8DAYS






[リーマスの日記]

7月29日
 夏はやっぱりあんまり好きじゃない。特に朝の気だるさがいけない。冬はいつまでもベッドに潜っていたくなるけど、夏は起きてても寝ててもだるくて嫌だ。マグルの作ったクーラーという冷房機器は賞賛に値するが、シリウスが長い間つけるのを嫌がるから困ったものだ。おかげで眠いのにだるくて目が覚めてしまったじゃないか。
 仕方なく起きて着替えて居間へ行ったら、鼻歌交じりにシリウスが洗濯物にアイロンをかけていた。また乾燥機の前でじーっと回転ドラムを眺めてたんじゃないだろうな。彼は回転する物が好きなのか、乾燥機と電子レンジを眺めるのが好きだ。特に電子レンジを初めて見たときは、『こ、これがあのナチスが作った人体破壊兵器の慣れの果てか!』などとわけのわからないことを言っていた。アズカバンでの12年に及ぶ有り余る時間で、退屈しのぎに本を読みまくったらしい。全く、いらん知識をふやしおってからに。
 ああ、それにしてもやっぱり昨日は一回でやめておくんだった。先日の満月でここのところご無沙汰だったし、ハリーが来たら当然できなくなるから、と誘ったのがまずかった。久々にするといつも以上に凄く良くて、ついつい明け方まで……。シリウスも途中でやめてくれればいいのに、おかげでこっちは腰は痛いわ、身体中だるいわ、寝不足で欠伸は出るわで大変だ。わたしよりはるかに早く起きてるだろうシリウスは、何だってあんなに元気なんだか。その体力を少し分けて欲しいもんだ。

 午後に迎えに行ったとき、ハリーは少し緊張した面持ちで日陰に立って待っていた。背は伸びたけど面差しはやはり子供のもので、シリウスが思いっきりハグして彼を困らせていた。目を白黒させながらも照れたように笑うハリーは子供らしくて可愛い。わたしたちにもこんな時期があったのかと思うと、何だか石器時代のように遠い昔に思えてしまう。
 ハリーはシリウスが車の運転ができることによほど驚いたらしく、シリウスお手製の車を見てはしゃいでいた。お世辞にも綺麗とは言いがたいが、性能は悪くない車なので、ハリーはあれがつい最近までスクラップだったとは考えつきもしなかったようだ。ハリーは車中どうやって彼のおじさんを懐柔したのか知りたがったが、それはあまり子供に教えるようなことではないので笑って誤魔化しておいた。シリウスは何か思うところがあるのか、知らない方がいいとか言っていたけど、まぁ、真相は闇の中のほうが何かと都合が宜しい。

 夕食の準備を三人でしたのだが、ハリーとシリウスは本当の親子みたいだった。キッチンの窓際に置いたラジオから流れる音楽に、二人して楽しそうに歌いながら料理をする。わたしはよく知らないのだけど、ある曲が流れたときに二人が同時に『Go Back, Candy house』と叫んでいたのが何だか凄く微笑ましかった。
7月30日
 面倒なことに今日は急に仕事が入った。誰かがこの日記を読んでしまうことを考慮して内容は記さないでおくが、折角取った休暇を一日返上するはめになったのは事実だ。シリウスはもう何も言わないけれど、時々胡散臭そうな目でわたしを見ていることは知っている。まぁ、どうせ彼に真実を知るような機会は永遠に訪れないだろうが。

 どうにか仕事を片付けて家に戻ると、いつの間にかルーさん一家とバーベキューをすることになっていた。誰にでも愛想良く、ただし深入りはしないというルールをここに来たばかりのころ取り決めたが、近所付き合いはやはり大事だ。ルーさん一家は凄くいい人たちだから、何もバーベキュー程度を断る必要は無いだろう。
 ブルースとツィーの兄妹は最近パッドフットの姿が見えないことを残念に思っているらしいが、シリウスと遊ぶには無理な願いだ。以前に、パッドフットはある老人ホームの院長に気に入られて、今は介助犬として活躍してるんだよと言っておいてあるから、もうパディに会いたいとは言い出さないだろう。ちゃんと仕事の重要性を理解しているのだ。ルーさん夫婦はきちんとした教育をされている。
 どうやらハリーはブルースとツィーを気に入ったらしい。ひょっとしたら自分の弟妹のような気がしているのかもしれないが、楽しそうに三人で遊んでいた。その微笑ましい光景を見守っていると手についた脂を舐めながらシリウスが、『子供たちが楽しそうにしてるのって和むよな』と笑っていた。それに関してはわたしも異存は無い。

