、フローリングの広い部屋の隅で、ゆかりがうずくまって泣いている姿があった。いつもの奉仕の褒美に入れたタトゥーの数々が、身体表面についたみじめな汚れに見えてしまうくらいに、その格好はひどく恭輔の目に憂鬱に写る。
「おい、どうしたんだ?」
 その声に、ゆかりが恐る恐る振り向いた。ピアッシングされてさらに際立つピンクの唇はぶるぶると震え、涙を流し続けるその目もすっかり怯えている。
「どうしたんだといってるんだ!」
「あ、ああ、あああああ……」
 またゆかりは顔を伏せて泣きじゃくる。
 とりつくしまもない。彼女の気持ちが落ち着くまで、待つ以外にない。恭輔はただ彼女の背中をさする他にしようがなかった。
 ようやくゆかりは泣き止んだが、それでもまだしゃくり上げている。
「泣いているだけじゃわからないだろ。どうしたんだ」
「私……ひっく、私……」
 なかなか話がすすまない。もどかしさにイライラしつつも、恭輔はそっと優しくゆかりを抱き寄せて、頬の涙を拭いてやったり、左胸の「トカゲ」の背筋を指で這わせてみたりする。
 ようやく、ゆかりが喋り始めた。
「今朝、恭輔さんを見送った後に突然気分が悪くなったんれす……」
「身体の調子が悪いのか?」
「違うんれす……」
 またゆかりはうずくまろうとする。恭輔はそれをさせまいと腕をつっかえさせる。
「ごめんらさいっ、自分でも何がらんだか……」
「だから、どうしたんだよ」
「まさかと思って、薬屋で検査薬を買ってきたんれす」
「おい、ちょっと待て、お前――」
 「検査薬」と聞いて恭輔はゆかりの言わんとしていることがようやくわかった。
「不妊症だって言ってたじゃないか!」
「らからわかんないんれすぅ! ……ごめんらない、恭輔さん……、でも、私のこと、捨てないで……」
 と、恭輔は彼女の身体に両手を回すと、そのまま彼女を立ち上がらせた。
「全く、お前のコブクロは本当にどうしようもないなぁ」
 いつものサディスティックな口調に戻して、恭輔はきつく彼女を抱き寄せたまま、片手を彼女の股間に伸ばす。同時に、もう一方の手で「トカゲ」巻き付く乳房を握りつぶすようにわざと強く揉みしだく。
「せっかく今まで育て上げて来たのが、台なしじゃないか。どうしてくれる? んん?」
「やっ、あうぅっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいぃっ――や、あああっ!」
 恭輔の人差し指がゆかりの肉裂を捕らえた。柔らかくほぐれた肉裂を掻き分けて、つぷりと奥に潜り込んでいく。
「うはああっ、ああっ、ああああっ! あっ、あっ、あっ……」
 ゆかりは膣口あたりをくすぐり始めた恭輔の指に、思わず身体をびくんと跳ね上がらせる。肩をよじらせ、裏返った喘ぎ声をもらす。
「うんん? 御主人様の子供授かって嬉しいのか? 家畜のくせに人間の子供孕んでよぉ」
 一気に根元まで指をねじ入れると、すりこぎのようにグニグニと膣内をかき回す。
 すると、ゆかりの胎内の奥深くからまたたく間に、ねっとりと生暖かい愛液が溢れ返った。
「ひうっ、んうううっ、んっ、んんっ!」
「いっちょ前に感じやがって……妊娠して身体は随分嬉しそうじゃないか。俺の指きゅうきゅう締め付けてくるぞ」
「ひぬううぅ、んんんんっ」
 恭輔の腕で抱きとめられていなかったら、ゆかりは立っていられないだろう。彼女の脚は、子宮の奥を穿つ快楽に脚を突っぱねては、脱力する。
 「トカゲ」の柔乳も恭輔の手指でいびつにゆがめられ、ピアスされた乳首を執拗にいじり回される。それは、まるで装飾をまとった乳首が自分の意思で踊っているようにも見えた。
 ずぴ、ぶちゅ……。
 すっかり肉裂はぐしょぐしょに濡れそぼり、愛液も太ももにいくつもの筋を作って流れるまでに湧き出していた。
「よおし、頃合だな」
 恭輔はゆかりを抱きかかえたまま屈むと、そのまま彼女を床の上に四つん這いにさせた。
 膝をついて肩幅以上に脚を開くゆかりの、ぱっくり開いた尻の谷間にヒクヒクとひきつるアヌスを、膣から引き抜いた指でくすぐる。
「や、あんっ!」
