■□■ パ〜ンダダッパンヤ! □■□






 散歩の帰りに立ち寄った本屋で、ナノは動物写真集のコーナーに立ち止まった。彼はとかく本が好きで、暇さえあれば図書館か本屋に立ち寄っている。そんなナノが手に取ったのはパンダの写真集だった。
 本物のパンダをアキラは見たことが無い。動画ですら戦後育ちの彼は眼にしたことが無かった。だが、イラストやぬいぐるみなどはいつの時代も子供に大人気で、それがどういう姿の生き物なのかくらいは知っている。どてっとした大きな身体でのっそりと動く、何とも愛くるしい動物だ。
 そんな珍しい生き物の写真集をじっと眺めるナノの姿は、緊張を強いられた逃亡生活の中でのひとときの休息に似た微笑ましいものがあった。

「……好きなのか?」

 ゆるりと振り返ったナノは無表情ながらもどこか不思議そうな様子で、並んで立ったアキラを見つめた。
 まだほとんど感情の起伏を見せないナノだが、写真集を見つめる眼差しがどこか柔らかで、懐かしいものを見るようなそんな気がしたのだ。それに、確かトシマ潜伏当初、パンダのリュックサックを持ち歩いていたらしいので、何か愛着でもあるのかもしれない。そう思ってのアキラの問いかけに、ナノはやはりどこか当惑を含んだ様子を見せた。

「…………昔、エマに言われたことがある。お前はパンダに似ている、と」

「え?」

 思わず聞き返したアキラを、紫の視線が一撫でする。ナノは手にしていた本を閉じると、アキラには理解できない果てしなく意味不明なエマの言葉を繰り返した。

「何で、アンタとパンダが?」

 ナノの当惑が感染したかのように眉を顰めるアキラ。何をどうするとこの男とパンダが結びつくのだろうか。ナノはどちらかと言うと猫か虎のようであるし、当たり前だが笹は食べない。するとナノは少しだけ顔をアキラに向け、

「パンダは一見愛らしくぼーっとしているように見えるが、よく見ると意外に目が鋭い。だからだそうだ」

 どんなに外見が可愛かろうと、所詮は熊だ、ということらしい。子供のように無防備で、浮世離れしたこの男が、一度臨戦態勢に入れば世界最強の戦士となることの比喩だろうか。それともエマ一流の単なる嫌がらせか。どちらにせよ、彼女の発言は言いえて妙だった。

「…………ああ、なるほど」

 思わず呟いたアキラの言葉に、ナノはやはり途方に暮れたように本の表紙に写ったパンダの姿を眺めていた。




〔おしまい〕







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