- 41 名前:少年Y7/10:2006/10/30(月) 12:21:19 ID:aIbUlGLp0
- 「う………う、んっ」
上気し、染まる頬、零れる言葉にもやはり熱が篭っていた。
テッドの両手がやや下に、ほんの僅かな距離であるが移動した。
「あ、あ………ぁ、ふっ………」
そこは少年の最も敏感な箇所。
手練手管な愛撫に昂ぶりかけていたそこを、逞しい掌が包む。
繊細な楽器を扱い慣れぬような、無骨な手であったが、すでに気持ちが蕩ける境地にあったイグレクは、数度指が這う感覚だけで、頭の内は一色に染まった。
「………っ、あ………ぁっ」
テッドの熱い掌の中に吐き出す、己の精の白濁。
どちらも見分けがつかない程温度は高く、そして未だ優しく包まれたままだった為、イグレクの紅潮は去らない。
瞳は熱さにうるんだままだった。
弛緩しかける少年の腕を支え、テッドは検分台の表面に両手を置かせた。
胸と腹とが台と接する体勢で、イグレクは背面の全てを露わにする。
愛撫の対象は背中と、台から起こされているイグレクの首から上。
後ろから回された掌が、再び顎と首筋を中心に優しさとぬくもりを与え、やがて少年の表情は恍惚と全てを任せるものとなった。
全て心得た様子の手運びは、少年が吐き出した精を双丘のすぼまりにとうに塗りつけていた。
イグレクがそれに気付いたのは、そこに滾る昂ぶりの先端が押し付けられた時だ。
掌の温度とは比べ物にならない。
まるで別の生き物のように脈動し、炎の出ない火のように燃え盛っている。
- 42 名前:少年Y7半/10:2006/10/30(月) 12:22:48 ID:aIbUlGLp0
- 「力を抜くんだ」
テッドのアドバイスも耳に入らないのか、少年は台についた手を拳に握り、目も閉じ口も結び、背中を固くしていた。
仕方ないとばかりに、少し腰ごと踏み出すテッド。
「っあ………くぁ………っ」
苦しげな少年の呻きが漏れる。
白濁液にまみれているとは言え、すぼまりは未だ侵入を阻もうとする固い蕾であった。
テッドは少年の肩に手を伸ばす。
ほぐすように揉み、撫でると柔らかな息が零れ、少しだけ蕾は頑なさを解く。
何か考え込む様子で動きを止めるテッド。
少年は止めるなと、小さく首を振った。
テッドは己の昂ぶりを、わずかに挿れる。
首を伸ばし少年の耳の後ろから、熱く息を吹きかける。
耐えかねた少年は悲鳴とも嬌声ともつかない声を上げ、またほぐれた後孔に一歩が踏み入った。
首筋、背中とイグレクの感じる部分を責め上げ、最後に顎を優しく一触れすると、水気の少ないくぐもった音を立て、テッドの全てが受け入れられた。
- 43 名前:少年Y8/10:2006/10/30(月) 12:24:06 ID:aIbUlGLp0
- 「………つ、繋がり合えたんだ、ね。僕は、テッドと………」
まだ痛みが強いのか顔を顰めて苦しそうな息で言うイグレクだが、徐々に充実感がそれを上回ったのだろう。
汗が滲む顔で、うっすらと微笑む。
「とても熱い………忘れないよ、ずっと」
黙って腰を押し進めるテッド。
少年の上げた声はもう、苦痛によるものではない。
「もし、奇跡が起こって、悪のエウロディヌス卿に神の鉄槌が下り、僕が自由の身になったら………」
どんな時でもよく回る舌だ、と思ったのか。
苦笑したテッドはふと、目の奥に光を灯らせた。
「奪われた財産を取り戻したなら………そうしたら、僕は、あなたに………」
唐突に言葉が途切れた。二人はお互いの興奮に呑まれた。
一方は包み込まれ、一方は受け入れる熱い感情を以って、高みまで昇り詰めていた。
「………そうした、ら」
野暮はやめよう。もし、の話なんて意味がない。
言葉を止めた少年の思いが、ありありと分かる。
そっとイグレクの髪を撫でるテッドの手。汗に絡まりもつれるそれを、丹念に梳いていく。
目を閉じ呟いた一言は、唱えた少年自身にしか聞こえなかっただろう。
まもなく二人の荒い呼吸に交じり、熱っぽい空気の中へ溶けた。
「………イグレク」