 背を弓なりに反らせて、アヌスを一層きゅっと硬く引き締まらせる。だがすぐに緩み、ヒクヒクと引きつり始めた。
「今日はお前のコブクロをむさぼり食らってやる。家畜らしくバックから責めてやるからな」
 ズボンのファスナーから反り上がった大きな一物を抜くと、恭輔はそれでアヌスをぺちぺちと叩く。
 だが、今日はアヌスはやらない。恭助は熱くたぎる肉刀の切っ先を、アヌスの下、濡れそぼった肉襞の谷間に向けた。
 そしてゆっくりと沈みこませてく。
「や……ああ……入ってく……んんあ、んあああっ!」
 亀頭がすっぽり狭い膣口をくぐったところで、恭輔は腰を動かし始める。ずん、ずん、ずん……と一突きごとに膣奥に潜り込ませていく。
「はうっ……、あうっ……、んうっ……!」
 ゆっくりではあったが力強い突き上げに、ゆかりは健気に脚をふんばって、吹き飛びそうな腰を何とか支えようとする。それが膣肉を一層収縮させて、恭輔の肉棒をきゅうきゅう締め付ける。
「ずいぶんいい具合に成育したじゃないか? え? こいつぁ値打ちもんだよなぁ」
「あああっ! 奥に……あんっ……奥に来たぁっんっ!」
 突き上げに揺さぶられながら、ゆかりは少しハッスルしたかのような声をあげる。
 そんな声をあげた彼女の顔を見たくなった。
「おら、こっち向け」
 ゆかりの背中に身体を載せると、恭輔はいくつものピアスを施した耳朶を甘噛みして命令を囁く。
 振り向いた顔は、ひどくうっとりとしていた。妊娠を告白する前の怯えはみじんもなく、口角から涎を吹き出している唇からは、むしろ自分の性欲を満たさんと自分の主人に求めているかのように見て取れた。
「恭輔さん、嬉しいっ、私っ……嬉しいっん! もっと、もっと欲しっいんっ!」
「何が欲しいんだ? 言ってみろ」
「……あっん、……の、恭輔さんのっ……! 恭輔さんの精液が欲しいぃっ、ぅんんっ!」
 そう言って、ゆかりは恭輔の肉棒の突き上げをさらに促すかのように、腰を前後に動かし始めた。
(やった! こいつに心からスペルマを求めさせてやったぞ!)
 嬉しさの余り、思わず恭輔は腰の動きを速くしてしまった。だが、緩めようとも思わなかった。
 振り向いているゆかりの唇を、がっぷりと吸い込む。ゆかりも、自分から恭輔の口の中に舌を忍ばせる。
 ミルクのようにあまったるい、いやらしい香りをふくませた味。愛液で濡れそぼった淫唇と同じ味がした。
 ねっとりと唾液の糸を引かせながら、恭輔が囁く。
「沢山注ぎ込んでやる。いくらでも子供を産んだらいい。お前は一生俺のいやらしい家畜だ!」
 再び身体を起こすと、恭輔はゆかりの腰のくびれに両手でしっかり持ち、本格的に腰を激しく動かした。
「やはああっっん、ああっ、んああああ、んあああああんああああーっ!」
 大きく開いた口からぴくぴく引きつる舌を突き出し、髪を振り乱して大きな喘ぎ声をあげるゆかり。
 交合いが激しさを増すにつれ、湧き出る愛液がねち、ぷちっと粘っこい音を立てながら、大量に床へ飛び散る。
 ゆかりの膣肉はびくびく引きつりながらも貪欲極まって一層恭輔の肉棒を硬くきつく締め付ける。
「ひぃぃぃ、イ……く……イク、イ……ぐ……あ、あああああ――っ!」
 かすれきった絶叫をあげて、ゆかりは背骨が折れんばかりに身体を弓なりに反りあげると、そのまま愛液のとびちった床の上に身体を突っ伏してしまった。
 どく、どぷぷっ……。
 堰を切ったかのように、恭輔の精液が勢い良く流れ出す。自分が思うままにタトゥーを施した女の胎内目掛けて。
 なんともいえない、身体を優しく包み込むような幸福感を覚える。セックスの充足感ばかりでなく、もっと建設的な喜びも感じている。
 射精を続ける陰茎をゆかりの身体の中に埋めたまま、恭輔はゆかりの身体を抱きしめた。
「凄くうまいぜ、お前のコブクロ……」
 艶かしい匂いを放つ汗がこぼれるゆかりのうなじにキスをして、恭輔はそのまま彼女の背から抱きついて床に崩れるように寝転んだ。

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