アニマルスピリット(ジョージ・アカロフ, ロバート・シラー 著, 2009)(Amazon)

情報の経済学で有名なアカロフと『根拠なき熱狂』という本の著者シラーによる、行動経済学の視点からマクロ経済学を見直そうという本。山形浩生氏(訳者)による10ページの解説付き。最後まで読み通すつもりなら、解説は後から読もう。その辺の書評を読むよりは解説を立ち読みする方がいいとは思うが。

明確なモデルを提示してというような感じではないので読み物として楽しめるだろうが、一般向けとはちょっと言い難い。参考文献も豊富だが、索引までついているのが好感度高い。

メモ

以下、気になった箇所の引用と参考文献へのリンク(一部)。

第1章

  • 注(8)

ヤン・ティンバーゲンと彼のモデル構築について、Keynes (1940, p.156) はこうコメントしている。「現段階でこれを任せるほど信用できる人がいるかどうか、あるいはこの種の統計的錬金術がまともな科学の一部となる期が熟しているかどうかについては、わたしはまだ納得していない。だがニュートン, ボイル, ロックはみんな錬金術に手を染めている。だからかれにも続けさせよう」

  • J.M.Keynes, "On a Method of Statistical Business Cycle Research: A Comment," Economic Journal 50(197), 154-156, 1940.
  • そのReply PDF

第6章

  • P.88

たとえば1984年のある新聞記事によると「サンフォード紡績工場の紡績夫たちは今日、賃金カットか工場閉鎖かを月曜の朝に選ぶよう求められることを報された。かれらは工場閉鎖を求め、賃金カットの下では働かないと述べた」。こうした人々は、名目賃金カットではなく、能動的に怒りをもって失業を選んだ。公平さについての判断は、まだ賃金カットに直面していない他の工場で支払われている賃金との比較で行われることが多かった。

第8章

  • 注(15)

労使間の感情的な関係の複雑性を記述した論文としてはKatz (1986), Blinder and Choi (1990), Uchitelle (2006) などがある。互恵性の重要性は多くの実験で裏付けられている。McCabe? et al. (2003) では、信頼ゲームの実験で、人々は見知らぬ匿名の人物に何かを喜んであげて、その相手が賢い互恵的な選択をしてくれるものと期待することを発見した。Blinder and Choiは、高賃金を支払う理由として士気(モラール)を考慮していることを強く示唆する証拠を得たが、効率賃金を労働者の規律維持の装置と考えることについては、証拠ははっきりとしなかった。Bewley (1999) は、賃金カットをしない重要な理由は士気であると結論付けている。Campbell and Kamlani (1997) は、企業が名目賃金カットをしない大きな理由は士気であるとともに、最高の労働者がやめてしまうことを恐れるためだと報告している。Fang and Moscarini (2002) は、企業の士気についての懸念は無差別方針を奨励し、実績と給与が相関しないような賃金圧縮政策を採用しやすくなるとしている。

  • L.F.Katz, "Efficiency Wage Theories: A Partial Evaluation," NBER Macroeconomics Annual 1, 235-276, 1986. PDF
  • A.S.Blinder and D.H.Choi,"A Shred of Evidence on Theories of Wage Stickiness," The Quarterly Journal of Economics 105(4), 1003-1015, 1990. PDF
  • L.Uchitelle, "The disposable American: Layoffs and Their Consequences," Knopf, 2006.
  • K.A.McCabe?, M.L.Rigdon, V.L.Smith, "Positive Reciprocity and Intentions in Trust Games," Journal of Economic Behavior and Organization 52(2), 267-275, 2003. PDF
  • T.F.Bewley, "Why Wages Don't Fall during a Recession," Harvard University Press, 1999.
  • C.M.Campbell III, K.S.Kamlani, "The Reasons for Wage Rigidity: Evidence from a Survey of Firms," Quarterly Journal of Economics 112(3), 759-789, 1997.
  • H.Fang, G.Moscarini, "Overconfidence, Morale and Wage-Setting Policies," Cowles Foundation Discussion Paper, 2002.