名を呼ばれる少年の内に熱いものが迸った。
感嘆めいた吐息と共に、イグレクは全てを受け止めた。
最初で最後である喜びも。
本当の名前を教えなかった後悔も、最初で最後。
- 44 名前:少年Y9/10:2006/10/30(月) 12:24:59 ID:aIbUlGLp0
- 教えた技巧の数を踏まえると、夜明けまでの時間は十分長かったと言える。
それでも少年にとっては、掌に溜めた水のように呆気なく去ってしまった。
日が昇ると、エウロディヌス卿の召使が数人、屈強な体躯の持ち主ばかりが、引き取りの為に訪れた。
手鎖からは解放されたが、その金属の枷を外された後の方が、心が重く感じられる。
気持ちを振り払うように少年は前を見た。
落ち着き払った瞳で、見据え続ける。
肩を小突かれ、外へ繋がる扉を一週間ぶりに潜る少年。
丸椅子に大股広げて座るテッドは、黙ってその後姿を眺めていた。
「さよなら、テッド」
足を止めず、振り返らず、少年は短く呟いた。
椅子に座る壮年男は、表情を変えず、身じろぎもしなかった。
「色々………ありがと」
最後に見せた少年の横顔、細めた目―――最後に笑顔を見せようとしたのか、それとも涙を堪えたのか―――紡ぐ言葉はそれだけで果たして満足なのか。
その答えを知る者は誰もなかった。
* * *
- 45 名前:少年Y10/10:2006/10/30(月) 12:26:28 ID:aIbUlGLp0
- 戸が閉まり、テッドは笑う。
額に手を当て、可笑しくて堪らないといった具合に。
背を反らせて腹を抱え、肩を上下に震わせる。
(礼など言って行きやがった。おめでたい奴だ)
(世間知らずのお坊ちゃまは、吊り橋効果も知らないか)
(揺れる橋の上で伸ばされる手は、親切で頼れそうに見えるだろう)
(ただし、橋を危険に揺さぶり、いたぶったのも俺の手だがな)
ピタと笑いが止んだ。広げる両手は口周りを覆い、歪む唇を隠す。
(苦痛、快楽、恥辱全部メニュー通り)
(鰻の稚魚、ありゃ全部雌だ………注文したままに)
(六日目の拷問と最終日の看病はセット品なもんでな)
(そして目隠しプレイの時のゲストは、俺が呼んだ)
(おめぇの、憎き仇、エウロ………何とか卿だ)
(これから間もなく、正体を思い出すだろうな。体臭か触感で)
(既に自分が卿の手付けで、心の支えがその手先だと分かった時)
(甘っちょろいお坊ちゃまは、絶望一色にまみれ………メニューは完了だ)
日焼けした厚い掌を退ける。口元にはもう笑いはなかった。
そこにあるのは、仕事を遣り終えたばかりの、百戦錬磨の男の顔だった。
最後にテッドは少年の名を思い出そうとした。
アルファベット一文字なのに、それは叶わなかった。
行為の間は必要に迫られ記憶を呼び起こしたが、今はもう、未練なく努力を放棄してしまえた。部下に呼びかける。
「新しい仔猫を連れて来い」
テッドは検分台に腰掛け、足を組んだ。
- 46 名前:風と木の名無しさん:2006/10/30(月) 12:46:49 ID:PGqAc8ry0
- 少年さん、乙でした
最後のテッドの腹黒さが良かったよ
- 47 名前:風と木の名無しさん:2006/10/30(月) 12:58:45 ID:jb8e42kXO
- テッドすげぇ。少年は可哀想な気もするけど見事な調教っぷり(*´Д`)
乙でした
- 48 名前:風と木の名無しさん:2006/10/30(月) 14:57:22 ID:PBJoI/dQO
- テッ、テッド…
鬼畜だ
- 49 名前:メルヘンU 1:2006/10/30(月) 19:09:26 ID:2NqGH+oH0
- むかしむかし、あるところに「たいそう具合のいい体」を持つ王子さまがいました。
十代の頃は、勇猛果敢な漢としてならしていた王子さまでしたが、
「北の魔術師」の呪(まじな)いゆえ、
成人(おとな)になった二十歳の誕生日をさかいに、
常に勃ち、常に濡れ、常に感じるご子息と、遊び女(あそびめ)のように、
ひとりでに濡れそぼる美肛を具したお人へと変わられたのでした。
