241 名前:風と木の名無しさん:2006/12/15(金) 00:58:29 ID:R8aB4oahO
鏡タン、乙乙!続き、特にエロ部分期待してるよ!

242 名前:風と木の名無しさん:2006/12/15(金) 01:06:20 ID:a9lJD+aA0
ID:yVfzszg2O=ID:y3eVHawTO か。
毎日ご苦労さん。そのうち他に楽しいこと見つけられるといいな。


243 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 03:54:32 ID:Ro5o0XcS0
投下します。最後ですが、代理が苦手な方はスルー・NGワード・スクロールでお願いします。
また何時もにも増して長く、エロは無しです。

後半、一瞬だけですが痛そうなグロ描写がありますので、そのあたりも御注意ください。

244 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 03:57:02 ID:Ro5o0XcS0
「私も未だ信じ切れません。しかし、それを指し示す証拠はごまんとあります」
「……その、証拠とは何なのだ?あの年寄りどもがそれほどまで動揺する証拠とは……?」
呆けたような表情で、独り言のように疑問を口にするカギロイ。ウスライは答えた。
「まず最初に挙げられたのは、彼の戦闘能力についてでした。
 大腿を刺され、暴行を受け、その後高熱でうなされるほどの疲労を蓄積しながら、彼は私を追い詰めて見せました。
 ――そもそも、彼はこの最下層街でそれに見合った戦闘訓練など受けたこともないそうです。
 そういった身上の少年が代理戦争の王者として君臨できる確立が、如何程ありましょうか」
カギロイは呻いた。
「……しかし」
「科学的な分析が終わるには一月必要だそうですが……記録上では、彼には私達との血の交流が見られました。
 東方士族の掟には、『異』を外に持ち出すべからずとあります。この数百年の間、それを破ったものは唯二人。
 一人は――言わずもがな、兄上。貴方です。そしてもう一人は、他民族の女と恋に落ち駆け落ちした数代前の当主。
 彼が女に導かれて根付いた場所は――乾燥して作物も取れず、『異』の保持者しか資源のない土地。――ハダレの故郷です」
「…………………」
「彼の故郷では、血の濃縮の為に近親相姦を許しています。通常その程度の交流では再び発現することのない『異』も、
 何代となく閉鎖された個体群の中で濃縮されることで、復活しないとも限りません」
そっと、ウスライがハダレを見遣った。
「彼自身から聞きました。彼は故郷で『異』の保持者を増やすために強制的に性行為をさせられたそうです。
 ――大幅に能力の劣ったとされる『異』であるにも拘らず。もしそれが二つの『異』を持っている故に起こる現象だとすれば、
 虐待とも取れるその処遇をされた理由も、まだ納得は出来ませんか?」


245 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 03:59:06 ID:Ro5o0XcS0
「………………………それでも」
余りに長い沈黙――舞台を見つめる観衆達が、戸惑い始める頃ほどの――の末に、カギロイは苦々しく答えた。
「断る。私はお前に追討さえされかけているというのに、今更故郷(くに)の命令に従えるか」
ウスライは、といえば。無表情さを全く崩さずに、視線だけを細めた。――予想していた、とでも言うように。
「……分かりました。それでは、別の手段を取って頂きましょう。兄上」

「……なんだと?」
いい加減、訝しげな思いをするのにも飽きた。
カギロイが些か苛立ったように尋ね返すと、ウスライは何でもないことのようにこう、答えた。
「簡単なことです。ここが何処か御存知ですか、兄上」
カギロイは、一瞬その指し示すところが分からず馬鹿のように周囲に目を遣った。
明滅する派手なライト、リング、ざわめいている観客、負けて倒れている性奴の材料、諸々、諸々……………
そしてその示すところを理解し、にやりとしながら答える。
「戦場だな、ウスライ」
「御名答。上手くあなたが立ち回りさえすれば――私を亡き者にした上で、ハダレも手中に収められるでしょう」
す、っとウスライの右手が滑らかに動いた。このリングに上がってから、初めてのウスライの挙動だった。
例の長細い袋から一本の棒――反り返った片刃の刀を抜き出す。それをカギロイの方に軽く投げて遣す。

「……随分懐かしいものを持ってくるじゃないか」
受け取ったものの向きを直し、カギロイは右手に力を込めた。カチ、と小さく金属のぶつかり合う音が鳴る。
――一瞬の後、ライトを浴びて艶めかしく輝く白刃がカギロイの手に握られていた。
懐かしさとその余りの美しい鋭さに目を細めながら眺めていると、先ほどと同じような音が耳に届いた。
刀身越しに見遣ると、弟も同様にそれを抜き放っていた。
最早どう言った経緯でそうなったのか理解することを諦めた観衆達の、先ほどにもまして大きな歓声が二人を包む。

246 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:01:08 ID:Ro5o0XcS0
「許可は取ってあります。まさか今更此処から逃げなさる訳にもいきますまい」
「勿論。しかし――」
くるりと刃を返しながら、カギロイがウスライに笑いかけた。
「お前は随分と酷な戦いを兄にさせるのだね。
 始終それを振り回しているお前と、組織の一員として務めをこなしている私がやり合えばどうなるか分かるだろうに。
 実際、幼い頃私はお前に勝てた記憶がないんだ。それに真剣では手加減にも出来かねるだろう」
自信があるのかないのか――逃げないというくせに、今の口ぶりではずるい、ハンデをよこせと主張している。
読めない。兄の考えていることが分からない。ウスライは正直にそれを認めた。
――が、先手は打ってある。懐から丁寧に折りたたまれた書類を取り出すと、ウスライはそれを軽く投げた。
「………………?」

音もなくそれを受け取ったカギロイはその書類を開き目を通した。
書類は、代理戦争でリングを使用する際に書く試合の内容を簡単に記したものだった。
それを追う目元が、下がるにつれて緩やかな笑みに染まる。
書類の一番下まで視線が下がり、その長い指が書類を畳みなおす頃には、顔に柔和な余裕の笑みが浮かんでいた。
「……成る程。実戦から離れた兄の事情を良く汲んでくれている。――ササメ!」

聞きなれない人名を呼ぶカギロイの声に、ひくんと顔を上げたのは拘束男だった。
心配そうにこちら方を眺めている奴隷に向け、主人は言い放った。
「急で悪いが、手伝ってくれないかい?――こちらの彼が、『2対2』の代理戦争を要求してきたんだ」
「ぇっ……2対2、ですかぁ?……あの……」
当惑したように主人を見返す拘束男――ササメは、舞台をぐるりと一周見回してから、再び視線を主人に戻した。
今、舞台に立っているのはカギロイと、ウスライ、そしてササメ。あと一人、いるにはいるが――
その疑問に答えたのは、ウスライだった。
「構わない。これは兄上に差し上げたハンデだ」
「――そういう事らしいよ、ササメ」
はぁ……と呆れたような、未だ納得できないような顔でいるササメに、カギロイは穏やかに告げた。
穏やかな調子のまま――背筋を伸ばし、腕を突き出し、右足を少し退き、構える。
「舐められたものだね、お前も私も。彼は一人で二人の『異』を相手に出来るそうだ」

247 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:03:30 ID:Ro5o0XcS0
そういわれて。はっとしたように、ササメが不愉快さを表に現すのをウスライは見た。
一度負けたくせに、という色がありありと読み取れる。その変化を見取ってから、カギロイは告げた。
「私が許す。容赦なく貪れ、――ササメ」

やっと始まった余興に、リングを取り囲む誰もが注目していた。
なぜなら、これは致死試合――この戦場では史上初の、命を奪っても構わない試合であると実況が告げたからだ。
殴り合いの惰性と化した代理戦争の観戦に感動を抱きにくくなっていた彼らは、
誰一人本当に目の前で『死』が訪れるのだ、と自覚すらせずに無責任に応援していた。その瞬間まで。

一歩。二歩。三歩。四歩。ササメが、ウスライとの距離を詰める。相変わらずの速さで。
武器を持った相手に素手で対抗する為に懐に飛び込むのは、有効な戦法だ。
その時一番留意すべきなのは、最後の2歩のスピードとタイミングを誤らないこと。
一歩目の速さが足りなければ真正面から打撃を喰らい、二歩目がずれれば攻撃の後の隙を晒すことになる。
正直に言えば、怖い。失敗すれば、もう二度と主人の好きな綺麗な身体でいられないかもしれない。ササメは思う。
だが、此方には『異』がある。相手が何を考え、一瞬の先に何処にいて何をするつもりかはっきりと分かるそれが。
恐ろしさに耐え、真正面から相手と視線を合わせさえすれば、どうにかなる――

「?!」
視線を合わせようとして、ウスライの黒い瞳の在り処を見失ってササメは制動をかけた。
別に、ウスライの姿が消えたのではない。ただ、視線の合わせて戦うことに慣れているその意識が一瞬取り残された。
――そして、ウスライの白刃が伸び上がるようにササメを貫いた時、痛みと共にそれが引き戻された。
「…………ぇッ……」
あり得ない、と呟いた。それが声になっていなくても。
彼は一度、ハダレと二人がかりで自分に立ち向かい、それでも敗北したのだ。何で、……こんなことに?
「……………………」
こぽこぽと、「あり得ない」という言葉の代わりに血の泡が溢れた。
ふと見下ろすと、自分の身体――主人が手ずから調教してくれた体に、なんともあっさりと刀が突き刺さっていた。
なんて事をしてくれたのだ、とササメは無言でウスライを責めた。ウスライはどこか申し訳なさそうに、口を開きかけ――


248 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:05:32 ID:Ro5o0XcS0
「!」
ササメの体から一気に刀を抜くと、丁度真後ろから斬りかかって来た兄の刀を受け止めた。
その衝撃で、ササメはよろよろと数歩押し返されるように後退り――軽い音を立てて、代理戦争から離脱した。

「……可愛い奴隷を身代わりに後ろから斬りかかるとは…私も予想できかねました」
カタカタと両の腕に震えを立て、交差した刀を挟んで弟が口を開いた。
皮肉が多分に含まれているが、平坦な声。その声に、兄が平静ではない声で応えた。
「……私とて予想できなかったよ……こんなつまらない事で……大切なササメが傷つくなど……」
倒れた彼の身体をウスライ越しに見やることが出来てもまだ信じられないというように、カギロイが唇を震わせた。
――囮のつもりではなかったのか?と訝しげな視線を向ける。すると、
「!」
ぐ、っと強く刀ごと押されてよろめく。たたらを踏むように下がったので、2人の距離が開く。
――その数歩に満たない距離を、息もつかせぬ速さで詰められる。

きぃぃいいん!と高く澄んだ音が、ただでさえ音の反響しやすい戦場に響く。
右下から掬い上げるように命を狙うカギロイの刃を、ウスライが押さえ込むように叩き落とす。
そのまま捻りこむように払い、空いた体の正面を真下から斬り上げる!
……筈が、するりと幻のように刀が空振りした。流石に、一筋縄ではいかないらしい。兄の姿を瞳だけで追い、
「ッ!」
真横にいつの間にか回りこんでいた姿を見止めてそちらに身体を曲げるより速く刀を突き出す。
ぎん、と篭った音が手にも振動を与える。――思ったよりも重い。
じわりと骨を喰らう麻痺に耐えながら白刃を引き戻し矢を薙ぐ様に構えなおすと、もう一度そこに攻撃が降って来た。
「、」
食い縛った奥歯が重圧で軋むのが聞こえた。――やはり、重い。
そこいらのごろつきと同列に考えていたわけではないが、軽く見ていたかもしれないとウスライは反省した。
昔から芯まで腐っていても、カギロイは東方士族筆頭の元嫡子である。
予想以上に鈍っていない斬撃に眉をしかめながら、体勢を立て直そうと踏ん張る。――と、
がん、がん、と連続した攻撃を受けて上に掲げた刀が浮き沈みする。
「!」
予想外の攻撃的なカギロイの姿勢に面食らいながら、押されるように一歩退く。思わず取った、反射的な行動。


