福音という名の魔薬
第拾八話「夜より暗き影」 ワイが一日で最初にセンセを見かけるんは、学校に行く途中の路なことが多い。 でも、えろうぎょうさんオナゴ連れて歩いとるから、たいがい声はかけられへん。 しかも、かしましゅう話しとるせいで、大声で挨拶したかて聞こえるかどうか分からへんみたいや。 ああいうの見とるとモテるのも大変なんやなぁと思うで。 ケンスケのヤツは歯軋りしとるみたいやが、な。 玄関を女共より先にくぐれば、そこでやっとセンセに挨拶できる。 「おはよ、センセ。」 取り巻きの女共がセンセに先譲るからなんやけどな。 「あ、おはよう、トウジ。」 いつもは、そこで教室まで歩いておしまいなんやが、今日はちょいと違った。 「なんやそれ、手紙かいな。最近じゃ珍しいな。」 センセが下駄箱の蓋を開けた時にすのこ板に落ちたのは、一通の封筒のようじゃった。 「うん……。」 ワイが知る限りでは一ヶ月ぶりぐらいや。 「またどっかの馬鹿がセンセを誘き出そうとしとるのかいな。……なんだったらワイがついてってやろか?」 滅多にやる奴はいない……と言うかやった馬鹿は速攻酷い目におうとるからな。 今更実行するほど思い切った馬鹿がいるたぁ考え難いが。 ちなみに……ワイがパチキかました連中もいるが、大半がオナゴ連中やネルフの黒服のおっさんにボコにされたそうや。 そういうヤツの大半が弐中に流れたらしい…ってケンスケが言うとったな。 「ありがとう。でも、危険だから……。」 センセは時々ワイでもマジでドキッとする笑顔になる事がある。 ちょうど今みたいな顔や。 「そんなん気にするなや、友達やろ。」 ホンマにええ顔や。センセがオナゴならワイがほっとかんぐらいや。 ……ライバルも多そうやけどな。 「ほな、ワイは先に行くで。」 そそくさと一足先に教室に行ったのは、もしかしたら、このままセンセの顔見とると妙な気分が湧いてきそうやったからかもしれへん……。 それぐらい危険な笑顔やった。 教室に入ると、まだほとんど人がいなかった。 日直やっとる連中とケンスケぐらいや。 まあ、センセといっしょに登校しよ思てわざわざ時間合せて来とる連中がほとんどやけに、仕方が無いのかもしれへんけどな。 と考えてるうちにもドンドン人が来よる。 しっかし、知らんうちに皆えろう別嬪になったもんやなぁ。 綾波とか霧島とか惣流なんかは最初からズバ抜けとったが、今じゃ他の連中もそこらの芸能人と張り合えそうなぐらい綺麗になってきおってな。 おかげで、ワイの息子も下手なエロ本じゃ起たなくなってまったわ。 えろう迷惑やが、しゃ〜ない。誰ぞに文句言うような事でも無いしな。 この頃の朝の様子は、まあこんなもんや。 私が私の王子様に出会ったのは、夏が終わらなくなった島国のある日でした。 お父様が私に何の連絡もせず仕事先から帰って来なかった日から見て2日後のこと。 私は、そのネルフとかいう仕事先からお父様を反逆罪で拘束した旨が伝えられたと聞きつけて抗議に出かけました。 あの優しいお父様がそんな事をするはずが無い。何かの間違いだと。 でも、そこで出会った魔王みたいな人にこれでもかとばかりに証拠を突き付けられ、二の句も継げなくなるほど驚かされてしまいました。 そして、魔王はこのままでは軍法会議でお父様の死刑が確定するだろうとも教えてくれました。 それを聞いた私は、魔王にお父様を助けてって言っちゃったんです。 ……魔王の思惑通りに。 魔王の提案は、私が一週間彼等に協力すればお父様を助けて貰えるというものでした。 この提案に一も二もなく飛びついた私は、そのまま鎖で繋がれて地下牢に閉じ込められてしまいました。 そこに彼……私の王子様が入って来られたのです。 王子様は魔王の提案に乗り気でないようでした。 でも、断ると私が見知らぬ男達に輪姦されると聞いて覚悟を決めてくれたようでした。 その時の私は、愚かにも王子様一人に抱かれる方が誰とも知れぬ男達に陵辱されるよりはマシだと思ったんです。 本当は比べるまでもない事なのに……。 その時のことは、今でも夢に見ます。 王子様は私を優しく抱き締め、背中を何度も撫でてくれました。 私の緊張がほぐれるまで何度でも。 あの怖い魔王が、 「早くしろ。やる気があるのか?」 と急かしてきた時も、 「父さんは黙ってて! 僕のやり方でするから。」 と王子様は毅然と退けてくれました。 やがて緊張がほぐれてきた私は、身体がおかしくなったのに気付きました。 胸とおしっこを出す辺りを中心にむずむずして熱くなってきたのです。 それを知ってか知らずか、王子様は私と密着していた身体を少しだけ離すと…… 唇を重ねて下さいました。 上等のキャラメルよりも、とても上品で甘い味。 気がついたら頭の中が真っ白になっていて、とても気持ち良い心地でした。 それから、王子様は服の上から私の身体のあちこちを触って下さりました。 その日のことは、それ以上覚えていません。 ただ、その日は王子様が私にそれ以上の事をしなかった事だけは確かでした。 ……私の身体に、王子様の出した白い液体がかかっていませんでしたし、血もこびりついてませんでしたから。 次の日、私は朝から苦しんでいました。 身体の隅々が疼いて、咽喉が凄く渇いて…… 王子様が来るのを今か今かと待ち構えていました。 その時には、もう私は悟っていました。 私は王子様無しで生きられないような女にされちゃったのだと。 恥ずかしいのを我慢して女にしてもらうようお願いしたら、王子様は快く承知して下さいました。 身体を真っ二つにされるような痛みと想い人と繋がった嬉しさが同時にくるなんて、お父様にはお分かりになりませんですよね。 ただ、痛みはすぐに王子様が消して下さいましたが。 あんなに気持ちが良い事があるなんて、私、初めて知りました。 これからもずっと“調教”して下さいってお願いすると、困った顔ですけど承知して下さいました。本当に王子様はお優しい方です。私にはもったいないくらい。 ……そうだ! お友達も王子様にご紹介しましょう。みんな私が綺麗になった訳を知りたがってましたから良い機会です。 と、そこまで一気に語り終えた娘の頬は元々が色白であるからか鮮やかな紅に染まり、何かを反芻しているのか太股をもじもじと擦り合せていた。 「お、お前……自分が何を言ってるのか分かっているのか?」 寝かされている病院のベッドの上からやっとの事で声を絞り出す。 「あら、お父様は素敵なことだと思っては下さらないのですか?」 先日まで受けていた拷問の傷痕よりも、何時の間にか娘がサードチルドレンに堕とされた事の方が痛い。 「ああ。」 新手の拷問じゃないかと疑いたくなるぐらいだ。 「そうですか……。あ、そろそろ面会時間が終わるから帰ります。お大事になさって下さいませ。」 そう言って、娘は病室を出て行った。 妙に聞き分けの無い時の表情で、うっとりと潤んだ瞳をして。 ドカチェフ少佐は、そんな変わり果ててしまった愛娘の姿に絶望した。 自分の命を助ける為に娘が変わってしまったのなら、自分の命を捧げるからあの頃の娘を返して欲しい。そう神に祈ったまま彼はゆっくりと目を閉じた。 彼の娘、ナスターシャ・ドカチェフに彼の訃報が伝えられたのは、この3日後だった。 その死因が拷問じみた尋問で受けた負傷の悪化ではなく、生きる気力を喪って傷に耐えられなくなったことが原因だとは誰にも知られなかった。 血を分けた娘にでさえも……。 それこそが、彼への罰…人類を破滅させかねない破壊工作を行なった彼へと課せられた十字架であったのかもしれない。 ちなみに、ドカチェフ少佐の願いは叶わなかった。 下駄箱に入っていた手紙は、2時間目と3時間目の間の休み時間に校舎裏に来て欲しいという差し出し人不明の手紙だった。 カラフルな封筒に赤いハートマークのシールで封がされてあって、可愛い便箋に用件が書いてあったから差出人は女の子なのかな? 