鬼畜魔王ランス伝

   第81話 「骨森会戦」

「全速前進! 目標、2時方向に位置する闘神都市H(エータ)! 対要塞戦用意!」
 フリークが自らの分身たる闘神都市Ω(オメガ)に指令を下すと、最大戦速の30ノット(約55.6km/h)で驀進した。この速度は、通常の闘神都市が出せる速度のおよそ3倍のスピードである。
 本来想定されていない敵…闘神都市…という同種兵器とどう戦って良いのか勝手が分からず動きが鈍った2基のうち、向かって右側に位置する闘神都市に向かって突進する。
「緩衝シールド全開! 接渡橋第2、第3、第4用意! フルブレーキ!」
 フリークが戦闘指揮所で下した指令と、
「飛行部隊発進! 総員対衝撃姿勢!」
 それに重ねて闘神都市オメガの周辺部に設けられた巨大な跳ね橋の一つの近くから発せられた女声の命令が、女の子モンスター言霊の力を借りてオメガの全域に響き渡る。
 その声を合図にしたように、
<ズズズゥゥゥン!!>
 闘神都市オメガは、急制動をかけて闘神都市エータに接岸した。
 緩衝シールドと言うのは、自分の側に加えられる衝撃を緩和する為に展開する魔力による衝角(ラム)のような一種の攻撃魔法である。よって、車のバンパーのような相手側の損害に対する配慮なんてものは全く存在しない。
 オメガの外郭部がエータの外郭部に食い込み、ようやくお互いに動きを止める両者。
「第3と第4の接渡橋を下ろすぞい。」
 フリークの声に従って巨大な跳ね橋が下り、甲板というべきかどうか迷う闘神都市のかりそめの地表を繋ぐ道が築かれた。
「突撃開始!」
 それを見計らったクリームの号令に、カイトを先頭としたモンスターの部隊と身長271cmの鋼鉄の人形が橋を渡って敵陣へと突入して行く。
「フリークさん。もう1基は頼みます。」
 そして、そう言い残したが早いか、クリーム自身も部下を率いて闘神都市エータの攻略へと向かったのであった。

 そして、
「どうやら間に合ったようね。光学迷彩解除、対要塞用チューリップ砲“2号クルップ”全基斉射開始。目標、敵闘神都市下部主砲。」
 突如として空の戦場に現れた白亜の戦艦は、製作者であり艦長である魔人マリア・カスタードが命を下すと、艦の中枢制御頭脳であるヒララコンピューター・カンパン0117が令に従って火器管制を制御し、
「了解。右30度、仰角15度……発射!」
 その上部甲板に設置された3門の40cm砲から火を吹き始めた。
 すると、巨弾の雨を横殴りに叩きつけられた闘神都市Ι(イオタ)の下部に設置された突起物が次々と破壊されて行く。
 上空の戦場の緒戦は、対要塞戦の準備の差が如実に現れた事もあって、魔王軍の圧倒的な優勢で展開していくのだった。


「がはははは! いくぞ、野郎ども!」
 豪快な笑いと共に全軍の先頭を疾駆する魔王と、
「あの……突撃しましょう……皆さん。」
 気弱な声で行動を促す魔人の声によって、
 魔王軍4000のモンスター兵は一丸となって突撃を開始した。
 迎え撃つ側のゼス軍は、最精鋭で最も装甲が堅い闘将部隊で敵の突撃の勢いを殺して半包囲して叩くという堅実な作戦を採っていた。
 つまり、勝敗の分かれ目は魔王軍の突撃の勢いを止められるかどうかにかかっていた。
 と、ゼス軍の方では見ていた。
「スーパーロイヤルファイヤーレーザー!」
「光の矢!」
 ゼス軍の後衛に位置する魔法使い達から同調詠唱によって強化された攻撃魔法が雲霞の如く襲ってくるが、高い魔力を持つ魔王ランスと魔人アールコートの魔力が魔王軍全軍に波及しているせいで雑魚モンスターが105匹脱落した程度の効果しか出せない。
 彼我の距離が指呼の間にまで迫り、いよいよ白兵戦が始まるかと思われた時、
「「業火炎破!!」」
 ランスとアールコートの、そして魔王軍4000全軍が唱和した広域火炎魔法が1000体いた闘将部隊を一瞬にして残らずローストした。
 そして、その残骸を跳ね飛ばすかのように蹴散らして、ゼス軍の前衛を突破したのだった。


