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◆◆Ai no Kusabi parody Novel◆◆

<<間の楔>>  約束の地

    OPENING SCENE

 ああ、なんて柔らかい光だろう。
 淡く輝く花びらは力なく舞い降りてくるかと思うと、突然風に吹かれて指の間をすり抜けていく。
 掴めないとわかっているのに、俺はいつまでも光に向かって手のひらを差し出していた。

    
 

 通りに溢れる光の洪水はまるで媚薬だ。快楽に群がる奴らは、それが毒だと気づいているだろうか。飢えた欲望を煽り、やがて人を狂わせる光だということに。
 夜に目覚めた街の空気は粘液質に変わり、身体にまとわりつくような嫌悪感を催させる。俺は毒々しいネオン・アートから視線を逸らし、娼館街を歩く足取りを早めた。巨大な歓楽都市に組み込まれたこの街は通称を<ケージ>という。男も女もセックスだけのために飼われているからだ。そして、俺も飼われている。
 アダルトショップやエステティック・サロン、各種の幻覚剤が手軽に買えるドラッグストアがひしめく街中で、アパティアは高級コンドミニアムらしいスマートな外観を一際目立たせている。その一室が俺のケージだ。そこは決して華美ではない上品な内装に彩られているが、窓越しには娼館、男娼館、連れ込み館、ピープショー等エロジナスゾーンの淫らで刺激的な光が眼と鼻の先で輝いているのが見える。
 部屋に戻ってからその光を目にした途端、俺はいつになく強い苛立ちを覚えた。どうしても見慣れることができず、日ごとに不快感がつのっていく。うまく説明できないが、ここで暮らすようになってから俺の中で何かが変化しはじめ、胸の中に生まれた奇妙な感情が生活のすべてに不安と苛立ちの影を落としている。
 ここを離れて、どこか遠い地へ行きたい。叶うはずもないのに、俺は本気でそう願った。
 静かな部屋にコール音が響き、現実に引き戻された俺はあわててPCフォンに駆け寄って通信を開いた。僅かに震える指が自分でももどかしい。相手が誰なのかわかっていながら、ディスプレイにイアソンが映ると背筋に冷たいものを感じずにはいられない。
 案の定、イアソンは不機嫌そうにこちらを見つめ、俺を認めてわずかに眦を切れ上げさせた。俺の帰宅時間が遅れたことを怒っているらしい。
 また口喧嘩の始まりか……。
 そう思うと溜め息が漏れた。最近の俺たちは、今までで一番険悪だ。俺はイアソンの一挙一動に神経を尖らせ、奴のやることがすべて気に食わない時もあれば、無口な相手の表情を読み取ろうと必死になったり、思いがけず優しくされて狼狽してしまい、それを誤魔化そうとして罵る時もある。なぜこんなに感情の起伏が激しいのか原因は自分でもわからない。ただ、エオスからここに移ってささやかな自由を手に入れたはずなのに閉塞感は消えず、イアソンと二人きりで部屋にいると、同じ空気を吸っていると思うだけで息が詰まってしまう。
 ディスプレイの中のイアソンは無言で俺を睨んでいる。変化はイアソン自身にも起こっているらしく、あれほど無表情だったイアソンが、ここへ通うようになってから、こうやって感情をあらわにするのを俺は何度も見ている。それは畏怖と同時に奇妙な親近感を俺に抱かせた。イアソン相手に、なぜこんな感情が生まれるのか自分でもわからない。それに加えて、自分の中に居座る感情や生活の変化のすべてを明確に言葉で表せない事にも絶えず苛ついている。
 俺を見据えたままイアソンは静かに言った。
「随分と遅かったな」
 予想通りとはいえ、まるで怒りを感じさせない声が余計に恐怖を煽る。
「そうか?」
 わざと強がってみせても、蒼眼を睨み返すのが精一杯だ。
「N19:00には店を出ているはずだが?」
 感情を抑えた声が確認済みだと言わんばかりに時間を強調した。それが俺の癇にさわり、管理される嫌悪感から咄嗟に言い返してしまった。
「寄り道しちゃいけねぇのかよ? どうせ居場所はわかってんだろ、発信機も兼ねてんだからな」視線をディスプレイに戻し、イアソンの背景を素早く覗く。「あんたこそまだオフィスじゃねぇか。今夜はもう来ねぇつもりかよ?」
 見つめていたイアソンの唇が開き、何かを言いかけてやめた。俺はずっとイアソンの答えを待っていた。
「イレギュラーな会議が入った。もうすぐ始まる」
 それを聞いて胸の奥が微かに痛む。あとどのくらいでこの通信は切れてしまうのだろう?
 ふと、苦笑したイアソンが「そんな顔をするな」と、独り言のように呟いた。それで俺は自分が悲痛な顔をしているのに気づかされ、心の奥を覗かれた恥ずかしさに頬が熱くなった。狼狽して言い返す言葉が見つからない俺の耳に、「残念だが今夜は行けそうにない」と冷たい答えが届く。
 イアソンの表情からは何も読み取れず、少しも残念そうじゃない口調に腹が立ってきて、罵りの言葉が口をついて出た。
「勝手なことばかり言いやがって。だったら俺なんて飼うんじゃなねぇよっ!!」
 互いに目を逸らさないまま黙りあっていたが、イアソンの人を馬鹿にした薄笑いが緊張した空気を別の色に変えた。
「何だよ、何が言いたい?」
 問いかけを無視したイアソンは面白いものでも見るように俺を眺めている。その態度に一層腹が立っても通信を切ってしまう勇気は無かった。反抗すれば体罰を受けるとわかっている。だが、そんな理由からではなく、会話が途切れてしまうのが嫌だったのだ。自分のことさえわからない苛立たしさに舌打ちしてディスプレイに背を向けると、俺はテーブルを叩いてその場を離れた。背中に視線を感じてもイアソンは呼びかけてもこない。多分、無駄なことだとわかっているからだろう。俺も返事をする気はない。なのに俺はイアソンの言葉を待っている。馬鹿みたいだ。一体何をやっている?
 沈黙に耐えかねて振り返ると、通信は切れていた。
 俺は胸の詰まる思いで光を失ったディスプレイを見つめた。こうやっていつもイアソンは簡単に俺を突き放すのだ。
 孤独が占領する部屋を見回すと、窓越しの忌々しい光が眼に映った。俺は乱暴にカーテンを引いて視界から遮断し、ソファに身を投げた。イアソンの顔が目の前に浮かび、心臓が小さく跳ねる。
 なぜ、俺たちは出会ってしまったのだろう?
 頭の中はわからないことだらけで、苛立ちは増していく。頭を発熱させるすべてのことを追い払おうと四肢をたわませてみたが徒労に終わりそうだ。イアソンと偶然に出会った時も俺は何一つわかっていなかった。死んでも借りは作りたくないと必死でイアソンを追いかけて「抱けよ」と言ったあの時、こんな未来は予想ができなかった。もしわかっていたら、誰からも与えられなかった快楽と今まで知ることのなかった陶酔とを引き換えに、欲望が挫折に取って代わり、陶酔を味わうほど屈辱が増す迷路のような日々に身を投じただろうか?
 イアソンを思い浮かべただけで身体の奥が熱く疼き、口元に歪んだ笑みが張り付く。
 どうなってるんだ、俺は…。
 意識的にそれ以上考えることを避け、天井の細かな装飾を眺めているうちに、俺は眠りに落ちた。