一ヶ月前に貰った手紙と違って、一時期良く来ていたタイプの手紙だ。 この手の手紙はISGFCが禁止してから来なくなっていたのに。 ヒカリかマナに相談しといた方が良いかな。 あ、ちなみに、その一ヶ月前の手紙はこれとは全然別の文面で、そっけない白封筒にシンプルな便箋で一言『ありがとうございました』と記されていただけの物だった。今日のと同じなのは差出人が書いてないことぐらい。それで、かえって印象に残ってるんだ。 ……会ってみようかな。 そう思った僕は、机の上に載せている授業用の端末からヒカリとマナに電子メールを送付した。 次の休み時間に校舎裏に行くつもりだとだけ。 ……いったい誰が待ってるんだろう。 行ってみたら誰もいなかった。 悪戯だったのかな? ちょっと待ってみて教室に戻った僕は気付かなかった。 本当はそこに浅黒い肌の精悍な少年が待って“いた”ことを。 ようやく退院してきた彼がマナ相手に告白して完膚なきまでに玉砕したので、力尽くで脅迫してでも僕にマナを諦めさせようとして呼び出したってことを。 だから、そのマナ本人に成敗されて病院に逆戻りさせられたんだってことを。 ずっと気付かなかったんだ……。 ワイは昼休みは購買で買ったパンか弁当を屋上で食う。 元からこうやったが、そうでなくとも最近の教室はオナゴばっかで落ち着かへん。センセは良くあんなトコで平然と食えるもんや。感心するで。 ケンスケのヤツは『彼女があんなにいて羨ましいよ。さすがエヴァのパイロット様だよな。』なんて言っておったが、そないなこと言うんなら自分も誰ぞに告白とかすりゃあええのに。 B組の吉田とか、1年坊主の富丘とか、3年の藤咲先輩とか…センセが来てからできたらしいカップルも色々おるさかいにな。 ……もしかして、ケンスケのヤツ、うちのクラスのオナゴ見てるうちに目が肥えてしもて手を出したいオナゴがおらんとちゃうやろか。……そやったら難儀やな。 んで、ワイはケンスケと一緒に食う事が多いんやが、いつも一緒って訳じゃあらへん。 今日もアイツはどっかほっつき歩いとるらしい。 カメラ持っとったから何かの撮影やろが……下手なモン撮っとるの見つかったら、今度こそ殺られるやろなぁ。……以前のアレで懲りてりゃ良いが。 前ん時は命だけは勘弁してもろたが、次ん時も生かしておいてくれるなんて保証は無いんやからな。 ……ワイが心配しとってもしゃあないか。 似あわん心配なんぞしてたら腹が減ったので、菓子パンをかじる。 パンのあんこが舌で溶けて、変わり映えのしない味を伝えて来る。 ゴクゴクと飲むパックの牛乳の、これも変わり映えのしない咽喉越しを味わう。 「侘しいのう……。」 ハルナの作る弁当は美味かったなぁ…と、思わず脳裏に想い起こして目頭が熱くなる。 「そういや、ハルナのヤツ、元気にしとるかなあ……。」 拳骨で目尻をゴシゴシこすりながら呟く。 センセが生きとる言うたからには生きとるとは思うが。 そこまで考えたとこで、ワイは別の『ハルナ』のことを思い浮かべる。 センセの従妹や言うとったが、なんかウチのおかんの若い頃の写真に顔が似とるような気もするな。ワイの妹も大きゅうなったらあんな感じになるんかのう。 実はあの娘がワイの妹やったりしてな……。 ! ……まさかな。 そんなことはあらへんやろ。 第一、年恰好が違い過ぎるやんか。有り得へん。 その時、ワイは知らんかった。 頭を振って想像を追い出したワイには気付けんかった。 実は本当にそうだった…って、言う事実には……。 赤木リツコは多忙である。 技術部を統括して、部員に仕事を効率良く割り振ったり、研究開発の申請に許認可を与えたりする業務だけではなく、 自ら研究開発に参加したり、現場の指揮を執ったり、あまつさえ趣味的な独自の研究に手を出したり……と、いったい何時寝てるのかと疑問になるほど忙しかった。 だが、最近は有能な助手で後輩の伊吹マヤともども睡眠がさほど要らない身体……使徒能力者になったので、多少は余裕というモノが生まれていた。 特にイロウルの使徒能力を手に入れたリツコは、いちいちキーボードをタイプしなくてもマギを始めとする電子頭脳と高速でデータを遣り取りできるようになった事で大幅に仕事の負担が減っていた。 で、それで余った時間が何に費消されるかと言うと…… 自分の研究 …で、あるところが、赤木リツコのリツコたる由縁であろう。 今日この時も御多分に漏れず、リツコは顕微鏡の前で何やら難しい顔をしていた。 「私とマヤとミサト……それにレイの卵子ですら破壊するなんて……シンジ君の精子っていったい……」 リツコは自分達から採取した卵子と以前に採取して凍結保存していたシンジの精子で人工受精実験を行なっていたのだが、その結果は以前普通の人間のもので試した時とほぼ同じだった。 使徒と融合した自分達、エヴァを飲んだレイのものですら耐えられないのなら、シンジの精子に備わっているのは子孫を残すという機能ではなかろう。 『では何故、生殖本能と直結している筈の性欲が満たされているの? 機能が狂わされてる? それとも…… 生殖本能自体が、何らかの効果によって満たされているの?』 砕けて散った受精卵のスープに指先を伸ばす。 『私の身体はイロウル細胞が人のカタチにまとまっているだけ、その気になれば何処からでも知覚できるし、モノを取り込む事もできるわ。』 ガラスの細片に載せられた小さな水溜りに触れた途端、リツコの指先は軽く痺れた。 「くっ! ……失敗だったかしら。」 それでも懲りずに、今度はレイのものではなくリツコ自身の受精卵“だったもの”に触れる。 すると…… 痺れる事は痺れたが、今度は決して不快な痺れではなく、指先から全身に甘やかな痺れが伝わると同時に身体の隅々までリフレッシュされていくのが分かるような気がした。 「これが……これがシンジ君の秘密の一端なの?」 生殖本能の上位にある本能……種族維持本能。仮に、これがその本能を満たしているのだとしたら…… 「面白いわね。」 もしかしたら、何か未知の効能が隠されているのかもしれない。 それに、受精する事で卵子の持ち主用に成分が最適化されるのかもしれない。 ……と、マヤのも触ってみて指先が痺れたリツコは思ったのだった。 センセは、よく授業をサボる。 今日も午後の授業は自主休講ってヤツらしい。 幾らセンセがネルフのVIPたぁ言っても、よく先公どもが何も言わないもんや。 センセの成績もワイとどっこいぐらいやって言うのに……。 で、センセがサボっとる時の3回に2回ぐらいはクラスのオナゴの誰かも何時の間にかいなくなっとる事が多い。もしかして、隠れていちゃついてるのとちゃうんか? 問い詰める気も、調べる気も起きんがの。 ……ケンスケなら知りたがるかもしれへんが、んな余計な事には関わらん方が賢いで。 他人の色恋沙汰に手を出すなんて面倒な事、しとうないからな。 それに、サボる事に関してはワイも人の事が言えへんしのう。 せやから、ワイはそれには触れんで会話をする。 「今日、遊びに行かへんか?」 センセと遊びに行くのは結構楽しい。 これで意外と色々知っとるし、気配りも上手い。 ケンスケみたいに話し上手たぁ言えへんが、相槌を打つのが上手いんや。 「ご、ごめん。今日はネルフに行かなきゃならないから……。」 が、センセはかなり忙しい。 当日ポンと誘っても、たいがい断られてまう。 しかも、今回はネルフの仕事や。 「そか、ならしゃあないな。」 となれば、どないゴネたかて断られるのは目に見えとるし、センセにワガママ言って困らせる訳にもいかん。 いざと言う時にワイらを守ってくれとるのやから、せめて普段はセンセの負担にならんようにせなアカンわな。 「ほな、気いつけてな。」 そう言い捨てて、ワイは放課後の教室をエスケープした。 ……掃除なんぞやってられるかいってな。 ギラギラと照りつける早朝の日差し。 