サモンナイト3“剣製の魔術師”第四十二


朝食後

「アティさん、シロウさん。」

俺とアティさんが飯を食い終わって、今日の日程を話していたらヤードさんが話しかけてきたぞ?

「何でしょう?」

アティさんが代表で答える。

「実は「緑の賢帝」(シャトルス)について、持ち主であるアティさん、それとシロウさんにも私の知っている限りを話しておこうと思いまして。」

突然どうして?

「昨日のソノラさんの言葉は、正直堪えましてね・・・。
私達は、剣の処遇にばかり気を取られていて、成り行きでそれを持つ事になってしまったアティさん、貴方の心情を考えていませんでした。」

むう・・・・。

そう言われると、俺もアティさんの事あまり気にせずにいた様だ。

一寸事故嫌悪に陥ってしまう。

「気にしないで下さい、私そんな大げさに悩んでいません。
それに、この剣がなかったら、とっくに私はどうにかなっていたんだし。
後悔はしていません、それは本当ですから。」

ジルコーダの件でもシロウさんを助けられましたし。

と言いながら俺に微笑むアティさん。

(ああ、安心した・・・・。)
       
その笑みに、俺は何故か切継(オヤジ)の最後の笑みと被さってしまいアティさんを思わず凝視してしまった。

「?どうしましたシロウさん?」

俺に首を傾げるアティさん。

い、いや何でもないです、アティさん。

「そうですか?」

・・・・なんで、アティさんと、オヤジの顔がダブったんだ?

「よろしいですか?」

とヤードさんが言ってくる。

あ、すいません、話の腰を折ったりして。

「いえ・・・、アティさん、シロウさん、私も昨日のソノラさんの言葉で覚悟を決めました・・・その剣・・・・「緑の賢帝」(シャトルス)について私の知っている限りの全てをお話しましょう。」

「緑の賢帝」(シャトルス)についてだって?

確かにヤードさんは何か隠している感じだったけど。

俺達は、ヤードさんの話しを聞くために、ヤードさんの部屋に移動した。

「そもそも、最初からその剣は「無色の派閥」の手によって、作られた物なのです。」

「無色の派閥」って確かテロリスト集団だったな?

そいつらは自分が正義と思っているんだろうが、大多数から見ると「悪」なんだろう。

!?

もしかしてアーチャーも自分が正義だと思っていた事は、悪になっていたのか!?

・・・アーチャーは「救う」と言っていたな?

俺は「守りたい」んだ・・・。

俺一人ではできない事でも、仲間がいれば・・・・・。

・・・俺はこの半年、更にこの世界に来てから「変わりつつ」あるようだ。

・・・・もう俺は「正義の味方」では無いのか?

俺は、そう思った瞬間、奈落の底に突き落とされたような気分になった。

「・・・・派閥の始祖とされるゼノビスが、ある目的の為に作成し・・・以来、危険な品として絶対封印されてきたと伝わっています。
その禁を破ったのは私の師に当たる人物・・・。
彼の指示により、私は剣に秘められた力を引き出す研究を続けていたんです・・・。」

その間にもヤードさんの話は続く。

「それは?」

と先を促すアティさん。

「今は失われてしまった古き召喚術の知識と、それを行使するために必要な強い魔力・・・・アティさん、貴方が抜剣した時に見せる、あの強さです。」

確かに、あのケンを抜剣した状態の時のアティさんは、肉体も魔力も著しく強化されている・・・。

「派閥の文献からは、それだけのことしか、読み取れませんでした。
剣が作られた目的も、絶対封印された経緯も全く分かりません。
ただ・・・・、師は言っていました、その剣の力を引き出す事ができたのなら、始祖が夢見た、完璧な世界への扉が開かれるだろう・・・・と。」

完璧な・・・・世界?

理想郷か?

「私の知っている事はこれで、全てです。」

・・・・そしてアティさんのケン・・・「緑の賢帝」(シャトルス)の秘密の鍵は、遺跡・・・「喚起の門」にあるようだな。

俺は、アティさんと一緒にヤードさんの部屋を出た。

(続く)




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