    


 イアソンから連絡があったのはM2:00過ぎだった。一度目覚めて時間を確認し、そのままソファで寝るつもりだった俺は、条件反射のようにサイドテーブルの上のPCフォンに手を伸ばした。ディスプレイの中にいるイアソンの笑い声が聞こえてきても意識の半分はまだ眠りに浸っていた。
「何…笑ってるんだよ…?」
「おまえの寝ボケ面は、いつ見てもかわいいものだな」
「なっ…んだ…よ、かわいい…って…」不愉快だといわんばかりに吐き捨てても、イアソンの笑顔は消えない。意に反して俺は照れて困った顔をしているに違いない。またからかわれるのが嫌で、誤魔化そうと顔をしかめた。「そんなことを言うために俺を起こしたのか? もう夜中だろ、勘弁してくれよ」
「今から行く」
 その短い一言に胸の中が温かくなったのは錯覚かもしれない。すぐに、睡眠時間まで勝手に奪われるのは我慢できないという気持ちが込み上げてきた。
「…はあ?」
「聞こえなかったのか」
「…あんたはどうか知らねぇけど、俺は眠いんだぜ。明日の仕事が…」
「オフのはずだ」とイアソンがやんわりと遮る。
 それで俺はようやく、店を出る時にカッツェから明日の仕事が急にオフになったと言われたのを思い出した。
「…もう知ってやがる」と聞こえよがしに呟きながら、今夜は寝かせてもらえそうにないと観念した。俺が店を出た時間を知ってるぐらいだから当然スケジュールも把握しているのだろう。
「もうチェック済みってワケか。さすが、素早い…」
「わたしもオフだ」
 またイアソンが遮った。微妙に俺の攻撃をかわすコツを掴んだらしい。つくづく、こいつにはかなわねぇと思う。
「……だから、何だってんだよ?」
 勢いをなくした言葉で問い掛けると、イアソンが穏やかに切り出した。
「明日一日、おまえと二人きりで過ごすのも悪くないと思ってな」
 蒼眼に見つめられて、俺の中で説明できない感情が蠢く。俺は喜んでいるのか? 嫌がっているのか? 二人きり? だが、どこで?
「こ…の、部屋…で…?」
「そうだ」
 滅多に外出はできないとわかっていても、イアソンの答えがとても残酷なものに思える。そして俺は唐突に気づいた。もっと違う何かを期待していることに。この部屋でセックスするのではなく、もっと別の何かを。
「それとも危険を犯してまで出歩きたい場所があるのか」
 イアソンの声に不機嫌さが混じる。俺が嬉しそうな顔を見せないからだろうが、あまりにも勝手すぎる。
「……別に、あんたと行きたい場所なんてねぇよ。で、俺は一日中ベッドから出られねぇのかよ」
「一睡もできないと覚悟しているなら、さほど変わりはあるまい」
「どうせやることも変わんねぇんだろ?」
「他にペットの使い道があるのか?」
 こともなげにイアソンは言い、ことあるごとに、俺たちはペットと主人以外の何者でもなく、それは決して取り除けない枷だと再認識させられる。イアソンはこういう奴だ。そして俺は、こいつのペットだ。
「あーそうかい。で、何回やったら寝かせてくれるんだよ? 何回抜けばいい? こんな生活続けてたら、俺は確実に死ぬ」
 大袈裟に溜め息をついてみせると、僅かにイアソンが悲しそうに顔を歪めたので、俺は突然不安になって目を見張った。
 イアソンは何も言わない。沈黙が重くのしかかり、息苦しさに胸が締めつけられていく。俺たちは会話ですらかみ合うことがなく、二人で話しているのに孤独と同じ感覚が身体を浸していく。
 冷たい蒼眼に体温を奪われそうで、耐えられなくなった俺は目を逸らすと、
「…来るなら来いよ。俺は寝てるかもしんねぇけどな」と呟き、ぎこちなく伸ばした手で静かに通信を切った。最後に盗み見たイアソンの顔には、暗い翳は貼り付いていなかった。
「なんで俺が気を遣わなくちゃなんねーんだ…?」
 ディスプレイに向かって吐き捨てたあとに、一方的に通信を切ったことに気づいた。これでまた『お仕置きネタ』を作ってしまったことになる。ここに来たら、開口一番ペットのくせに生意気だと怒るに違いない。
