尿感便器

 窓ひとつない殺風景な部屋、そこが私のいるところ。
 部屋の真ん中に座る私は、王子様を待っている。唯一この部屋に色を添えている木製の扉をじっと見てる。
 ――ああ、王子様! 今の私にはあなたしかおられない……。
 王子様のことを思うだけで、体中が熱くなる。
 その体を慰めてやろうにも、私の手は後ろで縛られていてままならない。
 王子様への想いを言葉に出そうにも、ガラスのカップの取っ手をくわえた口はやすやすとは動かせない。
 これだけは駄目なの……いち早く王子様のぬくもりを受け止めておいて、私からは言葉を奪ってしまったガラスのカップ。でももしこの取っ手が口から落ちて床に粉々に割れてしまったら、私がここにいる意味がなくなってしまう!
 このカップは、私が唯一王子様の体のぬくもりを感じとることを許された体の一部なの。だから、なんとしても大事にしないといけない。

 王子様が、木の扉を開けて部屋に入って来た。
 鍵の音がした時、私の胸は熱くなった。
 ――王子様ぁ! 長い間あなたのことを待ちわびていました。
 その言葉が言いたいけど、口を開いてしまったら大事なガラスのカップを落としてしまう。……カップがうとましい。
 私はたださかった猫のように鳴き声を漏らす。鼻から生暖かい息に乗せて甘い声を出す。
 それが耳に届くたび、王子様の凛々しい顔がほころぶ。それを見て、私は少し満たされた気分になる。自然と目がほころんでしまう。
「やあ、元気そうだね」
 ――ああ、王子様がこの私に声をかけてくれた!
 感動の余りに、私の体の中を熱いものが駆け巡る。……王子様はいつもこうして、いやらしくてけがらわしい私に挨拶してくれる。
 私は、精一杯の笑顔と鼻から出す鳴き声で答える。――聞こえますか王子様、私の心臓が今にも破裂しそうなくらいにばくばく動いているの!
 王子様は、嬉しさ極まって盛んに鳴く私の前に、大事にしまってあったものをズボンから引き出した。
 股間から誇り高く突き立ったそれは、無数の血管が浮き立って力強く脈打っていて、見ているだけでも燃え盛る熱気を感じてしまう。
 ――王子様の、王子様の、立派なおちんちん!
 私は迫力の余り、それを見ただけで頭がくらくらしそうになる。
 しかしそれをなんとかこらえて、私はガラスのカップを差し出す。口でしっかり取っ手をくわえて膝立ちになり、さらにあらわになった二つの乳房を突き出して、カップを王子様のたくましい肉棒に差し出した。
 王子様は手を肉棒の根元にやると、ゆっくりとガラスのカップの中に照準をあわせる。
 力強く上にそそり立ったものをむりやり下に向けようとしているために、ちょっと大変そう。
 私の両手が自由だったら、王子様の肉棒を丁重に持って照準を合わせてあげられるのに……ううん、そんなことでなくても、私、王子様の肉棒に触りたい! 触るのがかなわなくても、せめて頬擦りだけでもしたい! そう、私は王子様のあの肉棒にずっと触れていたいの!
 ようやく照準が定まった王子様の肉棒から、液体が勢いよくほどばしる。それはカップに音を立てて激しく当たり、底に溜まっていく。
 カップのガラス壁から、それがじかに触れている乳房へと、その温度が伝わってくる。しばらくして、カップの底に取り付けられた管をゆっくり通って……一方の管の口を深々と差し込まれている私の濡れそぼった性器へと流れ込んでくる。
 ――王子様のぬくもり……おしっこ、気持ちいい……。
 その時、私が漏らした鳴き声は、気持ち良さの余りにかすれ気味になった。
 私の性器は流れ込んでくる王子様のおしっこで満たされていく。
 ああ、すごく熱いの! たまらず腰を振り、ねだるように王子様を見つめる私。王子様のおしっこのぬくもり以上に私のクリトリスが燃え盛る。ピアスの施された乳首も充血して固くなり始める。乳首の息苦しそうな疼きも、クリトリスのはち切れそうな疼きも、私には快楽をあおる以外のなにものでもない。

 そう、私はみだらで汚らしい人間便器。
 王子様のおしっこをアソコに流し込まれて激しく感じるどうしようもない変態。
 でも、普通に戻りたいなんて全く思わない。ヒトとしての恥じらいとか常識とかを引き換えに、こうやって王子様のそばに親密な関係でいることができたのよ。
 もうこれは私の生きる道なの。……人間便器として、王子様の熱いぬくもりを感じていられるのが、私のただ一つの幸せ……。

 突然の事だった。
 王子様が手を滑らせて照準を外してしまった。肉棒から吹き出していた王子様のおしっこが、私の体に当たった。着ているといっても、ほとんど裸に近いボンテージ。顔、肩、尻、そして今最も熱くなっている乳房や股間にも、王子様の熱いおしっこが当たり、滴る。
 独特の臭気が、私の体を包み込む。
 でも、私は目に涙をためて、歓喜の鳴き声をあげる。 
 ――うれしいの、体で感じるのォ! 王子様の熱い、熱いおしっこォ!
 もう私の頭はこれまでになくクラクラしていた。エクスタシーの直前にまで登り詰めたのかしら? 鼻からひっきりなしに鳴き声を漏らし、無心に胸や腰をくゆらしていた自分が底にいた。それでも、口はしっかりとガラスのカップの取っ手をくわえていた。……だって、それは私と王子様を繋ぐための大切な絆だもの――
 王子様は全てを出し切ると、肉棒を振って、残り滴を飛ばす。顔に飛んで来たそれは、なぜだか冷たかった。
 私にとって楽しい時間は、もうこれで終わり。
「じゃ、ね。また頼むよ」
 王子様は肉棒をズボンの中にしまうと、私の頭を撫でてそのまま笑顔で扉に向かっていった。
 満足して王子様が出ていかれる。私もまた、王子様に喜んで貰えてとても嬉しかった。
 ――王子様、また来て下さいね……。
 まだ火照っている乳房をさらに突き上げて、私は鳴き声をあげる。王子様は、手を振ってそれに答えてくれた。
 扉が締まり、部屋にはまた私一人になった。

 窓ひとつない殺風景な部屋、そこが私のいるところ。
 部屋の真ん中に座る私は、王子様を待っている。唯一この部屋に色を添えている木製の扉をじっと見てる。
 王子様の肉棒からほどばしるあの熱いぬくもりを求めて――。

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