■□■ おもいで □■□
事故があったという。
孤児院の裏にある林の向こうにあった、大きな研究所。そこで事故があったと大人は言った。小さなアキラはそこが嫌いだったから、研究所が無くなっても何とも思わなかった。けれど、沢山の人が死んだと聞いて少しだけ胸が痛んだ。
研究所にいた人間は全員死んだらしい。では、あのひとも死んでしまったのだろうか。
きれいなひとだったと思う。男に対してその表現はおかしいかもしれない。けれど、アキラはきれいだと思った。
お日様に透ける金色の髪と、青い目の男の人。アキラにナイフをくれた不思議なひと。
たった一度会っただけだが、アキラは彼の死が悲しかった。何故自分がこんな気持ちになるのかわかるには彼は幼すぎ、ただ何も出来なかった自分を責めた。あのとき、手を引いて走り出してれば。
――――助けられたかもしれないのに
もう二度と会えないあのひと。約束は果たされず、彼の孤独を埋めることは叶わない。ただそれだけが、アキラにはとても悲しかった。
〔END〕
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