「あーあ」
 溜め息が静かな部屋に吸い込まれていく。俺はとりあえずシャワーを浴びることにした。
 汗で汚れた身体のまま抱かれるのが嫌だからか、それとも小綺麗にして主人を迎えるのがペットとしての義務だからなのか、深く考えるのはやめにしている。どうせ考えても答えは出ないのだ。けれども、顔が熱いのはシャワーのせいだけじゃないような気がする。
 もうすぐイアソンが来る。そう思うと身体が疼く。
(ヤバイ)
 静めようとして自分自身を握り締めた。もしもイアソンにこんなところを見られたら、もっとひどい『お仕置き』をくらうハメになる。以前はさんざんオナってみせろと命令したくせに、最近はそれすら目くじらを立てるようになってきた。イアソンははっきりとは言わないが、目の届かないところで俺が勝手に抜くのも気に食わないらしく、興奮することすら許せないようなのだ。
(まったく。あんたのせいだぜ、イアソン)
 イアソンはもう来ているだろうか? 主人を待たせるなと不機嫌な顔でソファに座っているだろうか。
 濡れた素肌にバスローブをひっかけて急いで戻ってみても、イアソンはまだ来ていなかった。
「何だよ。せっかく人が起きて待ってりゃぁ…来やしねぇ」
 俺はソファに寝そべって、眠るともなしに目を瞑った。ソファでイアソンを待つのが、もう癖になっている。
 この部屋にいると、時間の澱みにはまったような苛立ちと、その一方では安危の分かれ道の真ん中にまだ立っていられる安堵を感じる。そして次には、一人で居られる束の間の自由を感じていない自分に気づき、広すぎるリビングが一転して無機質な寂しさに変わってしまう。
 成り上がりたいと前だけ見据えていられた頃に住みたいと願ったのは、こんなふうに金と人の手が惜しみなくかけられたセンスのいい部屋だったかもしれない。けれども、俺の居場所はペットして飼われるような部屋じゃない。
 俺の居場所は何処だろう?
 ガイの側になら、居場所はあるだろうか?
「ガイ…」
 呟きが口をついて出る。俺はいつもガイを想うことで現実から逃げて来たが、それももう限界だ。ペアリングする気にはなれないし、キリエやルークたちと同様にセクシャルな目で見られていたことに長い間気づかなかった俺は、もうガイの側へは戻れない。俺にとってガイは最後の聖域で、正気を保てる安定剤のようなものだったにすぎない。
 ガイを思うなら、迷わずスッパリ切って捨てろ──カッツェに言われた言葉が脳裏に浮かんだ。ペットとしてイアソンの足元で暮らすのが現実だ。いいようにガイを振り回してきたものの、謝り償う機会も無いまま別れてしまうことになるだろう。
 日増しにガイと過ごした日々の思い出が薄れていることに俺は畏怖を感じている。イアソンの与える快楽が俺を日常から遠く切り離し、思い出を侵食していく。
 俺はどうなってしまうのだろう? 満たされない気持ちのまま日々を過ごし、あれほど抵抗したイアソンの手の中へ堕ちていくのか?
 そしていつしか記憶を無くし、快楽を貪る何かになってしまう──そう考えて心底ぞっとした。  
 枷を外せたら……。
 馬鹿げた想像に唇をかみしめた。俺とイアソンの枷は容易に外れることはなく、これからもきっと、互いを慈しむような愛情とは無縁の日々が続くだけだ。
 心臓が、また小さく跳ねた。それは今まで一度も言葉にして明確に考えなかったことで、虚しさに気づいた途端、自分の存在が消えてしまうような奇妙な感覚に襲われた。ペットである限り、この虚しさにたった一人で耐えていかなければならない。
 いっそ、イアソンを愛せたら楽になれるだろうか────。
 ドアの開く音がして、はっとして我に返った。どうやら寝てしまっていたらしく、顔を上げると、少し離れてイアソンが立っていた。ゆっくりと近づいてくる冷たい蒼眼の中に優しい光を見た気がした俺は両手を差し伸べそうになった。


