性の快楽と血の快楽(中編)


「さて、奥まで入ったな」
セラスの太股を持ち上げ、下腹部同士を密着させた状態でアーカードはにやっと笑った。
「あ、あの、やっぱりきついです、マスタ…」
セラスは眉をよせて唇をかみしめている。男の圧迫感で一杯で、息苦しいような気さえする。
「処女を失った感想はどうだ?」
そ、そういえばもう処女じゃないんだ。処女膜いつの間にやぶれたんだろう。夢中で気が付かなかった。
呆然とするセラスをよそに、血も涙もないマスターはにやにや笑っている。
「失ってみるとあっけないものだろう?」
「うぅ」
セラスの目に涙がにじむ。アーカードは下をぺろりと出してその涙をぬぐい取った。
「苦しいのか? 少しだけ耐えろ、お前の体が私になじむ。こういうとき、吸血鬼の体は便利だ」
たしかに急速に苦しい程の圧迫感は解消されていった。
ただ自分の中を男のものが占拠している、その感触だけが変わらない。

セラスの顔から苦痛が消えたのを見て、アーカードは無造作に彼女の片足を肩にかついだ。
もう片方の足はベットの上におとす。自然とセラスの体は傾いた。
「ひゃっ」
角度が変わって今度は別の部分が刺激される。
それと共に生じたわずかな隙間から処女を失った証である血が流れ出した。
ほんのわずかな量だったがアーカードはそれを指につけ、セラスの前にかざしてみせる。
「ほら、これがお前の血だ。処女であったお前の最期の一滴だ」
「あぁ…」
セラスは呆然とその赤を見つめた。淡い初恋、あの運命の夜襲われかけたこと、
今まで自分が守ってきたものの果てがそれだった。ほんとうにあっけないんだなあ、素直にそう思った。
「舐めろ」
アーカードはその血をセラスの唇に持ってくる。
「自分の血なら舐められるだろう? 飲み込んでしまえ、お前の過去を」
セラスはおずおずと舌を出して自分の血を舐めた。甘い。

「血の味はどうだった、婦警?」
妙に嬉しそうなマスターの声がふってきて、セラスは気が付いた。
「あー、まだ私に血を飲ませるつもりなんですねっ!?」
「自分の血、しかもこんな少量ではあまり意味がないがな」
それよりも相変わらず情緒にかける婦警にいらだちを感じて、アーカードはぐいと腰を動かした。
「あ、ああっ、そ、そんな急に動かないでください、マスタぁ、んっ」
アーカードはかまわずぐいぐいと腰を動かし続ける。

「今私のものがお前の中を出入りしている」
耳に口を寄せてささやいた。
「粘膜がこすれお前は今その穴のすべてで私を感じているだろう?」
腰を遠慮のない早さで前後に動かす。
処女には厳しい動きだったが吸血鬼であるセラスの体は早くも状況に適応しつつあった。
「侵入され制圧され圧迫されている気分はどうだ?
 それでもどこにも逃れられず私を包みこみ私を感じるしかない気分はどうだ?」
アーカードのねっとりとした言葉に体がうずく。
先ほど指を入れられて感じたあの熱い感触が、今度はもっと具体性を伴って体に広がっていく。
「あっ、あっ、」
「ほら、どんな気分だ? 言ってみろ婦警」
ベットの上に投げ出されていたもう一つの足もつかみ、両足をそろえて持ち上げ折り曲げる。
セラスの秘所は強制的に閉ざされ、ますます挟み込まれた物の感触が強くなった。
アーカードは相変わらずぐいぐいと腰を進めてくる。
「ああ、やめてください、きついんですっ。すり切れるみたいっ。熱い、熱いですぅ、マスターぁ」
「でもこんなに濡れて居るぞ、婦警? お前は今何をしている?」
「え、あ、そ、そのぉ、セックスですっ。お願いしますマスターもっとゆっくり動いてぇっ」
アーカードの腰がようやく落ち着いた動きに変わった。
「はあ、はぁ、あぁ、うぅん」
腰だけでなく全身がしびれてしまったような感覚に襲われながらやっと一息つく。
汗まみれの顔でマスターを見上げると、彼はまたしても不機嫌そうな顔をしていた。