 闘神都市Η(エータ)に突入した魔王軍3000は、魔人カイトと闘神Γ(ガンマ)の圧倒的な攻撃力を全面に押し立てて内部へと捩じ込んで行った。

 『ちょっと待て。何故ここで闘神ガンマが出る?』と思った方も多いかもしれない。
 魔人マリア・カスタードによって回収されたレッドアイのボディは、魔人フリークが制作した新たな頭脳中枢を設置された上で、新たな命を吹き込まれた。
 その命の名は『チャカ・カドミュウム』と言う。
 つまり、魔女の呪いによって着ぐるみと化してしまった彼の意識を、新たな頭脳中枢に移植したのだ。この事で、わずか5歳の孫娘アスカを戦場に引っ張り出さねば戦えないというチャカの葛藤は一気に解消されてしまった。
 闘神を動かす動力については、チャカ自身は闘神都市の中枢と言う訳でもないので通常時の動力については自身の魔力で賄う事が可能である。そして、戦闘などの非常時には闘神都市オメガの予備の動力を借りる……と言う仕組みになっているのだ。
 1基の闘神都市に2体の闘神を搭載する。
 この発想によって、闘神都市オメガは真に最強の闘神都市となったのである。

 闘神エータが聖骸闘将の部隊を引き連れて魔王軍の侵攻を阻もうとするが、魔人カイト一人ですら支え切れずに一体、また一体と破壊されていく。
 闘将や魔法機で構成されたエータ守備隊の主力は、闘神ガンマに率いられたモンスター部隊の襲撃によって緒戦で手酷くやられ、散り散りにされてしまった。そして、分断されて孤立した小部隊にクリームの指示で集中射撃が行われ、次々に全滅していく。
 ……という訳で、地上にいるゼス軍に援軍を出した為に数が半減していた闘神都市エータ守備隊は各所で各個撃破に会って殲滅されてしまい、クリームが指揮する突入部隊に上部動力区をわずか20分で占拠されてしまったのだった。


 チューリップ5号の砲撃によって主砲の機能が壊されてしまった闘神都市Ι(イオタ)は、地上への爆撃を諦めて空の敵に専念する事にしたらしく、全速力でチューリップ5号へと突進した。
 とは言っても、闘神都市イオタの最高速は10ノット(約18.5km/h)でしかない。
 その程度の速度で機動性が遥かに勝るチューリップ5号を捕らえられる訳がない。
「急速上昇! ヒララ爆雷準備!」
「了解。ヒララ爆雷、発射管に装填開始。」
 イオタの体当たりをかわして上空を通過するついでに
「ヒララ爆雷投下!」
 爆雷を艦底に設けられた発射管からばら撒くと、イオタの地表にいた連中が次々と爆炎に呑み込まれていく。
「5連ロケット砲! 対空砲座! 各個に射撃開始!」
 チューリップ5号の各部に据え付けられた対空機銃座に固定されたPG−Xの簡略型が必死に近寄って来るエンジェルナイトに火線を走らせると、前回の戦闘で壊滅的な損害を受けていた天使を模した戦闘ユニット達はあっさりと全滅させられてしまった。
 また、対ドラゴン用に開発された大型のミサイルは、着弾した地点に容赦なく大穴を穿ち、イオタの地表に未だ残っていた魔人戦争時の傷痕に新たな傷を重ねて行く。
 それでも、まだ闘神都市イオタは致命傷を負ってはいなかった。
 このままであれば時間の問題ではあったのだが……。


 戦場に軍用ラッパの音が鳴り響くと、ゼス軍前衛の中央をあっさりと突破した魔王軍は素早く前後に分裂した。
 先頭を走っていた魔王ランスと900あまりのモンスター兵は、そのままゼス軍の後衛に放たれた矢の如く疾駆を続け、
 残りの3000ほどのモンスター兵は、アールコートの指揮で左右に分れて反転し、改めて陣形を組み直した。
 アールコート部隊の任務は、ランス部隊の突撃を助け、その後背を守り、ゼス軍の前衛にいる接近戦に長けた部隊と後衛の接近戦が苦手な部隊を切り離す事である。
「ファイヤーレーザー!」
 一糸乱れぬとはいかないが、充分にタイミングを揃えた詠唱が生み出した太い熱光線が何百も撃ち放たれ、お世辞にも魔法に強いといえないゼス歩兵たちを焼き払う。
「次はあそこの敵の塊を狙って……ライトニングレーザー!」
 敵の魔法機部隊が混乱していて反撃態勢を整えられないうちに、火力を集中して数を減らしにかかる。
 そして……
「スノーレーザー! できれば、おとなしくしててくれるとありがたいんですけど……」
 戦場を大きく迂回してランス部隊を追撃にかかろうとした傭兵部隊は、機先を制して放たれたアールコート部隊の牽制射撃によって動きを封じられてしまった。
 こうして、アールコートの立てた『敵中央突破背面展開作戦』は見事に成功し、みっともなくも慌てて振り返って陣形が乱れたゼス軍は、次々にアールコート部隊が放つ攻撃魔法の雨に倒れ伏していったのだった。