    


「来い、リキ」
 俺を見下ろしたイアソンがベッドルームへ来いと命令している。顔を合わせた第一声がこれだ。俺は拳をきつく握り締めた。
「今夜は、したくねぇ」
 顔を背けると、イアソンの屈んだ気配がしたと同時にデカい手で頬を掴まれ、無理やり両目を覗き込まれた。宝石のように冷たい蒼眼に射抜かれて身動きができない。この眼に俺はどんなふうに映っているのだろう? 
 頬に食い込む指にペットとして扱われる怒りを覚えて打ち払おうとしたとき、手首を掴まれ、乱暴に引っ張られた。上半身が簡単に起こされ、抵抗する間もなく間近で蒼い輝きを見た。
「本当におまえは、わたしを楽しませてくれる」
 怒りと強い興味を含んだ声と、一つに束ねられた手首の痺れが恐怖を誘う。片手だけで俺の自由を奪っているイアソンに、力ではとうてい抵抗できないと思い知らされる。イアソンは、もう片方の手で俺の顎を持ち上げた。その手はゆっくりと首筋へと移り、髪の中へと入っていった。
「あ…」
 肌が粟立ち、恐怖と快楽が同じ指先から繰り出されることに俺は混乱していく。イアソンにそんな顔を見られていると思うと、一層羞恥が増した。
「や…め…」
 いきなり髪をわしづかまれ、息を呑む間もなく柔らかな唇にぶつかって抗議の言葉を遮られた。こんな扱いには我慢できない。頭を振ってようやくキスから解放されされるまで、俺は生き物のように侵入してくる舌を必死で押し戻していた。
「やめろよ、したくねぇっつってんだろ」
 意外にもイアソンは愉しんでいるらしく、それ以上は怒らずに俺を拘束するように抱きしめた。
「放せ、苦しいって!」
 全身で抵抗してやろうと思ったのに、頬や首に感じたイアソンの体温にはっとして動けなくなった。
 二人で話しているときも、こうやって抱かれているときにも、沈黙はいつも突然にやってくる。この温もりに浸ってしまいたくなって、俺は益々混乱していった。
「おまえに拒む権利は無い」
 耳元で抑揚の無い声が囁いた。怒りなのか悲しみなのか、よくわからない感情が湧きあがり、温もりが一転して邪魔になる。
「だから…、いつも犯されてやってるだろ」声が震えそうになった。イアソンは何も言わず、俺を抱いたまま動かない。「キスだってさせてやってるしな」
「与えてもらおうか、キスを」
 珍しくイアソンが冗談を言った。
「…食えねぇジョークだな」
 俺は怯えながら即座に否定した。
 こんな会話をしているのに、イアソンは俺を抱いている。俺は呪縛をかけられたように動けないでいる。
 気紛れのように身体を離して立ち上がるイアソンを目で追っていると、両手が差し伸べられた。何をされるのかわからずにすくめた首と足に手が回され、「え?」と思った時にはもう身体が浮いて、抱きかかえられていた。
「お、降ろせよ、何する気だよ?」
「それをおまえが訊くのか?」
 イアソンがベッドルームに身体を向けたとき、これから何が始まるのかをすぐに理解して顔が熱くなった。
「一人で歩ける。俺は、…」
「抱きかかえられてやっているんだろう?」
 逆手に取られて言葉に詰まった俺は、思いっきり顔をしかめてやった。
「…あんたと話すと、ウンザリする」
 イアソンは俺の方を見ようともしないでベッドルームに向かっている。俺はそんなイアソンを下から見上げていた。計算された美しいラインが作る顎の線や鼻、頬の張り、目蓋のカーブ。こんなに完璧な美を持ち、何もかも手にしているイアソンが、なぜ俺にだけ執着するのかわからない。
 暗いベッドルームへ入った途端、俺は身体の奥で妖しく蠢くものを感じて、長い夜の底に落ちていきそうな眩暈を感じた。だが、その途中でいきなりベッドの上に落とされた。
「うわっ」
 イアソンは冷たい目で俺を見下ろしていた。やっぱりウンザリするとか言われて怒っているらしい。
「…何しやがるっ!!」
 無言のまま背を向けたイアソンは部屋の明かりを点け、椅子に腰かけてテーブルの上の物に手を伸ばした。
 その指先にあるものを見て俺は息を呑んだ。いつの間に用意されていたのか、見慣れた銘柄のワインとグラスが置かれている。グラスは一つしか用意されていない。
「おい……」
 呼びかけた声は自分のものなのに、頭の中が冷たく痺れていくせいで、どこか遠くから聞こえているようだ。
 ゆっくりとイアソンが振り返る。言葉の代わりに差し出されたのは赤い液体の入ったワイングラスだった。心臓が跳ね上がり、鼓動が早まる。
「…な…んだよ、これ……」
「ワインだ。飲めば少しは落ち着く」
 わざと無表情を装ったような顔をして、イアソンが囁くように言った。
「…別に、興奮なんて…してねぇよ」
