性の快楽と血の快楽(前編)


「セラスが血を飲まない」
インテグラはアーカードにぽつりと漏らした。
「知っている」
つい先日のアンデルセン神父との戦いでも彼女は血を飲もうとしなかった。
彼女は充分に血に酔い準備は整っていた、それなのに。
その後の展開でもアーカードの血を飲まなければ滅んでいたかもしれないのに。
彼女は血を飲まなかった。当然その後も飲もうとはしない。
「このままでは彼女は衰弱していくのみだ」
「心配しているのかね、お優しいことだ」
からかうようにいったアーカードをインテグラはキッとにらみつけた。
「せっかくの手駒をみすみす失うわけにはいかない。 それだけだっ」
「それで、私にどうしろと?」
「お前は彼女のマスターだろう。責任を取れ。血を飲むようにさせろ」
インテグラはむきになったように下僕をにらみつけながら、そう命じた。
「ふむ」
あの状況で飲まなかった彼女をどうすれば飲ませられるものか。しばし思案した。
「手段は選ばなくていい」
局長はあくまで冷徹にそう言い放った。
「そういうことであれば試してみよう、マイマスター」
下僕は胸に手を当ててニッタリと微笑み、虚空に消えた。

数刻後、セラスのベットの脇にアーカードは立っていた。
彼女はまだ棺桶で眠ろうともしない。人であるふりに固執しているのか。愚かな。
憤りと共におかしさがこみあげてきた。ガツンと足でベットを蹴る。
「おきろ、婦警」
「ふあ?」
セラスは大きな赤い瞳をあけて、きょとんとマスターの顔を見た。まだ寝ぼけているようだ。
「おもしろいことをしてやるから起きろ」
「えー、私まだ眠り足りないんですけどぉ」
今何時だっけとベットサイドの時計を見ようとしたセラスは、肩に手を置かれておどろいた。
「ひええええええっ?」
いつの間にかベットに上がり込んできたマスターを見て、後ずさる。ベットボードに背中が触れた。
「お、お、おもしろいことってなんですか、マスター?」
背中に冷や汗が流れる。本能的になにかとても危険な感じがする。
「セックスだ」
「はいっ?」
まさかマスターの口からその言葉が出るとは思わない。不意をつかれて目をぱちくりとさせる。
「あ、あのう、なんで私がマスターとそういうことをしなくてはならないのでしょうか?」
「局長命令だ」
「ええええええっ?」
セラスは大きな目を一杯に見開いて驚いた。
「そ、そんなはずありません。インテグラ様に限ってそんな命令っ」
本気で傷ついている様子だが、アーカードは気にしない。
「すべては血を飲まないお前が悪い。そこで性の快楽と血の快楽、どちらがいいか教えてやる」
なにか理屈が通っているような通っていないような。
「だって私処女ですよ!」
「もう吸血鬼になったんだから関係ないだろう」
あっさり却下された。
じゃあ本当にやられちゃうんだ。セラスは今度こそ涙目になった。上目遣いにマスターを見る。
「心配するな。私は上手い。それにお前には吸血鬼の再生能力があるから痛みはほとんどない」
淡々と説明されて、ますます現実がのし掛かる。ぷっつん。どこかがきれた。
「いやああああああああ!!」
その悲鳴は地下室の奥深く響き、無情にも血も涙もないマスター以外に聞くものはいなかった。エイメン。

そういうわけで。
アーカードは嫌がるセラスの両手を捕まえ、頭の上で押さえつけ
片手の爪でヘルシング制服のボタンをはじき飛ばしていく。同じく下のブラウスも。
「ほ、本当にするんですかぁ?」
この期におよんでなおくずくず言っているそばからブラジャーに包まれた豊満な胸がまろびでる。
吸血鬼の爪はブラジャーの前の合わせ目もあっさり切り離した。
「胸の大きい女は意外と感度が低いというな、それにしてもお前のはでかすぎるが」
アーカードの大きな手でもつかみきれない巨大な胸をゆっくりもみしだく。
「どうなんだ、婦警?」
そうささやきながら戯れるように口づけする。そのまま舌を挿し入れる。
「ふぐ、ふぐぐぅ!(こんな状態で答えられません!)」
律儀な婦警をよそに、今度は下から胸を押し上げるようになでた。
押し上げられた頂点に位置する桜色のつぼみを指でこりこりと刺激する。
次に乳頭を手のひらに当て、円を描くようにゆっくりと胸全体をなでまわす。
だんだん婦警の息が荒くなってくるのが舌を通してわかった。
もういいだろうと判断してセラスの手を拘束していた左手も離し、両手で胸を愛撫する。
口づけもやめて、唇を胸の谷間に当てた。やわらかな圧迫を両耳に感じる。
「自慰くらいはしていたのか? 婦警」
舌をつつつと谷間に這わせる。手はその間もさまざまに動きを変えて胸を弄んでいた。
「そ、そんなこと、いえませんよお...。うぅん」
「別に意味なく聞いているわけではない。よく感じる場所があれば言え。入念にやってやる」
セラスは両手をあげたまま呆然と体を任せている。舌をあごの下まですすめてぺろりと舐めあげた。
「おまえを痛めつけたいわけじゃない、快楽を教えてやるだけだ」

