411 名前:風と木の名無しさん:2007/01/05(金) 22:55:43 ID:XUpXvuQ90
テュランタソ待ってます!

412 名前:風と木の名無しさん:2007/01/06(土) 03:06:12 ID:J2e43lX70
>>410
姐さん、もしかして田.亀.源.五.郎とかお好きなのではないか?


413 名前:風と木の名無しさん:2007/01/06(土) 08:32:10 ID:Dsb8AEts0
>410
画像小さいから解りにくいけどこれ
今更新が止まってる某有名サイトの絵だよね?
勝手にうpしていいもの? パクリ?

414 名前:風と木の名無しさん:2007/01/06(土) 11:10:55 ID:FLcDpX+BO
スルー

415 名前:探し屋:2007/01/07(日) 01:11:17 ID:RrBqZZQU0
豚義理で投下。導入ゆえにエロくないです。
口にあわなそうな方はスルーよろしくです。

発砲音。発砲音。発砲音。

夜を裂くと言うよりは弾けさせる様な頭の芯に残る音に、おどおどとした様子の男はびくっと竦んだ。
着古した労働者好みのビニール地ジャケットに、くすんだ色のパンツ。手には黒い書類ケース。
妙に周囲の環境にびくついているのは、土地勘が無く慣れていない所為だけではなく
彼がやましい目的でここに居るからだ――周りも、同じくらい疚しかろうと。
実際、男は発砲音がやんでから一層固くケースを握り締め、小さなメモを片手にうろつく足をひっそりと速めた。
やましい目的を達する――やましい場所へ――辿り着くために。


「ネコ」
「ン?何」
呼ばれて、男は振り返った。くるりと翻った長い白髪が安い電灯に照らされ、安い煌きを放つ。
一方男を呼んだ青年――と、少年の中間くらいの男は、器用にコーヒーを啜りながら続きを口にした。
「……さっきから下でうろうろしてるあやしいオッサンがいるんだけど、どーにかしろ」
「イヤでス」
ネコ、と呼ばれた男は即答すると、視線を戻した。バラバラの色彩の立方体――ルービック・キューブに。
「ジュウは最近仕事をボクに押し付けスギです。そのくせ、昼は射撃訓練にわざわざ行ったりスる。
 発砲したいナラいまやって下さイ。銃ならイクらでも出せますからなんなりと」
妙な場所にアクセントのある、癖のありまくりな口調でネコが皮肉る。が、
「得体の知れない野郎の面倒見て、仕事まで回してやってんのに文句垂れるかお前。
 そういう事すると、今度寝てる間に冷凍室にぶち込んでやるぞ」

冷凍室。そう聞いて――ネコの表情が強張った。

416 名前:探し屋:2007/01/07(日) 01:12:42 ID:RrBqZZQU0
明らかな怯え…または、悔しげな顔。

「本当にイヤナ奴にボクは拾わレたと思います、ジュウ」
未だに全く完成の予兆を見せないルービック・キューブを手近な机に乗せ、ネコが立ち上がった。
関節がふにゃふにゃ動くゴム製の棒人形をそのまま身長180cm以上に引き伸ばしたような、
無骨なくせに細い体。その上に分厚いジャケットを羽織った微妙に威圧感のある格好。
「不甲斐ナイ相棒の代わりにイッてきまス」
「いってらー」
コーヒーカップを床から100°以上は上げながら、ジュウは気の無い挨拶を送った。扉が、それを断るようにばたんと閉まる。
その向こうで、ネコは思いっきりあかんべえをしてから現場へ急行した。