 俺は視線を戻して目の前の赤い液体を見つめた。
 エオスで最初の頃に、催淫酒をそうと知らずに飲まされ、自分の意志と関係なく取り込まれたことがあった。ここへ移ってからも、イアソンはこうして時々優雅な仕草で俺にワインを勧める。
 これは、多分……。
 また俺は呪縛をかけられたように動けない。そして、心のどこかで望んでいたことも否定できなかった。
 これを飲めば、余計なことは何も考えずに、温もりに身体を預けられる──そう考えるもう一人の自分がいる。
 ベッドの端に座り直した俺は、疑うそぶりも見せずにグラスを受け取り、無防備を装って口に含んだ。
 グラスが空になるのを待つつもりなのか、イアソンは椅子に座り、俺が飲むのをじっと見つめるている。
 飲んでいるものが催淫酒だと俺は確信した。
「何見てんだよ」
 不貞腐れながら、グラスの中の液体をまた少し口に含む。イアソンの視線が痛くて、手が震えそうになった。
 これは、イアソンが始めたゲームだ。俺は黙ってのってやっただけだ。何度も頭の中で呟いて、そう思い込もうとした。
「何を苛ついている?」
 静かに訊ねるイアソンの言葉に棘は無く、心配する気遣いが感じられた。けれども、自分でも説明できないことを言葉にするのが面倒になって、どうしても話す気にはなれない。それに、もうゲームは始まっている。
「あんたに、どうこうしてもらおうなんて思っちゃいねぇ」
 それきり会話は途切れてしまった。
 時間が経つにつれ、頭の中に少しずつ靄が広がり、沈黙が苦にならなくなってきた。そうだ、何も考えなくていい。これはペットと主人のゲームだ。
 これからきっと、イアソンに陵辱される。余計なことは考えなくていい。被虐の喜びに素直に従えばいい。イアソンにワインを飲まされた夜は、いつだって底なしの快楽に取り込まれるのだから──。
 グラスが空になる。部屋の明かりがいつのまにか絞られている。
 イアソンの指がグラスを取り上げ、指先で胸をなぞられる。俯いて耐えようとしても、乳首を触れられると溜め息のような喘ぎ声が漏れてしまうのを自分でも抑えられない。あの嫌な光と同じように、目を閉じて視界からイアソンを遮断すると、身体からゆっくりとバスローブが剥ぎ取られ、肩や腕が部屋の空気に晒されていくのがわかった。指はまだ執拗に乳首を嬲っている。抗いきれずに抱かれた腕の中で力を抜くと、ふわりと倒されて、背中にシーツの冷たさを感じた。
 イアソンの髪が頬を擽り、キスが降りてくる。
 イアソンの手は、こんなにも温かい。
 キスは、こんなにも優しい……。
『俺は誰に愛されているんだろう?』
 混乱と快楽が交互に身体を支配して、頭の中に居座る『ペット』という言葉が消えかかる。
『愛しているのか?』
 俺は思わず溜め息をつく。開いてしまった唇に、尖ったり柔らかくなったりする舌がすかさず侵入してくる。少しだけその舌に絡みつき、捕まえて強く吸ってみる。遠慮がちに受けていたキスが、誰とも交わしたことのないような激しく甘いキスになっていく。
 知らないうちに絡め合っていた指が強く握り返される。それは、心臓まで握られたような苦しさだ。舌が抜かれ、唇で唇をかまれる。
「リキ…」
 その切なげな声に、俺は自分からキスを与えてしまいそうになった。蜜のように溶けていく身体を深々と貫かれ、すべてを貪ろうとする自分が信じられないほど甘い声を喉からほとばしらせている。掠れた喘ぎ声が重なり、もっと欲しいとねだりながら迎える絶頂感──。
 部屋の空気が濃密になり、時間は渦を巻いて何もかも遠くへ押しやってしまう。誘淫剤に蝕まれているのに陶酔し、互いの身体を貪りあいたくなる。俺は両腕をイアソンの背へと回させ、きつく抱きしめる。爪を立てそうになって微かに思いとどまる時、陶酔したまま、胸の中に温かな想いが芽生えそうになった。
 それが何なのか、俺は意識的に考えるのを避けた。そして、硬く閉じていた目が熱くなったときに、ただ愛されているのだと思い込もうとしている自分に気がついて突然涙が溢れそうになり、シーツに顔を埋めた。
 イアソンの動きに合わせて揺れる身体が陵辱と愛情のどちらを甘受しているのかわからなかった。
 何度目かの絶頂感が訪れ、身体に打ち込まれたものが抜かれると同時に闇が押し寄せた。もう寝返る気力も残っていない。今更のようにジャン・ファリーナが漂ってきて疲労を癒す睡眠へと誘われ、誰かの腕に包まれた。俺はこの腕をずっと探していたのかもしれない……そんなことをふと思う。縋った腕に頬を寄せ、意識がゆっくりと遠のいていく中で、「おまえが素直なのは寝ているときだけだ…」と、あきれたような声が聞こえた気がした。


