13 years ago







 耳をつんざくような爆発音の後、少年は目を開いた。顔を覆っていた腕をどけ、扉の方を見る。そこには既に母親の影は無く、少年は立ち上がる。淀み無い足取りでクローゼットを出ると、床に転がった無残な遺体を見下ろした。それはかつては自分に良く似た面差しの美しい女性だった。間柄から言えば少年の母であり、祖父の娘。少し勝気な部分のある女性で、マドレーヌを作るのがとても上手かった。
 そして遺体の脇には暴発して原形をとどめぬ祖父の猟銃。先日両親に気付かれないようにこっそりと盗み出し、苦労して銃口から弾を詰め込み、鉛で塞いでおいた甲斐があったというものだ。
 少年は持っていた血濡れの包丁を逆手に持ち、彼女の上に掲げる。彼は年齢に似合わぬ妖艶で魅惑的な微笑を閃かせると、


「バイバイ、お母さま……」


 咽喉の奥でくすくすと嘲笑いながら、少年は手を離した。








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