ビルの影になった街角の路上に停めてあった車の直下に、黒く丸い円が生まれた。 黒は染み出す如く周囲に広がり、 その上空に黒と白の縞模様が入った巨大な球体が突如出現する。 第12使徒と目される存在が襲来したのだ。 地下深くに存在するジオフロント。 「西区の住民避難、あと5分かかります。」 其処にあるネルフ本部の更に地下に設けられた発令所に、 「目標は微速で進行中、毎時2.5q。」 緊急警報と緊張感に満ちた報告が響き渡る。 そんなもう一つの戦場と化した部屋の扉が開く。 「遅いわよ。」 そちらを見もせず、リツコが言う。 「ごめん。」 入って来た人物…葛城ミサトは一言短く謝罪する。 ジオフロントに寝泊りしてる感のあるリツコはともかく、警報で叩き起こされた上にチルドレン3人も車で一緒に連れて来たミサトが遅れるのは仕方ないのだが……。 それは分かっているのか、この件がこれ以上追求される事は無かった。 「どうなってるの、富士の電波観測所は!?」 その後、ミサトは気になっている事を質問する。 緊急警報が出たのが唐突過ぎるのだ。 今までのような使徒襲来なら、その前に警戒警報なりなんなりが出るはずであり、その時点で即応していれば遅れる事など無かったのである。 故に“今回も”人為的な妨害工作があったのかと疑ったのだ。 「探知してません。直上にいきなり現れました。」 だが、青葉の答えが全てを物語っていた。 今回は人為的な策動で警報が鳴らなかったのでは無い……と。 「パターン、オレンジ。ATフィールド反応無し。」 更に不可解さを増す報告を日向がする。 「どういうこと?」 「新種の使徒?」 ミサトとリツコの質問に、 「MAGIは判断を保留しています。」 マヤは自分のでは無くマギの判断を報告する。 「もう…こんな時に碇司令はいないのよね。」 それどころか、副司令の冬月まで不在である。 現在ここにいるメンバーでは対処方針の決定が難しい状況であった。 しかし、 「どちらにせよ、あれが使徒だと仮定して行動した方が良いだろう。」 時を置かず作戦部長のカティーから出た意見に、 「そうね。間違ってたら始末書で済むだけ、まだマシだわ。」 機動部隊長のミサトも即答で賛同する。 ある段階で凍結されていた使徒迎撃態勢の手順を進める事が、今、決定したのだった。 「みんな聞こえる? 目標のデータは送った通り。今はそれだけしか分からないわ。慎重に接近して、反応をうかがい、可能であれば市街地上空外への誘導を行なう。囮になるシンジ君を残りが援護、よろしい?」 発令所からの通信が、2機のエヴァ・パペットと3人のエヴァ・チルドレンに今回の作戦を伝達する。 「目標の能力は不明よ。だから近付き過ぎないように注意して。」 「「「「「はい。」」」」」 ミサトの注意に直接実戦に参加する要員が声を揃えて返事をする。 そして、エヴァサイズの戦斧…スマッシュ・ホークを装備した零号機、弾丸を電磁加速して撃つライフル…パレットガンを装備した初号機パペット、荷電粒子プラズマを射出するビームライフルを装備した弐号機パペットが、兵装ビルを掩体代わりに展開する。 また、刃を高周波振動させる薙刀…ソニック・グレイブを携えたアスカが使徒の予測進路上で待ち構え、LCL弾を装填したエアガンを携えたシンジの乗るスクーターが使徒を誘導したい方向の道路上で停車した。 「じゃ、いきます。」 部隊の展開終了を待って、シンジは射程距離ギリギリの場所からLCL弾を撃つ。 目標は、空に浮かぶ黒白の縞模様の球体。 「え!?」 だが、 「なにっ?」 その球体は、 「消えた!?」 命中直前に消え去った。 「パターン青! 使徒発見! 初号機の直下です!」 そして、シンジの足下に黒々とした影……いや、真っ黒なナニかが現れ出でシンジの周りの地面を覆い尽くした。 「な、なにこれ!?」 確固たるアスファルトから底無し沼に変容した如く、シンジは乗っているスクーターごと一気に沈んで消える。 「碇君!」 スマッシュ・ホークを放り捨てたレイの零号機が、 「あの馬鹿っ!」 超人的なスタートダッシュを見せたアスカが、 シンジがいた場所、地を覆う黒い影に向けて駆ける。 しかし…… 「うそっ! また消えたの!?」 使徒は、殺到する2人の前から忽然と消えた。 「あっち……」 視点の高いレイがアスカより先に使徒を見つけて、零号機の大きな歩幅を生かして再度駆け寄るが、またまた使徒は逃げ去る。 「それなら……」 南サオリ三士の搭乗している初号機パペットと清田ヤヨイ三士が搭乗している弐号機パペットが空中にある黒白縞の球体へ向けて手に持った獲物で射撃を始めたのだが…… またもや使徒は消えて逃げた。 「このままじゃ埒が開かないわね……。」 奇妙な鬼ごっこと化した戦場を見渡し、ミサトは溜息を吐く。 カティーが苦々しく肯くのを横目で確かめてから、マイクに向かって命令を叫ぶ。 「総員撤退!」 このままでは弾丸と労力と時間の無駄遣いでしかない。 そう判断したのだ。 「待って! まだ碇君が!」 しかし、普段は命令に従順なレイが意外にも抗議してきた。 「命令よ。下がりなさい。」 とは言え、手詰まり状態を延々と続けさせるような不毛な真似を許す訳にもいかないのであった……。 色々な意味で……。 碇ゲンドウ。 人類全体の存続の為であれば、極一部の人間の女性としての幸せの定義が世間様一般の基準からズレたとしても致し方なしと言う信念の元に行動している男は、戦禍とセカンドインパクト双方の被害から未だ立ち直れずにいる諸国を歴訪している最中であった。 「困りますよ、碇総司令。我々が見つけたチルドレン候補を連れて行かれては……」 人類文明発祥の地の一つ…イラクにあるネルフの支所の支所長が、心底困ったという顔をゲンドウに向ける。 「人類補完委員会からの通達は届いているな? これは決定事項だ。私の権限でどうこうできる問題では無い。」 自分が要求した事だとはおくびにも出さず、ゲンドウは冷たく言い放つ。 勿論、理はゲンドウの方にある。 たかが支所長如きが上部組織の意向を味方につけた最高司令官の意に逆らうなぞ、無謀以前の問題である。……特に理不尽な命令と言う訳でも無い限りは。 それでも苦い顔を隠せない支所長に、ゲンドウは口元だけを歪めた笑みを見せる。 「勿論、こちらが選抜して連れて行く候補者に見合うだけの研究協力費は出す。」 途端に支所長の腰が低くなった。 「そうですか。それはそれは、お心遣いありがとうございます。」 今にも揉み手せんばかりの態度に苦笑を深めながらも交渉を続けようとしたゲンドウの発言を、ポケットから突如聞こえて来た鋭い警告音が断ち切った。 「通信施設に案内しろ。」 傲然と要求するゲンドウの迫力に圧倒され、支所長は下僕の如く馬鹿丁寧に案内させられたのであった。 偉そうな上位者にへつらう姿勢は、彼の国の大統領相手でさんざん培われていたのだ。 ……でなければ生き残るのが困難だったが故に。 「それで、何の勝算も無しに退かせた訳じゃないでしょうね!?」 アスカがプラグスーツのままでミサトに詰め寄る。 恨みがましく見詰めるレイとパペットに乗っていた二人の少女。 彼女らに向かって、ミサトはことさらに心配無いという表情を装う。 「勿論何も考えてない訳じゃないわ。ついでに言えば、恐らくシンジ君はまだ無事よ。」 軽口でも叩きそうなぐらいの調子で語る。 目の前の少女達と言うよりも、むしろ自分に言い聞かせる為に。 「そうね。使徒の習性から考えて、使徒がシンジ君に危害を加えようとする確率は0%と言って良いわ。プラグスーツの生命維持限界である12時間が過ぎるまでは生きていてくれる筈よ。」 リツコが捕捉説明を終えたところで、少女達はひとまず落ち着いて矛を納めた。 ……まあ、必要なら何時でも再び抜き放つ心積もりなのだろうが。 「それで作戦だが、志願者をこちらで選抜して使徒に徒歩で接近させる。」 