    


 ふと目覚めたベッドの上には俺一人しかいなかった。
 いつもは勝手に帰らないイアソンだが、今夜は違うのだろうか?
 イアソンが声をかけてくれなかったことに苛立ちを覚えて俺は起き上がった。
 強く掴まれていた手首は、まだ痺れているような感じがする。疲れた身体のあちこちについた痕は催淫剤を用いても身体の快楽だけしか共有できなかった名残だ。
 快楽が深いほど、そのあとにやってくる虚しさが大きいことを知ってしまっても、どうすることもできい。俺はきつく目を閉じて、その虚しさを頭の中から追い払った。
 クローゼットを確かめると、イアソンの衣服はかけられたままになっている。
 新たな苛立ちに突き動かされた俺は、床に落ちていたバスローブを着ながらベッドルームを出た。
「どこにいるんだよ…?」
 リビングから灯かりが漏れているのに気づき、覗いてみるとそこに、フロアスタンドのわずかな光だけを残してソファに座っているイアソンを見つけた。
 俺は突っ立ったまま、声をかけることも側へ寄ることもできなかった。軽々しく接するには憚れる相手であり、俺を力でねじ伏せているような奴だというのに、俺はその足元に座って膝の上に頭をもたれさせたいと思ったのだ。そう考えたことにしばらく呆然として自問自答を繰り返していた。
 もう催淫剤は抜けているだろう──?
 陶酔からも、とっくに醒めているつもりだ。それに奴は足元にじゃれつくようなペットは好まない。
 椅子の背に深くもたれかかったイアソンは、歓楽街の光が渦巻く窓の外を眺めていた。薄闇に切り取られたそれは、一枚の悪趣味な絵のようだ。
 光は部屋の中にも侵入している。一定のリズムで変色を繰り返しながら大理石の床の上で踊り、イアソンの横顔やガウンから覗く胸元にも妖しく映っている。
 さっき、キスされた唇に。
 さっき、抱きしめられた胸に。
 そう考えた途端、心臓を握られたような息苦しさを感じた。
「カーテン、閉めてくれよ」
 吐き出した息と混じって声が震えそうになる。イアソンはこちらに顔を向け、俺を見て訝しげな目をした。
「どうした、リキ?」
 囁くように問い掛けるその声は静寂に吸い込まれそうなほど優しい。探していた、と素直に言えずに、俺は「眠れねぇ」と吐き捨てた。しばらく俺の顔を見ていたイアソンが静かに微笑む。
「どこか具合が悪くなって起きてきたのかと思ったが……、元気ならそれでいい」
 耳を疑いたくなる言葉に、俺は何も言い返せなかった。イアソンはどういうつもりで言ったのか。ペットに対する気遣いだろうか?
 だがすぐに、俺に興味を失ったかのように再び窓の外に顔を向けたイアソンが腹立たしかった。
「おまえは…」低く切り出されたイアソンの声に神経がピクリと反応する。「…エオスでよく窓の外を眺めていたが、ここから見えるミダスは気に入らないのか?」
 思いを馳せているせいか、声には一段と抑揚が無い。気持ちを見透かされた居心地の悪さから俺は声を荒げた。
「ああ。気に食わねぇ」
「そうか」イアソンは外を向いたまま、それほど気に止める様子もなく言葉を続けた。「戻るか、エオスに」
 あきらかに俺をからかって面白がっているらしいが、俺は本気で怯え、そんな冗談を言うイアソンが赦せなかった。
「あんな所に戻るぐらいなら、死んだほうがマシだ」
 気まずい空気が流れ始め、イアソンがゆっくりと振り向いた。
「おまえは簡単に死を口にする」
 穏やかな言葉とは裏腹の鋭い蒼眼に射抜かれながら、俺は反抗し続ける。
「俺は生きてることに何の執着も持っちゃいねぇよ」
「死にたいなどという贅沢は許さん」
 絶対的な支配者の、思い上がりと威厳に満ちた声が断言した。
 この世には支配する奴と支配される奴の二種類しかいない。ことあるごとにイアソンにそう思い知らされる。そしてイアソンは生まれながらの支配者なのだ。エオスの最上階で鮮やかなイリュージョンに目を奪われたとき、物の価値観そのものが芯から揺らいでしまうような怖じ気さえ感じたのを俺は今でもはっきりと覚えている。スラムの鼻先で立ちふさがるミダスすら、そこから見れば、ただのちっぽけなスパンコールの輝きにすぎなかった。今まで目にしたものがすべてではなく、物は見る位置を変えるたけで形を変えてしまう。イアソンと出会わなければ、そのことに一生気づきはしなかっただろう。支配者であるイアソンは当たり前のように知っていたのだ。俺がそうと知るずっと以前から。あの頃、何も知らなかった俺が望んでいたものは一体何だったのか──。
 ケージから見えるミダスの光は、成り上がってやろうと必死だった自分を否定されたような衝撃を繰り返し思い出させる。それなら今、俺が望むものは何なのだろう?──。
 光が触手を伸ばして絡み付こうとしている。毒々しい渦の中へ引きずり込まれそうな錯覚を振り切るように、俺は乱暴な足取りで窓際に寄り、カーテンを閉めた。
「おまえの価値観が少し変わっただけのことだ」
 独り言のようにイアソンが呟いた。「え?」と訊き返しても、あっさりと無視され、横に座るよう命じられた。
「ここでするのか?」
 嘲るように顔をしかめてみせたが、イアソンはまったく取り合わず、
「どうせ眠れないのなら、面白いものを見せてやろう」と、テーブルの横を視線で示した。
 床には少し大きめの箱が置いてある。自分で開ける気配の無いイアソンに、俺かよ? と文句を言いながら箱の中を見てみると、そこには古そうな機械が入っていた。
「何だこれ? えらくアンティークじゃねぇか」
「他惑星のものだ。残像現象を利用して、瞬間的に記録されたフィルム画像を連続的に見る装置だ」
「へえ…」
 少しだけ興味を持った俺はプラグらしきものを掴んでブラブラと回しながら言った。
「変換機は? 光源はどうすんだよ?」
「だから、作動はしない」
「は? も一回言ってくれる?」と嫌味を言っても、イアソンは手の中のカードを出し惜しみするように笑うだけだ。
「こんなものを俺に見せたかったのか? 何考えてんだ、ったく」
「画像を収め直したものが一緒についていた」
 側に来たイアソンが箱の底を探っている。微かに漂ってくるジャン・ファリーナにドキリとさせられ、威圧感のあるガタイに抱かれたときのことを思い出して顔が熱くなりそうだった。そして、一枚のホログラフィ・ディスクを目の前に差し出されるまで、イアソンの横顔をずっと見ていた。
「これだ」
 はっとして我にかえり、「何が映ってるのかわかったもんじゃねぇな」と露骨に嫌な顔をした俺に、ポルノの類いではないとイアソンが否定した。
 命令に渋々従って別室から持ってきた再生機をテーブルの上に置き、ずっとソファに座って命令しているイアソンの前で、さっき受け取ったディスクをセットした。
「照明を絞れ」
「それぐらい自分でやったらどうだよ」
 口ごたえしながらも言われた通りにしてから、再生機のスイッチを入れると、たちまち薄暗い部屋の中に淡い光の粒が舞った。
「あ……」
 驚きと溜め息の混じった声が漏れ、言葉が続かない。
 それは掴めないホログラフィの花びらだった。
 再生機の上に映し出されているのは見たこともない大木で、葉が一枚もなく、枝という枝に薄桃色の花が塊になって咲いている。陽差しの強そうな青空を背景に、風が枝を揺すり、花びらは散り、雨のように降っている。そうかと思うと、時々風にのってこちらをめがけて吹き付け、つい目を瞑りそうになった。本当に風を感じているような不思議さを味わいながら、目の前で繰り広げられる光景に俺はいつの間にかソファから身を乗り出し、手を差し伸べていた。
 なぜだろう? この光の中に自分の居場所があるような気がするのは──。
「幻想的だろう?」
 隣に座っているイアソンが言った。
「本物なのか?」
「合成などではない。この惑星には今でもこの花の咲く木が多く残っている。花の名前は、」
「あんた、ここに行ったコトあんのかよ?」俺は興奮し、イアソンの言葉を遮って訊いた。
「最近、資料映像で何度か見ただけだ。青く美しい惑星だ」
「こっから遠いのか?」
「長旅になるが、行けないわけではない」
 遠くの、青い惑星に行く。
 その考えが俺を魅了した。だが、一人で行かせてもらえるはずはない。だったら、イアソンと一緒ならそれは可能だろうか?
 欲しい言葉を待つのも、いい加減くたびれてきた。
 俺に絡みつく忌々しいすべてが決して届かない場所へ行きたい。
「いつか、二人で行ってみるのもいいだろう」
「えっ?」  
 俺は驚いてイアソンの顔を覗き込んだ。
 イアソンが気紛れに思いついた言葉だとしても、それは俺の胸の中で温かな染みのように広がっていった。
 一人ではなく、二人で行くのもいいかもしれない。遠い惑星の地に降り立ち、二人でこの光景を見てみたい。
 さっきまでずっと感じていた息苦しさとはまた別の苦しさが始まっていく。
「約束してくれよ」なぜだか視線を逸らして言った俺の耳に、
「ああ」と短い返事が聞こえた。
 それきり俺たちは黙って、淡い光の花びらの中にいた。初めて感じる心地よい沈黙が訪れ、イアソンの手を握りたい衝動に駆られたが、どうしてもそれはできなかった。