「寒い……」
はふ、と大きくついたネコの吐息はぱっと白く色づいた後で消えた。
それを透かして注意深く辺りを窺う目の下のほうでは、唇がノンストップで愚痴っている。
「ジュウはいい加減意地悪でス。確かニボクは沢山世話になったけど、随分借りは返しタ筈なのに……
 それに、ボクは寒いのジュウよりずっと苦手だって分かってる癖ニ、酷い!」
ポケットに両手を突っ込み、ジャケットの上にふわりと巻いたマフラーに鼻まで埋めてぶるぶる震える様子は、
見ているだけで寒気を感じそうなほどだ。
冷たく乾いた空気に刺激を感じ、ネコの瞳が自然に潤む。
濡れた目元にすら寒気を覚えて、思わず小さなくしゃみを2回すると、気のせいか洟まで出てきた。
「寒いでス……」
ず、と息を詰めて啜る。鼻腔を冷気が刺す。
早く帰りたいという思いだけが生み出す気力で辺りを窺うと、運のいいことに視界が路地の向こうの”オッサン”を捕らえた。
後は多少跡をつけ様子を見て、関係なさそうならそのままほうっておけば良い。
自分達の客なら事務所につれて帰る。そして敵なら勿論……排除する。
何気ない足取りで”オッサン”の方へ歩みだしながら、ネコは呟いた。
「早く帰ッテ、あったかいもノ飲むのも好いケド、――ソッチも暖まりそう」



417 名前:探し屋:2007/01/07(日) 01:15:54 ID:RrBqZZQU0
ネコにつけられているとも知らず、”オッサン”は早足で路地を歩いている。
が、足取りに迷いがあるような気がするのは気のせいだろうか。
(コレで地図でも見てたラ、殆どお客さんで間違イないンだけド……)
微かにふるふる震えながら足取りを追うこと約10分、”オッサン”は同じような路地を未だうろついていた。
別にどこかの建物を周回する訳でもなく、こちらを撒こうとする気配も無く、本当に迷っているような足取り。
(事務所、分かりヅラいとこにあるからネ……職業柄……)
そろそろ本格的にあふれ出してきた洟をすすりながら、ネコは思った。
(ヒト専門の”探し屋”な上ニ、最悪の”復讐補助屋”デ、ついデニ”後始末屋”だもノ。
 用心に用ジンしてルダケだもんね)

ああ、都合よくこの”オッサン”、地図出さないかな。そんな事を思いながら更に数分も歩いた時だった。
”オッサン”が掌から小さな紙を取り出し、眺めながらあちこちを見回すのが見えた。
(地図!キタコレ!)
ほぼ間違いない。アレはお客さんだ。
そう認識した瞬間、ネコの頬が緩んだ。仕事をやり終えたことに対する安堵と、暖かい部屋を想像したためだ。
あとは”オッサン”に軽く口頭で確認を取ってから連れて行けばいい。
そう思って、ネコがいままでよりほんの少し大きな歩幅で歩みだそうとした時――発砲音が轟いた。

バン、バン、バンと。



こんなところまでです。





418 名前:商談 1:2007/01/07(日) 01:49:55 ID:5t1BylrL0
探し屋さんGJ。
続きを読むのが楽しみです。
自分も久し振りに投下。

===========================
田村の運転する車の後部座席で、義純は上機嫌だった。この1年と言うもの、
田村に対しては常に否定的な態度を隠そうもしなかったのが嘘のように、
耳触りのいい言葉ばかりを口にする。
義純は、自分が正しかったと思って御満悦なのだ。それは田村にもよくわかっていた。
義純が望み、田村が反対してきた八尾商事との新しい取り引きが、
今日の会談を機に始まるはずだ。
結局はこうなったじゃないか、義純はそう思っているに違いない。
更には、ベテランの田村を若い自分がついに説き伏せたとも思っているだろう。
田村とて、義純がどうしてもと望めば抑え切れるものではないと承知していた。
何と言っても義純こそが社長であり、大多数の株を所有する、この会社の
オーナーなのだ。専務の肩書きがあると言っても、自分はただの雇い人だ。
そもそもそこが問題なのだと田村は思う。2年前に前社長の勝人が身体を
壊したことが始まりだった。1人息子である義純がアメリカの大学院を卒業して
帰ってくるのを待って、勝人は社長職を譲って引退した。実社会での修行もなしで
いきなり社長業は荷が重いだろうと重役連は反対したが、その声もワンマン社長の
鶴の一声にかき消された。
「何のために君たちがいるんだ。義純が若くて未熟だということくらい、
私だってわかっている。だが義純は基礎はしっかりできているんだ。
MBAは伊達じゃないぞ。経営哲学だって、私がしっかり仕込んでいる。
義純の持つ力を最大限に活かすのが君たちの仕事だろう」
冗談じゃない。
喉元までせり上がったその言葉を、田村はぐっと飲み込んだ。
小さくても、パートまで入れれば従業員150人を抱える株式会社だ。自分はもちろん、
彼らを食わせるためにも、利益を上げねばならない。そのために田村は働いてきたのだ。
坊ちゃんが心地良く生きていくための場所を作るために働いているわけではない。



419 名前:商談 2:2007/01/07(日) 01:50:44 ID:5t1BylrL0
田村の懸念が杞憂でなかったことは、義純の社長就任から半年を待たずに明らかになった。
義純はとにかく世間知らずだ。更に悪いことに、自分が世間知らずだということを
自覚していない。学校で習ったことをそのまま実行しようとする。
基本を押さえながらも個々の事例に合わせて応用させなくてはいけませんと教えても、
個々の事例に合わせた結果こうしているのだと返事が返ってくる。
何より始末に負えないのは、勝人の経営哲学とやらだった。勝人は狡猾な商売人だった。
非情にもなれるし、卑劣な手も使っていた。ただ、親子してよく似ているのだが、
そういう自分をまったく自覚していない男だ。同業者の会合だのパーティーだのでも、
業界紙のインタビューでも、いけしゃあしゃあと「卑しい所のある人間は経営者には
向きません」だの「利益を社会に還元する理念がなくては企業としては失格です」だのと
口癖のように言っていた。
その勘違いした経営哲学を叩き込まれた義純は、父親の狡猾さを学べなかった分、
理想論で経営が成り立つものと思い込んでいる。自分の会社――水原物産が、
高邁な理想を実現しつつ利益を上げてきたのだと信じているのだ。
田村の苦い回想は、義純の朗らかな声で遮られた。
「田村さん、篠原さんに会ったことがあるんでしょう? 気さくな人なんだよね?
趣味はゴルフだと聞いてるんだけど、次は接待ゴルフなんてどうかな」
中学の頃から父親にくっついてゴルフ場を廻っていた義純は、自分もゴルフ好きだ。
会社の金を使ってゴルフができるのだから、嬉しいのだろう。いかにもこの会社の
社長らしい。福利厚生として契約している施設が遠方のゴルフ場ばかりという、
従業員を馬鹿にしきったこの会社の。

420 名前:商談 3:2007/01/07(日) 01:51:43 ID:5t1BylrL0
苛立ちを抑えて、田村は平静に返した。
「今から次回のことなんて考えても仕方ありませんよ。まずは今日の懇談を
うまく乗り切ることを考えて下さい。うちは明らかに立場が弱いんです。
懇談だと言っても、商売の話をしないで済むわけないんですからね。
無理難題を吹っかけられる覚悟をして、うまく切り抜けて下さいよ」
後部座席から、はあー、という、大きな溜息が聞こえてきた。
「ねえ田村さん。どうしてそんなに悪意にばかり取るの? 篠原さんは、
うちが窮地に陥っているのを見かねて、社長さんにまでかけあってくれたんだよ。
そこまでしてくれてるのに、なんで篠原さんがうちをひどい目に合わせると
思うのかなあ。前から思ってたけど、ちょっと神経質なんじゃない?」
田村は、答える気力も失った。友達ごっこじゃあるまいし、損得抜きで取引など
できるわけがないのに、義純にはわからないのだ。いや、自分が損得抜きで
商売してしまうせいで、それが間違っていることが理解できないのだろう。
泣きつかれればほだされ、おだてられれば調子に乗り、脅かせば慌ててしまう。
都合よく利用しようとする側にしてみれば、義純ほど簡単に手玉に取れる相手も
いないはずだ。
今日の懇談に他の誰でもない自分がついてきたのも、篠原を警戒しているから
ばかりではなかった。お追従を並べる腰巾着や、既に諦めている役員たちでは、
義純の暴走を防げるわけがないと思ったからだ。本当は義純は、自分の右腕――
にしようと義純が見込んだボンクラ――を連れて行こうとしていたのだが。

(続きます)


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