サモンナイト3“剣製の魔術師”第四十一話
ん?
確か俺は眠りについて、心象世界に降下したはずなんだが・・・?
気づくと俺は、和風の家の縁側に立っていた・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
此処は・・・俺の家!?
これは、夢なのか?
俺は自分の体を確認する。
・・・透けている・・・・。
「やっと呼び出せた・・・。」
土蔵から、女の子の声が聞こえる。
この声は・・・イリヤか?
土蔵の方に振り向くと、イリヤがひっそりと立っていた。
・・?
イリヤの感じが、俺がリィンバウムに行った時と違う。
そう、以前も何処か儚い感じだったが、今のイリヤは生気を感じない。
一番の違いは、髪の色だ。
銀髪のはずが、輝きの無い白髪になってしまっている。
「お兄ちゃんが、私が教えた魔術を使うのを待っていたんだよ?」
待っていた?
「うん、本当に私に残った“聖杯”の力も一寸しか残っていなくて焦ったんだけど、良かった。」
せい・・・はい・・・?
聖杯だって!?
「そうよ、シロウがどっかにいっちゃって二日後にまた勃発したのよ・・・“第六回聖杯戦争”が・・・。」
な!?
驚愕してフリーズしている俺を無視して、話しかけるイリヤ。
「本当に大変だったんだよ、私とサクラと、アインツベルンから来た者が一斉に三人とも“聖杯”になっちゃったし。
その所為か知らないけど、サーバントも21人も出てきたし。
私の呼び出したサーバントは、本当に何でか知らないけど“キリツグ”だったし。
“真祖の姫”は出てくるし。
“封印指定”の人形師が絡んでくるし。
“直死の魔眼”持ちが二人も出てくるし。
実は“大聖杯”に“全ての悪”(アンリ・マユ)てのがいたし。
“死徒二十七祖”の内七人が出てくるし。
その外の“死徒”が二人出てくるし。
“埋葬機関”の第七位が出てくるし。
お陰で、収拾はつかないわ。
私とサクラ、ついでにリンも無茶な事を連発した所為で、体どころか魂までボロボロになるわ・・・。」
一気に喋り、ため息をつくイリヤ。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
ハイ?
何か無茶苦茶になっているような気がするが・・・・。
確かに俺は半年間イリヤと遠坂に魔術を習ったが、魔術以外の裏の世界の知識は皆無に近いからなあ。
「まあ、今のシロウはあんまり理解できないだろうから、これに関する知識だけ分けてあげるね。」
とイリヤが言って、俺に向って手をかざす。
そうすると、俺の頭の中にカプセルのようなイメージが出てくる。
「間違っても今は、この知識を展開しないでね。
そんな時間も惜しいから。」
分かった。
で、今のイリヤ達、やばいんじゃないのか?
「ん?」
だって、魂までボロボロって・・・・。
「ああ、其処の所は、知り合った“封印指定”の人形師に“等価交換”で体を貰う予定だから問題は無いんだけど・・・。」
何か問題があるのか?
「魂が疲労しすぎちゃって、元の姿になる事ができないの。
つまり、リンとサクラは4歳と3歳からやり直し・・・、私にいたっては元々ホムンクルスの所為もあるんだろうけど、赤ちゃんからやり直しなんだって・・・。」
え・・・?
また俺の頭がフリーズしそうに・・・・。
「そう、お兄ちゃんを追いかけるためには少なくとも15年は後になるって事。
だけど・・・。」
そう言葉を切ってから、真剣な瞳を向けてイリヤが言葉を続ける。
「必ず、会いに行くんだから・・・、そして一発殴らせてもらうからね。
リンもサクラもそのつもりなんだから、覚悟していてね。
お兄ちゃん・・・、そして私の“弟”のシロウ・・・・。」
な・・・に・・・?
驚愕の俺を他所に、イリヤ、そして周りの景色が揺らいでくる。
「そろそろタイムリミットか・・・。
じゃあね。」
ちょっとまて!!
イリヤーーーーーーー!!!!!
ガバッ
起きてみると、カイル一家の海賊船の中だった。
しかし、俺の頭の中にはさっきイリヤに貰った知識があったので、ただの夢じゃなかった。
この後、俺は知識を解凍した後、そのとんでもない出来事に一時間ほど思考停止に陥ってしまった。
(続く)
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