静粛さを取り戻したブリーフィング・ルームにカティーが無造作に放り出した誤解のしようもないほどシンプルな作戦は、一同から言葉を奪った。 「その際、志願者はパペット・ドライバー用に開発されたフリーサイズのプラグスーツを着用して作戦参加する。……何か質問は?」 ちなみにフリーサイズとは言え、いちおう男女用の違いは存在する。 ついでに言うと、汎用仕様の男性用プラグスーツとシンジ専用プラグスーツは全く別物と言って良いほど違ったりするので注意が必要である。 「ちょ…ちょっと待ってよ! こんなのが作戦だって言うんじゃないでしょうね!?」 硬直から復帰したアスカが質問と言うより糾弾に近い叫びを上げるが、 「いえ、現状で最も成功率の高い作戦でしょうね。」 見た目だけは同年代に見えない事もない白衣の少女…リツコが積極的に賛成する。 「何故ですか、赤木博士?」 「今回の使徒は形態こそ特異だけど、行動パターン自体は今までの使徒と大差無いわ。シンジ君を取り込んだ行為も、第3・第4・第6使徒の行為と類似の行動ね。」 南サオリの質問にもリツコは淀み無く答える。 「にも関らず、この現状になっている最も有りそうな要因は……」 固唾を飲むのすら忘れ、次の一言に全員の注意が集中する。 「好みに合わないからでしょうね。」 先程より重く深い沈黙が垂れ込める。 ミサト、カティー、リツコ、マヤ、レイの5人を除く会議に参加している他の連中の顔に大きな疑問符が浮かんで見えそうなぐらいの雰囲気を察して、マヤがすかさずフォローを入れる。 「好みに合わないって、使徒が自分と融合するのに適当な人物がいないと判断したってことですか、先輩?」 自ら立てた仮説を元に質問する形で。 そして、それは…… 「ええ、多分そう。」 リツコの推測とピッタリ一致していた。 異論を言い立てる人間がいなくなったと判断したところで、 「では、これより本作戦を“アマノイワト”作戦と名付けます。ジーベック少佐は本作戦とは別の使徒殲滅案の立案を、赤木博士と伊吹一尉は使徒の解析をお願い。」 ミサトはリターンマッチの開始を宣言した。 反撃の狼煙を用意し始めることを……。 白い…… 周りみんな真っ白で何にも見えない。 白いというのも気のせいかもしれない。 手足を伸ばしても、バタバタさせても何にも当たらない。 フワフワ浮いてるだけで、落ちる気配も無い。 息が苦しくないのは、多分張りっぱなしにしてるATフィールドとプラグスーツの生命維持機能のおかげだろう。 つくづくネルフの科学力って凄いと思う。 ところで、使徒は何処にいるんだろう。 それとも、ここが使徒の中なのかな? 以前から考えると嘘のような落ち着きで、僕は事態の変化を待つ事にした。 それより他にやれそうな事が、僕には思いつかなかったから。 ……6時間後。 「シンちゃんのガールフレンドは全滅かぁ……。さって…どうしてくれようかしら、あの贅沢もん。」 ISGFCに所属する使徒能力者以外のメンバー全員が志願し、くじ引きで決めた順番で順次投入されたのであるが…… どうやら、使徒のお眼鏡に適わなかったらしい。 その全員が無視されるか逃げられるかされてしまったのだ。 ちなみに、生身で再挑戦したレイ達も見事に玉砕してたりする。 「強硬手段ったってねぇ……。リツコ、ヤツについて何か分かった?」 ほとほと困った風情のミサトに、 「シンジ君はあの使徒に捕まった。そのことから考えると……あの“影”が本体だと考えるのが自然ね。」 ニコリともせずリツコは即答する。 「直径680メートル、厚さ3ナノメートル……その極薄の空間を内向きのATフィールドで支え、内部は“ディラックの海”と呼ばれる虚数空間…多分、別の宇宙に繋がっているんじゃないかしら。」 次いで続けられた技術的な説明が、今回の使徒の厄介さ加減を遠回しに表わしている。 「じゃあ、あの上空の球体は?」 「あれこそが影…でしょうね。」 「なるほどね……。で、使徒の好みの娘ってどんなのだか分かったの?」 使徒の性質について多少なりとも分かったところで、ミサトは目下の懸案事項についての質問に移る。 「MAGIはデータ不足と回答してるわ。」 が、返答は芳しいものでは無かった。 「そう……。なら、ネルフ職員の中から志願者募って再挑戦するしかないかしら……。強硬突入するのは残り時間が厳しくなってからでも遅くは無いでしょうからね。」 だから、ミサトは諦めずに準備を開始するのだった。 成算の低い賭けだと知りながらも。 ふう。久しぶりだな、こんなにゆっくり休めるのは……。 寝る以外にできる事が無いだけなんだけどね。 でも……退屈だな……。 このままここに居てあげても良いかもとかも思うけど、左手の甲に着いてる液晶画面に表示されたタイマーが僕の生存限界を冷厳に刻み続けている。 あと5時間。 それを超えたら、プラグスーツの生命維持機能が電力切れで止まって酸素の供給と二酸化炭素の吸着ができなくなり…早い話が空気が汚れて呼吸できなくなるらしいんだ。 幾ら僕が最近化け物じみてきたなぁと自分で思うようになってきてると言っても、呼吸ができなくなれば流石に死んじゃうに違いない。 ……それとも、大丈夫なのかな? まあ、積極的に試してみたいとは思わないけどね。 目で見ても、 耳で聞いても、 ATフィールドを広げてみても、 周囲の様子が分からないんじゃ、行動のしようがない。 救助を待つしかないと再確認したところで、僕はもう一度大きな溜息を吐いた。 結局、どこに行っても溜息とは無縁になれないんだね……と、我ながら呆れつつも。 総司令権限でマギ・カスパーから内密に、使徒に関する情報と投入された人員の氏名を訊いたゲンドウは、素早く脳内の人名リストと照合した。 『なるほど、あのメンバーで駄目だったか……ならば、あの中にいないタイプの人間を用意するのが得策だな。』 ここまではマギも行なった単純な消去法である。 しかし、ゲンドウはここからが違った。 『第12使徒…“夜”を司る使徒レリエル。アレが“影”の姿で出て来たとなれば……有効なのは、彼女らかもしれんな。』 シンジに多くの女性を引き合わせ、結びつけてきた。……そして、これからもそうしようとしている者であるが故に持ち合せている豊富な人物資料の中に条件に当てはまりそうな人物の名を見つけてニヤリと笑う。 思いついた次の瞬間、ゲンドウの指は軽やかにキーボードの上を舞っていた。 少なくとも一人の少女の運命を大きく変える事になるであろう情報を、マギ・カスパーへと教える為に……。 残り時間が3時間を切ったところで、僕のATフィールドに何かが触れてきた。 ……何だろう? いや、この感触は……誰だろう? 取り敢えず、諸手を上げて受け入れる。 僕の領域に入って来る小柄な身体……。 僕の広げた腕の中に落ちてきた柔らかな感触……。 「君は!?」 その女の子は… とても申し訳なさそうに、プラグスーツに包まれた小さな身体を縮こまらせて呟いた。 「先輩……」 「どうして、こんな所に?」 以前不良に絡まれていた所を助けただけなのに、何で? 名前も知らないし、あれから会った事も無いのに…… 「先輩が…危ないって聞いたから……それで……」 あ、もしかして……彼女があの匿名の手紙の差し出し主なのかな? 違ってたら困るから、訊くに訊けないけど。 「そうなんだ。ありがとう。名前、聞かせて貰えるかな?」 その女の子を軽く腕で抱き締めたまま訊ねると、 「矢矧…矢矧チカゲです……。」 凄く身体を硬くして、ますます縮こまっちゃった。 困ったな……怖がらせる気は無かったんだけど……。 ──ちなみに、この鈍感野郎は、自分が今にもキスできそうな至近距離で無防備な満面の微笑みを見せつけたのが硬くなってる原因だとは全く気付いていない。 「矢矧さん……事情、聞いてる?」 昔の僕を見ているような気がして、ゆっくり丁寧に訊ねる。 