- 521 名前:テュランの筏5/9:2007/01/17(水) 12:09:59 ID:FyI39WtK0
- それだけで、十分だった。僕の興奮は白濁となって、発される。
「ああ……っ」
ねっとりした液体が、タープに飛んだ。濃い緑色の表面に、
音を立てて着地し、白い染みとなってはりついた。
「あ……っ」
今度は、後悔の声。何しているんだ、僕は。
冷静さが戻ってきて、自分の行為を手ひどくなじった。
クリフのタープに、節操もなく、欲望の残滓をなすりつけるなんて、この恥知らず。
自分の頭をぽかぽか殴りつけたい。いや、それこそ今から実行に移そう。
両拳をつくり、すさまじい勢いで耳の上に向かっている最中、クリフは言った。
「……俺は、智士がほんとうにいやがってるのかと、そう思ってた……」
うつむきがちに、ぼそりとつぶやくその言葉を、理解するのに時間がかかった。
のんびりしすぎていたのだろう、僕は。
クリフはそれ以上なにも言わずに背を向け、白いものがこびりついたタープにもぐりこみ、くるまった。
「あ、あのっ……取り替えるよ、タープ。僕のと」
「いや、いい」
短く答えたクリフは、タープの中から手をひらひらと振った。
まもなく寝息とともに、規則正しく肩が上下しはじめた。
- 522 名前:テュランの筏6/9:2007/01/17(水) 12:14:33 ID:FyI39WtK0
- 彼を起こしてまで、話し合う事じゃない。
僕は自分のタープに戻り、彼の言葉の意味を、取り替えなくてもいいと言ったその心理を、おさまらない鼓動の中で考えつづけた。
疲労もあったのだろう。僕はぐっすり眠りこけてしまった。
目覚めたのは夕方だった。沈む太陽が海をオレンジ色に染めている。
見渡す四方、全部海と空だった。
すでに起きて水平線をながめていたクリフは、僕を見ていつも通りに接してきた。
黙々と、残り少なくなった水と食料を口に運ぶ。
これが全てなくなる前に……どんな形であれ、決着はつくのだ。
- 523 名前:テュランの筏〜海市7/9:2007/01/17(水) 12:15:29 ID:FyI39WtK0
- * * *
土中の彼らに知るすべはなかったが、日曜日から火曜日にかけて豪雨に見舞われていた。
防空壕の、崩れていた土砂は大分流され、湿った土は柔らかくなっていた。
その反省点としてか、藤吾は外出時には必ず雨傘を携帯するようになった。
だが、まだ反省すべき点はあった。
攻勢に出てから、余りにも短く足りない時間。
それに伴う、消化順序の誤った選択。助けが偶発的にも訪れやすい場所。
下準備も不十分だった。
教職を辞してからの藤吾は、反省点に拘りつづけ、その正体は何なのだろうと自問自答すると、答えは簡単。
終らなかった教育への未練、だった。
残りの人生を全て賭けても、彼は中途の教えをやり遂げねば、と抱いていた。
あの狂った閉鎖空間で過ごした為か、藤吾は既に同性、それも苦しみ悶える少年にしか勃たなくなっていた。
弊害と呼ぶよりは、むしろ目的を真っ当するには好都合であった。
藤吾はありとあらゆる準備を整え、選び抜かれた教材と共に、海を再教育の舞台に選んだ。
風の噂に聞いた、三人の少年のその後。
- 524 名前:テュランの筏〜海市8/9:2007/01/17(水) 12:17:05 ID:FyI39WtK0
- 一人は、防空壕のあの深い空洞から身を投げた。埋め立て工事が始まる前日だったと言う。
一人は病院から未だに出てこず、一人は歌i舞伎町で名を馳せていると聞く。
あれから数年過ぎ、既に少年でなくなった彼らに、藤吾は全く興味を持たなかった。
藤吾は、五メートル近い幅の巨大な板を積荷とし、
教材道具の詰まった黒いトランクを手に、船へ乗り込み、乗客を検分した。
(赤毛の少年、一つに結んだ髪と目の細い所が似ている。最初に落ちるだろう。
腕っ節は細くボディガードは無理そうだが、今回は抵抗に対する準備も万全だ。彼が一人目)
