サモンナイト3“剣製の魔術師”第四十六話
大砲の弾が飛んできた方向には、あの刺青の男・・・ビジュがいた。
「イヒヒヒ!!
いくら手前らが化け物じみてても。流石に大砲の前には手も足もでねぇだろ!?」
その脇には、発射準備完了と思われる大砲が3門もある。
く・・・、コイツ、味方ごと吹っ飛ばす気か!?
しかし・・・。
「姿が見えないと思ったら、そういう事だったワケね。」
何時でも走り出せるように準備をしながら、呟くスカーレル。
どうする・・・、カラドボルクや、”蒼炎・紅風”の投射でなら、ビジュは倒せる・・・が、流石に3発一気に大砲の弾が飛んできたら、俺なんかはともかく、ベルちゃん、リゼちゃんが耐えられない。
リスクが高すぎる・・・。
「さあ隊長殿、今の間に撤退の準備を。
・・・ちったあ、感謝してくださいよ?
俺のお陰で撤退する事ができるんだからねえ・・・イヒヒヒ。」
そう言いながらも、油断無く大砲の引き金を持ちながら、俺達を牽制するビジュ。
・・・・中々やるじゃないか・・・・、少し見直した。
「隊長、ここは・・・。」
よろよろ起き上がり、アズリアの傍に来て喋るギャレオ。
「・・・っ、撤退する。
軽症の者は、重症の者を運べ!」
判断を下して、撤退を開始するアズリア。
「アズリア!?」
動こうとするアティさん。
「テメェは、そっから動くんじゃねぇ!」
そのまま大砲の引き金を引くビジュ!
「キャアアア!!」
げ、リぜちゃんが巻き込まれる、く・・・。
「投影開始!!」(トレース・オン!!)
俺は咄嗟に盾・・・、ローライアスを投影する!!
「熾天覆う七つの円冠!!」(ロー・ライアス!!)
大砲の弾を跳じく!!
「大丈夫、リゼちゃん?」
「は・・・、はい。」
良かった、助けられた。
「ソノラちゃん、ベルちゃんも俺の後ろに!!」
「解った!!」
「解りましたわ!!」
急いで俺の盾の陰に隠れる、ソノラちゃん、リゼちゃん。
アルディラさんも岩の陰に隠れたようだ。
そして・・・、アティさんは。
「「緑の賢帝」よ!!」(シャトルスよ!!)
抜剣覚醒をした!!
大砲の弾が、彼女の包むオーラで弾き飛ばされていく。
・・・反則だ・・・・。
「イヒヒヒヒ・・・ヒ!?」
アティさんに気づき、顔がこわばるビジュ。
「ハアアアアアアア!!!」
”斬”
「緑の賢帝」(シャトルス)の一振りで、大砲の3門全て寸断してしまう。
「ひいいいい!!」
脱兎のごとく逃げ出すビジュ。
その頃には、他の帝国兵も逃げ出しており、誰もいなかった。
「どうして・・・・、私は守りたいだけなのに・・・、傷つけあいたくないのに・・・・、誰にも、悲しい思いをして欲しくない・・・、笑って欲しいのみ・・・・、それっていけない事なんでしょうか?
本気で、そう考えたら真剣に目指したらいけない事なんでしょうか?」
そう、誰かに聞いてもらってるように、独白するアティさん。
その理想は、俺の目指している「正義の味方」と非常に似ていて、綺麗だけど・・・・、歪んでいた・・・・。
「・・・ただ、一つ言える事は、考えを改めない奴は、ヒッパダいても言い聞かせなきゃならない場合があるって事・・・。
そう相手が死ぬかも知れないが・・・・。
そして・・・、9を守るために、1を捨てなきゃならない事もあるって事だ。」
「それって!?」
俺の呟きに、驚いて振り返るアティさん。
「俺も正しいと思っちゃ居ない・・・・、なあ、アティさん・・・俺達は如何すればいいのかな?」
俺の呟きに・・・、アティさんも、その呟きが聞こえた周りの皆も答えられなかった・・・・。
(第6部完)
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