「は、はい。でも……」 震えている彼女を、これ以上怖がらせない様にできるだけ優しく問いかける。 ──別に怖がっている訳じゃない事に、ジンジは未だ気が付いていないのだ。 「でも、なに?」 「私なんかで……その………ご迷惑なんじゃないかって……その…………」 ここまで言われて、僕はやっと事情が飲み込めた。 「全然迷惑なんじゃないよ。むしろ、僕で良いのか心配なぐらいだし。」 この子は、本当に昔の僕にそっくりなんだ。 自分に自信がまるで無くて、凄く引っ込み思案みたいに見える。 今でも、その傾向はあるけど……。 「そんなこと……ないです。」 首を小さく横に振って否定してくれる彼女が、やけに可愛らしく思えてくる。 と、その時、彼女と使徒の姿が重なった。 ……もしかして、僕がATフィールド張ったままだから使徒が出て来ないのかな? それなら…… 僕は、僕が張っているATフィールドの強度を意識的に弱めてゆく。 そして、この真っ白な空間の全てを受け入れようと想いを広げてゆく。 拡散して、無に還る。 白い空間に僕が溶け混ざる。 『出て…おいで……』 声にならない“声”に答えて、白黒の縞模様の球体が何処かから出て来たのが見えたような気がした……。 その頃、発令所では…… 「状況はどう?」 「変化無しです。」 ミサトの確認に、日向が即答していた。 「待つっきゃ手は無いか……。しっかし、自分から志願するような“積極的な人間”とは合わないなんて盲点だったわ。」 マギが弾き出した結果に従ってシェルターに避難していた壱中の女生徒の一人を説得して突入して貰ったのは5分前のこと。 「そうね。言われてみれば単純な事よね。」 ミサトのぼやきに相槌を打ち、しかし視線は計測機器の計器盤から外さないリツコ。 「通常部隊による封鎖線を突破した連中は、現在0。戦自の封鎖線の方はどうだ?」 「戦自の方も0です。」 こういう時だからこそ、テロリストや工作員への警戒に余念が無いカティーや青葉。 混乱に紛れるのは潜入の常套手段であるからだが……マギに直結された警戒システムと応援込みで師団規模の兵員の双方を出し抜いての侵入は困難を極めていた。 「予備作戦の参加メンバーは電磁カタパルトにて待機。状況がヤバくなるか残り時間が無くなるかしたら出すわよ。覚悟しといて。」 さらに、シンジによる使徒殲滅に失敗した時の救助及び戦闘要員が用意される。 例え切り札があっても、それが効かない場合の手段を2手3手と用意する。そこまでして初めて万全の体勢と言えるのだから……。 ぐったりとしたチカゲさんの身体におずおずと触れた白黒の巨大な球体は、僕の目の前でどんどん吸い込まれていった。 何回見てもシュールで見慣れない光景だけど、別に気味悪くは感じない。 チカゲさんも使徒も僕を受け入れてくれる“ヒト”だから。 キスの雨を顔中に何度も降らせて少しふっくらした頬の感触を楽しむ。 初めは少しもがいてたけど、すぐに僕の腕に全身を預けてくれたチカゲさんの肢体を優しく抱擁したまま深い深いキスに移る。 2本の三つ編みにまとめられた長い髪の片方を右の手に取って、刷毛みたいにして背中を撫でる。……あ、可愛く喘いでる。もう声を出す余裕も無いのかな? 少しだけ抱擁を緩めて、いやらしい筆と化した髪の一房を首筋経由で胸までなぞる。 スーツの生地を押し上げてる筈の控えめな膨らみがありそうな場所を念入りにグリグリすると、いきなり激しく痙攣して全身を引き絞らせて……また、ぐったりと僕に身体を預けてくれた。 可愛い。 何をやってもって訳じゃないだろうけど、こうしていると彼女は僕の一挙一動に反応してイってしまう。 何をやっても許してくれそうな気がする。 だからこそ、ついつい度を過ぎてしまいそうな自分を抑えて優しくシテあげる。 幸いと言うか何と言うか水中とか宇宙とか…凄く特殊で変則的な場所でのHは何度か経験してるから、だいたいのコツはもう分かってる。 僕は胸に固執していた右手を身体のライン伝いに下へ撫で下ろし、女の子の部分の周囲にそっと指を這わせ始めた。 全身を蕩かしているだろう甘やかな刺激に、彼女が耐えられなくなるまで。 期待で待ち切れず自分から口を開いたのが生地越しでも分かる時まで。 伏目がちの眼差しが懇願の色を帯びて訴えかけて来るまで。 ……そうなるまで、長くはかからなかった。 「……ぁぁ……そんな………ぃゃ……ゃ…………くうっ! ……ぁぅ………」 羞恥心が言わせる最後の弱々しい抵抗、 情欲に飲まれそうになりながら呟く口だけの抵抗。 「嫌ならここで止めるかい?」 そんな抵抗を捕まえて、卑怯な台詞を耳打ちする。 僕が罪悪感を感じたくないばかりにやらかした、残酷な仕打ち。 身体を離すフリをすると、必死にしがみついてくるチカゲさん。 「続けて欲しいの?」 辛うじて分かるぐらい小さく……でも、ハッキリと肯いた彼女の女の子の部分に右手を当てて訊ねる。 「良いかい?」 やはり小さくコクンと肯いた彼女の瞳には恐れと情欲と羞恥と……そして、期待と信頼が映っているように感じた。 だから僕は、指で良くほぐした彼女の女の子の部分を、とっくに準備完了している股間の肉槍で一気に貫き通した。 痛みを感じる時間が少しでも短くて済むように。 「あ! あああああ!!」 奇襲を受けたのは、その時だった。 「う、うわっ!」 それでなくても良かった締りが急に増して、僕の弾薬を絞り出す。 初めての挿入でいきなりイクとは思ってなかったから不意を打たれちゃったんだ。 ドクドクと脈打つ肉槍から彼女の中の深いトコロに白濁のマグマを流し込み終えた時、うっとりと目を閉じたチカゲさんは僕の胸に顔を預けて気を失っていた。 ……幸せそうに微笑みつつ、僕と下半身で繋がったままで。 でも、ちょっとした心配もある。 この空間からどうやって出よう。 それに、使徒殲滅が終わってるかどうかも分からないし。 少し酷かもしれないけど、小ぶりだけど肉付きの良いお尻を両手で鷲掴みにしてこね始める。 第2ラウンドを開始する為に……。 「そろそろ時間ね。」 シンジが着てるプラグスーツの生命維持限界の一時間前。 電磁カタパルトに集合した10人の女性達は、一致結束してある作戦に打って出ようとしていた。 「そうね。」 リツコがミサトに相槌を打った時、T−300からのカウントダウンが始まった。 300秒……つまりは5分間である。 「では、もう一度作戦を説明する。赤木博士、伊吹一尉、秋月姉妹の4人で使徒のATフィールドに干渉、残りの6人が“影”…ディラックの海に突入する。」 真剣な様子でカティーの説明に頷く9人。 ……そう。今回はカティー本人も突入メンバーになっているのだ。 鈴原ハルナ────────サキエル 洞木ヒカリ────────シャムシエル 霧島マナ─────────ラミエル カティー・ジーベック───ガギエル 秋月スズネ&秋月コトネ──イスラフェル 葛城ミサト────────サンダルフォン 筑摩シズク────────マトリエル 伊吹マヤ─────────サハクィエル 赤木リツコ────────イロウル 今まで打ち倒し、仲間にして来た使徒の力を持つ者……その全員を一度に投入するほどの大作戦の目的はと言うと…… 「戦術目標の第一は、サードチルドレン──碇シンジの救出だ。各員の奮励努力を期待する。」 やはり、これしか有り得ないだろう。 「……50………40……」 カタパルトデッキの隅々まで響くカウントダウンが進むに連れて緊張感が満ちてゆく。 だが、 「…3じゅ…使徒が! 使徒が消えていきます!」 カウントを読み上げていた日向の声が、突如絶叫に変じた。 「なんですって! 探知急いで!」 負けじと命令を叫び返すミサトだったが、 「探知できません!」 返って来たのは青葉の無念そうな報告だけだった。 「何て事なの……」 悄然となる一同。 シンジがいなくなる。 