サモンナイト3“剣製の魔術師”第四十四話
帝国軍のギャレオが示した本陣の場所は、ファリエルさんが言うには”暁の丘”と言う場所らしい。
早速俺達は、”暁の丘”に向う事にした。
「ごめんなさい、皆こんな事につき合わせちゃって。」
「カマワヌ・・・。」
すまなそうにするアティさんに返答するファリエルさん(ファルゼンの格好なので片言っぽい話し方だが・・・。)
おれもそう思うぞ、水臭いこと言わないで下さい。
「それに、連中には大きな借りもあるしね。」
とアルディラさんも優しく微笑みながら返答する。
・・・・どうやら、何時ものアルディラさんのようだ・・・。
この前のジルコーダの一件以来、俺はそれとなくアルディラさんを注意していた・・・。
あの時みたいな、虚ろの瞳をしておらず、知的な輝きを瞳から発している。
しかし・・・油断はできないな・・・。
と思って居るうちに、あの女隊長の率いる帝国軍が集まっている場所に着いた。
・・・約50人程度の部隊・・・、俺がいた世界風で言うと、1個中隊規模か・・・。
此方の戦力は、アティさん、俺、ベルちゃん、リゼちゃん、カイルさん、ソノラちゃん、スカーレル、ヤードさん、ファリエルさん、アルディラさん、キュウマさん、ヤッファの総勢12名。
数の上では圧倒的に不利・・・か・・・・。
一気に数を減らすためにも・・・、アレを試してみるか?
俺は、何時でも投影できるように、心象世界の中で”蒼炎・紅風”を8組16本を複製させ準備しておく。
帝国軍の集団の中から、例の女隊長が出てくる。
「来たか・・・。」
「アズリア、私の話を聞いてください。」
「話す事など、最早あるまい。
私の望みと、貴様の願いは、矛盾するもの・・・、両立する事などありえない。
ならば、どんな言葉を交わした所で、無意味であろうが!?」
アティさんの言葉を遮るように声を出す、女隊長。
「いや、それは違うぞ!!」
思わず俺は、女隊長に対して声を出す。
「む?・・・・お前は・・・初めて見る顔だな?」
「ああ、俺の名前は衛宮士郎。
アティさんの仲間の一人だ。」
「エミヤシロウ?・・・・そうか、ビジュに傷を負わせた男とは貴様だな?」
ビジュ?
・・・ああ、あの刺青男の事か。
「ああそうだ、アズリアだっけ?
アンタはこの島の事も、あのケンの事も知らないじゃないか。
まずその事を知った上で、判断を下したほうがいいんじゃないのか?」
俺の言葉に、苦い顔をするアズリア。
「・・・・よかろう、そこまで言うのなら聞いてやろうではないか。」
そして俺とアティさんは、この島の事、あのケンの事、そして最終的にはあのケンを封印するか、破壊しなければいけない事を話した。
「なるほどな・・・・、確かに無益な話ではなかったな。
帝国にとって、この島を接収する利益は計りしれん!!」
な!?
「本気か、アンタ!?
今は小康状態を保っているが、何時暴走するかわからない遺跡に、無色の派閥の危険なケン、最終的にはこれらをどうにかしなければ、いけないんだぞ!?」
俺が怒号を発する。
アティさんなんか顔が真青だ。
「無色の派閥さえ扱いあぐねた魔剣と、あらゆる世界へと続く召喚の門・・・。
これらを帝国の物としたならば、忌々しい旧王国の残党共を駆逐する力となる!!
当然、その功績は今回の失態を補って余りある物となるだろうな。」
真剣な顔で、話すアズリア。
「アズリア・・・、貴女は!?」
その返答に、足を震えつつ、茫然自失となるアティさん。
しかし・・・・アズリアは功に焦っているような気がするぞ?
「アンタ・・・、何で功を焦ってるんだ?」
「何!?」
「話を理解してなかったのか?
あんた等帝国が、この遺跡を仮に接収し、アティさんのケンを手に入れたところで、無色の派閥さえコントロールできなかったんだぞ。
専門の召還師がだ・・・。
帝国が解析できるか?無理だろ?」
「それに、功なら、私達を帝国に保護して帰っても充分な手柄になると思いますわ・・・。
私、ベルフラウと妹のアリーぜはマルティーニ家の者ですから。」
俺の言葉に続けて話しかけるベルちゃん。
おお、ナイスアイデア!
「そのような事、上層部が考えれば良い事だ。
それに貴様達姉妹の事は、捕らえた後に処置をすれば良い事だ。」
そう言って、俺とベルちゃんの提案を却下するアズリア。
・・・・やはり、何処かこの女隊長は焦っている。
「悪く思うなよ、これが軍人の思考だ。
国益や功績、相した現実的な尺度の中では哀れみや、いたわりは何の意味も持たない!!」
そう良いながら、ゆっくりと剣を抜くアズリア。
「・・・そんな考えは、軍人の考えじゃない・・・。」
「何!?」
俺の返答にいらだった表情をするアズリア。
「その考えは軍人の考えじゃなく・・・・悪!他者を踏みにじる外道の考えだ!!」
そう、俺はこのアズリアを”悪”と認識した!!
「・・・っ、最終通告だ、速やかに降伏するのだ。
剣を渡し、この島から立ち去ると言うのなら、お前達のことは見逃してやっても良い、それくらいの器量は私にもある。」
・・・・アズリアは本質は”悪”ではなく、何かの要因で”悪”の行動をしてるんだな。
まずは逆に、この帝国軍を降伏させた上で、話しかけないと、聞く耳は持たないか。
「・・・何を言っても、諦めてくれないんですね。」
「くどい!!」
悲しそうに話しかけるアティさんに叫び返すアズリア。
「アティさん、まずコテンパンに伸さないと、話も聞いてもらえないようだ。」
「え?」
俺の問いかけに、不思議そうな顔をするアティさん。
「無理に殺す必要はない、あの隊長さんを話のテーブルに着かせるためには、ドッチが上か納得させる必要があるってことだ。」
まあ、これは説得と言うより、力ずくで言う事を聞かせるって事だが・・・、殺すより良いだろ。
「そうですね・・・、私、あきらめません!!
私は自分の信じる物を貫くために、諦めたりしませんから!!」
「何だと!?」
アティさんの叫びに驚くアズリア。
「私、信じてますから、貴女なら絶対判ってくれるって事。
それに・・・、私、結構諦めが悪いんです。」
「・・・黙れ・・・、黙れ黙れええ!!
総員、攻撃開始だ!
今より、この者達を帝国の敵とみなす!!」
(続く)
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