バレンタイン兄弟事件の後始末


インテグラは操作盤の前で大きく息をつきながら、
幼なじみに支えられるようにして出て行くセラスの姿を見送っていた。
彼女のことは彼にまかせれば大丈夫だなと少し安心しながら。

横にある非常口から、戦いを終えたアーカードが入ってくる。
「お前がセラスを利用したのか?」
インテグラは彼の方を見ようともせず、怒りの口調で問いかけた。
「敵は二人、しかも授業中を狙うっていうんだからしょうがないだろ」
アーカードはまったく悪びれる様子もなく答える。
「怒るなら少佐に怒って欲しいね。ドアが1つだけなんて教室はどこにもない。
 やっと入り口が2つだけのこの視聴覚教室を見つけたんじゃないか」
「私はもう片方はウォルターが始末するんだと思っていたんだっ」
インテグラの怒りはまだおさまらないらしい。
「一生懸命情報収集してくれたご老体をこれ以上こきつかうなよ、先生。
 ま、バックアップはしてくれたみたいだけどな」

そのアーカードの言葉に応えるかのように、
開いたままの後ろのドアから用務員のウォルターが顔を出した。
手には何か持っている。
「ヤンとかいう若造に取り付けられていた発信器は回収しましたぞ、お嬢様」
「ご苦労、ウォルター」
「感謝の極み」
インテグラの声にウォルターは丁重な礼をして出て行った。用務員としての仕事に戻るのだろう。

「じゃあ今夜にでも報酬を支払ってもらいたいね、先生」
アーカードは馴れ馴れしくインテグラの肩に手を回して耳元でささやいた。
「半分しか片づけてないだろうが」
その手を振り払いながらインテグラはふと気が付いたように口元をゆがめた。
「アーカード、セラスにはどんな風に依頼したんだ?」
「困っていたところを助けてやったのさ。そのかわりに手をかせってね」
「ついでに俺の女になれとでも言ったんじゃないのか?」
アーカードは黙って苦笑してみせた。

「お前は本当に見境がないな。わかりやすいとも言えるが」
インテグラは腕組みしながらアーカードの方を見る。
「じゃあこうしよう。セラスのことはあきらめろ。それで仕事の中途半端さは許してやる」
「わかったよ、先生」
アーカードは承諾した。
先生だって本当は俺がセラスを抱くのが嫌なんじゃないか?と思いながら。
「あきらめが早いのはいいことだ」
インテグラは満足した様子でうなずいた。

「で、こいつらはどうするんだ?」
セラスによって叩きのめされ、全員床に這ったままの男達をアーカードは見回す。
非常口の外ではルークとか言う奴がやっぱり倒れているはずだった。
「警備員は呼んである。教頭殿が始末するだろう。
 なに、発信器が回収できたなら、なにも文句は言えないはずだ」
インテグラは淡々と言って、それからまたゆがんだ笑いをうかべた。
「さて次は一体何をしてくるのかね?」


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ときめき編:セラス編Lv2「バレンタイン兄弟事件」


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