ただそれだけの事が心臓を引き千切りそうなほど痛い。 「と、とにかく…こうしてても始まらないわ。地上に出…」 焦燥に駆られたミサトの発言を、 「あ、あの〜。使徒、撃退できてますか?」 当の愛しい少年から入った通信が断ち切った。 「「「「「「「シンジ君!!!(おにいちゃん! 碇君! 御主人様!)」」」」」」」 沈んだ雰囲気は驚愕で一掃され、歓喜がその場所を占拠する。 「通信を逆探知、使徒の波長パターン探知急げ。」 そんな中でも冷静なカティーの指示が発令所を速やかに動かす。 「発信位置は第3新東京市立第壱中学校、パターン青は観測されていません。」 青葉の報告は、今回の使徒戦が勝利に終わった可能性を示唆していた。 新たなお仲間…使徒能力者…が生まれ出でた可能性を……。 その15分ほど前 インカムから聞こえるアラームの音にシンジは気付いた。 「う……あと1時間切ったのか……そろそろ戻らないと……」 未だ得体の知れない白い空間の真っ只中に漂っているシンジは、下半身で繋がったまま気を失っている女の子を腕に抱いたまま途方に暮れていた。 「どうしよう……全然起きてくれないよ……」 何とか起こすのに成功しても、直ぐに達させて失神させてしまうのだ。 刺激が強過ぎるのも考え物である。 「と、とにかく抜かないと……」 潤滑油の助けを借りて肉の連結器を抜き去ると、蓋が外れた肉穴から白く濁った液体がドロリと溢れ出て太股どころか膝まで濡らしてゆく。 処女膜を破った名残の紅は、これでもかとばかりに流し込まれた精と滲み出てくる汁の白に洗い流され、既に痕跡すら留めていない。 「起きてよ……ねぇ、起きて……」 耳元で囁いて腕に抱いた女の子を揺らすシンジだが、寝息が気持ち良さそうな喘ぎ声に変わっただけで全然起き出す気配は無い。 「……どうしよう……。」 改めて困るシンジだったが、追い詰められた人間というのはナニを考えるか分らない。 いや、ある意味前向きな思い付きかもしれない。 起きないなら、起きなくてもどうにかする方法を模索しようと言うのは。 まずは互いの方を向いている身体を前後反転させ、肉槍に再び差し込む。 両腕で両の乳房を包み込むように触る事で身体をしっかりと固定する。 次は…… 「え、ええっと……こう動かしてみたら出られるかな?」 シンジは、自らの肉体とATフィールドを駆使して、相手の身体とATフィールドを動かし始めた。 まさに肉の二人羽織状態である。 「……って、え? うわぁぁあぁぁぁぁぁ!!」 が、しかし、幾ら繊細な操作を身上にしているシンジのATフィールドとはいえ、初めてやる事……しかも、本来は自分の能力でも無い事をやらかそうとするのは流石に手に余る事であった。 轟音と共に2人が折り重なって墜落したのは、影のような使徒の身体があった場所でも上空の球体でもなく、学校のグラウンドのど真ん中であった。 「痛っ……プラグスーツ着てなかったら折れてたかも……」 悶絶一歩手前の有様で肉槍をどうにか引き抜き、大きく息を吐くシンジ。 幾らATフィールドと特殊素材の護りがあるとは言え、連結したままで落下したのは非常に拙かったらしい。 直ぐには立つ事さえ難しい程の鈍痛の嵐の中、それでも手放さず自分の上に庇っていた女の子が着ているプラグスーツの左手甲にある液晶画面にメディカルチェック・モニタを呼び出して彼女の方は無事らしいのを確認したシンジは、発令所へと連絡を入れるのをようやく思い出したのだった。 茜に染まり始めた空を仰ぎ見ながら。 粘り気のある水を掻き回す音、何かを啜る音、漏れ出る嬌声、悲鳴にも似た絶叫。 『ふう。やっぱりこうなるんだね……。』 そんな音の中、シンジは内心こっそり溜息を吐いた。 急いで駆けつけた11人の乙女達の内の一人、シンジの奴隷を自認する筑摩シズクが愛しの御主人様の局部に体内で精製した薬品を舌で塗して治療していた行為は、いつのまにか口唇奉仕へと変じ……シンジが我に返った頃には遅れて到着したレイをも巻き込んだ乱交状態に突入してしまったのだ。 幸いというか何と言うか、治療の為にプラグスーツを脱がなければならなかったので予め裸になってアレコレしても差し障りが起き難い場所……つまりは、学校内にある連れ込み部屋へと河岸を変えていた為、御乱行の様子を一般市民の皆さんにもれなく大公開と言う破目に陥る事だけは辛うじて回避できていた。 『でも、何か考えておいた方が良いかな? このままだと、何かの拍子で直ぐ牝奴隷のスイッチが入っちゃうようだから……躾が甘かったのかなぁ?』 今後起こり得る惨事を回避する方策の必要性と共に、シンジは今回の乱交から少々の懸念を読み取った。 それは、 『視姦だけでイッちゃうアスカは良いとして……チカゲさんみたいに消極的で呼ばれないと隅でじっとしてるような娘だと“恋人”みたいなポジションで自由にさせてると上手くいかないんじゃないかなぁ……。』 と言う事だった。 『もしかしたら、奴隷とかペットみたいに可愛がられる方が向いてるかも……。』 会ってから間も無いのにそんな事まで解るのを自分でもいぶかしみながら、シンジは最後まで粘ってたミサトの口の中に白濁の御馳走を流し込んでイカせた。 これでもう、意識を保っているのは傍観に徹していたチカゲしかいない。 「おいで。」 シンジが誘うと、チカゲは浜に打ち揚げられたイルカのように死屍累々の戦場跡を何とか踏まないよう気を付けながら近付いて来る。 幼児体形をようやく脱し、くびれ始めてきた腰つき。 前途に期待か、はたまた既に限界なのか、洗濯板よりはマシと言う程度の胸の膨らみ。 下生えが萌え初めてすらいない無毛の割れ目。 そこから滴り、太股を濡らす白く濁った粘液。 それらのモノを2本の腕で一生懸命隠しながら、隠し切れず近付いて来る。 一歩一歩確実に。 だが、あと一歩で暖かな胸に飛び込めるだろう位置で、 「そこで止まって。」 シンジは彼女を制止した。 情欲に溺れてしまいそうだった瞳が驚愕の色に変わり、それでもシンジに言われた通り従順に止まるチカゲ。 「少し話がしたくて。」 物問いたげな視線に答え、シンジが理由を説明する。 そう、これからとても大事な話をしなくてはならないのだ。 「チカゲさんは、これから先“恋人”として扱われるのが良い? “奴隷”として扱われるのが良い? それとも“ペット”として扱われるのが良い?」 それは、人生の分岐点。 「それとも……こんな僕なんか捨てちゃう方が良い?」 これから先の二人の関係、その選択だった。 「あ……あの………それって、どう違うんですか?」 しかし、おずおずと返ってきたのは、ごもっともな疑問だった。 「(う…そりゃあ、普通は知らないよね……)じゃ、じゃあ……取り敢えず全部やってみてから選んで貰うって事でどうかな?」 「は、はい。先輩がそれで良いなら喜んで。」 比較的対等に近い関係の“恋人”、所有者への奉仕を旨とする“奴隷”、飼い主に愛玩される従属物の“ペット”……この3つのシチュエーションで行なった3度のHの結果、 「ペットで、良いですか?」 彼女が選んだのは、そういう関係だった。 「うん。よろしくね、チカゲ。」 優しく見詰め返された瞬間、少女は愛しい少年に所有される悦びだけで極みに達した。 自らの生きる意義を規定してくれる存在を得た悦びで……。 コンフォート17。 ある一人の少年に身も心も捧げた乙女達が住む場所、 そして、その少年が住むところ。 故に、廊下からして少年以外の男にはとても見せられないような状態であった。 具体的に言うと、パジャマ姿や下着姿で闊歩するのはまだ可愛い方で、トップレスやボトムレスや全裸……果ては局部や乳首などの部分“だけ”が露出するような下着や柔肌が透けて見えるような下着を履いて往来している者すらいるという有様であった。 勿論、その多くは愛しの少年の目を楽しませ誘惑する為なのであるが、単に着替えを忘れたなどの理由の場合もある。 