 明日はロンとハーマイオニーが来る。だから今日は早めに寝ることにした。
7月31日
 今日はハリーの誕生日である。シリウスは朝からハリー以上に盛り上がっていてちょっと鬱陶しい。相変わらずお祭り体質なんだな。ただでさえ暑くて気だるいのに、どうしてわたしはこんなのと暮らしているのだか。

 それはともかく、午前中にロンとハーマイオニーを迎えに行ったのだけど、久々に見たパッドフットに二人は口許をほころばせていた。
 車の中で小さいころ大きな犬の背中に乗るのが夢だったとハーマイオニーが言うと、ロンとハリーも僕も僕もと言って笑っていた。ああ、やっぱりあれは一度は皆思うものなんだろうか。実はわたしも小さいころ少し憧れていた。……今度やらせてもらおうかな。
 でも実はハリーはすでに体験済みなのである。ハリーは覚えていないと言っていたけど、まだきちんと座れるようになったばかりのころ、リリーの提案でそんな写真をとったことがあった。パディの背中に乗ったハリーは何が起こっているのかよくわかっていない表情で、背中を支えてくれているジムを見上げていた。あの写真、どうしたんだったかな?

 ケーキ作りは非常に楽しかった。ロンとハーマイオニーは相変わらず仲が良くて微笑ましい。ロンは不器用に一生懸命生クリームをかき混ぜていたが、ハーマイオニーは慣れているのか手元も見ずに卵の黄味と白味を取り分けていた。ハリーも料理は慣れたものである。なるほど、ロンが押し黙ってしまうわけだ。
 そう言えばホグワーツには調理実習は無いが、それに類する行為として魔法薬学がある。あれはわたしはどうにも苦手だったが、ハーマイオニーはやはり今も得意なのだろう。理論だけなら完璧に言えるのだが、実際に作るとなるとどうも。今は多分昔ほどではないが、黙っていればシリウスが勝手にやってくれるから、わざわざ自分から言うことも無い。

 ところで、やっぱりハーマイオニーはロンに好意を抱いているようだ。要注意点。
8月1日
 シリウスは我が侭だ。絶対わたしなんかよりよっぽど我が侭だ。なのにそれを棚に上げていつもわたしばかりを我が侭だと言う。いい加減どうしてそれに気付かないのか不思議でならない。ああ、だから単細胞生物なのか。そのうち細胞分裂で増殖したら、片方はどっかに閉じ込めて嬲り殺してやる。なますにして切り刻んで、水洗トイレに流してやるからな!

 憤りを文章化すると胸がすっとするのは本当だ。この日記は実は8月2日に書いている。昨日はそれどころでは無かったからだ。いや、一応は今日と言うべきか。とにかく、ろくでもない日であったことは確かだ。

 今日は夜からシリウスに誘われて都心にあるバーに行ったのだが、それはシリウスの応援するサッカーチームの応援だかテレビ観戦だかのためだ。わたしはサッカーにもクィディッチにもさして興味は無いからどうでも良かったのだけど、シリウスが同僚を紹介したいというからついていった。
 シリウスの同僚というのは大分年上が多くて、口は悪くても気の良さそうな連中だった。皆が一丸となって同じチームを応援する姿はマグルも魔法族も変わりないから、決して居心地は悪くなかった。だけどわたしには精々ユニフォームでしか敵味方がわからないし、回りはほぼ全員応援のために来ているのだ。仕方ないから試合が始まると奥に引っ込んで、試合内容に一喜一憂する人々を眺めていたのだが、後半戦が始まったばかりのころに見知らぬ青年に声をかけられた。
 彼は金髪と茶色い目をしていて、頬高な典型的な貴族系統の顔立ちをした青年で、どいうわけかわたしを気に入ったらしい。何かと話し掛けてくるので退屈しのぎに相手をしていたのだが、それがシリウスは気に入らなかったらしい。さっきからこちらをチラチラ見ているのを知っていたので、面白いから放っておいた。そうしたら試合終了と同時にこっちへ割り込んできて、不機嫌な笑顔で不幸な青年を追い払ってしまった。
 それだけならまだしも、帰り際に安宿に連れ込まれてしまったのだからたまったもんじゃない。受付の男は岩のように無表情で、男の二人連れにも眉一つ動かさなかったが、こっちはいい迷惑だ。しかもシリウスは浮気するなだとか言い出すし、一体何を勘違いしているのだか。
 ちょっと誰かと話しただけでどうして浮気になるのだ。そもそも浮気の定義が曖昧だし、第一何故それをしてはいけないのか。わたしはシリウスのものではないし、昔あれほど遊びまくった男に言われる筋合いは無い。第一、自分だって今日はずっと10歳近くも年下の女の子たちと楽しそうに話していたではないか。彼女たちは多分わたしに話し掛けてきた男と同じ歳くらいだが、明らかにシリウスに気があった。それも一人どころか三人もいた。何でわたしだけが文句を言われねばならないんだ。

 しかし不可思議なのは、どうしてわたしには年下の男ばかりが近寄ってくるんだろう。年下にはあんまり興味が無いのに、昔からそうだ。今日だってそうだし、あんな子供にわたしがなびくわけなどない。
8月2日
 引き続き今日の分の日記を書く。

 結局昨日のうちには家に帰れなかった。とても動ける状態では無かったからだ。シリウスの単細胞が無理矢理挿れるから、痛くてそれを我慢するのに恐ろしく体力を消耗してしまった。しかも下手に喚けば相手を興奮させるだけだし。最悪だ。
 快感は薄くなった苦痛であるとサドは言ったが、本当だとしみじみ思う。苦痛が快感よりも更に薄くなるとそれはかゆみになるとも言っていた。とにかく、確かにあれは普段している行為だったけど、過度のそれは苦痛だった。おかげでしばらく口をきく気力も無かった。腹立たしい。
 それでもシリウスにそれをされて完全に拒絶しなかったこともまた事実だ。わたしだって男だから、その気になれば殴り合ってでも拒否することはできる。だが昨晩はそれをしなかった。それは何故か。

 突き詰めてしまえばそれはわたしがシリウスを受け入れているということになるのだろう。全力で拒否するほど本気でそれを嫌がってはおらず、結局彼に抱かれることを望んでいるということか。忌々しいが事実ではあるだろう。その証拠に結局後でまた抱き合ってしまったのだし。
 しかしあれはどちらかと言うと、初めの強引な行為を否定するためのものであった。無理矢理された行為を、自分が彼を受け入れたからそうなったのだと自己に言い訳するためのものである傾向が強い。なるほど、強姦された女性がそれを認められず相手を受け入れるようになるというのはこういった心理からか。本当に忌々しい。
 だがそれらと微妙に違うのは、シリウスがわたしに対して独占欲を抱き、嫉妬した結果がそれであるということか。もともと恋人の関係上にあったからには事情は異なるだろう。つまりわたしは彼に愛情を求めたということか。益々忌々しい。
 愛、愛、愛! あの腹の足しにもならない空想上の化物。自愛や母性愛は否定しないが、恋人たちの間で囁かれるあの身の毛もよだつ言葉。気味が悪くてたまったものじゃない。それをわたしがシリウスに求めたということは、認めがたい屈辱だ。けれどその反面、シリウスがそんな言葉を囁くと、ぬるま湯につかったような気持ちがこみ上げることも否定はできない。
 要するに今現在のわたしはシリウスに対して腹立たしく、それを受け入れてしまった自分も面白くないということだ。こんなときはこう言うにかぎる。まぁ、どうでもいいか。
8月3日
 最近のホグワーツの宿題は多様化している。わたしたちの時代にはなかった形式のものが多く、やはり勉学も日々進歩し変化しているのだなとしみじみ思った。
 ハリーはわたしに宿題を習いたがったが、彼がその全てに本当にわからないでいるわけではないことはすぐにわかった。彼はわたしに教えてもらうことが嬉しいのだろう。だからと言ってわかることまで全部が全部を訊くわけではない。そんなことをしたら自分で考えなさいと言われるのは目に見えているからか。ハリーは頭のいい子だ。もうちょっときちんと時間を取ってじっくり教えてあげたら、成績も今よりずっと良くなることだろう。

 さて、ハプニングがあったのは買い物のときだ。シリウスが洗剤を探しに行ったとき、先日バーで会ったあの青年が声を掛けてきたのだ。
 考えてみれば同じチームを応援している以上、地元が近いことは大いにありえるわけで、ましてやこれほど大きなマーケットならば多少遠くても買い物に来ることもわかる。しかも買い物客が一番多い時間帯であるから、偶然出会う可能性も無いわけではない。
 が、幾ら何でも全部そう信じるほどわたしはお人よしではない。多分彼はここにわたしたちが来るであろうことに目星をつけていたのだろう。わたしたちが何処に住んでいるかは、バーにいた連中に訊けばすぐにわかるだろうし。偶然を装っていても、シリウスが離れた直後に声を掛けてくるのはあまりにもタイミングがよすぎる。
 ハリーの手前もあるし、一瞬軽くあしらおうかと思ったが気が変わった。あの無礼千万な犬っころをからかってやるのも面白そうだと思ったのだ。だからハリーには悪いが少々親しく口をきいたら、青年は目を輝かせて嬉しそうに笑った。媚びるような表情が時折顔の表面を掠め、彼が何を欲しているのかは一目瞭然である。もちろん、それに応えるつもりは無いが。
 そうしたら案の定シリウスがすっ飛んできて邪魔に入った。壮絶な笑顔で追い払われた青年には気の毒だが、シリウスのわかりやすい反応は実に面白い。これはしばらくからかって遊べるな。ああ、いい気味だ。
8月4日
 シリウスはやっぱり単細胞生物だ。ちょっとこっちが働きかければ、面白いほど簡単に予想通りの行動を取る。あれだけ思考回路が単純明快だと、悩み事も少なさそうで少しうらやましい。
 わたしにかかってきた電話にシリウスはいらぬ妄想を掻き立てたようだが、あれは脱狼薬の材料が手に入ったという連絡だ。相手は魔法族の薬剤師の知人で、外国人なため訛りが酷くて英語だと聞き取りづらいから、母国語でいいと言っておいてあるのだ。彼はマグルの出身なので電話も普通に使えるから、重宝している。多分シリウスも一度くらいかかってきた電話を取ったことがあるはずなのに、頭に血が上ったせいですっかり忘れているようだ。何て都合のいい頭だろう。
 ハリーはちょっと心配そうだったが、何も言ってはこなかった。どうやらハリーはシリウスが所詮わたしには勝てないことをそれとなく理解しているようなので、説明も不要だろう。一人で勝手に怒っているシリウスを呆れたように見つめていたのはおかしかった。

 誤算といえば、シリウスが今日その気になってしまったことだろう。てっきり明日辺りだと踏んでいたので、押し倒されかかったときは驚いた。まさかハリーがいるうちは無いと思っていたのだが、シリウスの忍耐心の少なさを見誤っていたらしい。
 しかもバスルームに引っ張り込まれたときは流石に呆れた。確かに一部屋を間に挟めば随分違うだろうが、そう言う問題でもないだろうに。が、最早そんなことを言っても理解できる状況ではないらしく、仕方なくわたしは彼の言葉に従った。
 この間は本当に無理矢理だったので随分腹も立ったが、自分が作り上げた状況で、予想もしていた展開ならば大したことではない。それでもあれからまだ日が浅いせいか、服を剥ぎ取られて乾いた大きな手が力任せに腰を掴んだとき、思わず身を竦ませてしまった。無理にねじ込まれたのを絶えて声を飲み込むのは辛く、くちびるを噛んでは息を止めた。けれど、必ずしも嫌だったわけではない。
 シリウスは何か話し掛けていたようだったが、声を出さないようにするのに精一杯のわたしはそれどころではなかった。やっぱりバスルームは音が反響する。万一廊下に漏れでもしたらと思うと、羞恥心で頬が熱くなった。

