■□■ ミラクル12デイズ □■□






「今日、オレの誕生日なのな」

 応接室に飛び込んでくるなり嬉しげに宣言した山本に、いつも通り雲雀の反応は冷ややかだった。

「そう」

 無関心を音にしたような声で一言呟いた雲雀は、鉛筆を削る手元に視線を落したまま顔さえ上げようとしない。
 しかし山本はめげることなく、三歩で部屋を突っ切ると、雲雀の執務机に両手をついて嬉々として話を続けた。

「だからさ、今日からちょっとのあいだだけ、ヒバリと同い年なのな!」

 宇宙の真理を発見したかのように誇らかに告げる山本を、ようやく雲雀は見上げた。しかし彼の表情はいたって冷静で、自分の発見にキラキラと目を輝かせる山本と比べ、憐れみさえ含んだ冷たいものだった。

「……君は僕が一つ上だと信じてるの?」

 嘲弄を滲ませる雲雀の言葉に、山本は首を傾げた。山本は二年生。雲雀は山本の先輩なので、ならば三年生であり、イコール一つ年上になるはずだ。
 いかにも不思議そうな眼差しで山本が見つめるなか、雲雀はわざとらしく大きなため息をついて立ち上がった。さらりとした髪を背後の窓から射す春の日に輝かせ、雲雀はゆるやかな歩調で右手の壁際にある書棚に向かう。
 こげ茶色をした書棚のガラス戸を開き、雲雀は何かの本を取り出すと、ページをめくりながら山本のもとへやってきた。

「何だ、どした?」

 わけがわからず左右に小首を傾げる山本に、いちいち親切に説明してくれるわけもなく、雲雀はページを開いたままの本を押し付けた。

「…………?」

 それは卒業アルバムだった。厚紙に印刷された写真は、どこかのクラスの集合写真だ。校舎を背景としたその写真を見つめ、山本は絶句した。雲雀がいる。いや、正確には集合写真のなかにいるわけではない。群れを嫌う彼らしく、写真の上方に別枠で個別の写真が載っているではないか。
 慌てて山本はアルバムの表紙を見た。そこには三十年以上前の年号が記されている。

「……ヒバリ、アンタまさか」

 本当に座敷童子だったのか、という山本の叫びは、一閃したトンファーの打撃音で強制終了させられたのだった。





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