どちらにしても少年の視線に自らの肌を晒して平然とした態度を保ち続けられる女性はここにはおらず、今更慌てて大事な所を隠そうとしたりとか、見られるだけで極みへと導かれたりなんて事も起こったりするという、ある意味無法痴態……もとい、無法地帯。 そんな中を、多少は慣れてきたとはいえ未だ頬を赤くして艶姿をできるだけ直視しないよう気をつけている少年……碇シンジが、新規入居者を自ら案内していた。 なお、新規入居者は至極当然の事ながら女性である。 「素敵なところですね。」 この有様を直視した彼女が開口一番言ってのけた台詞は、こうだった。 「そ、そうかな?」 「ええ、直ぐにでも仲間入りしたいぐらいです。」 着ていた青いサマードレスを本気で脱ぎ出そうとした彼女を、シンジは慌てて止める。 「ちょちょちょっと、ここ、廊下だから……その……」 ドレスと同じ青い瞳で少年と視線を交えた少女は、にっこりと微笑んで頭を下げた。 「私とした事が些か無作法でしたね。すみません。」 そして、また少年の後について移動する。 9−A−5号室。 そのドアの前に立ったシンジは、手に持ったIDカードを使ってドアを開いた。 「この部屋で良い、ナスターシャさん。」 「ええ。私一人には勿体無いぐらいです。」 3LDKでバス・トイレ完備。 彼女が今まで住んでいた邸宅とは比べ物にならないが、それでも一人で使うには充分に贅沢な部屋。 セキュリティもほぼ万全に近く、おまけに同じ屋根の下には愛しの君まで住んでいる。 これで文句を言ったら罰が当たるというものだろう。 ……親は泣くかもしれないが、彼女の場合だと既に両親とも他界しているので問題は全く無い。 「御主人様、お掃除は終了致しました。」 約一名が妄想の果てへと旅立とうとしている時、部屋の奥から現れた雑巾の入ったバケツとハタキを携えたメイド服の女性のかけた言葉がナスターシャを我に返らせる。 「ご苦労様、シズク。」 「ありがとうございます。」 お褒めの言葉を頂いて満面の笑みを浮かべている女性のまとうメイド服は、巷に溢れているコスプレ用の紛い物などではない。れっきとした本物であり、作業着である。 「あ、あの……この方はどなたでしょうか?」 不思議そうに問われて、ようやくシンジは紹介する必要を思い出した。 「このコンフォートの管理業務をしてもらってる……」 「シズクです。以後よろしくお願いします。」 通っていた大学を自主退学してコンフォート17専属のハウスキーパーに転身した筑摩シズクは、普段はこういうメイドサーヴァントの姿で家事労働に勤しんでいた。 ここに入居してる女性達……特に未だ現役の中学生の少女達を始めとするメンバーの中には、家事労働が苦手というか、できない人間も多々存在していたからである。 ちなみに有償サービスで、報酬の支払い方法は現金の他、物品を貰うとか、別の事で助けて貰ったりとか、シンジとのHの時に同席させて貰うとか……多種多様な方式が用意されている。 あと、シズクの業務としてはマトリエルの使徒能力を生かして保険室に常駐している看護婦の手に負えない急患を治療したりする事もあるが、今回の話ではあまり関係無い。 「ナスターシャ・ドカチェフです。こちらこそ宜しくお願い致しますね。」 優雅に一礼したナスターシャとシズクが再び頭を上げると自然と視線が絡み合い、どちらからともなく微笑み合う。 傍目から見ると非常に不思議な事に、シンジの“女”となった女性達同士はドロドロとした嫉妬や憎悪を向け合う事はほとんど無く、総じて仲が良かった。 誰かを憎み弾き出そうとすると、何故か自分が世界の全てから疎外されていると感じて苦悶する羽目に陥るといった事態が何度か起こった事と、強いて気にしようと思わなければ別に気にならないぐらい毎日が何故か幸せに感じる事、そして……他の女性が間近にいる事で心地好い気分になる事も否めない事……が、深刻な喧嘩が起きてない理由である。 「シズクへの御褒美だけど、後でって事で良いかな?」 申し訳なさそうな少年の頼みを 「はい。」 即答で快諾するシズク。 御主人様に御褒美を貰えると聞いただけで股間を濡らしてうっとりする淫乱奴隷にシズクが早変わりしなかった。……つまりは、首輪を用いての新しい躾がどうやら上手くいったらしいと満足げに見極めると、シンジはナスターシャに向き直った。 「何か聞いておきたい事あったら今のうちに聞いておくけど……何かある?」 「聞いておきたい事じゃないんですが……」 と、前置きしようとして口篭もるナスターシャ。 「なに?」 「私がここに来る事になったので、今まで住んでいた家を手放す事になったのです。そこで、その家での最後の思い出としてホームパーティーをする事にしたのですが……シンジ様に是非ともおいでいただきたいのです。」 ペコリと頭を下げたナスターシャが、身体は前傾させたまま顔を上げる。 「駄目……ですか?」 ちょうど上目遣いになる角度で。 シンジは、悲しいほど押しに弱い。 譲るべきでない状況では驚くほど頑張るが、それ以外は譲ってしまう事が多かった。 故に…… 「うん。いつ?」 いともあっさりと承諾してしまったのだ。 「今日から一週間以内なら、シンジ様の都合に合わせられます。いつが宜しいですか?」 その選択が何を自分にもたらすのか、全く気付かないままに。 約束をした日から3日後に当たる土曜日の午後、シンジは学校から直接会場となる屋敷へと案内された。 「ここ…なの?」 其処はシンジの感覚では充分豪邸に見える洋館で、普通の家なら優に5軒は建てられる庭ごと生垣で囲われた…別世界のような気がする場所であった。 「はい。お気に召しませんでしたか?」 気後れしているシンジの態度を乗り気じゃないのではないかと案じて表情を暗くするナスターシャ。 「こ、こういう所来るの初めてで……その……」 招待主で案内人の沈んだ表情を見てフォローしようとするが中々言葉が見つからず難渋するシンジの苦境を、ナスターシャの方が気付いてにっこりと微笑む。 「そうなのですか。でも何であれ“初めて”はございますもの……お気になさらずに楽しんでイって下さいませ。」 「うん。」 動揺してたシンジは、微妙な抑揚が醸す含みに気付けなかった。 もっとも、気付いたところで彼には今更どうにもできないだろうが。 言われるままに案内されると、その広間には思い思いのドレスに身を固めた5人の少女が待ち構えていた。 「皆様お待たせ致しました。こちらが私のステディになって下さった碇シンジ様です。」 紹介した途端……いや、姿を現した途端に集中した視線の圧力で気弱そうな少年はたじたじと後退りしそうになる。 「よ、よろしく。」 たどたどしく少年が頭を下げた時、『冴えない男に引っ掛かって……』と蔑んでいた雰囲気が劇的に変わり始めた。 一言で言えば、少年の一挙一動から目が離せなくなってしまったのだ。 「で、こちらが私の友達の皆様です。」 人種も国籍もバラバラだが同じ外国人学校に通っているという共通点を持つ5人の少女達がそれぞれに挨拶すると、シンジもそれぞれに曖昧な微笑みを浮かべつつ会釈する。 その度にナスターシャの友人の少女達の心の中に生まれてしまった“ある衝動”は加速度的に肥大化してゆく。 「では、シンジ様。一曲お相手して下さいませんか?」 優雅に差し伸べられた右の手を前に躊躇するシンジ。 「えと……僕、こういうので踊った事無いから……」 何時の間にか始められた緩やかな調べ…実は、ナスターシャがリモコンでオーディオのスイッチを入れてCDを鳴らしただけなのだが…の中で困惑して立ち尽くすシンジに、 「何事にも最初はございます。私の方で合わせますから。」 微笑みかけ、手を引っ込めようとしないナスターシャ。 そうなってはシンジに否と言う気概…あるいは甲斐性がある訳も無かった。 カジュアルなホームパティーは、即席のダンス講習会へと雪崩れ込んだ。 