第10章

  • 注(9)

多くの貯蓄アノマリーがShiller (1982), Grossman et al. (1987), Campbell and Deaton (1989), およびDeaton (1992) にまとめられている。Hall and Mishkin (1982) は個人を借り入れ制約のある消費者と、そんな制約のない消費者とに区分けすることで、アノマリーの一部を説明している。Shea (1995b)は、借り入れ制約も「近視眼」も、消費の予測可能性を完全には説明できないという証拠を示している。かれは損失回避に関わる選好が、消費の予測可能性を説明するのに一役買っているはずだと提案している。Shefrin and Thalerはいくつかアノマリーの証拠を集め、Ando and Modigliani (1963) のライフサイクルモデルの最高の特徴を取り入れて、人間行動に関する既知の事実をもとにそれを補正し、行動ライフサイクルモデルを作った (Thaler 1994)。こうした問題のもっと広範な議論にはThaler (1994) を参照。

  • R.J.Shiller, "Consumption, Asset Markets, and Macroeconomic Fluctuations," Carnegie-Rochester Conference Series on Public Policy 17, 203-238, 1982.
  • S.J.Grossman, A.Melino, R.J.Shiller, "Estimating the Continuous-Time Consumption-Based Asset-Pricing Model," Journal of Business and Economic Statistics 5(3), 315-327, 1987. JSTOR
  • J.Campbell, A.Deaton, "Why Is Consumption So Smooth?," The Review of Economic Studies 56(3), 357-373, 1989. PDF
  • A.Deaton, "Understanding Consumption," Oxford University Press, 1992.
  • R.E.Hall, F.S.Mishkin, "The Sensitivity of Consumption to Transitory Income: Estimates from Panel Data on Households," Econometrica 50(2), 461-482, 1982. PDF
  • J.Shea, "Myopia, Liquidity Constraints, and Aggregate Consumption: A Simple Test."- Journal of Money, Credit and Banking 27(3), 798-805, 1995.
  • H.M.Shefrin, R.H.Thaler, "The Behavioral Life-Cycle Hypothesis," Economic Inquiry 24, 609-643, 1988. PDF
  • A.Ando, F.Modigliani, "The "Life Cycle" Hypothesis of Saving: Aggregate Implications and Tests," The American Economic Review 53(1), 55-84, 1963. PDF
  • R.H.Thaler, "Quasi-Rational Economics," Russell Sage Foudation, 1994.

第11章

  • 注(32)

Truman Bewley (2002) は、人々が不確実性をいやがるというDaniel Ellsbergの実験を根拠に、人々の不確実性への反応は惰性によると、つまり人々は単に現状のままを好むのだと述べている。一部のマクロ経済モデルは、Gilboa and Schmeidler (1989) が開発した不確実性理論を使い、人々が最大損失を最小化するかたちで意思決定をして不確実性に対応するようなかたちで人をモデル化している。Sims (2001) はこうしたマクロ経済学文献をレビューしているが、こうしたモデルは通常は不確実性を狭くモデル化しすぎて、ごくわずかな木だけを気にして不確実性の森全体を見失っていると論じている。Caballero and Krishnamurthy (2006) は、根本的な不確実性は経済全体の特定されない崩壊の可能性に関する、管理困難な恐れを作り出すと論じており、そうした恐怖がこんどは事業家たちに、過剰な安全要求で反応するように仕向け、金融危機を作り出すと述べる。

  • T.F.Bewley, "Knightian decision theory. Part I," Decisions in Economics and Finance 25(2), 79-110, 2002. PDF
  • I.Gilboa, D.Schmeidler, "Maximin Expected Utility with Non-Unique Priors," Journal of Mathematical Economics 18, 141-153, 1989. PDF
  • C.A.Sims, "Pitfalls of a Minimax Approach to Model Uncertainty," The American Economic Review 91(2), 51-54, 2001. PDF
  • R.J.Caballero, A.Krishnamurthy, "Flight to Quality and Collective Risk Management," NBER Working Paper, 2006. PDF

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Last-modified: 2011-11-11 (金) 16:24:09 (4638d)