 闘神都市Ωの戦闘指揮所である下部指令区に、魔人フリークの声が隅々まで響く。
「むう。第1、第6接渡橋用意! 緩衝シールド展開!」
 機動性と火力で圧倒的に勝る空中戦艦チューリップ5号に一方的にやられまくった闘神都市Ι(イオタ)は、このままでは絶対に勝てないと判断して、とうとう最後の手段に出る事にしたのだ。
 すなわち、闘神都市オメガへの体当たりである。
 だが、対闘神都市用の斬り込み戦を想定して再艤装が施された闘神都市オメガには、下部主砲こそ未だ用意されていなかったが、都市の上部側…かりそめの大地…以外であれば緩衝シールドを張って激突の衝撃を大幅に緩和する事ができるのだ。
「敵、闘神都市イオタと水平になるまで上昇! 総員対衝撃姿勢!」
 闘神都市Η(エータ)を引きずったままオメガは僅かに上昇し、縁に沿って展開された魔力の衝角で闘神都市イオタの体当たりを受け止めた。
「リック殿! 頼むぞい!」
 伝声管に向かって合図を送ると、
「わかりました、フリーク殿。」
 返事をするが早いか、待機中の部隊のもう片方である魔人リックが率いるモンスター突撃兵部隊が、下ろされた2本の跳ね橋を通って闘神都市イオタへと駆け抜けて行く。
 度重なる爆撃と激突の衝撃に晒されたイオタの守備隊には、魔人となって益々冴え渡る赤い死神を止める事など不可能であった。
「さて、ワシは……こやつらを安全な所まで移動させねばのう。」
 闘神都市同士が激突した際に飛び散った瓦礫は、飛礫の雨となって戦場のそこかしこに降り注ぎ、既に決して少なくない犠牲者を出していた。
 フリークは、闘神都市オメガが深く食い込んだせいで浮遊し続けるのも困難になりながらも唯々諾々と従おうとはしない二人の元戦友に散々苦労しながら、戦場の上空から2基の闘神都市を引きずったまま何とか離脱して行ったのだった。


『ぬう。これはいかん。』
 緑の鎧の戦士を先頭に突進して来る魔王軍900あまりが前衛部隊を軽々と突破して来たのを見たガンジーは、
「魔法戦士隊! 私に続け!」
 それに対して、己の直属の部下である400名の魔法戦士を率いて立ち塞がる。
「これ以上好きにはさせん! 轟け漢の魂! 破邪覇王光!!」
 呪文と共に膨れ上がってガンジーの全身を眩く包んだ光の魔法力は、怒号のような掛け声と共に突き出された左掌から極太の白い光となって一直線に解き放たれた。
「グワァァァァ……」「キシャァァァ……」「グヒェェェェ……」
 とりどりの悲鳴を上げ光の中に消え去って行く数百ものモンスターたち。
 だが、
 再び視界が戻った後には、桃色の魔剣を片手にホコリ一つ被ってない魔王がいた。
「がはははは。面白い芸だなおっさん!」
 魔王…ランス…は、さっと剣…シィル…を軽く一振りすると口元にいつもの不敵な笑みを浮かべた。自然体だった体の重心を軽く膝を曲げて低くする。
「だが、俺様に攻撃当てるには、ちょっとばかり力不足ってもんだ!」
 そして、そう言うが早いか、かがんでたわめた身体のバネを全て前進する力に変えてランスは弾丸のように飛び出した。
 シィルがこっそり唱えた飛行魔法に自分を後押しさせ、常人の目では追えないスピードで突進するランスの剣を、
<ガキィィィン!!>
 ガンジーは右手に構えていた降魔の剣で何とか受け止めた。
 が、しかし、魔王と人間との体力差、そして勢いの差はいかんともし難く、ガンジーはたまらず吹き飛ばされてしまった。
 あまつさえ、斬り合いを行う剣としては余計なギミックを満載していた事もあって、降魔の剣は魔剣シィルと激突した衝撃で、刀身の中程からへし折れてしまった。
「ぐうっ!」
 もんどりうって吹き飛ばされた場所から、それでも立ち上がるガンジーにランスは本気で感心した。常人であれば即死、それなりに身体を鍛えた戦士でも堪らず気絶してしまうぐらい激しい衝突であったにも関らず、立ち上がってきたからだ。
「ほう。まだやる気か……。がはははは、面白い!」
 ずずいと近寄って、今のうちにぷち倒してやろうと企むランスの前に……
 ガンジーの部下である魔法戦士隊が立ちはだかった。
「ガンジー様、大丈夫ですか?」
 ガンジーの魅力に引かれて集まった女性で全員が構成された魔法戦士隊は、
「ガンジー様に手出しはさせません!」
 ある者は自らの身を盾にしてランスの前に立ち、ある者はダメージを隠し切れないガンジーにできる限りの応急手当てを始める。
「ガンジー様は私達がお守りします!」
 思いの丈を口にし、剣を構える彼女らにランスは少々閉口した。
『む。せっかくここでゼス王のおっさんを押えて戦闘終了になると思ったのに。それなりに可愛い娘も混じってるから、まとめて手荒に片付ける訳にもいかないしな。』
 行く手を塞ぐ娘達を値踏みしてから、
「がははははは。どけどけどけ〜!」
 ランスは、シィルの切れ味を極限まで落として、斬りつけた際に手傷を与えるのではなく、身動きができないぐらいに体力を奪う作戦で次々に魔法戦士隊を切り伏せていく事にした。……殺してしまっては「もったいない」からだ。
 そういう事もあって遅々として進まない歩みではあったが、ランスは確実に一歩一歩ガンジーへと向かってにじり寄って行った。


