プロローグ
『シンジ〜。お手紙だよ〜』
書斎で本を読んでいたシンジの前に、一体の人形が歩み寄った。
フリフリがたくさん付いた白いドレスを着た、金髪碧眼のフランス人形だ。
自分で動いて喋っていることを除けば、何処にでもありそうな人形だ。
「……珍しいね、誰からだい?」
貼り付けたような笑みを浮かべ、シンジは目の前の【彼女】に尋ねた。
『うんとねぇ、第二に置いてあるダミー人形からだよ。何でも正体不明の愚か者から怪文書が届いたんだって』
はいこれ、と大振りな封筒から一回り小さい封筒を取り出し、シンジに差し出した。
確かに、封筒には『碇シンジ様』と書かれているだけで、差出人の名前すら書かれていなかった。
「どれどれ…」
シンジは取り出した手紙と一枚の写真に目を通し―――固まった。
数拍置いて――
「は…はは…フハハハハハハハハハハハッ!!」
腹を抱えて大爆笑した。
其処へ――
ドタドタドタ……バタンッ!
派手な足音を立てつつ、数体の人形が飛び込んできた。
『いってェ何だ? 煩くて眠れねぇじゃねーかッ!!』
男言葉を使う、大陸の道士服に身を包んだ赤髪の少女人形。
『スコシハシズカニシヤガレ。ホンガヨメナイ』
大きな本を抱えた、緑髪の人形。此方は黒いドレスを着込んでいる。
『……何があったか知らんが、あのような品無き笑いは些か感心せんぞ、主よ』
浴衣を着流した、長い白髪の人形。何故か両の瞳は閉じられている。
『マスター、何事ですか?』
長い黒髪を背中にながした、日本人形。
どの人形も、人間以上に感情を表していた。
「ククク…、これを見なよ」
そう言って人形たちに差し出したのは、一枚の手紙。
そこにはこう書かれていた。
「 来い
ゲンドウ」
これだけである。
『…何だコリャ?』
『新手の不幸の手紙かな〜?』
『ソウジャナキャ、ヨッポドアタマノワルイヤツダゼ。タブンルイジンエンイカ』
『……我が主に向かってこの態度。……よっぽど死にたいらしいな…』
『ええ、即刻殲滅ですね…』
好き勝手な事を言う人形たち。
この後も、同封されていた写真の牛女の胸を見て若干二体が落ち込んだが、意味が無いので割愛する。
「…ゲンドウ、か。確か僕の遺伝子提供者だったけね。すっかり忘れていたよ」
ククク、とまた小さく笑うと、落ちていたカードと切符に目を走らせる。
「ご丁寧に日時まで指定してあるよ。…一体、僕に何の用なんだろうね」
『…イクノカ? サルノソウクツニ』
興味無さげに、緑髪の人形が問い掛けた。
「行くさ。どうやら、面白い茶番を用意しているみたいだからね…暇つぶしには丁度いい」
ニヤリと口の端を吊り上げ、シンジは禍々しく微笑む。
その笑みを見つめ、笑いを返す人形。このような悪魔的な所も、人形たちを魅了させるシンジの魅力の一つなのだ。
『…NERVか。我々が最近潰した研究所を保有する裏組織の下請けだったかな?』
『うん、確かSEELEとかいう老人会紛いの耄碌ジジイの集まりの下っ端だっけ〜。そう言えば、何か企んでるみたいだよ〜、あのおじいちゃんたち』
『【人類補完計画】です。簡単に言うと【全人類巻き込んで集団自殺しちゃおう】とか言うふざけた計画です…おそらくNERVも何らかの関わりを持っているかと』
三体の人形たちのそれぞれの意見。頭脳派なのだ。
『…んで、潰すのか? SEELEとNERV』
赤髪の人形が問い掛ける。
心なしかワクワクしているようにも見える。
彼女はバリバリの肉体派なのだ。
「…いや、すぐには潰さない。内部を念密に調べ上げて、からかいまっくてやるのさ。ま、敵対するなら、すぐに潰すけど」
かなりタチが悪い。
『ちっ、めんどくせ〜』
ぶーたれる赤髪。…子供だ。
「…さて、【門番(ゲート・キーパー)】キラ」
『は…ハイッ!』
姿勢を正す日本人形【キラ】
「【決闘者(デュエリスト)】ラン」
『オウッ!』
威勢良く答える赤髪の人形【ラン】
「【審判者(ジャッジメント)】サイ」
『ヤレヤレダゼ』
かぶりを振る緑髪の人形【サイ】
「【指揮者(コンダクター)】アル」
『は〜い!』
妙にテンションが高いフランス人形【アル】
「そして【魔術師(マギウス)】キョウ」
『はっ!』
傅く白髪の人形【キョウ】
「たった今、【人形劇】の幕は上がった。舞台は第三新東京市、役者はNERVとSEELEだ。…かの愚か者たちに教えてやろうではないか、『お前らは私たちの掌の上で動く木偶人形』だとッ!!」
『『『『『YES、【人形遣い(マイマスター)】シンジ・マリオネッター!』』』』』
シンジの忠実なる愛人形たちの唱和は、シンジの高鳴りに火を付ける。
「……さあ、劇の始まりだ!!」
最悪のテロリスト【沈黙の人形遣い】シンジ・マリオネッターの、世界を救う(かもしれない)暇潰しの幕が上がった。
あとがき
ガーゴイルです。
至らないところだらけですが、よろしくお願いいたします。
なるべく早く更新したいと思いますが、もし遅れたら申し訳ありません。
これからも頑張ります。
皆様もお気をつけて。
修正バージョン
あんまり変わってないけど、修正しました。
何とか完結まで持って行きたいと思います。
頑張りますんで宜しく!
読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます