251 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:12:54 ID:Ro5o0XcS0
――そういえば、ハダレが眠っている間に色々あった。たった今目覚めた彼がそれを知っているべくもない。
だが、どう見ても自分が流暢に事の次第を話せるとは思えない。ササメは無言でハダレを見返した。
「分かってるよ……あんた、そんな身体じゃ話せないだろうし……、……?」
ハダレが、急に言葉を止めた。ササメと視線を合わせたまま瞬きもせず数秒見つめあい――悟ったように、ぽつりと語った。
「………オレが、もう一つ…『異』を?……ウスライの一族のそれを……?」
ササメは微かに頷いた。確かに、今「心を読む瞳と瞳で交わされた会話」には間違いや嘘偽りがない、と示すように。
ハダレは視線をつないだまま、呆然と座り込んだ。
「ウスライ……」
ぼんやりと呟く。ササメがもう一度、小さくこくんと頷いた。
ハダレはそれに指し示されるようにリングの上で戦う二人を見止め、顔を上げた。そこに、求めていたものがあった。

ウスライは押されていた。カギロイは予想以上の強さを維持していた。――むしろ、故郷にいた頃より進歩していた。
特に左腕を傷つけられてからは七・八割がた防戦に回っている。
勿論怪我も痛むが、それ以上にカギロイの攻撃的な姿勢が強く、踏み込むことが出来ないのだ。
奴隷を傷つけられた憎しみもあるだろうが、それ以上にして最大の理由があった。
「どうした、ウスライ。やはり『異』も持たぬ出来損ないはこの程度か!?先ほどの余裕は何処へ行った!」
「………は………ッ!」
断続的な金属音の後、ぎちりと噛み合う様な音を立てて二人の間を刃が交差する。
キチキチ……ッと軋むような鍔迫り合いの音がBGMのように鳴り響く。
「私が故郷にいた頃より『異』の使い方を覚えたからといって、このような差が生まれるとは……正に奇跡の力、だな!」
ぐり、とウスライの刃が数ミリ押下げられるように曲がる。カギロイが力を込め、払おうとしているのだ。
食い下がるウスライ。傷ついた身ながら――痛めた肋骨もまだ完治していないというのに、必死である。
しかし、それも長くは持たなかった。


252 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:18:17 ID:Ro5o0XcS0
「ッ、っ……!」
見守っていたハダレが、思わず目をそむけた。その耳に――ゴキ、という硬いものを砕く音が届く。
――再び目を開けたときには、ウスライが完全に左腕を刀から離していた。その足元には血溜りが出来ていた。
思わず駆け寄ろうと腰を浮かすと、今度はササメがハダレの足首を掴んで引き止める。
「何邪魔してんだよ!あいつ殺されちゃうじゃねぇか!離せってば!」
ハダレはかっとなって怒鳴りつけた。が、それで驚くほどの度量ならばササメは彼をわざわざ引きとめはしない。
(君が行ってどうにかなるの?……ご主人様は君を殺さないけれど、君に勝った弟さんより強いんだよ)
視線で――同じ、心を読むという『異』を相手に使わせて目線だけで会話をする。
思ったとおり、青年は後先など考えていなかった。呆れたように、視線で責める。が、

ぎぃん!と、かつてなく鋭い金属音が二人の元へも届いた。はっとなって、ハダレが振り返る。
――そこには、胸元に程近い距離にあるカギロイの刃を、ウスライが受け止めた姿で静止していた。
一見持ちこたえているように見せかけて、状況は最悪だ。
ウスライの右手には筋肉の隆起がありありと見て取れる。二本の刀の間には震えが生じ、ちりちりと音を立てている。
その震えのせいで、今にも刃がずれてウスライを傷つけそうに見えた。実際そうなのだろうが。

その光景を見て、ハダレの鳩尾辺りがつんと痛くなった。頭が真っ白になって、思わず腰を浮かしかけ、
「……ッだから、邪魔すんなよっ…!!あいつ死なせたくないんだ、頼むよ!」
またササメに足を引っ張られて止められた。苛立ちの余り体液が沸騰しそうだ。
が、ササメはあくまでも落ち着いていて――そして、意外な事を言った。
(……そこまで助けたいんだったら、いい事教えてあげようか)
「いらねぇよっ、いらねぇから早く……!」
(それが、戦時中から続く研究をご主人様が独自に編纂、プログラム化した本当の『異』の使い方――だとしても?)
「………は、……?」
ハダレが罵声を上げようと吸い込んだ空気――それが、あっけなく鼻から抜けた。


253 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:20:48 ID:Ro5o0XcS0
(君の『異』の使い方はむちゃくちゃな我流に過ぎない。って言うより、振り回されてるだけ。
 付け焼刃にしてもその使い方を実践できれば――少なくとも、恍惚におぼれて犬死することはなくなるかもね。
 ご主人様に勝てるかどうかは別だろうけど)
「………………………意味、わかんねぇし」
妙に真剣なササメの視線に圧されるように話を聞いてしまったが、ハダレは困惑したように首を振った。
(……あんたの話が本当か役に立つのかも信用ならんし、………大体何でそんな敵に塩を送るようなマネ……)

(俺はご主人様が負けるわけないって信じてる。だから教える。より強い絶望を味わわなければ君の精神は折れそうにないし、
 ――もしこれが時間稼ぎになっていたら、もっと面白いことになっていただろうしね)
その言葉にぞっとして、慌てて振り返る。――大丈夫。まだ、ウスライは持ちこたえている。
「……ッ…」
ササメを思わず殴りつけたくなって――吐息と共に力を抜く。
殴るまでもなく、この男はもうすぐ死ぬ。そう思うと、腹も立てようがなかった。ササメはどこか可笑しそうにハダレを視た。
(冗談だよ。……それに、『異』の使い方は本当だよ。君とそう体格の違わない俺が君より強いのか、それが理由なんだ。
 まぁ、聞いてみれば大したことじゃないのかもしれないけどね。――どうする?)

ハダレはじっとササメを見つめた。ササメもハダレをじっと見つめた。お互いの眼で探りあうのではなく、純粋に。
そして――ハダレは答えた。
(………………死なせたく、ないんだ。聞かせてくれよ。オレの『異』の使い方)

ササメの反応はなかった。怪訝に思って肩を掴もうとした瞬間、
「……………………?」
ぽつりと、ほんの少しの情報がその眼に飛び込んできた。嘘のように、情報は少なかった。
「……そんな事で……そんなつまんない事で…『異』が?」
(………本当にちっちゃい事。ていうか、そもそもその為に『異』は生まれて、残されてきたはずなのにね……)
そこまで伝えかけて、ササメは小さく咳き込んだ。血の混じった唾がハダレの服に飛ぶ。
はっとして、ハダレの眼差しがその血の雫の行方を追う。そのどさくさに紛れるように――一瞬だけ、ササメが目を逸らす。



254 名前:風と木の名無しさん:2006/12/15(金) 04:29:06 ID:YS6lw7wl0
支援

255 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:33:38 ID:Ro5o0XcS0
(…………でも、それを実践するのは大変だよ。だって、そんなこと意識したことなかったでしょ?)
敵とはいえ瀕死の人間を前にして、思わずその名を呼んで揺さぶろうとするハダレに――ササメは告げた。
(甘ちゃんだなぁ。ほら、どこまでご主人様相手に頑張れるか視ててあげるから――行っておいで。ハダレ)

その優し気な視線に、逆に耐えかねたようにハダレが目を逸らした。同じだ、と思った。
(泣き虫なんだから……ほら、見ないでいてあげるから――泣いて良いよ。ハダレ)
大切に仕舞っておいた記憶と同じ視線がそこにあった。それ故に、もう元には戻れないと思い知らされる。

ハダレは疲労の残る体を無理矢理持ち上げた。
――眼を瞑り、たった今ササメから伝聞したことを反芻する。大した事ではない。少し視点を変えるだけ。
そして、自分に宿るというもう一つの『異』も薄く意識しつつ、――眼を開ける。
再び眼にした景色は、変わっているべくもない。そこまで自分は壮大な何かを託されたわけではない。自分は自分以上ではない。
ただそこに自分が居るという事実が、心地よい重みとなって全身に感じられた。――ハダレは、走り出した。
振り返ることはしなかった。残された者は力のない眼を、残したものに向けて見守っていた。

ぴん、と。
カギロイはなんともいえない予感を感じてその場を飛びのいた。その瞬間、
「ちっ!」
舌打ちと共に、対峙していたウスライの目に焼きついたカギロイの残像を引き裂くような蹴りが空を切った。
ひゅご、と正に大気を切断するような鋭さを帯びた脚を避けたカギロイは、そのまま体勢を立て直すつもりで数歩下がる。が。
「避・け・る・なぁあああああ!」
なんかすごい無茶なことを叫びながら鬱憤を晴らすかのように攻撃を仕掛けてくるハダレに、更に2・3歩と押し返される。
一撃一撃は調教に弱った身体らしくどうと言うほどでもないが、その素早さ・正確さは尋常ではない。
まるで、カギロイの行く先・速さ・目的、全てが見透かされているかのように――


256 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:35:43 ID:Ro5o0XcS0
「っ…ふっ!」
一瞬嫌な予想が脳裏をよぎり、カギロイは至近距離のハダレに向かって刃を振り下ろした。
攻撃のために踏み込もうとしているその男は、驚いた顔を見せた――こちら(刀)の切り返しの速さを知らないのだろう。
調子に乗って間合いに踏み込んできたその奴隷素材を、死なさない程度の角度で刃を止めよう。そう思って――

――完璧に、避けられた。
ウスライでさえ見止める事の出来なかった、あの小さな刃さえ当たらない。

驚愕以上に、予想が当たった――ハダレが自身と同じ『異』を持つことを、むざむざ証明させてしまった――苦さに、口元が歪む。
唾を吐き掛けたいような心地で、カギロイは脚を突き出した。攻撃を避けたばかりのハダレの体が、不安定に傾ぐ。
――そこに、カギロイの刀の柄の部分が横凪に襲った。限界まで軽量化されたハダレの体が吹き飛ぶ。

頬か。こめかみか。当たった場所を確かめるよりも速く――今度はウスライの斬撃が、降る。
しかしカギロイは驚きながらもそれを正確に流し、逆に右腕だけの斬撃によって偏った守りを崩そうと、踏み込む。
そして同時に、揺さぶりをも掛ける。隙は見つけるのではなく――作り出すものだ。
「……2対1に、こうして持ち込むためだったのか?」
「何…が、です?」
まるで扱っているのは稽古用の木刀か何かだというように、気楽な口調で語りかけるカギロイ。
一方、二つの――或いは四つの命をそのまま背負わされたような、緊張した蒼白な顔で応えるウスライ。
その蒼白さをせめて暖めてやろうとでも言うように。カギロイは、毒を吐いた。
「客席で。舞台に上がるタイミングを計る為に、始終見ていたんだろう?
 お前の大事なあれが苦痛の末に犯されるのもしっかりとな。レイプシーンは興奮したか?」


257 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:37:46 ID:Ro5o0XcS0
きん、と。奇妙なほど静かな剣戟の音が鳴った。が、聞こえなかった分の『音』がびりびりと周囲を震わせる。
限りなく精密に刃の筋と力を合わせた、試技であれば芸術的とさえいえる業。だが殺意の元で、それは兇器となる。
「……っ………血を吐く思いだった…………興奮など……」
誰が――――と呼気に言葉を乗せて、更に一撃を振るう。カギロイの頭髪が数本、はらりとリングに落ちる。
その些細な攻撃の成果に、ウスライは訳もなく確信を得た。いける。返す刀で、袈裟懸けに切り下ろそうと右腕に力を込める。
刀が僅かに軌道を描き始めた。スローモーションで再生しているように、ゆるりとした動きに見える。
兄に止めを刺すという印象的な場面だからだろうか――ウスライには、そう思えた。

だが、刀が兄の服に触れるか否かの頃には、っとした。兄の瞳は刀を見ている。否……視ている。
その黒い瞳が。『異』を宿した瞳が。『異』――ハダレとは対照的に、無機物の力学的運動を寸分たがわずに目測するそれが。
最小限の動きで、武器を扱い、或いは避けるための『異』が、

その一撃を流れるようにカギロイから避けさせた。そして、大振りの一撃を避けられたウスライに、隙を作らせる。
生まれた隙に――がら空きの正中を、ウスライの『止め』を真似る様に袈裟懸けに斬り捨てようと、カギロイが滑り込む。
ウスライが刀を更に返す。間に合わないと知っていても。
――否、もしかしたら本気で間に合うとでも思っているのかもしれない。
持たざるものの足掻き。劣等感に悩み続けたものの、最後の醜態。跡取りにもなれぬ出来損ないの最期。
死ね、と。カギロイが呟く。呼気だけで。あくまでも目許は優雅に。唇には、征服の歓喜を湛えて。

――その呟きをかき消すように、誰かが叫んだ。泣きそうな、縋るような……それでいて、叱るような、鮮烈な声で。
「死ぬな」と。


258 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:40:11 ID:Ro5o0XcS0
唐突に、カギロイが振り返った。一瞬遅れて、咄嗟、というような粗雑な動きで利き手の逆に握った刃物で背後を凪ぐ。
その拍子にウスライの命を奪うはずの太刀筋さえ鈍り、間に合わないはずの切り返しが間に合ってしまった。
間抜な音を立てて、2本の刀が弾きあう。

が、カギロイはウスライの方に向き直りもしない。
客がどよめく。ウスライも動揺していた。一体何が起こったのか――弾んだ息が、思考を乱す。分からない。
不自然に背後を振り返ったまま、兄は沈黙を保ち――不意に、崩れ落ちた。
その、崩れ落ちた兄の影から羽化するように。顔面の右半分と、右手を親指側の縦半分だけ血で染めたハダレが、立っていた。

「…………………まだ、死んでない。殺してない」
ぽつりと、倒れたカギロイを見下ろしながらハダレは呟いた。
「でも肝臓やった。コレで。……放っておくと、死ぬ。急所だから」
コレ、の所で右手の親指を曲げ伸ばしして、この部位を指しているのだと示す。鉄指功。爪の間まで血が入り込んだ凶器。
「オレの武器は……身体しかないから。多分、何するつもりか、『異』で視ても分からなかったんだと思う」
カギロイが、ハダレを真剣に避けなかった理由。意図がつかめなかった。『異』に頼りすぎて。

ハダレは、ふと少し言葉を詰まらせた。
「……教えてもらったんだ。『異』の使い方。兄ちゃんに」
ウスライは――返答するべくもなく、黙って聞いていた。答えようも、応えようもなかった。
「オレは今まで……自分を守るために戦ってきた。それを、ちょっと視点を変えるだけだって。
 自分と、今目前に居るやつ、ってちょっと範囲を大きくするだけで『異』は扱えるって。
 『異』の初めの初めは、そのためにあったからって。自分か、自分の群れを守るためにあったからって。
 でも逆に、別に戦争とか平和にするとか、そんなでかいことの為に『異』はあるんじゃないって。
 どんなに吼えたって、オレはオレでしかないし、『異』は個人のものだからって」
それを、果たして実践したのだろうか。それを問いかける前に、ハダレは勝手にすらすらと答えた。
「今、そうやってみた。そしたら――」

259 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:42:38 ID:Ro5o0XcS0
※グロ痛い描写あります。


ふと。ウスライは視線を下に下げている所為で俯き加減のハダレを覗き込んだ。顔面の出血が酷い。
額を深く切ったのだろうか、とか意外と冷静に――再会の歓喜など、麻痺したように感じなかった――考え、頬を拭う。
そこに、洗い流すように涙が落ちてきた。
「……酷いんだよ。確かに、戦いやすくはなったし、あんまり頭もぼーっとしなくなったし。でもさぁ」
「…………………?」
延々と平坦に続く語りではなく、涙の質感に違和感を覚えてウスライは手を止めた。
さらさらとした、透明な――或いは血交じりの薄紅色の涙ではない。もっと、どろどろした何か。
「…………オレは、お前に死なないで欲しかっただけで………お前の兄ちゃんを殺したかったわけじゃ……」
言葉の後半になって、ようやくハダレは正気を取り戻したように声を詰まらせた。もっと言いたいことがあるだろうに。
必死にウスライと目が合わないように、視線を逸らす。血塗れでない、左眼だけ。
左眼だけ。

その時、ウスライは唐突にハダレの傷を悟った。顎を掬い上げ、必死にそむける顔を上げさせる。
「………っ……………………」
息を呑んだ。
慄くように吐き出した息に、震えが混じる。呆けるしかない。

いや。呆けながらも、残っている右腕の力の限りで抱きしめながら『謝罪』するしかなかった。
「………大切なものを捨てさせてしまった……俺を………………許して欲しい」
「……………ん…」
正に掻き抱く、といった表現がふさわしい様相で抱き寄せられながら、ハダレは小さく首を振った。
ライトに照らされた、その顔に湧いた血の泉の中心。それを見て、観客の一部が悲鳴を上げる。
眉間の少し下、鼻梁が水平方向に下り坂になるあたりから、右頬骨にかかる辺りまで、
カギロイの凶刃がその『異』の宿る眼球ごと、ばっさりと斬り抉っていた。


260 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:44:43 ID:Ro5o0XcS0
実況も、舞台上の誰も、そして観客までもが押し黙った。気圧されていた。――始めて目の当たりにする、致死試合に。
今までの格闘技の延長線上やリアルタイムAVでは済まされない有様に、席を立つものすら現れない。
代理戦争。依頼者の名誉と権利を賭けて戦う、司法と警察要らずの小さな戦争。
誰かを蹴落としてもう一方を高みへ進ませるという、見慣れきった卑屈なその行いが、
――酷く残酷で、生々しく、そして切ない願いを抱えていたことに、今更気付いたように……誰もが押し黙っていた。

がくん、と。唐突にハダレの膝が折れた。驚くウスライの腕の中で、ハダレは意識を手放した。
安堵からか、『異』を使用したことによるストレスか、殺傷の衝撃か、或いは身体的な疲労か。どれも五分五分だろう。
その体を抱き留めながら――ウスライは、震える咽喉を引き絞って声を上げた。

「…勝った」

決して叫ぶのではなく。平坦な声音で。だが、静まり返ったその会場に否応無く響くほどの音量を以て。

「俺たちが、勝った」

決して誇るのではなく。単に、動かない実況の代わりに。状況を言葉に変え、明確にしてやる為に。
――代理戦争を終わらせ、此処を立ち去るために。
ウスライは僅かに左手の握力を働かせ――痛い以前に動かないことを思い出した。右腕だけで全てを済まさなければならない。
仕方が無く、何時の間にやら放り出していた抜き身のままの刀を、口と右手で鞘に戻す。兄の分は納めなかった。
それを元の黒い袋に入れなおして右肩に背負い、更にハダレをも背負った。
幾らハダレの体重が軽いとはいえ、重くないわけが無かった。が、そのまま歩みだす。
舞台を降り、例の扉をくぐり、控え室を過ぎ、廊下を通り抜け――外に出た。誰も咎めたり、塞いだりはしなかった。


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