249 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:08:07 ID:Ro5o0XcS0
ウスライは次の瞬間、不思議な行動を取っていた。らしからぬ程の素早い後退を取り、カギロイから距離をとる。
そのまま構えるかと思いきや――だらりと左腕を離した。
観客がその逃避行動に激しいブーイングをした。はっきりと馬鹿やろう、戦えとなじる声がウスライに届く。
だが、ウスライは暫く経っても棒立ちのままだ。無表情さの中に、微かな興奮を浮かべた目で睨みながら。それには理由があった。
「正攻法ばかりとは限らないよ。……特に、お前は私の可愛いササメを傷つけたからね」
カギロイは優雅さの中に凄惨さを浮かべた笑いをウスライに向けた。その右手に――刀とは別の刃物が握られていた。
ねっとりと絡みつく血液だけが、その煌きを遮る。
「…………兄上」
微かに上擦った声でウスライが呼びかけた。ゆっくりと刀を握りなおした左の腕から、指の方に向けて紅いものが滴る。
「……貴方は……」
ぽた、とそれが滴った。大した量ではないが、傷口の様子は窺い知れない。それと同様に――
ウスライの言いたいことも、兄には窺い知れなかった。
ただ酷く揺らいだ瞳を向けて、ウスライは兄に刀を振り上げた。

激しい剣戟の音と歓声に両側を挟まれた一方で、忘れ去られたように静かな空間があった。
黒髪の兄弟の戦う場所から少し離れた、リングの隅。そこに、2人の『異』が倒れていた。
片方はうつ伏せで気絶していた。もう片方は、身体に穴を開けていた。気絶はしていない。
血の泡を市場に並べられた蟹のように吹きながら、それでもしっかりと主人の方を見つめている。
しかしのた打ち回る力はもうなく、上下する胸と瞼と、そして隣に眠る青年の髪を撫でる左手だけが動いている。
丁度傍にあったから弄んでいると言った様子のその指先は、酷く優しげだった。それは単に弱っているだけかもしれないが。
拘束男――ササメは、主人を眺めていた。突如現れて、ハダレを取り返しに来たという男と戦う主人を。


250 名前:代理戦争:2006/12/15(金) 04:10:12 ID:Ro5o0XcS0
血は意外と大量に出ているようで、ゆっくりと湿った感覚が広がっていくのは気持ちが悪かったし、寒気を催させた。
その中で、気絶した青年の髪を撫でる指先だけは、彼の体温を感じて温まっていた。
とても心地よい。緩やかに彼の髪が解れる度、僅かに溜まっていた熱に触れることが出来た。もっと撫でていたかった。
生きているものを撫でるというのは、こんなに安堵感を伴う行為だったろうか。何だか、忘れていた気がする。
主人も、こんな心地だったのだろうか。ふと、そんなことを思う。触れられる時もササメは限りない安堵を覚えていた。
だったら撫でる者と、撫でられる者は、きっと同じ安堵感を分け合っていたのだ。掌と、髪の熱を与え合うように。
青年は無反応だ。何を考えているかなど、分からない。眠っているものの夢を知りうることがあるはずがない。
だが、その夢が悪夢でないように――身勝手であろうと――思ってしまうのは、同じ主人に愛された仲間意識だろうか。

ぼんやりと、取りとめもなく考えている拘束男――彼が、思いつくはずもなかった。
その濃厚な血の匂いが。自身に限りなく近い血液に浸される感覚が。或いは、それに紛れたたった一滴の愛しい男の血が。
眠れる彼の『欲』を刺激して、揺り起こすことになるなど。


唐突に、ササメの手首が荒々しく掴まれた。
異変に意識だけは覚醒するが、身体は全く動かなかった。動くのは視線だけ。純粋な恐怖がすうっと背筋を伝った。
まるで化け物の前に縛られて放り出されたような緊張感を感じる。
何故目覚めたのか。彼は壊れたのではなかったのだろうか。ササメには、分からない。
ササメは主人から視線を逸らして、眩い天井を見上げた。自分の左手を握る化け物の姿を視止めようとして。

「………あんた、……死に掛けてんのか……?」
ふと声が耳に届き、視線を落とした。ササメが予想していたよりも少し脚の方寄りから、化け物は彼を見下ろしていた。
その化け物――ハダレの顔は憎しみに歪むでも有利を誇るでもなく、ただ疲れたような顔をしていた。
「目が覚めたら……いつのまに、こんなことに…あんたなら、分かると思って」


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