耳たぶを噛む。牙をたてないよう細心の注意をはらって。
一方手はゆっくりと下にのび、腹をさすった。ヘソの周りに指で円を描く。脇腹から脇の下へとなで上げる。
もう一方の手でセラスの髪をかきあげた。額の上を、触れるか触れないかの距離で手を動かす。
「やっぱり胸がいいのか?」
さっきより火照っているセラスの体に自らの体を押し当てた。上着は最初から着ていない。
今のアーカードはシャツとズボンだけの姿だ。セラスは薄いシャツを通して厚い男の胸板を感じた。
「あ、マスター...」
動揺してセラスの発した声には甘い響きがあった。
孤児院で育った少女にとって男の胸はとても暖かく感じられた。
「シャツが邪魔だな」
考えを見透かされたようで顔が熱くなる。アーカードは無造作にシャツを引きちぎって捨てた。
胸と胸が直接触れ合う。特に、固くなった乳首はそれだけでしびれるような感覚を脳に伝えてきた。
左手がそっと胸を揉む。何も技巧をこらしていないそれだけのことが、たまらなく気持ちよかった。
「自分で脱ぐか?」
「へ?」
「お前の声には情緒がないな」
むすっとしたようにアーカードは言った。
「下のズボンだ。自分で脱ぐか? 私が脱がしてやろうか?」
「あ、いや、自分で脱ぎます、はい」
いつの間にかすごく素直なセラス。ベットの端にこしかけ
ズボンをおろし、やっぱり下着も脱ぐんだろうなあと考える。それはなんか恥ずかしいなあ。
そもそもなんで私こんなことしているんだろ。局長、本当にこんな命令出したんですかぁ?

「脱いだのか?」
ぐるぐる回り出したセラスの思考はどこまでも淡々としたマスターの声で中断された。
「こっちを向け、婦警」
中断のせいで少し気恥ずかしさがもどり、胸を手で覆いながらベットのほうに向き直った。
アーカードのほうはもう身になにもつけていない。目のやり場に困って視線を落とした。
「こちらに来い」
肩を抱き寄せられ、そのままベットに倒れ込む。
「下着は脱いでいないのか?」
「なんか、恥ずかしくって」
「では脱がせてやろう」
アーカードはセラスの両足を無造作に持ち上げ、自分の体をその間にすべりこませた。
「え、え、えええぇっ?」
「その雰囲気のない声はなんとかならんのか」
そうぼやきながらアーカードは自分の肩にセラスの足をかけ、ゆっくりとパンティを脱がせる。
髪と同じようにぼざぼざの陰毛と、先ほどの行為で蜜をたたえうっすらと色づいた秘所が見えた。
「綺麗な色をしているな。...まあ処女だしな」
太股をもち、ぐっと持ちあげる。
「あ、いや、そんな、恥ずかしいですっ、マスタぁ」
あわてて秘所を覆おうとする手を捕まえて、口をそっと寄せる。
ぴちゃ
蜜をなめとった。そのまま舌を深く進ませなめ回す。
くちゃくちゃくちゃ
セラスにとってはたまらなく恥ずかしい音が静かな地下室に響いた。
「あ、はあ、んん。やめ、やめてください、そんなことぉ。ぅんっ」
「いい声も出せるじゃないか」
アーカードは顔をあげ、セラスの愛液のついたままの口元でニヤッと笑った。
足にひっかかったままになっていたセラスのパンティを無造作に抜き取って床に投げ捨てる。
自身の体を上にずらし、顔と顔を合わせた。口づけする。唾液とセラス自身の愛液を彼女の喉に注ぎ込む。
「はぐっ、う、ぐぇほ」
むせながら呼吸を確保するためなんとか飲み込もうとするセラスに次の試練がふってきた。

くちゅ
指が下の口に差し込まれる。愛液と唾液で充分に潤ったそこをマッサージするかのようにこねる。
「い、いや、だめですっ」
「ちゃんと広げて柔らかくしておかないと痛いぞ」
そういわれると拒否できない。というよりこの後に待っている行為のことを考えて青くなった。
「ほ、ほんとうに、マジでするんですか?」
「なんのために私がわざわざここまで手順を踏んできたと思って居るんだ」
「き、気持ちいいんですよね?」
「気持ちいいだろう?」
たしかに下半身からなにかしびれるような熱い感触が登ってくる。
それは背骨を伝ってセラスの全身に満ちている。体が火照る。感覚が鋭敏になる。
根源である自分のあそこは熱く濡れていて、なんだか自分のものではないみたいに感じる。
「こ、これが気持ちいいってことなのかな?」
天然処女との会話にだんだん面倒になってきたのか、アーカードはぐいとセラスをベットに押しつけた。
足でセラスの両足を割り、膝を入れて太股を持ち上げる。
「あ、あの、やっぱり」
往生際の悪い口は口でふさがれた。
セラスの秘所にアーカードの男根が押し当てられる。
それは静かに進入してきた。
「あ、きつ...」
「力を抜け」
そういってアーカードはセラスの胸を優しくさわる。
セラスはさっき抱き合った感触を思い出してなんとなく安心し、自然と体から力が抜けていった。
一方アーカードはその間にもどんどん腰を進めていった。

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