だが、それは決して終着点では無く、単なる通過点に過ぎなかった。 「次は私の相手をしていただけますか?」 曲が終わるのを待ち構えていた日本人に似た…だが、明らかに違う雰囲気を具備した髪が短くて小柄な少女の求めに応じて、シンジが覚えたてのマナーを披露する。 「喜んで。」 ……ダンスの間、ナスターシャから小声で最低限の知識を教えられていたのだ。 普段から色々と鍛えているせいか、シンジは相手の足を踏む事も無くスムーズな足運びを見せていた。ダンスが初めてにしては上出来な部類であろう。 色白でたっぷりカールのかかった紅い長髪の少女……褐色の肌で長い黒髪を後ろで束ねている少女……木目細やかな黒い肌と髪をした青い目の少女……茶毛と紫の瞳を持つ白い肌の少女…と次々と申し込まれるダンスに応じて一回りすると、場の雰囲気はホームパーティーと言うに相応しく和やかになっていた。 だから気付けなかった。 いい加減気付けやと思う方もいるかもしれないが、シンジには気付けなかった。 ……いや、無意識に“気付きたくない”と思っているせいかもしれない。 こういう雰囲気の時が、ある意味最も危険なのだと。 「シンジ様、今度は私と“踊って”下さいますか?」 気付けないからこそ、再び順番が巡って来て艶やかに誘うナスターシャに肯き返してしまうのだ。 手を取ったシンジの腕を引き寄せて通常のダンスマナーでは有り得ないほど接近したナスターシャは、そのまま想い人の唇に唇を重ねる。 「え? ちょ…ちょっと!? 踊るんじゃなかったんですか?」 焦るシンジに、ナスターシャは妖艶に微笑む。 「はい。いつも通り私と身体を重ねて存分に踊って下さいませ。……皆様、これ以上御覧になりたくなければ、ここでお引取りを。」 しかし、好奇心が嫌悪感を凌駕してしまっているのか誰も席を立とうとはしない。 「そ、そんな…人が見てるのに……」 いきなりの急展開に戸惑い言い訳を口にするシンジを 「あら、いつもの事ではありませんか。それとも、私の事が嫌いになられたのですか?」 論破すると同時に泣き落としにかかるナスターシャ。 確かに、シンジと一対一で相手して貰えるなんて贅沢な事は最近では滅多に無いのだ。 「あ、あの…いつもは…その……」 こうなれば、シンジに勝ち目は一縷も無い。 涙目で自分の目の奥を覗き込まれたシンジは、 「分かったよ。」 溜息に代えて承諾の言葉を咽喉の奥から絞り出した。 ズボンのチャックを開いて黒々と隆起する立派な肉槍が顔を覗かせると、観客となった少女達が思わず息を飲む。 次いでシンジはパニエで膨らまされたスカートをたくし上げ、大事な場所を覆っている布着れ一枚をベルトで吊るされているストッキングはそのままにして抜き去る。 羞恥心から反射的に隠してしまおうとした手を自制して止めた彼女の秘洞が、この状況に興奮したのか既に充分潤っている事を2本の指で確認し、シンジは立ったまま肉槍を突き刺した。 そして、そのまま……シンジの足は先程まで踊っていたステップを刻み始めた。 「あ、ああああ!」 左手は肩を、右手は尻をしっかりと支え、リズミカルに“踊る”。 密着した身体と身体が僅かに擦れるのが結果的に愛撫となって少女を翻弄する。 たくし上げたスカートに気付かなければ見た目には優雅な舞踊に見えない事も無い新種のダンスがもたらす快感に、ナスターシャはなす術無くキリキリ舞いさせられる。 観客となった友人の少女達の子宮にズンと響く喘ぎを絶叫し、何度も何度も意識を白く弾けさせて、そうなる毎にステップを間違えて何度も何度もシンジの足を踏みつつ。 3分が過ぎる頃には、ナスターシャの身体は強過ぎる悦楽に休む事も許されず、ただ喘ぎ、踊り、肉槍を咥え込んでいるだけの肉人形と化していた。 そして、友人の少女達の指は無意識に自分が最も感じるところに伸び、リズムに合わせて踊り狂っていた。 5分を超える曲が終わり、ナスターシャの気力が尽きて睡魔に引き取られると、順番だとばかりに黒髪の小柄な少女が立ち上がり、シンジの近くへと寄って来た。 「次は私の相手をしていただけますか?」 先程と全く同じ言葉。 だが、求めるものが先程と違うのは外側からでも濡れていると容易に分かるスカートの染みからも明らかだ。 「……良いの、僕なんかで?」 だから、シンジは確認せずにはいられない。 「はい。」 キッパリとした即答に、シンジは特上の微笑みで答えた。 「喜んで。いくよ、メイファンさん。」 中華の大国出身の少女のスカートに手を入れ、慎ましやかな花弁に右手を当てて淫蜜が蕩けて滲み出るよう手指で丁寧に演奏する。 羞恥心が麻痺し切るまでとっぷりと快感に漬けてから唇を奪って更なる悦楽の深みに堕とし、イッた後の弛緩した瞬間を狙って肉槍で貫いた。 小柄な身体の最終防衛線が引き裂かれる激痛は、次々送り込まれる凄まじいまでの快感が押し流し、白目を剥いてのけぞらせた。 しかし、シンジは容赦しない。 初めての身体をいたわって緩やかな動きに変えたものの、全く踊り止めようとしない。 断続的に極みに上り詰めさせられて喘ぐ少女を抱きながら、シンジは辛うじて欠片ほどは働いてる良心で考える。 『やっぱり、いきなり中で出すのは拙いよね。何とか外で出さないと……。』 普通の男女の交わりなど及びもつかない……下手をすれば心が汚染されて壊れかねない快感を自覚無しに与えながら、良識的と言えるのかどうか些か疑問な答えに辿り着く。 曲のクライマックスに合わせて大きく腰を動かして抽挿したのが、メイファンに止めを刺した。 全身を弛緩させて崩れ落ちる身体を静かに床に横たえ、シンジは着崩れてしまった清楚なスミレ色のドレスの上から白濁した生臭い牡のミルクをかけた。 すると、少女は失神しているにも関らず全身を悦楽に引き攣らせ、濃密な淫蜜の噴水を噴き上げて再び全身を弛緩させた。 この世の全ての幸福を味わい尽くしたかの如き、満足そうな寝顔で。 こんな濃厚な睦み合いの一部始終を間近で見せつけられた残りの少女達の選択は、もう言うまでも無いであろう。 そうして…遂には6人全員とイタして悶絶させてしまったシンジだが、 「この人達もコンフォートに住むのかな? 空室は未だあったと思うけど……」 先々の事については、少し…いや、だいぶ考えが甘かった。 この翌日に、彼女らが第3新東京市にある外国人学校に社交ダンスのサークルを設立する事を、この屋敷がゲンドウの協力でそのサークル専用のダンスホールとなる事を、シンジがサークルに所属する事を許された唯一人の男として“ダンス”の練習や夜会に度々呼ばれる様になる事を、……そして、ゲンドウが世界各地から集めた女性達を含む多くの女性がその社交ダンスのサークルに属するようになる未来を、 シンジは考え及ばなかったのだった……。 福音という名の魔薬 第拾八話 終幕 レリエル戦終了〜。今回の使徒っ娘の人選が予め分かってたら凄い人です(笑)。 以前登場した時は名前は伏せてましたからね。 オリキャラの上に積極性に乏しい娘なので、同じくオリキャラのナスターシャ嬢の方が存在感大きいような気もします。 ……まあ、レリエルですから(笑)。 さて、今回の見直し協力は……峯田太郎さん、【ラグナロック】さん、きのとはじめさん、八橋さん、夢幻雲水さん……でした。様々な御意見と感想を頂き、まことに有難うございました。 ☆突発薬エヴァ用語集 ISGFC:IKARI SHINJI Girl Friendes Clubの略称。シンジの恋人達によって自主的に運営されている組織で、その主な業務はシンジの相手をする人間の管理である。 原則として来る者は拒まず、去る者は追わずと言う方針だが、シンジの意向次第でどうにでも変わり得る。 ちなみに去った者は今のところ一人もいない。 |
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