- 291 名前:最後の鏡a:2006/12/17(日) 01:33:59 ID:VnqUEqmV0
- 投下します。
エロ部分が男女物っぽく見えるので、それを補足するための話です。
伏線を殆ど出してしまっているためストーリーの流れを重視される方は読まない方がいいかもしれません。
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6月5日 PM2:00
間宮真司にとって、最悪の日だった。
「はじめまして」
真司の目前で青年が笑う。
「内海直人です」
その横で友人が暗い顔で立っていた。
「お前…」
「マネージャーの結城です。よろしくお願いします」
真司の呼びかけを無視するように結城は頭を下げた。
直人は二人の間に漂う微妙な空気に気付いた様子も無く、事務所の中を見渡している。
何でだ。
頭の中が混乱でいっぱいになりながら真司は必死で作り笑いを浮かべた。
「よろしく。間宮です」
直人はもう一度微笑んだ。
- 292 名前:最後の鏡b:2006/12/17(日) 01:35:03 ID:VnqUEqmV0
- 6月5日 PM10:45
「どうしてお前、マネージャーになんかついたんだよ」
真司が荒々しくグラスを下ろしたのでバーのガラステーブルがひどい音をたてた。
「つけって社長に言われたから」
真司と結城知久は出会ってから五年以上にもなるが真司は知久が悪酔いしたところも愚痴をいったところも、自棄になったところも見たことが無かった。
知久はテーブルに片手をついて、こめかみを押さえるようにした。
「それに…なんか色々無理だと思った」
「じゃあ俳優になるの諦めるっていうんだな?」
荒っぽい真司の声に何人かが振り向いた。
それが嫌なのか声が響いたのか、それとも質問が嫌だったのか知久は顔を顰める。
「さあ…」
「それに年下でしかも入ったばっかりのあいつに年上の知久をつけるっていうのもおかしいだろ」
知久はちらっと真司を見ると、嗤った。嫌な感じのする笑い方だった。
「社長が俺に足りないものでも教えてくれたんじゃないか」
「知久!」
真司が鋭く名前を呼ぶと、知久は真っ直ぐ身体を起こして真司を睨んだ。
「お前だってわかってるだろ!内海に会った時、顔色悪かったぞ」
知久は口の端を歪めながら笑い、すぐにそれを消すと財布から適当に紙幣を掴んでテーブルに置いた。
「…もうお前とは会いたくない」
しばらく絶句した後、真司は低い声で呟いた。
「それは同じ俳優を目指してた友達としてか?恋人として?」
「どっちもだ」
知久は去って行った。
- 293 名前:最後の鏡c:2006/12/17(日) 01:35:50 ID:VnqUEqmV0
- 6月10日 AM12:10
真司がスタジオに入ると、隅の方に立っている知久の姿が一番に視界に入った。
その横では直人が座って他のゲストと楽しそうに話している。
「あ、おはようございます」
真司の姿に気付いたスタッフが次々と声をかけてくる。
それに半ば無意識のうちに返答しながら、真司はその輪に近寄っていった。
「おはようございます」
他の人達と一緒に知久も真司に形式的な挨拶をする。
真司は知久の方を向いていたが、知久は決して目を合わせようとしなかった。
「ちょっとスタッフと話があるので、失礼します」
「わかった。いってらっしゃい結城ちゃん」
真司は黙って空いている席に座った。
6月10日 PM2:30
「お疲れ様でしたー」
「真司さん。次は五時から打ち合わせなんですけど、どうします?」
セットから降りると真司のマネージャーが早速寄ってきた。
最近変わったばかりの、まだ若い俳優の卵だ。年齢は多分直人と同じぐらいだろう。
「どうしようかな…」
真司が少し考える素振りを見せていると、
「あ、じゃあ俺と一緒に食堂行きませんか?」
後ろから声がした。
「…内海くん」
「直人でいいですよ。俺もしばらく暇なんです」
断られるとは夢にも思っていなさそうな顔で直人は笑っていた。
「じゃあ俺も真司でいいよ。行こうか」
「はい」
年齢の差など全く気にしない様子で、やはり直人は笑っていた。
- 294 名前:最後の鏡d:2006/12/17(日) 01:36:23 ID:VnqUEqmV0
- 7月6日 AM8:00
照明が何か失敗したらしく、ライトが目に入ってくるようになって真司は目を細めた。
「ところで、内海さんと仲が良いそうですね。年下の内海さんは間宮さんのことを名前で呼んでいるとか」
そのことに気付かないでインタビュアーは話を続ける。
「そうですね。普通の同じ年の友達みたいに喋ってますよ」
「間宮さんから見て内海さんはどんな人ですか?」
これは番組宣伝のためのインタビューのはずなのにと内心真司はいらいらしながら、それでも表面上は笑顔を保った。
あいつは、バカなんですよ。基本顔だけで売ってますからね。
内心もこの辺までなら言っても平気だろうか?真司は密かに考える。
語尾に(笑)でもつけてくれれば、最近急激にお笑いタレントと化しているし大丈夫かもしれない。
更に真司は考える。
何にも考えてなくて、全てが手に入ると思い込んでる奴です。そして全てを手に入れられることがどれだけ幸運なことかわかっていない。
俺、あいつ見てるとむかつくんです。あいつのせいで恋人と別れちゃったんですよ。
でも俺や知久に足りないものを持ってる。それに惹かれてしょうがない俺もいるんです…
「間宮さん?」
真司ははっとした。インタビュアーが怪訝そうな顔で覗き込んでいる。
「すいません。真面目に考え込んじゃいました。そうですね…人間的にとても惹かれるところがあるやつだと思います」
7月29日 PM11:40
真司は、笑顔を引き攣らせていた。
隣の直人はとりあえず笑っていた。
「雑誌見たけど、『惹かれる』ってそれホモですやん自分!」
「違いますよ、『人間的に』ですから」
「ホモやホモ。嫌やぁー!」
白々しい芸人のリアクションに客席は大爆笑していた。
後日、この番組のラテ欄には「間宮、ホモ疑惑?!」と最初に載っていた。
- 295 名前:最後の鏡e:2006/12/17(日) 01:37:20 ID:VnqUEqmV0
- 9月12日 PM11:15
「えー、じゃあ次はそっちのホモ!」
「ホモじゃないですって!普通に間宮って呼んで下さいよ」
真司は笑いがとれていることを確認しながら嫌そうな反応をしてみせる。
最早それが自然にできている自分に真司は密かに嫌気がしていたが
今はそれよりも興奮で頭がいっぱいだった。
三分にも満たない収録時間が、真司にはやけに長く感じられた。
9月12日 PM11:35
ようやくスタジオから出ることができた真司は、すぐに直人の楽屋へ向かった。
直人本人はまだスタジオでスタッフ達と談笑中だ。
真司がノックも無しにドアを開けると知久は目を見開いた後あからさまに嫌そうな顔をした。
「何だよ、もう会いたくないって…」
「話を聞いてくれ。やり直したいとかそういう話じゃないんだ」
知久が怪訝そうな表情になる。
真司は躊躇いとか良心のためではなく、興奮を抑えるために深呼吸をして、口を開いた。
「…内海がいなくなれば良いんじゃないか」
「え?」
「あいつがいなければ、お前は…」
真司がそこまで言ったところで遠くからではあるが賑やかな話し声が聞こえてきた。
「考えがあるんだ。協力してくれるなら電話してほしい」
それだけ早口に言うと、真司は楽屋を出て行った。
後に残された知久はまだ戸惑った表情をしていた。
- 296 名前:最後の鏡f:2006/12/17(日) 01:38:04 ID:VnqUEqmV0
- 9月14日 AM11:20
廊下を歩く知久の表情は、暗かった。
その手には台本が握られている。
監督直々に手渡されたものだ。
『最後の鏡』
知久はその原作がとても気に入っていた。家にあるその本は何回読み返したかわからない。
知久はその監督がとても気に入っていた。彼の作品は今まで全て見ている。
理不尽かもしれない、しかし激しい嫉妬と羨望の感情に知久は襲われていた。
知久の手は携帯に伸びる。そして未だ短縮に入っている番号へとかけた。
「……終わったら連絡くれ。午後六時以降なら一人だ」
留守番電話にそれだけ吹きこんで、知久は電話を切った。
そして直人の控室のドアを開けながらマネージャーとしての知久は叫んだ。
「やったよ!オーディション合格だって!」
9月15日 PM8:40
「すみません。せっかくのオフなのにお邪魔させていただいて」
「気にすること無いよ。どうぞ」
「どうぞゆっくりしていって下さいね」
真司の前では佐山夫妻が微笑んでいた。
9月15日 PM9:00
真司は持ってきていたミネラルウォーターを飲んだ。
「で、話というのは?」
正面に座った佐山が尋ねる。奥さんはコーヒーが飲めないという真司のために紅茶を買いに行ってくれている。
「佐山さん、変わった性癖お持ちなんですね」
- 297 名前:最後の鏡g:2006/12/17(日) 01:40:07 ID:VnqUEqmV0
- 佐山の表情が強張る。真司はせっかく笑顔を作った甲斐がないと思った。
「ホモ…って差別用語なのか。言われ慣れてるもので、すいません。ゲイなんですね。正確に言うとバイなんですね」
佐山から返事は無い。
「奥さんがいらっしゃるのに男性にも女性にも手を出されてるのは良くないですよ。でも、佐山さんって趣味わかりやすいですよ」
真司はバッグから写真を取り出すとそれを一気にテーブルの上に広げた。
「内海みたいな顔が趣味なんですね」
「…何がしたいんだ」
テーブルの上の写真を確認した後、佐山が重い口調で喋り始めた。
「人の性癖を調べるのが趣味なのか?家庭事情か?どっちでも良いがほっといてくれ。大体妻も不倫しているんだ。私が同じことをしても構わないはずだ」
「それなんですよ」
真司は自分がこの状況を楽しんでいることに気がついた。
そしてそれは声にも表れている。
「佐山さん、奥さんの不倫をとても怒ってらっしゃるって聞きました。奥さんが生きているのさえ嫌なぐらいだと」
「…それが」
「内海のことをとても気に入っていることも」
「それが何だって言うんだ」
佐山の声に苛立ちが混じってくる。
「奥さん、ヒトミさんのことは俺達に任せてもらって。佐山さんは」
真司はよく直人が浮かべるような笑いを作った。
「内海を強姦して下さい」
9月15日 PM9:30
ヒトミは愛人へメールを打ち終わると家の鍵を開けた。
「ただいま。ごめんなさい、近くのお店が開いてなくってコンビニまで行ったら遅くなっちゃって。間宮さんは?」
「…あぁ、仕事が入っていたことを忘れていたらしくてね。マネージャーが迎えに来たよ。君に謝ってくれと言っていた」
「そうなの?私も申し訳なかったわね」
最近夫の顔をよく見ていなかったヒトミには、佐山の顔色が悪いことも気付かなかった。
- 298 名前:最後の鏡h:2006/12/17(日) 01:40:46 ID:VnqUEqmV0
- 9月16日 AM3:00
佐山の手は直人の肌をゆっくりと撫で上げた。
それに反応して直人が体を震わせる。
佐山がその肌に唇を落とそうとした瞬間、周りが急に明るくなった。
直人の姿が佐山の身体の下には見当たらない。佐山は血相を変えて周りを捜した。
少し離れたところに直人がいた。隣に先日佐山がタイプだと言っていたアイドルがいる。
二人は佐山に気付いていない。気付かないまま、二人は唇を重ねた…
佐山は目を覚ました。
前半の夢で、勃起しかけていた。
しかし、完全な夢である前半と違って後半は…。
直人は自分の完璧な理想だと佐山は感じていた。
まるで自分のために作られた存在であるかのようにすら感じていた。
そうならば、直人は自分だけに大人しく従わなければならない。
ましてや他人とキスなどしてはならないと佐山は思った。
9月25日 PM2:30
「お仕置きだよ、ナオト…」
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ここまでです。長々と失礼しました。
- 299 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 02:38:44 ID:ijt4T65mO
- よくできた作文だな。
夏休みに提出し忘れたやつか?
- 300 名前:風と木の名無しさん:2006/12/17(日) 09:46:45 ID:Vzgh6AlvO
- 逝ってこい
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