ヒスアマは退場、ゲロも黒服のお兄さん方が無言で片付けてくれてスッキリ爽快。

しかし僕にとってはゲロ以上に吐き気を誘う物体が目の前に鎮座ましましている、そう!! 嬉し恥ずかし僕のお父上だよ! ああ寒気が。

ま、兎に角此処からが本番だ。始まるは一種のポーカーゲーム、チップは互いの秘密、勝者には今後の決定に付いての優先権。

さぁて? ファーストゲームの参加料は互いに払い済み、僕は立ち去らなかった事で、馬鹿の大将の方はBREMENと僕の関係を知っていると言う事実。

普段からポーカーフェイスを気取ってるようだけど知ってるよ? 僕を手放した本当の理由もサングラスの奥に見え隠れする貴方の本心も。

表情が先に引き攣った方が負け。さ、始まりだよオトウサン? チップの準備は完璧かい?

にしてもさっきから思うんだけどさ、客に椅子を勧めないってどういう了見? これも嫌がらせの一環かい? 馬鹿の大将と部下その一。

仕方ないから僕は無駄にでかい机の隅に座って大将を見下ろす位置に付いた、その一の眉がピックとしたけど知ったこっちゃ無いよね、じゃあカードを配って貰おうかな?

「それで? 何を知ってると仰るのですかNERV総司令殿?」

「・・・当然BREMEN、は知っているな」

「勿論です、これでも彼らを捕縛する側にいますからね」

BREMEN。寧ろ警察機構に属している身としてこの組織の存在を知らない者はいないだろうね、上から下までくまなく。

数年前から活動し始めた新興組織にも関わらず、中々尻尾を掴ませないし、構成員を逮捕しても無駄、何も吐かない内に自殺するか警察内部の裏切り者の手によって謀殺されるかのどちらかだ。

小さい物は窃盗から大きい物は核ミサイルすら商品にする武器密輸まで。際限無しとはこの事だ。

中には現存する全ての闇組織を牛耳ってるとか言う者もいるし、逆にそんな組織存在しない、でまかせだと声高に叫ぶ奴もいる。

でもいくら否定しても駄目だね、確実に奴らはいて今も裏でコソコソ鼠みたいに嗅ぎ回っている筈だ。

で? この大将殿はその組織と僕の「どの」繋がりを知ったと踏ん反り返ってるのかな? ソロソロ詳しく話して貰うとしようかね。

「それで? そのBREMENと僕と何か繋がりがあると仰りたいのですか? ではお聞かせ願いましょうか、それがどのような物かを、嗚呼、それから」

口を開きかけたのを制する、あ、スゲエむかついてる。ま、こういう駆け引き必要なのさ、もう少し勉強した方が良いんじゃない? そんな分かり易い見掛けの威圧ばかり磨かないでさ。

「もしその事が僕にとって身に覚えの無い事実無根の濡れ衣だとしたら・・・国連での軍法会議の被告席が貴方を待っています、その事を忘れずにいて下さい。・・・遮ってすみませんでしたね、さあ続けて下さい」

「・・・数日前、第三に何れかの組織に属すると思われる男が進入した事を監査部が察知、拘束する事に成功した。」

・・・あ〜、そう言えば僕が第三に行く事になると組織に告げた時に連絡役を先に送り込んで置くとかほざいてたっけ? 

「尋問した結果、彼が自分はBREMENの一構成員である事と、ある人物との繋ぎ役として派遣されたと吐いた、即ちお前だシンジ」

尋問、と言うか拷問じゃないの? もしくは薬に洗脳エテセトラ・・・、どう転んでもその構成員に未来は無いような気がする、まあゴミがどうなろうが知った事じゃないけど。

「態々先回りして連絡要員を配置する所から見るとお前が脅されているという可能性はないと推測される、おそらくかなり上まで食い込んでいるのだろうな。これはNERVが本気になれば直ぐに調べがつく事だ。」

それはどうだろうと心の中で突っ込んでみる、無意味だなぁとは思うけど。どうやれ此れが大将殿の手、と言うわけかレイズはもう無し? コールかい? ならば手としては現在分かってる事と此れからの未来性を合わせたフルハウスと言った所だろうか。

ならば此方もそろそろ手札を見せない訳には行くまいね、黙ってると負けを認めたと誤解されそうだし。

「どうなのだシンジ、黙っていると言う事はこれらを事実と認めると考えて良いのだな?」

ほらせっかちにもせっついて来るよ。仕方ない、彼が知っている事実は此れだけではないかもしれないし、此れだけかもしれない。でも僕は此れだけだと踏んだね、何故って? 大体は経験から来る直感だけど余りに結論を急ぎ過ぎてるかな? 本人気付いてなさそうだけど頬の筋肉が軽く痙攣してたり、視線が少しずれたり。

「結論を聞かせて貰おうかシンジ、この事実を揉み消す代わりにエヴァに乗るか、それとも全てを失うか。どちらだシンジ。」

うはぁ、見た? 今のニヤリ笑い、子供が見たらトラウマ物だね、夢に出るよ。ま、それは置いといて焦らしはもう良いね、良かろうお馬鹿の大将殿。僕の答えを聞かせてあげようじゃないか、さぁその耳かっぽじって聞くが良い!!