「セックスです、か」
「あ、あのう、なにか悪かったでしょうか」
まだ彼のものはセラスの中に入れられたままだ。そのことがいつも以上に彼女に威圧感を与えている。
「もう少し余裕をなくすために、目隠しでもしてみるか」
アーカードはずるっと彼のものをセラスの中から引き抜き、ベットの下から自身の赤いタイを取り上げた。
「はっ、あのっ?」
後ずさりしようにもどうにも腰が抜けてしまったかのように重い。手際よく目隠しされてしまった。
そのままくるりと裏返され、腹這いの状態でベットの上に投げ出される。
当然だが何も見えない。後ろにマスターの濃厚な気配は感じるが、まだ何も触れてこない。
自分はベットの上に無防備に倒れている。たぶん勝手に動いてはダメなんだろう。
視覚を奪われたことでセラスの感覚はどうしようもなく敏感になり、
さきほどの行為が自分の中に残したあの感触がまた広がってくるのを感じていた。

「マスターぁ、今度はどうするんですかぁ?」
とうとう不安と期待に耐えかねて、思わず声が出た。
「少し黙ってろ」
諦めたような声が頭上から振ってきた。そのまま腰を掴まれ、ぐいと持ち上げられる。
「あのっ」
反射的に声を出すと、罰のように思いっきり男根を突っ込まれた。
「ひぐっ」
「今度声を出したら、すり切れるどころじゃなくやってやるぞ」
ゆっくり腰を動かしながら、マスターが(多分)牙をむきだしにしてねっとりとささやいてくる。
セラスは目隠しされたまま夢中で首を縦に振った。マスターならマジでそこまでやる。確信があった。
それに…ゆっくりとした動きでも充分気持ちがいい。
いつの間にかすっかり快感に適応してしまった自分の体に驚きながら、
セラスは声を出さないように必死で口をかみしめた。まだこれくらいなら大丈夫。きっと。

けれど自身の腰を前後に動かしながらセラスの腰を上下左右にゆさぶり
あまつさえ片手で繁みの中の突起をいじってくるマスターの前に、
処女を失って間もないセラスが勝てるはずはなかった。
「…ん、…っ、…ぁ」
必死で歯をくいしばるその隙間から息とも声ともつかないものが漏れる。
傾けた姿勢や正面から挿入された時とは全然違う場所に当たるそれが
なんともいえず刺激的だ。しかも上下左右にゆっくりと動く。
激しかった時も我慢できなかったけれど、ゆっくりした動きもたまらなく物欲しい。

「胸が震えているぞ、婦警」
マスターはそう言って下半身の突起をいじっていた手を今度は胸に持ってきた。
胸の突起がいじられる。
「こんなに固くなっている」
「…ゃ、…ぇ」
やめてと言いたいのに言ってはいけない。それに本当にやめて欲しいのかも分からない。
目隠しをされ感覚を絶たれたことによって、セラスは自分を見失ってきた。
思考がまとまらない、ただ体が狂おしく反応する。
マスターの手が大きな胸をつかんだ。ゆっくりと揉む。
「お前の胸は柔らかいな。手に吸い付くようだ」
優しくささやきながらも、腰の動きはとめない。胸も強く弱く緩急をつけて刺激する。
「…、…、…んんっ」
とうとうこらえきれずセラスはかすかな声をあげた。
途端に腰の動きが早くなる。どんどん追いつめられる。もう我慢できない。
「…、あ、いや…ぁ。…もうだめ、だめですっっっっ」
セラスは背筋を猫のように伸ばし、胸をぶるぶる振るわせながら悲鳴を上げてがっくりと果てた。

「どうだ、初めていった気分は? 気持ちよかったか?」
体中の力が抜けて倒れ込んでいるセラスの上に、
意外に優しいマスターの声がおりてくる。そして目隠しが静かに外された。
「じゃあすり切れるどころじゃなくやってやろうか」
今度こそ、牙をむきだして心底楽しそうに笑っているマスターの顔がはっきり目に入ってきた。
「いやあああああっ」                                    

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