    
 LAST SCENE   

 ひとりで逝かせやしない──今なら、俺は答えが出せる。
 
 戻ってきた俺を認めたイアソンは、ひどく動揺している。こんな状況なのに、思わず苦笑してしまった。
 だが、すぐにきつい眼をして、俺が簡単に死を選んだことを無言で責めた。
「ひとりじゃ退屈だろ?」
 ずっと待っていたものを手に入れてくすぐったい気分だ。俺は自分から肌をすり合わせるようにイアソンの隣に座った。
 轟音とともに衝撃が足元からも突き上げてくる。もう、ここも長くはもたないだろう。
 ブラック・ムーンが身体に浸透していく。
 すべてを委ねてしまえるほどの力強さで、イアソンの腕が俺を抱いた。
 肉体も、キスも、言葉も要らない。互いの想いを静かに感じ合える。たとえ共有する未来が愛し合う日々ではなく、確実に迫っている死でも、この力強い腕は長い間犠牲にしてきたものをすべて埋めてくれる。
 けれどもイアソンの蒼眼は今まで見た中で一番優しく、甘く、悲しく、激しい後悔の色を含んでいた。
 おまえは、わたしを恨んでいるだろうな……。
 その眼がそう訊いた気がした。
 恨んじゃいねぇよ……。俺は答えるかわりに目を瞑り、咥え煙草のままイアソンの胸に深く頭をもたれた。
 死ぬまで孤独だと思っていたが、違ったらしい。絶望も後悔も、心を騒がせるものは何も無い 。ただ、いつか約束したあの惑星に行きたかった。見たこともない、青い惑星── 。
 俺たちのことを誰も知らない惑星で、あのホログラフィの木を探し、本物の風を感じたかった。
 そして、こうして二人で、雨のように降り注ぐ花びらの中に身を置きたかった。ペットでも主人でもなく、ただの恋人たちのように。

 薄れていく意識の中で、俺はそっとイアソンに呼びかける。
 あんたも今、同じ光景を夢見ているのか──?
 約束の地で、俺たちは何から話そうか?
 言えなかった言葉も欲しかった言葉も、もういらない。
 そうだな……、俺は…、最初に花の名前を訊いてみたい。
 あんたはきっと、静かに微笑んで答えてくれるだろう。
 淡く輝く、花の名前を。


  END 2001.11.03.  李生野 まりん
     2007' 数行リライト


【あとがき】 青い惑星は地球、雨のように散る花は桜をイメージし、原作では決して交わされないであろう甘いセリフや気持ちのやりとりを、小道具をダシに使って書いてみました。そして、最後の時に心と心で交わされた会話はこういう感じだったのではないかという解釈で。彼らはお互いに、それぞれの戸惑いの中で物事を進めてしまい、随分といろんなものを犠牲にしながら時間を過ごしてしまったように思えます。私はこういう激しい感情に支配される恋愛関係は苦手で、たとえボケーと過ごしても穏やかならばその時間は至福と考える性格ですから、余計にそう思うのかもしれません。
原稿を最初に読んで御指導して下さったR様、どうもありがとうございました。「中盤のHシーンをもっと盛り上げて」とのご指示がどうしてもクリアできませんでした。精進してみます…。


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