「それではお答」

すっげえナイスなタイミングで卓上の電話が鳴ったよオイ。狙ってたのか? ネタか? 全く素晴らしい組織だね。おお、物凄い不機嫌だよ額になんか浮かんでるもん。

「・・・私だ、何だ。・・・何? ・・・直ちに警報発令、葛城一尉は使えないので部長補佐に指揮権を移して対応しろ。・・・それは問題ない、直ぐに動く、そうだ、では切るぞ。」

電話を置き、元の腕組みポーズに戻った大将、さっきから言いたいんですけどそのポーズ、あんま似合って無いよ?

「シンジ」

「何か?」

「使徒が現れた、今すぐ決断して貰おうか。乗るか、乗らないか。」

嗚呼、どうやら運命は僕に考える時間もくれないようだ。良いよ? 良いだろう! 聞かせてあげようじゃないか。

「了解しました、私の結論をお伝えしましょう。僕はエヴァに・・・搭乗します」

あ、固まってる。

「・・・今、なんと言ったのだシンジ」

うわ、すっげえ間抜け面。

「エヴァに乗る、と言ったのです。なんと聞こえました?」

「本気か?」

そう言ったろうがよ大将。その年でアルツハイマーかい?

「無論です。先程のBREMENと私の繋がりに付いて何も言う事はありませんが、使徒もまた人類にとって害悪である事は確かです。故に罪無き民草の盾として、エヴァに搭乗する覚悟を決めた次第。」

「・・・認めると思って良いのだな?」

「想像にお任せします」

「・・・良いだろう。・・・赤木博士を此処へ、ああ、サードがチルドレン登録を受諾した」

オイオイ、其処までしてねえよ何時言ったよ大将。お前は捏造大国韓国かっての。

「・・・そうだ、ああ、では。・・・ではこれからお前はネルフ所属のチルドレンとして扱われる」

「それは不可能です、仮にも組織のbQが下部組織の下に配属されると言う事は考えられません、譲歩して派遣、協力関係が妥当だと思いますが? 別に命令拒否を連発する気は無いですよ、酷すぎる場合はその限りではありませんが、どうでしょう」

「・・・良かろう、その程度の譲歩は此方もすべきだ」

「では細かい事は使徒を殲滅した後で。この場は此れで失礼します碇司令」

開いたドアから赤木博士が入ってくる、まだ冷静な頭の持ち主だとは思うけどこの馬鹿の大将に女として入れ込んでる所を見ると、矢張り頭の螺子が数本最初から無いのだろうね、ウン。

扉へと戻りながら横目で椅子に座り続ける男に視線を向けてみる、こうも話が上手く運んだ事を不思議に思ってるね? でもきっとアンタの事だ、横の爺さんから突っ込まれてもこう言うんだろうね、

―問題ない―

って。ま、取り敢えずは当初の此方が予定した通りに話が進んでるよ、え? 脅されたのに此方の思う通りとはどういう事かって?

ふふ、知りたい? それはもう色々あってね・・・、うう、くく・・・わ、笑いが止まらない此処までアッサリはまってくれるなんて・・・クッククク・・・あ〜駄目だ! 此処がネルフじゃなきゃあ大声で笑うのになあ!

「どうかした、シンジ君」

「いえ、何でもありません赤木博士。強いて言えば・・・」

「何かしら?」

「罠にかかったウサギを見る気分、とでも言うのでしょうか? あ、あれはそう可愛い物じゃないですね」

「え?」

「あ、戯言です、忘れて下さい」

どういう事かは後で説明するとして・・・、早速そのネルフの切り札とか言う奴を見せて貰いましょうか? エヴァ、って奴をね。



後書き?

どうも、管理人です。
取り敢えずエヴァ搭乗受諾まで来ました、ごねると思ってた人間違い、意外とアッサリ承諾しましたね。
ま、本人の言った通りゲンドウは罠にどっぷりはまっただけなのですが・・・。

現れた第四使徒「シャムシエル」、それに対抗すべく初号機起動を急ぐネルフを他所にシンジは激しい戦いを強いられていた。

誰に気付かれる事も無い孤独な其れ、其れは狭きエントリープラグの中で。

次回Rock.3『Depth Psychology』

お楽しみに。


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