■□■ 君の名は □■□






 狗のお仕事はトシマのパトロールだ。アルビトロパパに任された大事な仕事なの。だから今日もキリヲとグンジの処刑人コンビと一緒にお出かけお出かけ!
 でもね、キーちゃんとグンちゃんはいっつも寄り道ばっかしてるの。眼の合った奴らを片っ端からぶっ飛ばしたり、アフロの色が気に入らないってタコ殴りにしたり。もー、そんなんじゃご飯までにお城に帰れないよ。
 仕方が無いから狗は一人でパトロール。でもキーちゃんやグンちゃんからあんまり離れてもいけないの。だって世の中にはろくでもない奴らが一杯だから、絶対一人で出歩いちゃ駄目だってパパが言うんだもん。それに狗を迷子にでもしたら、キーちゃんとグンちゃんがパパに怒られちゃう。ま、その前に、狗以外に処刑人コンビを止めに入れる人間なんていないしね。
 キーちゃんとグンちゃんが暴れてる間に、狗は一人でお仕事するの。血祭りを見物に現れた野次馬の中に、不正者がいないかチェックだもんね。どんなささいな不正も狗のお鼻は見逃さないもんね!
 お仕事に一生懸命な狗が人垣をかいくぐっていると、どこからともなく何とも言えずいい匂いが。あれ、何だろ、これ。どっかで嗅いだことあるんだけどな。何だったっけか。こっちの路地からいい匂いがするの。
 お鼻をひくひく匂いを辿っていくと、奥まった路地にたどり着いた。あれ、もしかして人がいるのかな。でも、気配とかしないし。ああん、こんなときだけは目が見えないのがちょっと残念。
 狗が困っていると、ふいに伸びてきた手が頭を撫でた。わぁ、何だ何だ、やっぱ人がいたのか。あー、びっくりした。うう、かいぐりかいぐりされるの気持ちいい。あ、この手からいい匂いがするぞ。ええと、何の匂いだっけ。撫でられるのが気持ちよくてうまく考えられないよ。ああ、眠くなってきちゃった。だ、だめだめ、匂いの元を思い出してパパに報告しなきゃだもん。うあ、でもほんと、きもちい……。

「くぉらポチっ! 変な場所寝てんじゃねぇ。探したじゃねーか!」

 突如ふってわいたグンちゃんの声に狗は我に返った。え、あ、なになに?

「おら、帰んぞタマ」

 路地の入り口ではミツコさんを肩に担いだキーちゃんが呼んでいる。あ、血のにおいがする。

「何寝ぼけてんだお前? さっさと帰んねぇと飯にありつけねーんだよ」

 ん、でもね、今変な奴がいたの。凄く変な奴だったんだよ。え、おぶってくれるの? わーい、グンちゃんの背中、グンちゃんの背中!
 ……じゃなくって、だから今そこに変な奴がいたんだってば。

「おい、背中で一人ボケ突っ込みすんなポチ。変な奴なんか見なかったぞ」

 でもいたんだって。凄くいい匂いがする奴が。あ、あの匂い、あれはラインの匂いだったよ。

「あたりめーだろうが。ライン使ってないやつのが少ねぇんだから」

 うん、まぁ、そうなんだけどねキーちゃん。でもね、いつもシキちゃんが持ってくるトランクの中身と同じ匂いがしたんだよ。ほんとなんだよ。

「わぁーったよ。あとでビトロに報告しとけ。それよかまず飯だ」

「おいジジイ、少し代われよ。ポチ、デカくなって重いんだよ」

 え、ほんと? 背伸びた?

「るせーな。もうろくしたのは手前なんじゃねぇのか?」

「んだとこのクソジジイ!?」

 うわっ、グンちゃんあんまし揺らさないで!
 こんなときは必死になって背中にしがみつくべし。長年の経験から判断した狗は、処刑人コンビの仲良し喧嘩を耳にしながら、裏路地の謎の男を考えた。やっぱ片目だけは残しといてもらえばよかったかな、パパ。





〔おしまい〕







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