「バイ・ラ・ウェイ!!」
 赤き剣が死を運ぶ旋風となって吹き荒れ、群がる敵を薙ぎ倒す。
 魔人リックの凄まじい突進を食い止められる兵など、チューリップ5号に繰り返し痛めつけられた闘神都市Ι(イオタ)には、もはや残っていない。
 その侵攻を何とか止めるべく築かれた防衛線は、駆け抜ける速度を減じる事もできずに数瞬で切り刻まれて鋼鉄の兵士たちごと無惨な残骸と化した。
 リックのバイロードが一度閃くごとに数体の鋼鉄兵士が斬られ砕かれ貫かれ、物言わぬ鉄クズとなっていく。
 そして、遂に……
「ティルピッツ!! これ以上好きにはさせぬぞ、魔人!」
 無数の闇の矢を撒き散らし、闘神都市イオタの主である闘神イオタが現れた。が……
「はああああああああ!!」
 放たれる闇の矢のことごとくは右に左に閃いた赤光の長剣バイロードに叩き落され、
「貴様の運が悪かったんだよ!」
 吐き捨てるように放たれた言葉の刃が心を切る前に、古代の魔法使い達が作り上げた闘う鋼鉄の神像の頭部が真っ向から斬り砕かれた。
 ギシギシと油の切れたブリキ人形の如き音を立てて何とか起き上がる闘神イオタを尻目に、リックは目的の場所へと向けて一目散に駆けて行く。
 底冷えのする笑みを漏らしたリックが、闘神都市イオタの動力源となっているゼス魔法兵の身体を、下半身が融け込むように固定された水晶球ごと叩き切ったのは、その35秒後の事であった……。


