何かを思い出したような顔をして、唐突に笑師がポケットの中を探った。 「せや、朔羅はんとMAKUBEXはんには、特別な御土産や」 ジャジャジャーン、とわざとらしいアクションをつけて、取り出した物を二人の前に差し出す。 笑師の掌の上には、ピンクのリボンのついた小さな箱が二つ、ちょこんと鎮座していた。 「これは?」 「お二人への土産や。受け取ったってください」 箱は随分小さい。 指輪でも入っていそうな大きさから見ると、食べ物の類ではないだろう。 受け取ってMAKUBEXがそれをしげしげと見つめる。 「開けていいの?」 満面の笑みを浮かべて肯く笑師に、多少の不気味さを感じつつも、MAKUBEXは包みを外し始めた。 笑師があんな笑顔をしている時は、少しだけ注意が必要である。 何らかの形で『笑い』を取ろうとしている可能性が高い。 朔羅はMAKUBEXより先に開けるわけにはいかないと思っているのか、小箱を手に持ったままこちらを見つめている。 包み紙の中からは、シンプルな白い箱が出てきた。 高級感はないが、適度に立派で、どことなく可愛らしい。 何となく、男に贈るものではないような物体が入っていそうな、そんな気がしないでもないが、敢えて考えないことにして、MAKUBEXは箱を開けた。 「……」 「あら、可愛い」 そこから出てきたものは、予想通り『男に贈るものではない』と分類される物体だった。 小さなペンダント。 ベンダントトップにイルカがついている。 どう反応したら良いのか、微妙に困る物だった。 イルカのついたペンダントなら、MAKUBEXも愛用しているのだから、それだけなら特に問題はない。 問題はその色だった。 イルカの色がピンクだ。 くるりと体を丸くしたイルカの間に、キラキラと光を弾くクリスタルガラスがはめ込まれている。 「珊瑚のイルカでっせ」 「あのね、笑師……」 「まあ、おそろいなのね」 笑師に抗議を唱えようとしたMAKUBEXの耳に、嬉しそうな声が届いた。 そちらの方に視線を向けると、朔羅がMAKUBEXと全く同じペンダントを手にしている。 どうやら笑師は、同じ商品を二つ購入してきたらしい。 そう、こうした物は朔羅のような女性に贈ってこそのものだろう。 しかし、複雑な心中を吹き飛ばすように、朔羅が微笑みかけてくる。 「嬉しいわ。一緒ね、MAKUBEX」 「え……ああ、そうだね」 それ以上、何も言えなくなったMAKUBEXだった。 |