金色の乱れ髪。体の火照りに潤む碧の双眸。額に浮かぶ玉の汗。
漢から麗人へ。目覚ましい変貌を遂げた王子さまに、
王子さまの乳兄弟である騎士団の長は、欲望を抑えることができずことに及びました。
(「メルヘンT」:1〜17参照)
乳兄弟である騎士は、何事につけ王子さまの良き競争相手となる、
王子さまにとって特別な存在でした。王子さまの父である王さまと、
その乳兄弟である侍従は、四十(しじゅう)を越えた今も尚、
新月の晩、お后さまに隠れ不義密通を重ねるほど深い仲で、幼い頃より
王さまは侍従の前では、飾ることも力むこともなくありのままの己をさらしてきました。
それに対して王子さまと騎士の仲は、同じ乳兄弟と云えども「親友」と呼ぶには堅く、
「好敵手」と称するのが相応(ふさわ)しいようでしたが、何にしろ王子さまは、
幼き頃より、騎士を深く深く意識していました。
その騎士に陵辱され、官能の情事を極めた王子さまは、騎士の「不道徳な振る舞い」を
責めるゆとりもなく、王子さまの美肛やご子息や顔を汚している白濁を、
肌触りのよい柔らかな布で、やさしく拭っている騎士の大きな手の平に深く感じ入り、
消え入りたいほどの「身を灼く羞恥」の中、こらえきれない艶やかな声をあげていました。
「北の魔術師」の呪(まじな)いゆえ、王子さまのご子息や美肛は常人より
過敏な反応を見せます。肌を撫でる布がもたらす激しい快楽に流されながら王子さまは、
わずかに残された「脳の奥の冷めた部分」で、消えたい、死にたいと強く思いました。
- 50 名前:メルヘンU 2:2006/10/30(月) 19:10:07 ID:2NqGH+oH0
- いついかなる時も決して負けたくないと思っていた乳兄弟に組み敷かれた悔しさ。
あさましく濡れそぼる、男にあるまじき肛の門の秘密を知られてしまった哀しさ。
男である乳兄弟に男である自分が穿たれ、一体となったとき感じた背徳感と心地よさ。
乳兄弟に身をゆだね、心地よさを貪り、乱れに乱れた己のあさましさ。
何もかもが王子さまの心を蝕み、軋ませました。
乳兄弟の器用な指。堅い陰茎。顔で受けた熱い迸り。そのいずれもが気持ちよかった事。
こうして身動きもできない体を清められながら、もっと抱いて欲しい、
まだ抱いて欲しいと叫びたくて堪らない事。それらが、強く王子さまを荒ませました。
消えたい。死にたい。激情に駆られ舌に歯を立てかけた王子さまの自虐行為を
間一髪!食い止めた騎士は、王子さまを強く強く抱き締めました。
「…体が濡れる。火照る。力が抜ける。もう、剣さえ持てそうにない。…俺はあさましい」
虚ろな目で呟き、己の全てを恥じる王子さまを抱きしめながら、騎士は愛を告げました。
「恥じるな。ひとは感じれば濡れるものだ。俺だって火照る。みな火照る。
また剣が持ちたいなら生きろ。俺が傍にいる。俺はお前の騎士だ。
お前が癒え、己の剣で身を守れるようになるまで、いや、癒えても、
この命をかけてお前は俺が守る。俺はお前の乳兄弟だ。いつも傍にいる。
俺の前では存分に乱れろ。恥じるな。俺を欲しがれ。もっと、俺を頼ってくれ。
頼む。こんな小賢しい呪いに負けるな。笑い飛ばせ。楽しもう。俺が共に乱れてやる。
恥じるな。濡れたお前は、辱めたくなるほど美しい……」
王子さまの金色の髪を幾度も撫でながら、騎士は臭い臭い甘い言葉を紡ぎました。
そうして、うやうやしく王子さまの右手の甲に接吻をしました。
かつての好敵手に慰められ、いたわられた王子さまは、その矜持ゆえ、
乳兄弟の言葉を素直に嬉しく思う己を、どうしても認めることができませんでした。
王子さまのご子息と美肛を清める騎士の「巧みな布使い」に、為す術もなく喘ぎながら、
王子さまは、わずかに残された「脳の奥の冷めた部分」で、
先ほど甲に口づけられたとき覚えた「ときめき」を打ち消しました。
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