 ゼス軍後衛の魔法使い部隊は、ガンジーの魔法戦士隊の活躍によって足が止まったランス隊に向かって次々と攻撃魔法を雨霰と降り注ぐ。
 ガンジーの破邪覇王光で痛めつけられ分断されてしまったモンスターの群れは、数に勝るゼス魔法使い部隊の集中攻撃を捌き切れず、ドンドンと数を減らしていく。
 だが、その戦況を一変させる者達がゼス…人間の世界…へと続く街道を通って現れた。
 魔人メナドに率いられたモンスター兵500と、魔人キサラである。
「行きます! ファイヤーバード!」
 五枚の特別な赤い魔導カードを結んで空中に描かれた逆五紡星陣から現れた火の鳥がゼス軍の中に飛び込み、魔法兵たちを背後から思う存分切り裂いて消えた。
 1発撃つのに5万GOLDという、あまりの出費で目尻に涙を滲ませたキサラは、気を取り直して袖口から新たな特別製の魔導カードを引っ張り出す。
「続いて……スノーフェンリル!」
 今度は青い魔導カードで出来た逆五紡星陣から現れた白い狼の姿をした冷気のかたまりが、突然の攻撃に戸惑う魔法兵たちを噛み砕いて消える。
「うう……もったいないけど……サンダードラゴン!!」
 更に緑色の魔導カードによって召喚されたドラゴンの形状の紫電がゼス魔法兵たちが築こうと努力している防衛線をズタズタに引き裂いて消えていく。
 そうこうしているうちに、
「はぁぁぁあぁ! バイ・ラ・ウェイ!!」
 うし使い、リアカー、かまいたちなど足の速さを買われて配属されたモンスターたちの更に先頭を駆け抜けた小柄な赤い弾丸がゼス魔法兵部隊に止めを刺した。
 直接殴り合うには不向きな兵種である魔法兵たちの陣の只中に、メナド率いる接近戦向きのモンスター兵たちが雪崩れ込んでしまっては、人類最強の魔法国家ゼス王国が誇る精鋭部隊もただの弱卒の群れとさほど変わらないのだ。
「あ〜ん。アレ試せないじゃないの。ちょっと、そこどきなさいよ!」
 総崩れに崩れ出し、散り散りに逃げ出す人の波の前に、ゼス最狂の魔法使いの呼び声も高いパパイア・サーバーも、その手に携えた禁断の魔導書ノミコンに記された危険な秘術を使うヒマすらなく押し流されて行った。


「第一戦術目標……動力源の奪取……完了。そして……」
 闘神都市Ω(オメガ)とΗ(エータ)を繋ぐ巨大な橋を守る位置まで後退していたクリームは、浮遊の杖を始めとする闘神都市エータ上の建造物が倒壊を始めたり、建材がパラパラと剥離し始めたのを確認して口元をわずかに緩めた。
「第二戦術目標……闘神エータ撃破……完了。」
 そう。闘神都市エータ自体の崩壊が始まったのを見て取って、魔人カイトと闘神Γ(ガンマ)が闘神エータを破壊した事を確信したのだ。
「ふふふふふ。私の計算だと、崩壊が危険レベルに達する10分前までには避難を完了できるわ。各員! 退却してくる味方を援護するわよ! くれぐれも誤射には注意するように!」
 クリームに率いられたモンスター兵たちは、散発的に現れる守備兵の生き残りを射倒しつつ、味方の退却を援護し続けたのだった。


 自分の部下を悪戦苦闘の末に後ろに下がらせたガンジーに、
「いつまでも女の影に隠れているんじゃない! ライトニングレーザー!!」
 四本の緑の稲光が襲いかかった。
「くうっ!」
 全身をビリビリ痺れさせる痛みに耐えながら、
『魔法戦で来るなら、まだ戦いようはある!』
 と考えたガンジーは、折れた降魔の剣の柄をしっかりと握り直した。
「がははははは! 火爆破!」
 更に魔法が生み出した劫火が襲いかかるが、板金鎧に身を包んだガンジーは何とかそれにも耐え切って見せる。
「スーパーロイヤルファイヤーレーザー!」
 反撃というか牽制に放った火線は、瞬く間にシィルで切り落とされ、
「甘い! 黒の波動!」
 ランスが炸裂させた暗黒の波動の直撃を受けて膝を着くガンジー。
「がはははは。終わりだ! ラーーンス…」
 軽く飛び上がって練り上げた闘気を剣に集中させたランスに、横合いから飛びかかった影がある。JAPAN風の着物を着こなした少女は、我が身を弾丸へと変えてランスに踊りかかった。
「ガンジー様! お早く止めを!」
 ジャンプしている途中の上に、必殺技を放っている最中では、流石のランスも対応が遅れてしまう。影が、飛び出す直前まで気配を断って倒れた味方に紛れていたのも大きな原因であったが。
 敢えてとっさに斬り捨てず、カオルを抱き止めるカタチに持ち込んだランスは、吸血鬼の能力である魔眼で超至近距離からカオルの瞳を見据えて身動きを封じ込める。
 しかし、
「でかしたぞカクさん! うぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
 気合い一閃、注意の逸れたランスに向かってガンジーは渾身の突きを放つ。
 魔王ランス自身が放った魔力が込められた折れたる剣は、魔王の心臓へと向けて一直線に突き込まれていったのだった。


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 ふう。いつもの目安(メモテキストで10kb)より長くなっちった(笑)。
 それと、一応フォローしとくと、ガンジーはカオルの身体に当たらないように突きを放ってます。
目次 次へ


読んだ後は是非感想を!! 貴方の一言が作者を育て、また奮起させます


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