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◆◆記憶に残った夢の個人的な記録◆◆

〜〜〜  03. リアルどうぶつの森  〜〜〜 

  私は“どうぶつの森”の中を歩いている。
 といってもニンテンドーDSのゲームソフトの色に溢れた森ではなく、鬱蒼とした暗い本物の森だ。
 整備されていない道を歩いていたが、ふと、視界が開けた。森を抜けたらしい。
 視界の半分を占めるのは、澄み渡った青空だ。あとの半分は、森を切り開いて作った村。乾いた土地の上に、みすぼらしい小屋がポツポツと建っている。そこには私の家もあるし、動物たちも住んでいる。
「ああ、ここは…、ゲームの中で行ったことのあるリアル・どうぶつ村だわ…」と私は思いながら道を歩く。
 すれ違う動物たちは皆、二足歩行をしている。ペンギンやダチョウは普段と変わらない歩き方だが、ネコ、クマ、オオカミ、ウシなどは芸を仕込まれたサーカスの動物のようで、いじらしくもあり、危なっかしくもある。
 なぜ無理して歩くのか。
 なぜ人間の真似をして暮らしているのか、まったくわからない。
 私は動物たちにも、この村にも、あまり好意的になれなかった。
 この村は“獣臭い”のだ。
 それは村に近づくにつれ強烈になり、村全体から臭っているのだった。
 動物たちは石鹸を使わない。それどころか、小屋のほとんどに風呂もシャワーも無く、近くを流れる川で頻繁に身体を洗ったりもしない。
 人間と動物が清潔に共存する村なんて、不可能かもしれない…と、そんなことを考えながら、私は一軒の小屋の戸を叩いた。
 知人であるゴリラが病気で伏せっており、その見舞いのために私はやって来たのだ。
 この村では、動物と人間は言語ではなく、テレパシーで会話している。
 ゴリラは不衛生そうな藁のベッドの上に寝ていた。
 体臭と藁の臭いが鼻をつく。
 やっぱり不潔なベッドね……私は顔をしかめそうになった。病気なら尚更、清潔にしなくてはならないのに。ベッドを買ってあげようかしら……。
 ゴリラは思ったより病状が悪化してとても具合が悪そうだった。
 私は心配になって、藁のベッドの傍らに膝をついた。床は土の冷たい感触がした。
 私の方にゆっくりと顔を向け、口を開けないままゴリラは私の名を呼んだ。
「大丈夫?」と私も口を開けないまま、テレパシーで話し掛ける。
「オレも とうとう 、年貢の納め時だ……、もうすぐ、死ぬよ」とゴリラが笑う。
 私は心臓を掴まれたように悲しくなった。
「大丈夫よ、薬だって飲んだもの、新しい薬も持ってきたわ」
 私は励ましたが、ゴリラの目はすでに死を覚悟していた。
「俺たち動物はな…、人間と違って自分の死期がハッキリわかるのさ」
 涙をポロポロこぼしながら、私はゴリラの手を握った。
「もう、逝くよ……」と、ゴリラが目を伏せた。
「嫌よ! しっかりして!」私は大声で叫んだ。
 頭の中に、テレパシーが届いた。
 それは、はっきりとした言葉ではなかった。
 ともに過ごした日々の楽しさや喜び、感謝の気持ちが私の頭の中に流れ込んできた。
 そして次に、死の恐怖を全く含まない「またいつか、どこかで会おう」といった感じの別れの挨拶を私は受け取った。
 ゴリラは死んでしまった。
 手を握ったまま、私は天を仰ぎ見た。
 悲しみのあまり、「おおおおおお……」と遠吠えのような、長い咆哮を上げた。



【あとがき】 ニンテンドーDSのどうぶつの森をプレイしている時、病気のゴリラから死をほのめかす発言を聞かされ、けっこうショックでした。楽しい気分が吹っ飛びました。どうぶつの森は、とんでもなくメメント・モリ(Mement mori)です、と枕詞。
昔はうちの田舎で馬も牛も飼っていて、馬がすごく可愛くて、出産したばかりの牛は子牛を見ようと近づくと、気を荒げて柵にドカッと体当たりしてきて怖かった…という記憶しかなく、臭かったかどうか憶えていません。時間があれば馬に近づいて顔を撫でてあげたり、自分の顔を舐められたりして遊んでいたし、放し飼いになっていた土だらけのチャボも平気で抱いていたから、気にしていなかったのかも。散歩ですれ違う時、あまり風呂入れてなさそうな知らない家の飼い犬の臭さなら近年の記憶にありますが。実家で乳牛を飼っているという友人に「匂う?」と聞いてみたら「まあ、チョットね」との答え。彼女はずっと以前、牛にたくさんタマネギを食べさせたら乳がタマネギ臭くなってしまい、商品にならず出荷停止になってしまったというお話をしてくれました。バラを食べさせたらバラの香りがするのかしら。


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