(旅慣れている。金髪の少年、ああ、青い目。そっくりだ。意思の強そうな所が。
最後までてこずるなら彼だ―――もっとも、今回は負けやしない。もし敗北する時は……)
(黒髪の、優等生面の日本人の少年。二人を足して割った感じだ。
欲望に忠実と言うよりは、むしろ意思畢竟の問題か。
扱いを間違えなければ、彼もすぐ落ちるだろう)
藤吾は何年もこうして、乗客に教え子を見出し、危険な航路客船に乗り込み、失望と共に目的地に着いてきた。
だが、今回は十分に沈没の危険性が高かった。
- 525 名前:テュランの筏〜海市9/9:2007/01/17(水) 12:18:20 ID:FyI39WtK0
- 魔の海域と呼ばれる航路。建造八年。
船級協会には加入していない。積荷は綿花三万ポンド。
五十すぎた船長は、ベテランではあったが心身ともに衰えている。
藤吾は教えがいのありそうな少年たちから目を離さず、汽笛の音に身を委ねた。
* * *
※海市(かいし)〜しんきろうの意※
藤吾の精神は……いや、正か異であるかなど、誰にも断定はできない。
ただ、一つ言える事はある。
彼の精神はどす黒く、闇の中にあった。
彼にとっては、救いの光も助けの手も、幻にすぎなかった。
彼はまだ、暗い穴の中に居た。
冷え切った土の中に置いてきぼりのままだった。
身体が光をまぶしく受け止める色のスーツをまとおうとも、
切り離された心は、黒々と丸まってうずくまっていた。
- 526 名前:風と木の名無しさん:2007/01/17(水) 12:33:26 ID:HnGBFRKC0
- テュランタンGJ!
すがっていた希望はガセ!?
どどどどーするのー!?((((;゚Д゚)))
- 527 名前:風と木の名無しさん:2007/01/17(水) 14:07:51 ID:F1GxcnjW0
- 榊が病院、ヨウが歌i舞i伎i町で、国山が飛び降り…かな?
いずれにしろザマアミロだが。
藤吾は穏やかに発狂していたのだな。
絶望的な鬼畜展開もさる事ながら、ストーリーが素で面白い。
- 528 名前:風と木の名無しさん:2007/01/17(水) 15:02:09 ID:y3v2CtGVO
- テュランタソGJ!!
極限に迫った展開…凄い!!
智士達の運命はどうなるんだろ……
はげしく期待。
静かに狂気になる藤吾GJ
- 529 名前:風と木の名無しさん:2007/01/17(水) 16:55:55 ID:eQlx4DvgO
- クリフと智士萌えたw
智士の反応がかわいすぎる
- 530 名前:吸血鬼8:2007/01/17(水) 18:01:32 ID:kAXhyptF0
- 暖炉横のサイドボードに乗っている二つの銀の短剣が仄白く輝き、
城を囲む木々の影に覆われた部屋の黒をほんの少し弾いている。
見事な彫刻をあしらった一本の猫足で支えられた丸い天板の上には、
木製のコップに入った酒が横に置いたランプの灯に、
その琥珀色を際立たせていた。
干し肉をナイフで削って口に含み、アドルフは酒を
流し込んだ。どちらも、狩りが成功した時の祝杯用に持ち込んだものだ。
「おい、ほどほどにしとけよ。売る前に壊してしまうつもりか」
ランプの灯が届かない奥のカウチに腰かけ、
抱えた少年を未だ飽きもせず突きあげてる
相棒に苦笑して、酒をコップにつぎたす。
「わかっ、てる、って。‥‥‥ほら、しっかり、受け止め、ろよっ」
内部をかきまわすような激しい突き上げに、クラウスは
首をのけぞらせて悲鳴をあげる。擦られるたびに下半身に
痺れがはしり、中を突いてくる熱いヤンのモノのリアルな
感触にどうしようもなく体がうずき、心が翻弄される。
イかされて吐き出された精液と、だらだらと流れ続ける
先走りでグショグショのクラウスのモノはまたも弾けんと
膨張していた。
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