 シリウスは妙な男で、酷くしても必ず最後はわたしにやさしい。要するに一度抱いた身体に執着を覚えるタイプなのだろう。普通は用さえ済ませば後は興味を失うが、逆のタイプだからこそ、こいつは女によくもてたのかもしれない。
 痛みと羞恥と疲労に、それでもある種の快感の余韻を失わないために動かないわたしを抱き上げて、慰撫するように背を擦ってくれた。抱かれるままに耳を胸に当てていると、力強い鼓動が響いて、何故だかとても安心した。胎児のときに聞いていた心音が一番人間を和ませるというのは本当だと思う。
 シリウスは半分眠りかけたわたしがあまりに何も言わないので心配になったらしい。わたしを呼ぶ声に顔を上げたら、困惑したようなシリウスの表情があって面白かった。反応がわかりやすくて素直なのはいい。ここまでは好きなようにさせてやったのだから、後はわたしの要望を容れてくれてもいいだろう。  囁くように呼びかけて目を瞑ったら、期待通りキスをくれた。やけに大人しいわたしに戸惑ってどうしたらいいのか思案しているのだろう。もっとと呟いて頬に触れたら、ちょっと難しい顔をしたがやはり素直にキスを繰り返した。
 扱いやすい男は予想通り、キスを繰り返すうちに再び欲情したようである。わたしが手を取って自分の下腹部に導くと、何も言わないうちに大きな手で楽しませてくれた。先刻は一人で達したから、その負い目もあったのかもしれない。シリウスの手は大きくて温かく、それに触られることが普段からわたしは嫌いではない。先ほどわたしの腰を掴んだのと同じものとは思えない優しさで愛撫されて、今度の方がよほど声を出さないようにするのが難しかった。だからわたしはシリウスにキスを求めた。声が漏れないように、くちびるを合わせておけばいい。流石に達したときは声を押さえきれなかったけれど、何だか凄く心地良かった。

 当たり前のことだが、シリウスはそれだけじゃ満足できなかった。甘い余韻に浸るわたしを抱き上げたまま、ご機嫌伺いのように顔中にキスの雨を降らせる。心地良い疲労に浸るわたしの気を引きたいのはわかるが、もう少し待ってくれればいいのに。
 それでも低く掠れた声でリーマスと囁かれたら、顔を上げないわけにはいかない。すぐ傍にある顔を見上げたら、くちびるを吸われ、舌を吸われた。いきなりのことに思わず服を掴んだら、濡れた指が侵入してきた。こういうときシリウスは器用だと思う。訓練すれば足まで使ってオルガンが弾けるんじゃないか?
 シリウスはそのまましたがったし、わたしもしたかったが、もう大分疲れていたから今度はあまり声を我慢できる自信が無かった。そうしたらシリウスが何故かわたしを浴槽に運び入れて、服を脱ぎ始めた。わけがわからずに見上げていたら、シャワーを出してシリウスも浴槽に入ってきた。どうやら水音で声を掻き消すことを思いついたらしい。
 機転がきくと言って誉めてやってもいいが、調子に乗るといけないので書くに止めておこう。ともかくわたしは声を完全に抑える必要は無くなったし、シリウスはわたしを抱きながらキスの合間に始終何かを囁いていた。ざらりとした低い声で囁かれるそれは睦言で、わたしは不覚にも胸が満たされる思いを味わった。ましてや同じような言葉を返したのは、やはり疲れていたのだろう。

 あの声はいけない。耳に染みるような掠れた声は、何故あれほどまでに官能的なのだろう。あんなに激しく抱かれながら、そのくせ言い聞かせるように優しく囁かれたら、頭がおかしくなってしまいそうだ。それともあれが言霊というものの原理なのだろうか。
 ともかく、おかげでしばらくはシリウスを良いように扱えそうなので、その布石としては悪くないかもしれない。
8月5日
 ハリーとは今日でお別れだ。やっぱり昨日のうちにシリウスの機嫌を直しておいてよかった。折角の別れなのに、不機嫌なままではハリーが可哀相だから。
 しかし、おかげでまだちょっと腰がだるい。寝不足もあった。

 ハリーはウィーズリー家に行くことになっている。夏休みを一緒に過ごせる友人を得られたことは、彼にとって多大な幸福であろう。明日からの日々もどうか、ハリーにとって楽しく幸せであるように。
 ハリーを二人で見送ってから、帰りの車中うたた寝をしてしまった。シリウスも妙に大人しくて、どうやら家族が一人減って寂しがっているようだ。たった8日間一緒にいただけなのに、ハリーの存在は大きい。可及的速やかに容疑を晴らして、一緒に暮らせる日が来るといいのだが。

 家に着くとわたしは昨日の睡眠不足を補うために昼寝をした。どうせこの後またシリウスが寂しがってくっつきたがるのだろうことはわかっていたから。
 この後、シリウスは多分わたしを誘うだろう。昨日の今日で厚かましいが、先ほどの肩を落とした様子では仕方が無い。そうしたら少し、本当に少しだけだが、優しくしてやろうかと思う。







[シリウスの日記]







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微妙にエロく無くてごめんなさい(汗)。
今回はやけにハリーが黒くなくて我ながら吃驚です。
リーマスもやけに口が悪いし、いつも通りなのはシリウスだけ??
ああ、偽親子ってムツカシイれすね。
















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